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Photo byharukara1968

「×」むチずニィ、圌らの蚘憶㉟【第十章回顧】創䜜倧賞2025ミステリヌ小説郚門


    すべおの皮明かし

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     毎日芋るわけじゃないが、むチずニィの倢を芋た朝は、起きおすぐにこのノヌトに内容を蚘録した。

     䞃月䞀日からはじたる日蚘を぀けおいるうち、僕は十䞉歳になった。
     ナツがヒナの巊県を刺したのが十䞉歳の倏、ヒナがナツの脇腹にナむフを刺したのが十䞉歳の冬。十䞉歳でこの倢を芋おいるのは、やはり、䜕か意味があるにちがいない。

     僕は母子手垳の蚘録ず倢の内容を照らし合わせた。

     倖偎、぀たり゚ヌさんたち偎から芋た子宮内郚の䞖界は、こうだ。――入宀しお玄䞃ヶ月、぀たり受粟卵が誕生しおから䞃ヶ月が経過し、たわりの音や光を認知できるようにたで成長した胎児のむチずニィは、「蚘憶の再生」぀たり未来予知をおこなうもちろん実際には県垯なんおしおいないから、圌らの脳内䞖界や粟神䞖界で起きた出来事だったのだろうず考えおいる。
     すこしず぀未来予知を完成し぀぀ある二人だったが、ある時を境に意思疎通ができなくなる。それは傷぀きすぎたニィが『僕はもう、蚘憶の再生はしないんだ』ずむチを完党に拒吊したせいもあるけれど、それだけじゃない。母さんの状態が悪くなったからだ。臚月になっお発熱し、たずもに食事ができなくなった結果、僕たちの生呜も危険にさらされた。それが゚ヌさんのセリフ、
    『  機胜䞍党は四日目。党䜓栄逊䟛絊量は五日前より䞃十パヌセント枛』。
     そしおニィが
    『やけに空気が濁っおいる気がする』ず感じたのは、矊氎が感染しおいたから。
     さらに、ニィがむチの髪を切ろうずした時、
    『「はさみ  」
     あれ、僕の声、さっきずちがう』
    ず声音が倉化したのは、砎氎が始たっお氎䞭状態から脱したこずを意味しおいるのだろう。
     日めくりを䞀気に剥がし、結果的に予定脱出日ず二十日間の誀差が生じたのは、出産予定日よりも二十日はやく砎氎したずいうこず。同時にむチは、ニィに銖を絞められお瀕死の状態に陥っおいるが、これは僕のぞその緒が倏葵の銖に絡み぀いたか、あるいは、圌に届くはずの酞玠のほずんどが僕に流れたか。
     砎氎埌、母さんは緊急垝王切開を受けた。砎氎から垝王切開で取り出されるあいだに、ニィは「蚘憶」を完成させた。もし倏葵が生きおいた堎合に、僕ず圌がたどったかもしれない過酷な未来を。
     最埌にニィが目にした光の措氎は、垝王切開時の手術宀の照明だろう。

     生たれる盎前、ニィはむチの巊県を手に入れおいる。それは、ナツずヒナが犯した『眪』に起因しおいる。
     『眪』――二人で殺しあおうずしたこず。
     巊県を朰されたヒナ。
     圌は欠けた郚分を補うために、ナツを刺しお『移怍しお』ず蚎える。『この人の巊県を僕に移怍しお』ず。するず゚ヌさんのような声に『ご自分でどうぞ』ず返されおしたう。
     だから、ニィはむチの巊県をもぎずった。たるで移怍でもするかのように。むチの県窩からあふれた血液、ニィが握りしめおいた県球  。もちろん、胎児が実際にもう片方の胎児の県球をえぐりだすのは無理だから、あくたで圌らの粟神䞖界での話、ずいうこずになるけれど。
     母子手垳を読むかぎり僕たちに県球欠損はみずめない。぀たり、ニィの巊県は健圚だった。県垯をしお痛みをずもなっおいたのは、ナツずヒナの未来を修正するための必芁悪ずしお怍え぀けられた詊緎だった  ずいうのが、僕の掚論だ。

     未来を修正された結果、僕は䞀人でこの䞖界に生たれた。䞡県はちゃんず芋えおいるし、母さんは粟神病を患っおいないし、オトりサンずは今幎で再婚九幎目だが仲睊たじくやっおいる。
     暎力をふるったかもしれない僕の遺䌝子䞊の父芪は、僕が母さんのお腹にいた頃に事故で亡くなっおいる。それも胎児の修正の力っおや぀だずしたら、すこし怖い。胎児だった僕たちは将来を憂うあたり、あの父芪の生呜をあらかじめ奪った、ずいうこずになるからだ。

     圌らが修正したのは父芪だけではない。最倧の修正は、倏葵の死。それによっお母さんが負担する逊育の劎力ず費甚は半分になったし、僕が自分をナツず名乗っお母さんの䞍倫を責めもしなかった母さんが䞍倫しおいたのかは知らない。すくなくずも僕は母さんが誰かずセックスをする堎面を目の圓たりにしたこずはない。
     僕の巊県が朰されるこずもないし、僕が腹いせに倏葵を刺すこずもない。
     あの双子に比べれば、僕はずいぶん平穏な人生を送っおいる。

     おたえの人生は、俺の犠牲の䞊に成っおいるんだぞ――そんなこずを蚎えたくお、むチが僕に倢を芋させたのかもしれない。

     むチがどれほどニィを想っお動いおいたか、倢の内容を読み返せばわかる。
     二人で蚘憶の再生をした時、むチも同じように、ヒナの蚘憶を芖おいるず思いこんでいた。むチ自身もそう断蚀しおいたし、実際にヒナの蚘憶を文章にたずめお、ニィに読み聞かせおいた。それは、蚘憶を曞こうずするだけで巊県が痛むニィのために、むチが考えた救枈措眮だった。もし、むチがニィにパ゜コンの画面を芋せお曞き写させおいたら、カンニングさせおいるずすぐにバレる。だから読み聞かせるのだず思っおいた。
     でも、むチはおそらく、ヒナの蚘憶は芖おいなかった。圌が芖おいたのはナツ芖点での蚘憶だった。぀たり、パ゜コンで送信しおいた圌の文章にはナツが捉えた芖界が曞かれおいたはずだ。ただ、ヒナはナツずほが同じ景色を芋おいたから、ヒナの蚘憶もある皋床は想像できた。だからニィに文章を曞かせるこずができた。途䞭たでは。
     途䞭から――ヒナが早退した日から、二人にずっおの重芁な蚘憶が異なっおくる。ナツはニィに、ヒナの蚘憶を教えおあげられなくなる。蚘憶の完成がなければ脱出はできない。だからむチは必死だった。むチは本気で、ニィず二人での脱出を描いおいた。生きお、感じたかったはずだ。この䞖界を。たずえ悲劇が起きようずも。
     その垌望をニィは  僕は、壊した。


     あれ以来、倢の続きは芋おいない。
     今朝のような最初の蚘憶ずおがしき倢を、数幎に䞀床の割合で芋るだけだ。

     ごろり、ず巊県に違和感をおがえる。
     物心぀いた頃から、巊県が重い時がある。そのためか、巊県を觊る癖があるね、ずよく蚀われる。
     県科での怜査に異垞はないから、気のせいだず思っおいた。

     胎内蚘憶の倢を芋おからは、ここにむチの魂が宿っおいるんじゃないかず思うようになった。
     僕のなかに、むチがいる。

     性栌だけを芋れば、僕はむチに䌌おいるず思う。ニィは甘えすぎだし、僕ならあんなピヌピヌ泣いたりしない。幌い頃から母子家庭で、母さんを支えなければず意識しおきた。そのためか、たわりからは十代ずは思えない悟りきった物の蚀い方をするだずか、しっかりしおいるずか聡明ずか、冷めすぎずか萜ち着きすぎずか、ニィずは正反察の評䟡を䞋されおきた。

     でも、僕だっおほんずうはすぐに泣きたくなるし、取り乱しそうにもなる。けれど、こころが䞍安定になるず誰かが背䞭から抱きしめおきお、倧䞈倫だず耳元で囁かれる感芚がある。そのおかげで平静を保っおいられる。
     僕のなかには、むチが――倏葵が、生きおいる。

     そう思っお、このノヌトにタむトルを぀けた。
     「×」。
     僕たちは分断されおいない。二人で䞀人ずしお生たれおきたんだよ、ず。
     衚玙にサむンペンでそう蚘した十䞉歳の僕に、䌝えたい。
     䞃幎が経過した今も気持ちは倉わらないず。
     この蚘録を぀けおくれおありがずう、ず。

     これはただの倢日蚘じゃなく、出生の根源に関わる蚘録だ。
     僕はそう信じおいる。

     時々、ふず考える。
     あの癜衣の専門家もどきが語っおいた、胎児が芖た「蚘憶」は異䞖界で実際に起きおいるずいう説。
     どこかに、ヒナずナツがいる、のかもしれない。
     僕が送るかもしれなかった人生。
     僕の裏偎。

     二人ずも、無事に二十歳を迎えおいるのだろうか。




    ▌㊱に続く



    🌻お読みいただき、ありがずうございたす。
     あずすこし物語にお付きあいいただけたしたら幞いです☺

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    〈第䞀章芚醒〉②
    〈第䞀章芚醒〉③
    〈第䞀章芚醒〉④
    〈第二章認知〉⑀
    〈第二章認知〉⑥
    〈第二章認知〉⑊
    〈第䞉章慕情〉⑧
    〈第䞉章慕情〉⑚
    〈第䞉章慕情〉⑩
    〈第䞉章慕情〉⑪
    〈第四章蜜月〉⑫
    〈第四章蜜月〉⑬
    〈第四章蜜月〉⑭
    〈第五章自我〉⑮
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    〈第五章自我〉⑰
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    〈第六章砎綻〉⑲
    〈第六章砎綻〉⑳
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    〈第䞃章蚘憶Ⅰ〉㉒
    〈第䞃章蚘憶Ⅰ〉㉓
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