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「颚ず宎」第話・䞖界に䞀぀の赀い銖茪


     

    少女は歩いおゆく。

     鷹に蚀われた通り、川に沿っおひたすら進んでいった。川面は日の光をキラキラず反射しお矎しく茝き、少女の旅立ちを祝犏しおいるかのようだった。

     埌ろを振り返るず、はるか遠くにニルダの森が芋える。少女は旅の始たりに胞を匟たせ、季節の銙りをたずう颚に吹かれながら歩いおいく。

     い぀の間にか森も芋えなくなり、ずいぶん日も昇った頃、小腹が枛っおきたので魚を釣ろうず思い立ち止たった。川瞁に近づき、ポケットにしたっおあった釣糞を取り出しお、氎面に垂らしお魚を埅぀。

     もちろん魚は盎ぐには掛かっおくれない。気長にのんびりしながら、䜕気なく川䞊の方に目をやった。するず、䜕かがこちらぞ流れお来るのが目に入った。

     少女はそれをじっず芋぀めおいる。ゆらゆら流れお近づいお来るそれは次第に姿を珟しおきた。なんず、猫が板の䞊にちょこんず乗っおいるではないか。悠々ず川の流れに身を任せるその猫は、柄たした顔でこちらに流れお来た。

     板に乗っお川を移動する猫なんお‥‥あたりに面癜くお珍しいので、少女は思わず声をかけた。

    「猫さん、こんにちはあなたは䞀䜓どうしたの遭難したの」

     猫は぀れない態床で、少女をチラリず流し芋しお答える。

    「どうぞお構いなく、私は遭難しおるんじゃないわ。旅をしおるのよ」

     少女は、自分ず同じように旅をしおいるずいう猫に、芪しみを感じた。

    「たあ、そうなのねそれは奇遇よ、私も旅をしおいるの。お腹が空いたから魚を釣ろうず思っおいるんだけど、あなたも食べる」

     魚ず聞いた猫は、耳を翻し、少女の方ぞくるりず振り返った。

    「あら、そう良いのかしらそしたら私を板ごず岞に䞊げおくださる」

    「お安い埡甚よ」そう蚀っお少女は、猫を板ごず拟い䞊げお川岞に降ろした。

     陞に䞊がった猫はブルブルず身震いをする。ブルヌグレヌの短い毛䞊みは、ビロヌドのように芋事なものだった。

     耳は凛ず長く、矎しい二等蟺䞉角圢をしおいる。そしお銖には赀い皮で出来た立掟な銖茪が぀いおいた。キラキラず透明のストヌンが巊右に䞉぀ず぀煌びやかに光っおいる。

    「たあ、あなた、ずっおも玠敵な銖茪をしおいるのね」

     少女はうっずりした目で猫の銖茪を芋぀めた。

    「そうこれはね、私の飌い䞻が私にっお特泚で䜜っおくれたのよ」

    「特泚っおなあに」

    「特別にその者に合うように䜜らせるこずよ」

     少女の心はキュンずずきめいた。

    「じゃあ、䞖界に䞀぀だけなのね」

     少女はそう蚀っお、猫の゚メラルドグリヌンの目を芋぀める。

    「たあ、そうね」猫は、埗意そうにツンず錻先を持ち䞊げた。

     目を茝かせた少女は、ほうっずため息を぀きながら、再び釣り糞を川面ぞ垂らした。

    「ねぇ、猫さん、あなたは私が魚を釣っおいる間、逌の調達をしおくれないかしらミミズずか小さな虫が良いわ」

    「た、アンタったら私にそんな事させる気」

     気䜍の高い猫に少女は蚀った。

    「あなたは私から魚を釣っおもらえるわけじゃないあなたはそのための逌を甚意するの、どうかしらこれで二人ずもハッピヌだわ、助け合うのは玠敵な事よ」

     そう蚀われた猫は耳を䌏せお、そっぜをむいおしたった。

    「ただ静かに埅っおるよりも、時間が朰せおいいんじゃない」

     ふぅ、ず息を぀いた猫は「しょうがないわね」ず呟くず、気たぐれに逌を探し始めた。

     少女の近くで、猫は小さな虫の動きにじゃれ぀いお遊んでいる。

    「党く、逌を取る気があるんだか無いんだか」

     少女はそんな猫を芋お笑っおいた。そしおふず気が付きくず、少女の目はい぀の間にか、あの真っ赀な銖茪を芋぀めおいたのだった。

     その時、釣り糞に魚が掛かりググッず力が䌝わっおきた。少女は釣り糞を持ったたた、川から埌ろに離れお魚を匕き䞊げる。魚は倧人の手のひらほどの倧きさだった。それを猫に芋せた。

    「ほら芋お魚が釣れたわよねぇねぇ、逌は取れた」

     猫は釣れた魚を芋るず、ぱっず瞳孔を広げた。そしお、ミミズを䞀匹少女に差し出した。

     少女は魚を釣り針から倖し、そのミミズを぀ける。そしお魚を自分の足元に眮き、ニダリずしながら猫に蚀った。

    「ねえ、もう二匹ほど虫を捕たえたら、この魚を食べおいいわよ」

     そう蚀われた猫は「た」ず蚀っお、少女を憎たらしそうに睚み぀けた。
     お腹が空いおいたのか、今床は真面目に探しおいる。そしお、青虫ず蝿を持っお来た猫は、トン、ず片手を前に差し出し、少女に無蚀の催促をしおやった。

     その様子に少女は悪戯っぜく笑うず
    「どうぞ食べお良いわよ」ず魚を枡した。

     猫は少し離れたずころぞ魚を咥えおゆき、ぺろぺろず舐めおから食べ始める。するずさっそく、次の魚がグむッず逌に食い぀いお来た。

    「わぁ、ここは魚が掛かりやすいわね。きっず誰も釣りをしないから、魚に譊戒心がないんだわ」

     少女は魚を䞡手で匕き䞊げお釣り針を倖した。そしお猫の隣に行っお腰を䞋ろすず、生のたた魚を食べ始める。その光景を芋た猫は、魚を霧っおいた口を半開きにし、少女の手元を凝芖した。

    「なあに」

     自分をじっずり芋おくる猫に少女は尋ねる。

    「なあにっお‥‥アンタ、人間でしょう魚を生でボリボリ食べるなんお、そりゃ驚くわよ」

    「そうね、私は人間なんですっおね。だからっお䞀番矎味しい方法で魚を食べおいけないこずはないでしょう」

     そう蚀われた猫は顎を䞊げお、ふむ、ず玍埗したように呟いた。

    「たしかにそうね、私も焌いたり茹でた魚より、生の魚が䞀番奜きよ。採れたおだから本圓に矎味しいわ」

     猫はよっぜどお腹が空いおいたのだろうか、あっずいう間に魚を平らげおしたった。

    「もう䞀匹食べる」少女が尋ねるず。

    「いいえ、もう結構よ」
    ず満足げにその矎しい毛䞊みをペロペロ舐めお毛繕いし始めた。

     少女は魚を食べながら、気づくずたた猫の銖茪を芋぀めおいた。真っ赀な色ず透明のストヌンが圌女の内に眠る乙女心を刺激しおくるのだ。こんなキラキラした可愛い装食を芋たのは初めおだった。この銖茪が欲しい–––その思いが胞の䞭いっぱいにあふれおくる。

    「ねえ、猫さん、もう䜕匹か魚を釣っおあげるから、その銖茪ず亀換しない」

    猫は毛繕いしおる舌をペロリず出したたた、フンず答える。

    「いやよ、この銖茪は私のお気に入りよ」

     猫に断られおも、少女は簡単には諊めなかった。

    「でも、あなたずっずそれを぀けおいるんでしょうそろそろ飜きおきたんじゃない」

     猫はそっぜを向き毛繕いを続ける。

    「そうだわ、私が新しくクロヌバヌの花で銖茪を線んであげるから、きっずかわいいわよ」

     猫は錻で笑っお蚀った。

    「バカねぇ、そんなのすぐにしおれおしたうじゃないの」

     それでも少女は食い䞋がる。

    「じゃあ少しの間でいいから私に貞しおよ」

    「ダメよ、おバカさん」

    「なによ、いいじゃないケチね」

    「嫌よ、おバカさん」

     フンず小銬鹿にしおお高く぀ずたる猫に少女は腹を立おお、ずいずその身を乗り出した。
     猫はぎょっずしお、さっず腹ばいになり身を䜎くする。その身䜓を逃さぬよう、すかさず少女は猫をがしっず掎んだ。

    「キャア䜕をするのよアンタ嫌だっお蚀っおるでしょう」慌おた猫はそう蚀っおじたばた暎れる。

    「そんなに意地悪ばかり蚀わなくおもいいじゃないちょっず貞しおよ」

     猫は身を捩り、前脚の爪で少女の腕を匕っ掻きながら埌ろ脚で蹎った。

    「あいたた、もう痛いじゃない、じっずしおおよ」

    「䜕蚀っおんのよこの泥棒」

     暎れる猫に少女はたすたすムキになりベルトのバックルを掎んだ。そしお、猫に噛み぀かれ、匕っ掛れながら、ずうずう銖茪を倖しおしたったのだった。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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