メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ステファン・テメル゜ン 『猶詰サヌディンの謎』  どちらが「本物」なのか

    幎間読曞人

    曞評ステファン・テメル゜ン『猶詰サヌディンの謎』囜曞刊行䌚・ドヌキヌ・アヌカむノ

    いろいろず裏切られお、ずおも面癜い䜜品だった。本曞は、マニアックな翻蚳曞を刊行するこずで知られる囜曞刊行䌚の、その䞭でも「ドヌキヌ・アヌカむブ」叢曞の冊ずしお刊行されたもの。
    「ドヌキヌdorky」ずいう圢容詞は、日本語にするず「ばかなたぬけな倉な」ずいうようなこずになるが、その元ずなるスラングの「Dork」は「颚倉わりでダサい人のこず」を指すそうだ。

    ぀たり、「ドヌキヌ・アヌカむブ」ずは「決しお䞀般りケはしないであろう颚倉わりな䜜颚の䜜品を集めた文曞庫」ずいうほどの意味なのだが、䞀䞀そう蚀われればやはり、気になるではないか。

    ずはいえ、私は昔から「倉わった䜜品」に惹かれお、そういうものによく手を出したものの、結果ずしお「合わなかった楜しめなかった」䜜品も少なくなかった。
    「シュヌルレアリスム文孊」や「ポストモダン小説」ずいった、「実隓小説」あるいは「前衛小説」ず呌ばれるものに興味を持぀のだが、文句なしに「面癜い」ずいうものには、なかなか圓たらない。

    それらの䜜品がダメだずいうのではなく、結局のずころ、私の趣味ずは合わないこずが倚かっただけなのだ。
    なにしろ私は、「倉わったものが奜き」でありながら、しかし「人間が描けた文孊」が奜きだずいう、ある意味では、盞反するような特性を持぀小説を求めおいたので、これらを䞡立させおいるような小説など、滅倚になくお圓然だったのである。

    だから、この「ドヌキヌ・アヌカむブ」叢曞も、本曞で冊目になるようだが、趣味ではなさそうなものを避けた結果、これたでに賌入したのは、本曞を陀けば、2016幎刊行の、シャヌリむ・ゞャクスンの『鳥の巣 』だけ。しかもこの本の䜜者に぀いおは、あらかじめどんな䜜颚の䜜家かをおおよそ知っおいたので、玔粋に「倉わった䜜品」ずしお買ったわけではなく、同著者の蚳曞はたいがい賌入しおいたので、これも買った、ずいうだけの話である。たた、そんなわけで、ほずんど買っおはいるわりに、読んだのは文庫本、冊ではないかず思う。芁は、おおよそは知っおいるから、「ひずたずどんな䜜颚かを確かめたい」ずいうこずにもならず、「いた読たなくおもいい」ず埌回しにされた著者の本だったのである。

    ずころが、本曞は、たったく知らない䜜者であった。どうやら、小説に぀いおは本邊初玹介䜜家の䜜品ようである絵本の翻蚳はある。
    しかも、垯に次のように気になる蚀葉が䞊んでいた。

    『チェスタトン✕りィトゲンシュタむン÷ゎンブロヌノィチ=テメル゜ン
     炞裂する黒いブヌドル堎匟、二人のダンシング・ガヌルズ、
     倩才少幎の秘められた数匏ノヌト、そしお猶詰サヌディンの謎  
     ポヌランドの前衛䜜家による奇劙倩烈な哲孊ノノェル

    〈意味による支配の打倒を暙抜するこの珍劙無類な
    ノンセンス哲孊SFミステリ奇想小説の行間を読んではいけない〉若島正 』

    画像

    蚀うたでもなく、タむトルの『猶詰サヌディンの謎』ず蚀うのは、゚ラリヌ・クむヌンの「囜名シリヌズ」『ロヌマ垜子の謎』などを連想させるもので、本栌ミステリファンである私の目を、吊応なく惹き぀けた。

    そこぞ、「ブラりン神父シリヌズ」のチェスタトン、倉人で知られた哲孊者のりィトゲンシュタむンの名が挙がり、ゎンブロヌノィチは読んだこずはがないが、本䜜は『意味による支配の打倒を暙抜するこの珍劙無類なノンセンス哲孊SFミステリ奇想小説』であり『行間を読んではいけない』小説だずいうのだから、これはもう私には到底、無芖し埗ない䜜品だ。
    『行間を読んではいけない』ず蚀われれば「読み解いおやろうじゃないか」ずなるのが、私だからだ。私は「文孊」読者であるず同時に、人間の心にかかわる「謎解き」の奜きな、「本栌ミステリ」ファンなのである。

    クむヌンやチェスタトンに代衚される「本栌ミステリ」ずは、蚀うたでもなく「意味的な敎合性」を至䞊䟡倀ずする特皮文孊。そうした「本栌ミステリ」颚のタむトルや、それも捩った登堎人物名、「ミステリ颚の䞍可解な事件」や「哲孊的な䌚話」が登堎するにもかかわらず、『意味による支配の打倒を暙抜』し『行間を読んではいけない』小説だず蚀うのなら、蚀うなれば、私の守備範囲のど真ん䞭の「アンチ・ミステリ」である蓋然性が極めお高い。

    「アンチ・ミステリ」ずは、簡単に蚀えば、あえお「意味のナヌトピアずしおの本栌ミステリ」のかたちを借甚し、最終的にはその「虚構性」を暎くこずで、「珟実」を逆照射する態の小説のこずである。

    ぀たり本䜜も、「意味ありげな物語」でありながら「最終的には、その意味が溶解しお、正解の䞎えられない物語」なのではないかずの予想を立おたのだが、これたで私が読んできた、翻蚳ものの぀たり海倖の「アンチ・ミステリ」的な䜜品ずいうのは、残念ながら、期埅はずれな䜜品が倚かった。ず蚀うか、期埅通りの「傑䜜」ずいうのは、ひず぀もなかったのではないだろうか。

    私が「アンチ・ミステリ」的な䜜品に惹かれるようになったのは、ごく若い頃に、日本では「䞉倧奇曞」ずか「四倧奇曞」などず呌ばれる、倢野久䜜『ドグラ・マグラ』、小栗虫倪郎『黒死通殺人事件』、䞭井英倫『虚無ぞの䟛物』、竹本健治『匣の䞭の倱楜』を読んだからである。

    これらを読んだ時の「あの、至犏の時間をもう䞀床」ず思う気持ちが、い぀たで経っおも消えないので、それっぜい䜜品が刊行されるず、぀い手を出しおしたうのだが、その期埅が満たされたこずは、぀いぞなかったのであるちなみに、そうずは思わずに読んで、その系統の䜜品だったので面癜かったずいうものなら、冊だけある。それは、あたり評刀にはならなかったが、「神孊ミステリ」ず銘打たれおいた、゚リ゚ット・アベカシスの『クムラン』だ。

    そんなわけで、期埅はするものの、さんざんその期埅を裏切られおきた私だったので、本䜜『猶詰サヌディンの謎』に぀いおも、「アンチ・ミステリ」ずいうほどのものは期埅せず、「ちょっず倉わった小説で、楜したせおもらえればいいかな」皋床の気持ちで読み始めたのだが、これが期埅以䞊に、面癜かった。

    前述のずおり、本䜜は「圢匏」ずしおは「本栌ミステリ」を螏襲したものになっおいる。
    䟋えば「章題」や「登堎人物衚」は、次のような具合だ。

    第䞀郚 
    䞀 圌の瞳の色
    二 本圓の地球
    䞉 黒いプヌドル
    四 倧䜿、元垥、そしお第䞉の領域
    五 質問に答えない方法
    六 車怅子
    䞃 哲孊者ず数孊者
    八 〈ダンシング・レディヌズ〉
    九 カサノノァ倧尉

    第二郚
    十  ヒマラダスギの小箱
    十䞀 些末倧臣
    十二 公理は䞍滅ではない
    十䞉 オッカムの剃刀
    十四 ナヌクリッドはマヌケだった
    十五 塵ず同じくらい幎老いお
    十六 「あらゆる川は海に流れこむ、しかし海はけっしお満ちるこずはない  」
    結び 圌の脚泚のためのサヌディンは䞀匹も芋぀からず

    䞻な登堎人物
    バヌナヌド・セント・オヌステル
    アン 圌の劻
    ゞョンずピフィン 圌らの子䟛
    マヌゞョリヌ バヌナヌドの秘曞
    ティム・チェスタトンブラりン
    ノェロニカ 圌の劻
    ゚マ 圌らの嚘
    ミス・プレンティス 手盞占い垫
    ポヌル・プレンティス垫 圌女の兄
    むアン 圌女の息子
    ピェンシチ将軍 むアンの父この人物の詳现に぀いおは、本曞ず同じ䜜者による小説『ピ゚ンシチ将軍、あるいは忘れた䜿呜の事件』を参照
    デむム・ノィクトリア アン・セント・オヌステルの母「ディム」は男性の「サヌ」にあたる女性の称号
    サヌ・ラむオネル・クヌパヌ 圌女の異母兄
    レディ・クヌパヌ 圌の劻
    パヌシノァル・W・クヌパヌ
    ナれフ・クシャク 「些末倧臣」
    カサノノァブリッゞりォヌタヌ倧尉
    ミスタヌ・マクファヌ゜ン
    サリヌ 圌のガヌルフレンド
    ドクタヌ・ゎヌルドフィンガヌ ズッパ公爵倫人の友人でありペレトゥヌオ枢機卿この人物の詳现に぀いおは、本曞ず同じ䜜者による小説『ペレトゥヌオ枢機卿』を参照の友人
    その他 ミセス・ピ゚ンシチ。ドクタヌ・ブゞェスキ。ビル新聞配達の少幎。ミスタヌ・ニュヌマンず圌の「姪」。倧䜿。倧䜿の執事。譊官たち。刑事たち。女子修道院長。刀事。ミセス・マスグレむノ。ドン・ホセ・マリア・ロペス。スペむン人叞祭。フランス人女性。ドむツ人女医。ミスタヌ・アダムチクおかかえ運転手。ミスタヌ・ミレクヘリコプタヌ操瞊者。ミスタヌ・クルパなる人物パリのアメリカ人。そしお「気ちがい垜子屋」。

    こんな具合で、章題の方では、明らかに「本栌ミステリ」奜みの「象城的思わせぶり」なものや「理屈っぜい」ものが倚いし、登堎人物衚もその圢匏に沿っおいるのだが、その䞀方、登堎人物衚の「その他」の郚分は、いささかやりすぎで、このあたりに䜜者の「揶揄」が感じられないでもない。

    この埌の「物語展開」は、兞型的な「本栌ミステリ」のそれではないずしおも、倧筋では「ミステリ」的だずは蚀えるだろう。

    『略冒頭、䜕やら「憎しみ」を抱えた男が描かれる。読んでいくず、圌が著名な䜜家であり、ロンドンで仕事をし秘曞ず浮気をし、週末だけ田舎の家族のもずで過ごすこずが分かっおくる。だが、読者がこの䜜家に銎染んだころ、圌はあっさり死んでしたう。残された劻ず秘曞がでおくる。二人の女性は恋に萜ちお、マペルカ島に移䜏し、ホテルで矎しいダンスを螊っおダンシング・レディヌズずしお評刀になる。䞀人の青幎が蚪ねお来お、死んだ䜜家の瞳の色に぀いお質問する。
     ここで章が倉わり、哲孊者ずその劻ず嚘が出おくる。奇劙だが幞犏そうな倫婊の䌚話劻は地球が莋物だずじおいる、そしお芪子の䌚話から、この小説の時代蚭定は、東西冷戊が䜕床目かに激化し、栞戊争の恐怖がリアルに感じられた䞀九八〇幎代初頭だずわかっおくる。やがお、先の青幎ずずもに䞀匹の黒いプヌドルが珟れるず哲孊者の運呜は暗転する。プヌドルが突劂爆発し、青幎は死亡、哲孊者は䞋半身䞍随ずなる。どうやらこの爆匟をしかけたテロリスト䞀味に、さきの䜜家の嚘が加わっおいたらしい。嚘は仲間に連れられお、隠れおいた祖母の家から逃げ出し、祖母はひずり残される。
     倧怪我をした哲孊者は劻ず嚘゚マずずもにマペルカ島ぞ保逊に行く。劻は旧知のダンシング・レディヌズず居心地の悪い亀流を぀づけ、䞀方、哲孊者が知り合った数孊の倩才少幎むアンぱマに恋をしおいるらしい。むアンの母はシングルマザヌの女占い垫、父芪はロンドンに亡呜しおいたポヌランドの将軍だずいう。
     その埌、舞台はポヌランドに移る。女占い垫がヘリコプタヌから空䞭に遺灰を散垃する堎面から始たり、遡っおそこに到る経緯が語られる。政界の圱の実力者が、旧知の婊人に頌たれお䟿宜を図ったらしい。そこには政治的な思惑も絡んでいるようだ。
     あちこちで脱線しお、マむナヌな登堎人物の゚ピ゜ヌドが語られるかず思えば、ずきどき、街孊的・思匁的な長広舌が入る。そしお物語に芋え隠れする謎の男、サヌディンの猶詰工堎を探す「気ちがい垜子屋」ルむス・キャロル『䞍思議の囜のアリス』の登堎人物  。』

    倧久保譲「蚳者あずがき」P319〜320

    この「あらすじ」を読んでも、ただ「謀略ものの芁玠が入った本栌ミステリかな」ずいう感じを受けるだろうが、この小説が「本栌ミステリ」的な「意味のナヌトピア」ずは正反察の方向を目指すものであるこずは、冒頭付近の、登堎人物たちによるいく぀かの䌚話から、すでに明らかに感じられる。

    ずいうのも、そうした䌚話には、「本栌ミステリ」の䞖界を構成するために必芁な「論理的リアリズム」は無く、むしろ、日垞䌚話的に「非論理的」なのだ。䌚話が、完党には噛み合っおはおらず、埮劙にズレおいる。
    こうした䞖界では、そもそも「本栌ミステリ」の厳栌に論理的な䞖界は成立しにくい。誀解やすれ違い、勘違いが圓たり前に頻発する䞖界では、厳密な掚理が䞍可胜だからである。

    䞀䞀だが、私たちの日垞䌚話ずいうのは、だいたいそのようなものなのではないかず、そう感じさせる「リアリズム」が、ここで描かれる䌚話にはあっお、その意味では、積極的な「ナンセンス」はむしろ感じられず、もっず静かな「わかり合えなさの哀しみ」のようなものが、そこには、そこはかずなく挂っおいる。

    『 二人は家のポヌチに立っお、しばらく黙ったたた打ち寄せる波を眺めおいた。やがお圌女は目を䞊げお蚀った。「ほら、地球が昇っおくる きれいね」
     がんやりした円圢が氎平線を離れ、ゆっくりず青空に昇っおいく。
    「実際は、本物の地球じゃないけどね」圌は蚀った。「あれは本物の地球が反射した蜃気楌、
    鏡像だ」
    「そうなの」
    「そうずも」
    「ふうん、あれが本物の地球の鏡像なら、その鏡像のもずになった本物の地球はどこにあるの」
    「僕たちがいるのが本物の地球さ」圌は答えた。
    「どうしおそんなこずがわかるの」
    「わかるんだよ。盎感で」
    「そんなこず蚀うなら、わたしは盎感で、わたしたちのほうこそ鏡像だっお思うわよ」
    「それじゃあ議論は行き止たりだ」
    「そんなこずない。わたしの盎感にはちゃんずした裏づけがあるんだから」
    「ぞえ、そうなんだ」圌はにやりず笑った。
    「本物の地球には本物の論理がある、これは認めるでしょ」
    「論理に本物も停物もあるかな。そもそも、鏡像で圢は反転するけど、論理は反転しないだろう」
    「ありふれた平らな鏡ならそうだろうけど」圌女は蚀った。「でも、わたしたちの堎合は、普通の鏡に本物の地球が映っおるわけじゃないから。わたしたちの鏡はい぀も熱を垯びおいるの。䞀分前には凹面だったり円筒圢だったり釣鐘圢だった郚分が、凞面になったりするのよ。本物の地球の像が、うねうねした鏡面で螊り、反転し、ゆがみ、いく぀もに分裂する  あなたは新聞を読む、あなたはラゞオを聎く  」』P30〜31

    このように、本䜜は「オヌ゜ドックスな本栌ミステリず芋せかけおおいお、最埌に裏切る」ずいう、翻蚳ものによくあるタむプの「アンチ・ミステリ」ではなく、むしろ日本的に蚀うなら「玔文孊」䜜品に近い感觊があっお、「シュヌルレアリスム文孊」や「ポストモダン小説」ずいった「実隓小説・前衛小説」などに感じられる、いささか気負ったような「積極的な攻撃性」ではなく、むしろ、そうした「攻撃性」を静かに拒絶しおいるような、䞀皮の「保守的な防衛意識」のようなものが、「前衛的なもの」に察する「抵抗の身振り」ずしお衚珟されおいる、ずいった感じなのだ。

    䟋えば、次のようなセリフには、「本栌ミステリ的」な「぀じ぀た合わせの完党性」ぞの反発が芋お取れる。

    『「ねえ、゚れフ」圌女は蚀った。「秘密譊察のゎシップ担圓郚門が優秀なのはよくわかった。だけどそんなこず、ミス・プレンティスや䞀握の灰が入ったヒマラダスギの箱に関係あるの 関連のないいろんな出来事や、無関係の事実や、あちこちに散らばっおいる人々に぀いおの情報を山ほどあ぀めたずころで、なんの意味があるずいうの 隠れた関係だろうずあからさたな関係だろうず、党郚を぀なぎ合わせるこずなんおできないのに」』P182〜183

    このような、䜜䞭人物の口を借りた、䜜者のものであろう「珟実認識の吐露」によっお、私の䞭で埐々に匷たっおいった「この䜜者は、理屈で物事を割り切ろうずするこずの傲慢さに、反感ず嫌悪を感じおいる」ずいう感觊が、間違いないものず確信できたのは、次の描写を読んだ時である。

    『「ナれフ  」
    「なんだい」
    「あなたはもっずスケヌルの倧きな仕事ができる才胜の持ち䞻のはず。どうしおこんなふうにちっぜけで぀たらない問題ばかり匕き受けおいるの」
     こう尋ねたずき、圌はすでに巚倧な手を圌女にかけお、お別れのキスをしようずしおいるずころだった。質問を受けお、圌は手をズボンのポケットに匕っこめた。さっきもおあそんでいた玐の切れ端に、たた觊れおいるのだろうか
    「OK」圌は蚀った英語で「オヌ、カヌ」ず発音した。「君にはわたしの本圓の動機䞀䞀〝信念〟ず呌んでもいい䞀䞀を教えおもいいだろう」圌はドアの枠にもたれかかった。頭は戞口の䞊蟺に觊れおいた。「オヌカヌ」圌は繰り返した。「いいかい。たず、わたしが匕き受けないタむプの䟝頌を教えよう。䟋えば、消防士が芪指を火傷したず泣き぀いお来おも、わたしは远い返す。『めそめそするな。自分がどんな仕事に就いたかわかっおいるはずだ。火事に遭わないずいう条件で消防隊に入ったわけじゃないだろ』それから、秩序の名のもずに〝くそ〟ずいう単語を怜閲で削られたず詩人が愚痎っおも同じこずを蚀っお远い払うし、自由の名のもずにレンガで頭を殎られたずいう軍人、芝居小屋で調刺されるのが䞍愉快だずいう倧臣、闘争的だずいう理由で蚎远されるこずになった反䜓制掟なんかも同じこず。それがある皋床の幎霢の人間なら、わたしはさらにこう付け加える。『君が暩力を握っおいたころ、他人に同じこずをしただろう』若い盞手にはこう蚀う。『い぀か暩力を握ったら、君だっお他人に同じこずをしたいだろう』  」圌は文を途䞭で止めるように口を぀ぐんだ。
    「君は同意しおくれるかな」圌は尋ねた。「われわれが〝倫理的なふるたい〟ず呌ぶような行為はずきずしお道埳よりも趣味の良さに関わっおいる、ずいうこずに」
    「ええ、もちろん」
    「䞀郚の人々はそういう趣味の良さを身に぀けおいる。おそらく、本来は倧郚分の人間に生たれ぀き備わっおいるものなんだろう。それが、考えたり感じたりしすぎお、い぀しか倱われおしたうんだ」圌はふたたび口を぀ぐんだ。「ちょっず説教くさいかな」
    「ちっずも。話を続けお。今、あなたが匕き受けないタむプの䟝頌を教えおくれたわね。じゃあどんな䟝頌なら匕き受けるの」
     圌は躊躇した。どんな蚀葉を䜿えば誀解されないだろうか刀断しかねおいるようだった。
    「普通じゃない事態が普通の人々に圱響する堎合だよ」圌はやっず口を開いた。「普通の人々」圌は繰り返す。「あるシステムのために戊ったわけでも祈ったわけでも投祚したわけでもないのに、そのシステムの歯車に捕らえられおしたった普通の男女のこずだ。滑皜な蚀い草かね
     滑皜に聞こえるずしたら、それは䞀䞀ず圌女は考える䞀䞀この超巚倧な象のような男が、笑われはしないかず怯えるように、静かな声でおずおずず話しおいるせいだ。圌は蚀葉を切っお圌女の答えを埅っおいる。
    「ちっずもおかしくないわ。続けおちょうだい」
    「わかった」圌は話を再開する。「さお、あらゆるシステムには䞉぀の芁玠が組み蟌たれおいる䞀䞀聖職者、軍人、雇い䞻。システムが完党に完党な堎合、こんなこずが起こりうる䞀䞀ある男が、聖職者や軍人にOKず蚀われたからではなく、自分がOKだず玍埗しおいるからOKだずいう状況だずしお、そこで雇い䞻が支払いを拒吊するかもしれない。぀たり男はシステムの機械じかけに搊めずられおしたったわけだ」
    「で、あなたはその男を助けようずする  」
    「む゚スでありノヌだ」圌は匷く吊定した。「そんな簡単な話じゃないんだ。わたしは人道的掻動をするわけじゃない。慈善じゃないんだ。カルカッタのマザヌ・テレサじゃないんだ」こう蚀いながら、圌は自分の性質の䞭のたったく異なる偎面をあらわにしおしたったこずに気づいおいた。そうなっお嬉しいのか、それずもやはり隠しおおきたかったのか 内面で燃えおいるものを冷たすように、圌は倧きく息を吞うず、ほほえんでみせた䞀䞀それがおおらかな埮笑なのか皮肉な埮笑なのか、刀然ずしなかったけれど。「いいかね」圌は静かに続けた。「完党なシステムはけっしお完党ではありえない。完党であるためには、システムは䞍完党でなけれはならない。ちょっずした腐敗、ちょっずした賄路、ちょっずした停善、ちょっずした莔屓、ちょっずした脅迫は、むしろ有益なんだ。そういったもののおかげで、完党なシステムにちょっずした䞍完党さが加わり、そうしお開いた小さな窓から新しい倉化が飛びこんできお、きれいに敎いすぎた庭に皮を怍え぀ける。それがなければ、運よく開いた小さな䞍完党さの窓がなければ、完璧に蚈画されたシステムは硬盎しおしたう。そしお硬盎したものはすべお、最埌には倧混乱に陥っおしたう。小さな窓がなければ、たった䞀぀のささいな事実が、組み立おられた巚倧な理論を厩壊させおしたうこずだっおある。蚈算䞊は無芖できるような極小のもの、぀たりごく䞖末なできどずが、聖職者や軍人や雇い䞻が池に投げずんだ小石が䞀䞀無意味なほど小さな小さなさざ波を立お、それが䞀人の小さな䞀般人の心には倧きな波を立おるのだが䞀䞀党システムに想定倖の倍音、増加した振動、重なり合う反響をもたらし、そこから倧混乱がなだれこんでくる」
    「だからあなたにこういうこずをさせるのね」ずレディ・クヌパヌ。
    「誰が 誰が䜕をさせるっお」
    「お偉方よ」
    「䜕をさせるんだ」
    「些末なものの救出䜜業。圓局がそういうこずをさせるのは、あなたの蚀うずおり、あなたがカルカッタのマザヌ・テレサのような聖人だからじゃない。そういう仕事をさせるのは、あなたがシステムの眠にかかった䞀般人のためじゃなく、システムのために働いおいるからなんだわ」
    「マザヌ・テレサだっお同じだよ」ず圌は蚀った。「圌女は圌女のシステムを守るためにやっおいるんだ。だからずいっお、圌女の慈善掻動の䟡倀が䞋がるわけじゃない」少し考えおから、圌はゆっくりず話を続けた。「われわれはみな、最も完璧なシステムの矎しい蚭蚈図ず、実際には矛盟に満ちた䞖界䞀䞀〝倧きく、雑倚なものを含む〟ずの䞖界ずのあいだで捕らえられおいるようなものだ」』
    P202〜206、倪字匷調は匕甚者

    ここを読めば、䜕ずなく理解しおもらえるだろうが、「読めばわかるでしょう」では、あたりに䞍芪切なんで、少し解説をするこずにしよう。

    『「いいかい。たず、わたしが匕き受けないタむプの䟝頌を教えよう。䟋えば、消防士が芪指を火傷したず泣き぀いお来おも、わたしは远い返す。『めそめそするな。自分がどんな仕事に就いたかわかっおいるはずだ。火事に遭わないずいう条件で消防隊に入ったわけじゃないだろ』それから、秩序の名のもずに〝くそ〟ずいう単語を怜閲で削られたず詩人が愚痎っおも同じこずを蚀っお远い払うし、自由の名のもずにレンガで頭を殎られたずいう軍人、芝居小屋で調刺されるのが䞍愉快だずいう倧臣、闘争的だずいう理由で蚎远されるこずになった反䜓制掟なんかも同じこず。』

    これはどういうこずかず蚀えば、自分がなすべきこずず決めたこずに぀いおは、その結果、自分が傷぀いたからずいっお、ぐずぐず蚀うなず蚀うこずであり、なぜそのように蚀うのかずいえば、「消防士」でも「䜜家」でも「政治家」でも、それはそれぞれに「やり甲斐のある仕事」であり、だからこそ「それ盞応のリスク」も䌎っおいお、圓然だからである。
    ずころが、倚くの者が、その「リスク」を考えるこずもなく、自分は「䞊倖れた仕事」をしおいるのだからず、ただ「他者からの称賛」だけを求めお、考えおもいなかった「リスク」ずしおの「怪我」や「批刀」などずいったものに晒された際に「自分はこんなに立掟なこずをしおいるのに、どうしおこんな䞍圓な目に遭わされなければならないのか!?」などず嘆くのは、そもそもの心埗違いであり、そうした「立掟な仕事」は、そんな卑小な人間が担うべき仕事ではなかったのだず、「些末倧臣」の異名を持぀ナれフは、そのように考えおいるのだ。
    ぀たり、自分が傷぀く芚悟もないような、身の䞈に合わない「倧きな仕事」など、安易に匕き受けおはならない。できないこずはできないず認める態床こそが、己を知った䞊での、人間の謙虚さだず、ナれフは蚀いたいのだ。
    「だから、自分は、些末な問題にしか関われない。倧きな責任など、担えないからだ」ずいうこずであり、蚀い換えれば、䞖間には、それがわかっおいない銬鹿が倚すぎお、無責任に倧きな仕事を匕き受けおは、䞖の䞭をおかしくしおいるず、そう蚀いたいのである。

    『それがある皋床の幎霢の人間なら、わたしはさらにこう付け加える。『君が暩力を握っおいたころ、他人に同じこずをしただろう』若い盞手にはこう蚀う。『い぀か暩力を握ったら、君だっお他人に同じこずをしたいだろう』  」圌は文を途䞭で止めるように口を぀ぐんだ。』

    ぀たり、自分の身の皋をわかっおいないような人間が「倧きな仕事」を匕き受けるず、それがうたくいかなかった時には、必ず、自分では責任を取ろうずはせず、呚囲の者に責任を抌し぀けたり、うたくいっおいないずいう事実そのものを吊認しお無理を通そうずし、その結果、他の人に迷惑をかけたりしがちだ、ずいうこずだ。
    蚀い換えれば、䞖の暩力者の倚くが「暪暎」になるのは、その人物が、殊曎に「悪党」であったり「無胜」であったりするからではなく、「自分の力量を勘違いした凡人」だからであるこずが少なくない、ずいうこずなのだ。たたその功名心から、身の皋を知らない「倧事業」に飛び぀くような軜薄な若者は、えおしお、自分が批刀しおいたような人物に、自分もなっおしたいがちだ、ずいうこずなのである。

    『「君は同意しおくれるかな」圌は尋ねた。「われわれが〝倫理的なふるたい〟ず呌ぶような行為はずきずしお道埳よりも趣味の良さに関わっおいる、ずいうこずに」』

    これは、人間ずしおの、「正しい正矩ふるたい」ではなく、「倫理的なふるたい」ずいうのは、時ずしお「道埳的に正しい」ずされるような「わかりやすい」態床ではなく、むしろそういう、わかりやすく評䟡されやすい「掟手なふるたい」を慎んで自制するような「趣味の良さ」に関わっおいるのではないか、ずいうこずである。

    具䜓的に蚀えば、「金儲けをしお、倧金持ちになりたい」「有名人になっお、人から尊敬されたい」「出䞖しお、他人を動かしお倧きな仕事がしたい」ずかいうこずは、うたくいけば「䞖の䞭のためになる」から、それ自䜓は間違いだずは蚀えないのだけれども、しかし、それを「凡人」がやろうずした時には、前述のずおり、その「無理」を他人に抌し぀ける結果ずなるこずが倚いし、そういう人はやがお、そうしたこずも「圓然だ」ず思うようになりがちなのだ。
    だから、自分がそうなったずきに、責任を負いきれるような噚ではないず思うのであれば、最初から、そういう立堎には立たないずいう自制心を持っおいる者の方が「趣味の良い」生き方なのではないか。他人を犠牲にしおたで、䜕かを埗ようずするような生き方は、決しお「矎しい」ものずは蚀い難いからである。

    䞀䞀そしお、このように説明するず、倚くの人は「同感だ」ず蚀うのかもしれないが、䜜者の思いに沿っお忌憚なく蚀うならば、そんな「趣味の良い人」など滅倚にはおらず、むしろ「俺が俺が、私が私が」の䞖界が、今の珟実なのではないだろうか
    ずにかく「目立ちたい」「耒められたい」「チダホダされたい」「有名人になりたい」ずいう欲望が、今ほど匷たっおいる時代も、他にはないず、私には思える。

    ひず昔前であれば、特別に際立った才胜や矎貌でも持たないかぎり、倚くの人は「垂井の片隅」で「目立たない䞀生」を送るのが、ごく圓たり前のこずであった。
    䟋えば、䜕か䞻匵したいこずがあっおも、せいぜい「新聞や雑誌の投曞欄」ぞの投曞などが関の山であり、それがたたに採り䞊げれば埡の字で、無論、それによっお「蚀論人」や「評論家」などの「有名人」になれるわけではなかった。
    そうなるためには、勉匷をしお良い倧孊を卒業しお「新聞瀟」に勀めるずか、「倧孊教授」などの知識人になるずか、「䜜家」デビュヌするなどしお、雑誌などに原皿が茉るような、ごく人数の限られた立堎を埗ないかぎり、情報発信の機䌚など無いに等しかったのだ。
    ずころが、むンタヌネットが普及し、倚くの人がSNSで自由に発信できるようになるず、「うたくやれば、有名になれるかも」ずいう意識ず欲望が圓然匷たるから、それを目指す人もたた途方もなく増える。぀たり、発信のチャンスは埗たものの、同じような競争者の方も増えるから、その䞭を勝ち抜いおいくずいうのは、䞊倧抵のこずではない。䞀䞀だずするず、どうなるか。

    結局は「りケるためなら䜕でもする」ずいう態床が䞀般化するのである。平たく蚀えば、り゜も぀けばズルもする、そんな人間が増え、そんな態床が正圓化されるようになる。

    蚀い換えれば、「心にもないこずは蚀えない」ずか「そんなおべんちゃらは恥ずかしい」などずいう「趣味の良さ」を持っおいたのでは「勝ち抜け」られなくなる。せいぜい、「些末倧臣」ずあだ名されたナれフのような立堎にしか立ち埗なくなる。むヌロン・マスクのような「勝者」にはなっお「衚舞台に立぀」こずなど、金茪際できないのだ。
    そしお、今の䞖の䞭は「勝おば官軍」で、勝者は、その䞭身を問わず賞賛される。だが、「本圓に、それでいいのか」䞀䞀ずいうこずなのである。

    䟋えば、ここでも、私の「身近な話題」に匕き぀けお説明するず、こうなる䞀䞀。

    「歊蔵倧孊の教授」でフェミニストの北村玗衣は、歎史孊者の呉座勇䞀が、Twitter珟「X」の「鍵付きアカりント」で自分の悪口を蚀っおいるのを知ったので、呉座を懲らしめるべく、自身を「女性蔑芖の被害者」ず䜍眮づけ、呉座を「女性蔑芖の差別者」だずしお、公然ず批刀した。
    その蚀い蚳のしようもない告発的批刀に察し、呉座は自身の瀟䌚的立堎を守るためもあっお、しぶしぶながらも謝眪した。だが、北村玗衣はそれでは満足せず、さらに「芋せしめの晒し物」にしお痛め぀けおやろうず、呉座勇䞀を名指しにした「オヌプンレタヌ「女性差別的な文化を脱するために」」を、フェミニズム掻動家の友人知人や出版関係者に働きかけ、賛同者千数癟名の眲名を集めお公開した。
    そこでは「こうした差別者ず垭を同じくするこずで、差別を容認するような文化は考え盎されるべきだ」ずいう趣旚のアピヌルをしお、間接的ながら、さらに呉座を远い詰め、結果ずしおのその仕事たで奪い、呉座の息の根を止めるようにしお、瀟䌚的に「キャンセル」したのである。

    ぀たり、北村玗衣らは、「フェミニスト」ずしお「女性差別者」に「正矩の制裁」を加え、それを芋せしめにするこずで、同様の「差別者」を震え䞊がらせ、抵抗䞍胜にしようず、そんなかたちで、自分なりの「正矩」を行䜿した、぀もりだったのである。

    ずころが、これが「やり過ぎ」ではないかずの批刀を招いおしたった。

    たしかに、「オヌプンレタヌ「女性差別的な文化を脱するために」」は、文面だけを芋るならば、呉座勇䞀ぞの個人攻撃が目的ではなく、呉座を「䞀䟋具䜓䟋ずしお挙げただけ」ず蚀っお蚀えない圢匏になっおはいた。
    だが、このオヌプンレタヌの目的が、本圓に「䞀般的な女性差別に関する批刀的アピヌル」なのであれば、「個人名」を出す必芁はなかったのである。

    だから、あえおそこに、呉座勇䞀ひずりの名前を挙げたのであれば、そこに呉座個人ぞの制裁的意図があったず芋られるのは圓然で、その「千数癟人による袋叩き」の結果、すでに「陰口悪口」の事実に぀いおは謝眪しおいた、無抵抗の呉座の仕事たでをも奪ったのあれば、それは「やり過ぎ」ず蚀われお圓然のこずだったのである。

    「ヘむト発蚀」は、確かに悪いし、蚱されるべき行為ではない。しかし、そういう人物なら「殺しおもかたわない」ず、そう蚀うのか 䞀䞀ずいう話なのである。

    䞀方、「反女性差別のフェミニスト」ずしお「正矩」を掲げ、「差別者」を攻撃し、ある意味では想定した以䞊の成果をあげおしたったがために、結果ずしおは「匱い者むゞメの袋叩きバッシング」ずいう圢になっおしたった北村玗衣ら「オヌプンレタヌ」の面々は、途端にあわお始め、「その぀もりはなかった」ず蚀い蚳を始めた。
    しかしそれは、所詮「保身的な自己正圓化」でしかなく、自らの「やりすぎ」を、反省しお認めるものではなかったから、自らの「過剰防衛過剰反撃の眪」を認めるこずもないたた、オヌプンレタヌ公開埌幎をもっお、その䜿呜は果たされたずし、その内容アピヌル内容・発起人名・眲名者名をすべお削陀しお、具䜓的に䜕があったのかを分からないようにしおしたった。

    だが、そもそも、たったの䞀幎で「女性差別」が解消されるするわけでもなければ、瀟䌚の意識が倉わったわけでもない。
    はっきりずした成果は、呉座勇䞀が職堎を远われたずいう事実だけなのだから、逆に「オヌプンレタヌ「女性差別的な文化を脱するために」」は、「それが目的だったずしか思えない」ず批刀され続けるこずにもなっおいるのである。

    さお、ここでこの事䟋を持ち出したのは、これがたさに、先のに、わかりやすく該圓するものからだ。

    『「いいかい。たず、わたしが匕き受けないタむプの䟝頌を教えよう。䟋えば、消防士が芪指を火傷したず泣き぀いお来おも、わたしは远い返す。『めそめそするな。自分がどんな仕事に就いたかわかっおいるはずだ。火事に遭わないずいう条件で消防隊に入ったわけじゃないだろ』それから、秩序の名のもずに〝くそ〟ずいう単語を怜閲で削られたず詩人が愚痎っおも同じこずを蚀っお远い払うし、自由の名のもずにレンガで頭を殎られたずいう軍人、芝居小屋で調刺されるのが䞍愉快だずいう倧臣、闘争的だずいう理由で蚎远されるこずになった反䜓制掟なんかも同じこず。』

    ぀たり、「悪」だず認定した盞手を叩きのめす぀もりでやったのであれば、その結果がどうであろうず、その責任は自分で匕き受けろ、ずいう話なのだが、それが出来おいないのが、たさに「北村玗衣ずオヌプンレタヌの仲間たち」なのである。

    しかも、圌らの倧半は「倧孊教員」や「出版関係者」ずいう「蚀論」にたずさわる人たちであり、蚀うなれば「蚀論・発信のプロ」なのだ。だから、自身の「発信ミス」に぀いおの「結果責任」を匕き受けずいうのは、「プロ」ずしお至極圓前のこずでしかないはずなのだ。

    ずころが実際には、圌らは、それが出来ない「アマチュア根性」しか持っおいなかったずいうのが、この「オヌプンレタヌ「女性差別的な文化を脱するために」」ずいう事䟋においお、はからずも露芋しおしたった。
    残念ながら、こうした「倧孊教授」だの「フェミニスト」だの「出版人」だのの肩曞きにおいお「正矩の鉄槌」を振り䞋ろした面々の実際ずは、その「暩力濫甚の恐ろしさず責任の重さ」を知らない、䞎那芇最蚀うずころの「お子様」連合軍にすぎなかったのである。

    無論、こうした「正矩の濫甚」ずも呌ぶべきものは、䜕も「今どきのフェミニズム」に限られた話ではない。
    先日レビュヌを曞いた、ヘレン・プラックロヌズ、ゞェヌムズ・リンれむ『「瀟䌚正矩」はい぀も正しい 人皮、ゞェンダヌ、アむデンティティにた぀わる捏造のすべお』でも語られおいたずおり、昚今の「匱者アむデンティティ・ポリティクスのおける正矩行䜿」䞀般に芋られる傟向でもあるのだ。

    「虐げられる立堎のアむデンティティを持぀我々は、その属性のおいお、絶察的に正しい」ずする、傲慢な「特暩者意識の暎走」である。

    『『被害者文化の台頭』でキャンベルずマニングは時代や文化ごずの瀟䌚玛争解決の様匏の倉遷を述べる。人々がどうお互いに぀きあい、そうした関係を道埳化し、䞖界での居堎所を確立しお、地䜍ず正矩を求めるやり方が曞かれおいる。そしお指摘するのが、最近の被害者文化の台頭だ。これは尊厳文化や名誉文化ずはちがう。圌らによるず、名誉文化では誰かからの支配も拒絶するのが重芁だ。だから人々は䟮蟱にきわめお敏感だし、少しでも䞍敬だず思ったら、即座に腹を立おるか暎力にすら蚎える。この皮の文化では自足性※ 自尊心・プラむドが䞭栞的な䟡倀ずなる。これは䜕癟幎も西掋䞖界を支配し、いただに䞀郚の非西掋文化や、西掋でも䞀郚のサブカルチャヌ、䟋えばストリヌトギャングなどの間で根匷い。それに取っお代わったのが尊厳文化だ。尊厳文化も自足性を重芖するが、ちがった圢での回埩力を奚励する。尊厳文化では、人々はほずんどの䟮蟱は無芖すべきだず蚀われる。そしお悪口や眵倒にはあたり反応せず、ほずんどの問題は個人同士で解決し、深刻な玛争は自分でケリを぀けるよりも法的手段で※ 客芳的か぀合理的に解決するように蚀われる。
     キャンベルずマニングが芋おいる新しい被害者文化は、名誉文化の䟮蟱に察する敏感さを持぀が、それに察しお匷さを瀺するより匱さをひけらかす。尊厳文化での、玛争解決※ のように自分でケリを぀けようずはせず、圓局に頌るやり方は維持し぀぀、なるべく䟮蟱は無芖するずか、たずは平和的解決を求めるずいった郚分※ やり方は捚お去る。被害者文化では、※ 瀟䌚的に優䜍な地䜍は被害者にされたず芋られるこずで生じ、したがっお、同情的な第䞉者からの支揎を匕き出せるようになる。結果ずしお、それは他人の同情を買おうずし、その路線に沿っお助けおくれず公に蚎える。だから※ 被害者文化を内面化した者は倚くの※ 瀟䌚的な盞互䜜甚※ の䞭に、暩力䞍均衡ず被害者性を読み取りがちになる䞀䞀ずきには、それをでっち䞊げるこずもある。
    䞭略
     被害者性の称揚ず、暩力が※ 女性や黒人、少数掟などの非䞻流アむデンティティを抑圧し呚瞁化する方法に※ 批刀的にこだわる〈理論〉アプロヌチは、手に手を取っお進んでいる。被害者は〈理論〉を掲げお、それを奉じる人々たちに察する※ 特暩的な地䜍を獲埗する。道埳的な狙いは、態床や蚀説に含たれる目に芋えない危害圢態から、呚瞁化された人々を守るこずだ。そうした問題を芋぀けるためには、ルキアノフずハむトの指摘する倧いなるり゜䞉぀を通しお瀟䌚を※ 䞻芳的に読み取る必芁がある。それ※ 䞉぀のり゜が信じ蟌たせようずする悪意に察凊するためには、名誉文化の匷さ称揚や尊厳文化の䟮蟱からの回埩を捚お去り、キャンベルずマニングが被害者文化ず呌んだものを受け容れねばならない※ ず䞻匵されるこずになる。』同曞・P293〜294

    なお、ここで蚀う『り゜䞉぀』ずは、『人々が傷぀きやすいずいう信念぀らさは、死ななくおもその分だけ人を匱くする、感情的な理由づけぞの信念自分の気持ちに忠実に、我々vsあい぀らずいう念人生はいい人ず悪い連䞭ずの戊いだの䞉぀』同曞・P293ずいう「䞻芳的な根拠」のこずだ。
    少しわかりにくいが、芁は「぀らさは人を鍛える」ずか「客芳的な事実はどうか」ずか「人間関係は、単玔な善悪の二項察立ではない」などずは考えず、子䟛のように䞻芳的に決め぀けお良い、ずいう考え方り゜のこずである。

    ぀たり、簡単に蚀っおしたえば、「女性」や「黒人」、あるいは、その他の䜕であれ、「匱者」であれば、個人的にはどうであろうず、それは必ずその「党員」が倚かれ少なかれ「被害者」なのであり、だからその「属性」においおは「正矩」を特暩ずしお䞻匵しうるし、それに察応する「男性」や「癜人」の偎は逆に、個人的にどんなに立掟な人であろうず、その「属性」においお「加害者」であり「悪」であるずいう「歎史的事実」からは逃れられない、ずされる。
    したがっお、その点を「女性」や「黒人」から責められた堎合、「男性」や「癜人」は、自身の「属性」を暪に眮いおの「客芳的な意芋衚明」をするこずなど蚱されない、ずいうようなこずなのだ。
    ぀たり、「被害者アむデンティティ」を持぀者の偎には、「加害者認定」した盞手を、「問答無甚」で裁く「免状的な暩利・暩力」が䞎えられるわけなのだが、その力を「掣肘する存圚」を持たない野攟しの「暩力」が、いずれ必ず「腐敗」し「暎走」するずいうのは、人間ずいうものの性質からしお、およそ「必然的な結果」なのである。

    だからこそ、私たちに必芁なのは「正矩」だけではなく、「぀぀しみ」や「身の皋を知る」ずいった「趣味の良さ」ずいう「矎埳」なのだ。

    そしおそれは、決しお「差別構造を延呜させるための、既存瀟䌚の偎の欺瞞装眮」などではない。
    もしもそうなのだずすれば、私たちは「我利我利亡者」ずなっお生きるこずこそが「正しい」ずいうこずにしかならないではないか。

    ずころがたた、それに察する「隙されるな、損をするぞ」ずいった「被害者意識」の専暪が、「貧すれば鈍する」で広がっおしたい、すっかり「矎埳」なんおものの倱われおしたったのが、今の時代なのである。

    そんなわけで、本䜜『猶詰サヌディンの謎』は、たるで「珟代」小説のように新しい䜜品なのだが、実際に曞かれたのは、著者晩幎の「1986幎」であり、蚀い換えれば、この頃にはすでに、今の䞖の䞭における「醜悪」の萌芜は、出揃っおいたずいうこずなのかもしれない。

    【※ 以䞋で、本䜜のネタを割りたすので、未読の方はご泚意ください】

     ○ ○ ○

    本曞のラストは、なんずも皮肉に絶望的なものであり、著者の「静かな諊芳」が、私たちの「地球」を「遠望する目」ずしお描き出されおいる。

    『 クルパ氏はじっず考えこんだ。
    「぀たり、あなたはお母様に手玙を曞き、それを燃やす。するずたちたちあなたの手にお母様からの返事が届いおいる、ず」
    「そうです」
    「でも、お母様はなんず曞いおこられたんです よろしければ教えおください」
    「すぐに垰っおきなさい、ず」
    「で、あなたは垰る぀もりですか」
    「ええ」圌はそう蚀っお、ぱっず消えた。

       

    「あのムッシュはどこぞ ただお代をいただいおいたせん。ご䞀緒じゃなかったんですか」絊仕は尋ねた。
     小さなテヌブルの倧理石の卓䞊、飲みかけのペルノのグラスの暪に手玙があった。クルパ氏はさらに近づいお、その手玙に手を眮いた。「気にしなくおいい」圌は絊仕をなだめた。「わたしが払うよ」そしお絊仕が行っおしたうず、クルパ氏はポケットから読曞県鏡を取り出しお、掛けた。

    かわいい息子ぞ
    それずも今は気ちがい垜子屋ず呌ばれたいこれから話すのはけっしおいい知らせじゃありたせん。でも、あたり深刻に捉えないで。心臓あなたの珟圚の、かりそめの、歪んだ※ 巊寄りに぀いた心臓のこずよによくありたせんからね。
     先生ずお話ししお、そちらの地球の人間たちずの長すぎるそしお負担の倧きい亀流は、あなたの頭脳この「頭脳」ずいうのは、もちろん、あなたの本来の粟神のこずで、珟圚䞀時的に乗っけおいる身䜓噚官のこずではありたせんを貧匱にする傟向があるずいう結論で䞀臎したした。芁するに、先生はあなたの働きに満足しおいたせん。先生はすでに、わたしたちの䜏む〈本圓の地球〉が、歪んだ鏡にどのように映っおいるかに関する研究論文を完成させたした。もずもず先生は、ただ脚泚のひず぀に必芁な資料を探しおもらうために、あなたをその歪んだ鏡ぞず送り出し、今でも埅っおいるわけです。先生の頌みはただひず぀、ポルチマンずいう堎所に行き、圌らによっおオむル挬けサヌディンが猶に密封されおいる工堎を蚪れお、サヌディンを猶に詰めおいる人々ず、猶に詰められおいるサヌディンに぀いおレポヌトを送るこずでした。それが、調査に掟遣されおもう䞃十四幎にもなるずいうのに、あなたはただ圌の脚泚のためのサヌディンをただの䞀匹も芋぀けおいないようですね。
     先生が萜胆するのも無理はないでしょう。それどころか苛々しおいたす。だいたい、サヌディン関連の情報を知らせもしないで、あなたずきたら頌詩やバラヌドや賛矎歌や短詩や挜歌や譊句や十四行詩や長さがたちたちの無韻詩を䜕節もどっさり送り぀けおくるのですから。たあ、確かに、あなたの報告のうちひず぀だけは先生の興味を匕きたした。女性詩人の話です。圌女は実際には詩を曞かず、本圓の地球が倪陜の呚りを回っおいるのを芋たず䞻匵しおいるそうですね。先生は、あなたが圌女に接觊する手間を惜しみ、圌女が目撃したものの座暙を蚊かなかったこずに怒っおいたす。方䜍角、高床、正確な時間。赀経、赀緯、時角。黄経、黄緯、銀河座暙軞など䞀䞀それらがわかれば、圌女が実際にわたしたちを目撃したのか、それずも抑圧された詩的想像カが思い描いた幻想にすぎないのかを、先生も確かめるこずができたのです。
     ずにかく、長く曞きすぎたので芁点だけ䌝えるず、先生はあなたに戻っおくるようにず蚀っおいたす。研究論文は、サヌディンに関する脚泚なしで出版されるでしょう。でも、あたり萜ちこたないで。あなたを垰還させる本圓の理由は、あなたが今いる〈鏡像地球〉の、偏差ずいうか、ピンクッション型歪みずいうか、暜型歪みずいうか、それがきわめお危険な状態になっおいるからです。歪んだ鏡に映っおいるせいで、そちらの地球の人間たちは、賢くなりすぎおはいけない、ずいうこずがわからないくらいお銬鹿さんになっおしたいたした。そのせいで、正しい道を歩んでいたこずもあったのに、しょっちゅうたちがったずころで道をそれ、正しい道を螏み倖しおしたったのです。神孊においおも、政治においおも、芞術においおも、そしお今や䞀䞀嘆かわしいこずに䞀䞀科孊においおも。先生はなんずかそちらの地球の人々に譊告しようずしたした。圌は䌝えたした、公理は䞍滅ではない、唯䞀䞍滅なのは良いマナヌなのだず。「政治家は䞍滅ではない、政治は䞍滅ではない、詩は䞍滅ではない䞀䞀良いマナヌは䞍滅である」ず先生は蚀いたす。
     そしおメッセヌゞはちゃんず届いたのです。手盞占いをする嚘が受け取りたした。でも、このメッセヌゞは人間たちにずっおは単玔すぎたようですね。圌らは、深い意味が隠されおいない蚗宣には聞く耳を持ちたせん。だから、そちらの䞖界はもうすぐ煙ずなっお消えおしたうでしょう そしおわたしたちは、圌らがサヌディンを猶詰にしおいた方法を、氞久に知るこずができないたた終わるでしょう。
     さあ、ずにかく垰っおきなさい。あなたが今どこにいるか知りたせんが、そちらの地球にいるのをやめお、すぐにこちらの地球に戻るように。

           あなたの愛する  
               母より 』P314〜317

    ぀たり、「私たちの地球」は、もうひず぀の〈ほんずうの地球〉の〈鏡像地獄〉だったずいうこずである。
    最初に玹介した、ティム・チェスタトンブラりン教授ず劻ノェロニカの䌚話における、ノェロニカの話こそが「真実」だったずいうオチだったのだ。

    ただ、本䜜を鑑賞する䞊で倧切なのは、このオチが面癜いずか面癜くないずかいった「お気楜な話」ではない。
    このオチが、到底「笑えない」ものだずいうのは、次の郚分の重さを理解できれば、吊定しようもない事実なのだ。

    『そちらの地球の人間たちは、賢くなりすぎおはいけない、ずいうこずがわからないくらいお銬鹿さんになっおしたいたした。そのせいで、正しい道を歩んでいたこずもあったのに、しょっちゅうたちがったずころで道をそれ、正しい道を螏み倖しおしたったのです。神孊においおも、政治においおも、芞術においおも、そしお今や䞀䞀嘆かわしいこずに䞀䞀科孊においおも。先生はなんずかそちらの地球の人々に譊告しようずしたした。圌は䌝えたした、公理は䞍滅ではない、唯䞀䞍滅なのは良いマナヌなのだず。「政治家は䞍滅ではない、政治は䞍滅ではない、詩は䞍滅ではない䞀䞀良いマナヌは䞍滅である」ず先生は蚀いたす。
     そしおメッセヌゞはちゃんず届いたのです。手盞占いをする嚘が受け取りたした。でも、このメッセヌゞは人間たちにずっおは単玔すぎたようですね。圌らは、深い意味が隠されおいない蚗宣には聞く耳を持ちたせん。だから、そちらの䞖界はもうすぐ煙ずなっお消えおしたうでしょう』

    問題は、ここに蚀う『賢くなりすぎおはいけない』ずいう堎合の「賢い」ずは、䜕を指しおいるのか、ずいうこずである。

    䟋えば、「女性の暩利」の獲埗を目指す「フェミニズム」を孊ぶこずは、「賢くなる」こずだず蚀えるだろう。
    だが、それを振りかざしお「男性を䞞ごず敵芖する」ような「考え方」ずなるず、果たしお「賢い」ず蚀えるだろうか それずも、ここで蚀う「賢くなりすぎた」、ずいうこずなのだろうか

    そうした「過ぎたる賢さ」に察し、『良いマナヌ』を持たなければなりたせん、ずいう助蚀は、しかし「賢くなりすぎた」人たちには『単玔すぎた』ようなのだ。
    「気狂い地獄の地球」に䜏む「賢くなりすぎた人たち」は「深い意味が隠された蚗宣」はありがたがっおも、「同じ人間ずしお、思いやりを持たなくおはいけないよ」ずか「やりすぎちゃいけない。自分がされお嫌なこずを、人にしちゃあいけない」ずいった、圓たり前のメッセヌゞは、届きはしおも、決しお響きはしないのだ。

    だからこそ、そんな「地獄」は、いずれ近い将来、「煙ずなっお消える」しかないのである。

    画像


    2024幎12月15日


     ○ ○ ○











      ○ ○ ○
























































     ○ ○ ○

    ・

    ・

    ・

    ・

    ・

    ※ 北村玗衣は、Twitterの過去ログを削陀するだけではなく、それを収めた「Togetter」もすべお削陀させおいる。䞊の「たずめのたずめ」にも90本以䞊が収録されおいたが、すべお「削陀」された。そしお、そんな北村玗衣が「Wikipedia」の管理に関わっお入るこずも呚知の事実であり、北村玗衣の関わった「オヌプンレタヌ」のWikipediaは、関係者名が䞀切曞かれおいないずいうず異様なものずなっおいる。無論、北村玗衣が「手をを加えた」Wikipediaの項目は、倚数にのがるだろう。


     ● ● ●



     ○ ○ ○

    ・

     ○ ○ ○


     ○ ○ ○

    ・

    ・


     ○ ○ ○


     ○ ○ ○


     
     
     
    2026幎4月30日、個人サむト「幎間読曞人の迷宮文曞通」 https://dokushojin.jp を開蚭。今埌はこの迷宮文曞通本通にお新芏蚘事をアップしおいきたすので、どうぞご愛顧ください。なお「note」アカりントは、「別通」ずしお旧皿保管庫ずいう䜍眮付けになりたす。

    あなたぞのおすすめ