2026/05/09
【5/21(木) 締切】食と健康・環境保全 農畜水産物安全性
「安全な農畜水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究推進計画」別紙の更新(案)についての意見・情報の募集についてhttps://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550004334&Mode=0
〇解説
いくつか、注目ポイント羅列しておきます。
〇概要
農林水産省は、科学的な根拠に基づいて行政施策・措置を決定するため、食品安全、動物衛生、植物防疫等の分野で、レギュラトリーサイエンス(※)を推進しており、令和3年4月、「安全な農畜水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究推進計画」を策定しました。
同推進計画では、行政上の課題(研究の必要性)を明確にし、その課題解決に当たり、農林水産省が必要としているレギュラトリーサイエンスに属する研究を別紙としてリスト化しています。また、同別紙については、少なくとも1年ごとに見直すこととしています。
このため、国内外の情勢変化、研究の進捗状況等を踏まえ、別紙を更新することとしており、このたび、更新案について、広く御意見等を募集します。
※レギュラトリーサイエンスとは、科学的知見と、規制などの行政施策・措置の間を橋渡しする科学のことで、行政施策・措置の検討に利用できる科学的知見を得るための研究と科学的知見に基づいて施策・措置を決定する行政の両方を含んでいます。
●計画案(61ページ)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000312860
■カドミウム◎
・コメ中のカドミウムを低減するためには、湛水管理とともにカドミウム低吸収性イネの利用が効果的であり、カドミウム低吸収遺伝子をもつ品種が登録されているが、品種のラインナップは十分でない。このため、主要品種や有望な新規品種に迅速にカドミウム低吸収性を付与するための研究が必要である。
■ヒ素◎
・水稲によるヒ素の吸収を抑えるためには、十分に中干しをした上で、出穂期前後に土壌を酸化的な状態に維持する水管理が有効だが、この水管理は、コメ中のカドミウム濃度の上昇、収量及び品質への悪影響並びに農作業の手間の増加による生産コスト上昇といった懸念がある。また、「みどりの食料システム戦略」(令和3年5月農林水産省)では水田からのメタン排出の抑制が目標として掲げられており、そのためには中干し期間の延長が有効である。水管理により水田からのメタン発生とコメ中の無機ヒ素及びカドミウムの濃度が変動することから、コメ中のカドミウム濃度の上昇を抑えつつ、コメ中の無機ヒ素濃度の低減と水田からのメタン発生抑制を同時に達成できる水管理技術の開発が望まれる。
このため、以下の知見の収集と技術開発が求められる。
(1)カドミウムの吸収を抑えつつ無機ヒ素の吸収を効果的に抑制し、メタン排出を削減する簡易で省力的な水稲の栽培技術の開発
(2)湛水条件下でも無機ヒ素を吸収しにくい水稲品種の作出
本研究で得られた成果を活用して、指針を改訂し、産地におけるコメ中の無機ヒ素の低減対策の実証を進めていく。
■ニトロソアミン類
・ニトロソアミン類は、亜硝酸を含む食品を加熱したり、食品原料を微生物で発酵させたりする際に生成すると言われている有害化学物質であり、ニトロソアミン類の一種であるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)、N-ニトロソジエチルアミン(NDEA)は発がん性があることが知られている。
欧米諸国が肉類を中心に汚染実態調査の結果を公表している一方、我が国では1980年代以降、食品中のニトロソアミン類の汚染実態は調査されていない。
このため、健康リスクの推定に必要な感度を有する食品中のニトロソアミン類の分析法を確立する必要がある。
■パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS) ◎
・PFASは、有機フッ素化合物のうち、約1万種以上あるとされているパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称であり、一部のPFASは非常に優れた物理的、化学的特性を持つため様々な分野で利用されてきた。一部のPFASは、高い安定性があり自然環境中で分解しにくく、かつ、動物への高い蓄積性があるため、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の対象として、国内外で製造や使用等が既に規制されている。環境中に放出されたPFASは、水や土壌から農畜水産物を介して及び飲料水や大気を通じてヒトの体内に蓄積し、出生児体重低下やワクチン接種時の抗体応答の低下等の悪影響との関連が否定できないとされている。
環境省や自治体が代表的なPFASであるパーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を対象に実施した水環境の実態調査では、国内でも排出源となる施設の近傍の河川や地下水等に広く存在していることが明らかになった。また、食品安全委員会は、PFASのうちPFOS、PFOA及びPFHxSについて食品健康影響評価を行い、令和6年6月に評価書を公表した。
国内では、PFOA、PFOSについて水道水質基準や公共用水域及び地下水の指針値が設定されている。指針値を超える濃度のPFOA、PFOSが検出された河川や地下水を有する自治体から、農作物等への影響解明についての要望がある。また、一部の先進国においては、食品や飲料水中の最大含有濃度の規制が始まっていることから、研究の必要性、緊急性が高いと言える。一方で、農業環境(水、土壌等)から農畜水産物への移行に関する知見が集積されていない。
■有害化学物質の摂取量推定
・農林水産省は、安全な食品を安定的に供給するため、食品中の有害化学物質の汚染実態データと食品の消費量データを基に、食品から有害化学物質をどの程度摂取しているか推定している。より精確に有害化学物質の摂取量を推定するためには、性別、年齢、季節ごとの食品消費量のデータが必須であるが、食品消費量データは10年以上前のものであり、現在の食習慣を反映しているとは言えない可能性がある。そこで、既存の食品摂取量データの取得方法と比較して同等の精度で、現在の食習慣を反映した食品消費量データを取得する必要がある。
■代替タンパク質等 ◎
・人口増加に伴う食料不足を補う、もしくは食料生産に伴う環境負荷を低減する必要性から、新たなタンパク質源が世界的に注目されている。例えば、プラントベースフードや微生物を利用した食品、藻類由来タンパク質、細胞培養食品、食用昆虫等(代替タンパク質等)が研究開発されており、既に上市されている製品もある。また、「みどりの食料システム戦略」において、具体的な取組の一つとして「代替肉・昆虫食の研究開発等、フードテックの展開」や「飼料の代替としての新たなタンパク資源の利用拡大」を掲げ、推進しているところ。しかしながら、それらの代替タンパク質の安全性については、食経験を含めて情報や知見が不足していることが課題となっている。
食用昆虫については、国際連合食糧農業機関(FAO)が食品及び飼料としての昆虫類の役割に注目するなど、世界中で多くの国において利用されており、国内においても、これまでイナゴやハチノコが一部地域の伝統食として食されてきたところ。
今後、市場の拡大に伴って、摂食する昆虫の量や種類、摂食する人数・範囲、摂食機会が大幅に増える前に、危害要因(有害元素、かび毒、アレルゲン、有害微生物等)に係る情報収集とリスク評価、評価結果に応じたリスク管理措置が必要になる。
このため、現状では摂食経験が少ないが、今後の市場規模の拡大が考えられる食用昆虫(コオロギ等)を対象として想定される危害要因のデータベースの作成や、データベースを踏まえた生産における低減技術の開発が必要である。本研究で得られた成果を活用し、リスク管理措置の必要性の検討や、事業者及び消費者への情報提供等を行っていく。
また、細胞培養食品については、動物等の細胞を培養して食品にする新しい技術であり、現在、シンガポール、米国等の一部の国でのみ食品としての販売等の流通が認められているものの、国内での食用利用の実績はない。
FAO/WHO 報告書(2023)では、従来型食品では使用が想定されていない成長因子等が食品中に残存する可能性、培養過程における細胞の劣化等の形質変化による影響(アレルゲン、生理活性物質等)が食品安全上の課題として指摘されている。国内では、消費者庁の食品衛生審議会において、食品衛生法上の取扱いや安全性確保の手続きについての検討がされているところ。
今後、市場流通も見込まれる中で、こうした食品衛生法における検討状況等を踏まえ、必要に応じて、危害要因に係る情報収集等を行っていくことが重要である。
その他の代替タンパク質等については、国内において、従来から食品利用されてきたものもあるが、製造方法(例えば、培養や精製)との組合せ等によって新たな食品安全上の問題が懸念される場合には、危害要因に係る情報収集、生産における低減対策技術の開発等を行い、適切なリスク管理に活用していく必要がある。
■人獣共通感染症 ◎
・ 令和2年以降、世界的に大流行した新型コロナウイルス等、人獣共通感染症(人と動物の間を自然に伝播可能な感染症)の原因となり得る、動物に由来する未知の病原体が存在している。人獣共通感染症を起こす病原体は、世界で200種類以上が報告されており、人獣共通感染症の研究基盤の強化が喫緊の課題である。
新たな人獣共通感染症の発生に備え、家畜(野生動物等の周辺環境を含む)で流行している疾病を明らかにし、事前にリスクを評価する研究が求められている。本研究で得られた成果を活用して、宿主域を超えた感染リスクの事前予測、安全・安心な食品の提供への貢献、パンデミック発生による農業経済への損失の低減に資する。
馬の伝染性疾病であるウエストナイル熱、東部馬脳炎、西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎、アフリカ馬疫は、海外伝染病として、国内で診断する際には国際獣疫事務局が定める検査診断マニュアル等に基づいて検査を行うこととなる。これらの疾病には人獣共通感染症も含まれ、バイオセキュリティの規制により病原体を取り扱うことは容易ではない。
このため、これらの疾病については病原体を取り扱わない遺伝子検査法を確立しておく必要がある。国際交流による馬の移動の活発化や、地球温暖化等の影響による媒介昆虫の生息等の変化があることから、診断体制の整備を急ぐ必要がある。
■その他
・欧米では、2000年代より、蜜蜂の大量失踪(いわゆる「蜂群崩壊症候群」(CCD))が問題となり、様々な原因が指摘されている。
我が国では、CCDの事例は報告されていないが、蜜蜂が減少する事例は起きており、それらについても原因を特定するのに十分なデータは得られていない。
被害軽減のための対策を効率的に検討するために、どういった要因が蜜蜂被害の発生に寄与しているのかなど、国内の蜜蜂被害の発生要因を解明する必要がある。
本研究で得られた成果を活用して、蜜蜂被害事例の対策を立案・実施するための基礎情報とする。
■重要害虫に対する有効な農薬の探索
・近年、九州本土において、アリモドキゾウムシの誘殺やミカンコミバエの寄生果が確認されるなど、重要病害虫の侵入リスクが高まっている。
一方で、アリモドキゾウムシ、イモゾウムシ、ミカンコミバエ、セグロウリミバエ及びウリミバエについては、効果の高い農薬が明確になっていないことから、生産地域に侵入が確認された場合、生産者に対し、他の害虫に登録のある農薬の中から、効果があると推定される農薬を選定して、防除を指導している状況。
このため、各害虫に対して効果的な農薬を探索し、寄主植物ごとに使用可能な農薬を整理する必要がある。
本研究で得られた成果を活用して、効果が確認できた農薬を活用した的確な初動防除を行う。
■病害虫・雑草の薬剤抵抗性 ◎
・化学農薬に過度に依存した防除による病害虫・雑草の薬剤抵抗性発達リスクの高まりが問題となっており、農業現場では、早急に薬剤抵抗性病害虫・雑草の管理技術を確立し、新たな発生や広がりを防ぐことが必要となっている。このため、農薬の作用機作、病害虫の生態等を踏まえ、薬剤抵抗性が発達するメカニズムを解明するとともに、薬剤感受性検定手法の改良、栽培環境等を踏まえた複合的なリスク管理手法の開発に取り組む必要がある。
本研究で得られた成果は、薬剤抵抗性病害虫・雑草の管理体制の構築と効率的・効果的な病害虫・雑草防除の推進に活用する。
■雑草 ◎
・近年、様々な輸入飼料に混入した雑草種子が飼料畑や大豆畑に侵入し、問題となっている。さらに水田における雑草イネ等による被害も拡大している。これらの雑草は従来の防除手段では十分な防除効果が得られないことや、繁殖力や増殖力が強いことが多いこと等から難防除雑草となっており、制御が困難な程度に広がることにより作物の栽培をあきらめざるを得ないほ場も散見される。このため、薬剤のみならず、各種防除手段を組み合わせた効果的な防除体系の確立に取り組む必要がある。
また、国際基準では有害動植物の定義に草が含まれることとされていることにも鑑みて、令和5年4月、植物防疫法の「有害植物」に新たに草が含まれることとなったが、草に関する実行可能な検疫措置(消毒等)に関する知見は十分に得られていない。
消毒措置等を確立し、実効がある輸入検査の実施に向けた技術的な検討を進めるため、雑草の検疫対象候補種に対する同定方法に係る知見の蓄積、輸入植物検査時の適切な抽出方法についての研究及び各国で採用されている各種消毒方法等の有効性調査を実施することが必要である。
■温暖化等の影響により防除が困難となっている病害虫 ◎
・近年、病害虫の薬剤抵抗性の発達や、温暖化等の影響によるスクミリンゴガイやイネカメムシ、モモせん孔細菌病等、従来の化学農薬の使用だけでは防除が困難となっている病害虫の多発が相次いでおり、改正植物防疫法に基づき、化学農薬だけに頼らない総合防除(IPM)の確実な実施が必要とされている。
しかしながら、総合防除は、ほ場の状況(土壌の質、気象等)や防除対策・栽培管理のやり方で防除効果に振れがあるところ、それらの把握が十分にできていないために、総合的防除対策の防除効果の検証や効果的な実施が困難となっている。
このことから、総合防除における、ほ場の状況や防除対策・栽培管理の実施状況を効率的に把握し、病害虫被害の要因解析、効果検証及びその後の対策検討を実施できる手法の確立に取り組む必要がある。
また、農業者の減少や高齢化等に起因して、遊休農地、放任園、農地以外の場所が発生源となる病害虫への防除対策が課題となっている。このため、地域一体となった広域型総合防除体制の構築が求められている。
本研究で得られた成果を活用して、化学農薬の使用だけでは防除が困難となっている各種病害虫に対する効果的な総合防除体系の確立を推進する。
■スマート農業を活用した病害虫防除 ◎
・スマート農業は、農作業の省力化・精密化や農作物の高品質生産を実現するものとして期待されており、病害虫・雑草防除の分野においても、スポット散布やセンシングデータ等の活用・解析等の様々な技術が開発されているが、実施可能な品目・病害虫が限られているなどの課題があり、現在のところ生産現場に普及しているとは言い難い。
このことから、開発された技術の課題を解析し、技術を横展し、生産現場に実装できる段階までの技術として確立する必要がある。
本研究で得られた成果を活用して、病害虫防除の分野におけるスマート農業を推進する。
■農薬として使用される抗菌剤 ◎
・人の治療に用いる抗菌剤に耐性を有する病原菌が拡大することにより治療に支障を来す、いわゆる薬剤耐性問題は国際的な課題となっている。
2015年5月に世界保健機関(WHO)が薬剤耐性に関する国際行動計画(グローバルアクションプラン)を採択し、関連分野が連携して世界的に取り組むべきとされた。これを受け、我が国でも2016年4月に行動計画(アクションプラン)を策定し、2023年4月の改定を踏まえ、各省庁が取組を推進している。
我が国では人の医療で用いられる抗菌剤と同系統の農薬が登録され、現に使用されているが、人の医療に影響を及ぼす薬剤耐性菌がどの程度出現するかは把握できていない。このため、農薬の薬剤耐性に関する実態調査手法を開発する必要があり、本研究で得られた成果等を活用して、ほ場にて想定される利用条件で薬剤耐性菌が生じるかどうかを検証する必要がある。
また、細菌性病害については、産地では抗菌剤の使用を含む防除体系が確立・普及している一方で、使用可能な農薬の少なさや薬剤抵抗性の発達等による防除の困難さがあるとともに、温暖化等による気候変動を背景として、水稲のもみ枯細菌病等の分布域の拡大、発生期間の拡大等による被害の増大が示唆されている。
さらに、国際的にも化学農薬の使用量低減等による環境負荷の低減への対応が課題となっている中、「みどりの食料システム戦略」に掲げた化学農薬使用量(リスク換算)の低減を図る必要があるほか、農業/植物衛生分野においてもFAOを中心としてワンヘルス・アプローチの考えに基づくAMRへの取組に対する議論が進められようとしている。
このため、AMR対策の観点から、国内における農業分野での抗菌剤の使用実態を把握するとともに、細菌性病害の防除対策の観点から、薬剤感受性検定手法の改良、抗菌剤のみに頼らない総合防除体系の確立に向けた取組を進める必要がある。
■獣医療に使用される抗菌剤 ◎
・抗菌剤は、家畜や愛玩動物の健康を守り、畜産物の安定的な生産や公衆衛生に重要な資材であるが、抗菌剤の不適切な使用による薬剤耐性菌の出現は、家畜・愛玩動物の治療だけでなく、人の治療を困難にする可能性が指摘されている。このような背景から、医療上重要な抗菌剤の獣医療分野における使用を制限する動きが国内外で続いている。 2015年5月の世界保健機関(WHO)
による薬剤耐性に関する国際行動計画(グローバル・アクションプラン)採択および加盟国での国内行動計画(ナショナル・アクションプラン)策定要請を受け、我が国でも2016年4月に行動計画(ナショナル・アクションプラン)が策定された。2023年4月に改定が行われ、新たに家畜に使用される動物用抗菌剤の販売量について、削減目標が設定された。
「みどりの食料システム戦略」においても、「迅速かつ的確な診断手法の開発など抗菌剤に頼らない畜産技術の推進」が明記されている。
抗菌剤の新規開発には膨大なコスト及び時間を要することから、既存の抗菌剤の有効性を確保し続ける必要がある。このため、農林水産省では、抗菌剤の適正使用・慎重使用(※)の徹底や、薬剤耐性菌の動向調査の実施のほか、抗菌剤の使用機会低減のため、感染症予防等を推進しているところである。
※動物用抗菌性物質製剤の慎重使用の考え方
https://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p5.html
このため、抗菌剤の使用機会の低減につながるワクチンや疾病制御技術、抗菌剤の代替となる薬剤、抗菌剤の適正使用に必要な感受性試験の迅速かつ簡易な代替法等の開発が急務となっている。
こうしたことから本研究では、獣医療現場での抗菌剤の使用量や薬剤耐性菌の出現率を低減させる技術開発、抗菌剤や薬剤耐性菌の環境への拡散を低減させる技術開発を行い、その成果を活用して、抗菌剤に頼らない畜産技術及び獣医療の普及を推進し、薬剤耐性対策に取り組んでいく。
■水産動物に使用される抗菌剤 ◎
・抗菌剤は、水産動物の健康を守り、安全な水産物を安定的に生産するための重要な資材であるが、抗菌剤の不適切な使用により、薬剤耐性菌が出現し、水産動物の治療だけでなく、人の治療も困難にすることが懸念されている。
2015年5月に世界保健機関(WHO)が薬剤耐性に関する国際行動計画(グローバルアクションプラン)を採択し、関連分野が連携して世界的に取り組むべきとされた。これを受け、我が国でも2016年4月に行動計画(アクションプラン)を策定し、2023年4月の改定を踏まえ、各省庁が取組を推進してきた。
また、2021年5月に策定された「みどりの食料システム戦略」においても、「ワクチン開発・普及の加速化等抗菌剤に頼らない養殖生産体制の推進」が明記されたところである。
農林水産省では、水産分野における抗菌剤の適正使用の確保のためのリスク管理の徹底や薬剤耐性菌のモニタリング調査などに取り組んでいる。
一方、リスク管理措置の実効性を高める上で、抗菌剤の使用量低減やワクチン等の代替法の開発が急務となっている。
こうしたことから、抗菌剤の使用量や薬剤耐性菌の出現率を養殖水産現場で低減させる技術等を研究・試行し、その成果を活用して、抗菌剤に頼らない養殖水産技術を通じ、薬剤耐性対策に取組んでいく。
■クロピラリドによる生育障害を防ぐための研究
・クロピラリドは、海外で牧草や穀類の生産に使われている難分解性の除草剤の成分である。クロピラリドを含む輸入飼料が家畜に給与された場合、これらの家畜のふん尿を原料として作った堆肥にクロピラリドが残留し、マメ科やナス科等の園芸作物に生育障害を発生させる事例が報告されている。
農林水産省は、飼料及び堆肥中に含まれるクロピラリド濃度の実態調査等や作物の感受性に関する研究等から得られた知見を基に、堆肥製造・販売会社、園芸農家・育苗業者等に対して、クロピラリドを含む可能性がある堆肥の提供や使用に当っての注意事項を指導している。しかし、依然としてクロピラリドが原因と疑われる生育障害の発生事例が確認されている。
今後、クロピラリドによる生育障害の発生を防止するに当たって、更に以下のような知見の収集が必要である。
(1)低コストかつ迅速な堆肥中のクロピラリドの検定法の開発
堆肥中のクロピラリドの検定法には、サヤエンドウを用いた生物検定法や機器分析による方法があるが、生物検定法については1か月程度の時間を要する、機器分析法についてはコストが高いといった課題があり、農業現場への普及が進んでいない。
そのため、低コストかつ迅速に堆肥中のクロピラリドを検出する手法の開発が必要である。
(2)堆肥化過程及び土壌中におけるクロピラリドの分解方法の開発
堆肥を作る過程においてクロピラリドをできるだけ低減させるとともに、土壌中でのクロピラリドの分解を促進させることができれば、クロピラリドによる生育障害の発生の防止につながると考えられるが、現時点での知見は限られている。
そのため、堆肥化過程及び土壌中におけるクロピラリドの分解方法について知見を収集する必要がある。
■農薬登録の際に想定していない栽培方法に係る農薬の残留状況の確認
農薬の適正使用については、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)等により、ラベルに記載されている適用農作物、使用方法等を十分に確認し遵守することについて、農薬使用者への指導を展開しているところ。
一方で、ラベルを遵守して使用したとしても摘果又は間引きなど通常の収穫時期より早期に収穫され、食用に供される農作物や、水稲栽培であっても通常より栽培期間中の入水等の水管理を工夫した直播技術等、農薬登録の際に確認した試験条件と異なる栽培方法については、作物中の農薬の残留濃度等が異なる可能性が生じている。
このため、農薬登録時には想定していなかったが、近年広がりを見せている栽培方法について、実際にその残留状況を確認し、ラベルの記載事項との関係を整理する必要がある。
本研究で得られた成果を活用して、新たな栽培方法を踏まえたラベルの記載内容の見直し、このための農薬の評価方法の策定への活用を検討していく。
■栽培用種苗中の未承認遺伝子組換え体の検査法の開発
海外では新たな遺伝子組換え作物の開発が進展しており、中には日本で未承認の遺伝子組換え作物もある。万が一、我が国に輸入される栽培用種苗に未承認遺伝子組換え体が混入した場合、我が国の生物多様性や、農業生産・食料供給に悪影響が生じ、重大な経済的・社会的な混乱をもたらす可能性がある。
このような中、農林水産省では、未承認遺伝子組換え作物種苗の検査法を開発するとともに、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)に基づき、栽培用種苗の輸入時検査を行っているが、未承認組換え体が混入する可能性がある作物種の輸入等が増えると検査体制がひっ迫する可能性があることから、栽培用種苗中の未承認遺伝子組換え体の迅速検査法の開発が必要である。
また、我が国で承認された系統と未承認の系統が存在するダイズ等の作物種について、各系統に導入される複数の遺伝子を検出する必要があることから、効率よく区別して判定できる網羅的一斉検査法が必要である。
■次世代シーケンシング(NGS)による非ターゲット検出
・配列情報が未知の未承認遺伝子組換え体は、従来のターゲットベース検出法(qPCRなど)では対応困難であり、未知イベントや微小変異を網羅的に検出するためには、次世代シーケンシング(NGS)を活用した非ターゲット検出法が不可欠である。
国内の一部の研究機関では、NGSを用いた食品・種子の遺伝子解析やゲノム編集作物のオフターゲット評価は進んでいるが、遺伝子組換え体検出に適用するための標準化は未整備である。また、バイオインフォマティクス解析基盤は一部の研究機関に限られ、検査機関レベルでの体制は不十分である。国際的にはISO等でNGSの適用に関するガイドライン策定が進行中であり、この動向への対応も求められている。
そのため、NGSを用いた未承認遺伝子組換え体の非ターゲット検出手法の標準化と、検査の現場で活用可能な解析基盤の構築に関する研究が必要である。
■リスクコミュニケーション等に関する研究
食品の安全に関わる情報については、健康への影響が生じないよう、食品の安全に関する正しい情報を適切に伝えることが重要である。
現在、様々なハザードに係る情報等について、WEBサイトやSNS等を活用して発信を行っているところであるが、食品に起因する健康被害をなくすためには、消費者の行動変容に結び付くような効果のある情報発信を行う必要がある。このため、以下の課題に取り組む必要がある。
(1)情報を誰にどのように伝えるか(誰に伝えるべきか、伝えるべき項目、どのような内容をどの程度の詳しさで伝えるか等)を変化させることによって、情報の受け手がリスクの程度をどのように認知するかについての定量的な評価手法の開発
(2)食品安全について、どの程度・どのような内容のリスクであれば国民が許容できるのかについて、例えば、発生する経済的負担等とリスク許容度の関係について、定量的な評価を行い、指標化するための研究
これらの研究が実施されることにより、行政が、科学的根拠に基づく情報発信手法やリスク管理措置の検討・選択を行う際に活用できる。
難易度分類(数字が低いほどコメントしやすい&すべきもの)
| 総合 | 15 並み |
| 難易度 | 2 ★★☆ |
| 生活影響度 | 2 ★★☆ |
| 分量 | 3 ★★★ |
| 専門性 | 2 ★★☆ |
| 理科系知識 | 2 ★★☆ |
| 下調要否 | 2 ★★☆ |
| 法令読込要否 | 2 ★★☆ |
#080525 03.農水省 ①農業


コメント
どんどん有益な法が作成されるのは良いのですが、それが良かったのか、悪かったのかは結果で見るしかありません。結果を見たときにそれが当初予定していた結果なのか、かけ離れている結果なのかを当事者に確認したい。そこで、発案した方の、担当部署名、担当者名を確認できるように記載してほしい。
2026/05/20 04:11 by NO URL 編集