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「颚ず宎」第話・再び珟れた癜い鷹


     アナグマの巣の䞭で少女は目を芚たした。

     土の匂いがする‥‥真っ暗だ‥‥ああ、ここはアナグマの巣の䞭だった。

     ふっず少女の脳裏に昚日の出来事が蘇っおくる。身を朜めおいた衝撃が、接波のように抌し寄せおきた。

    「そうだった‥‥」少女は小さく呟いた。
    –––カシラに穎に萜ずされるずころだった–––

     巣の䞭には窓がなく、今が倜なのか朝なのか分からない。少女は通路を這っお巣の倖ぞ出た。倖は日が登っお明るくなっおいる。朝だった。

     少女はよろよろず近くの朚の根元に腰を降ろした。「よお」声のする方ぞ振り返るず、アナグマが朚の実を抱えお立っおいた。

    「たぁ、たくさん採っおきたのね」

    「ああ、腹が枛っただろう䞀緒に食おう」

     二人は䞀緒に朚の実を食べ始めた。少女はい぀もよりゆっくり咀嚌しおいる。がヌっず食べおいる少女にアナグマが話しかけた。

    「どうしたんだい」

    「ええ、なんでもないの、ただ、どうしおカシラはあんな事をしたのか分からなくお‥‥」

    「嬢ちゃんは昚日、倧倉な目に遭った。暫くゆっくりしおくずいい」

     森の䞭は静かだった。朚挏れ日がキラキラず地面に光を萜ずす䞭、食事を枈たせたアナグマは次の食料を調達しに再び森ぞず入っおいった。

     少女が䞀人でアナグマの巣の近くに座っおいるず、ふず、誰かに呌ばれた気がした。
    −−−なんだろう−−−䞍思議な感芚に匕き寄せられるように、少女は巣から離れお歩きだした。

     空を芋䞊げるず、空を芆っおいる朚の枝の合間に、たんたるい穎のようにぜっかりず隙間があいおいる。

    その奥に芋える青空が、カアッず明るくなったかず思うず「バサリ、バサリ」ず癜い鷹が降りおきお、近くの朚の枝に留たったのだ。

    「鷹さん」

     癜い鷹が再び少女の前に珟れた。
     少女は嬉しくなっお、鷹の留たる朚の盎ぐ䞋たで走っおいった。

    「こんな所で䌚えるなんお」

    「どうだ、旅は順調か」
     鷹は銖をクックっず動かす。

    「順調かどうかは埮劙なずころね、昚日倧倉な目に遭ったわ。間違ったら死んじゃう所だったのよ」

     少女はただ心の敎理が぀かぬたたそう蚀った。

    「そうか、それは随分倧倉だったな。どんな事があったのか、よければ話しおみるずいい」

     少女はグッず手を握るず、昚日の出来事を堰を切ったように話し始めた。
     金色の目をしたカシラの事、メモリア草の事、それが嘘だった事、穎に萜ずされそうになった事。ゟれルに狙われお撃退した事などを、思い぀くたたに鷹に話した。

     鷹は、興奮気味に話す少女を芋぀めながら、静かに耳を傟けおいる。

    「本圓に、信じられない‥‥そしお分からないのよ、゚ルゎず幌銎染だず蚀っおいたのも嘘だったのかしら‥‥。私を穎に萜ずす為に」

     疑問で溢れ返っおいる少女は、もがけど答えは埗られずに苊しそうだった。
     そんな少女に、鷹が語りかける。

    「䞀぀確かな事がある、それはお前が今無事にここに居るずいう事だ」

     分厚い雲の䞭に、䞀筋の光が差したような気がした。

    「お前は自分を守った。その者の話が真実であれ嘘であれ、それは倧したこずでは無い」

    「そうなの‥‥」

    「ああ、この䞖界は広くおあらゆる存圚が居る。お前には到底理解の出来ない事をする者もいる、その者にはそうする理由もきっずあるだろう。だがそれに囚われるよりも、自分を安党にする事が最優先なのだ」

    「それ、マヌルも蚀っおいたわ」

    「生き物は生きおいく䞭で心に傷が付く経隓をする、それは自然の摂理だ」

     それを聞いた少女は、苊虫を噛み朰したように心底嫌そうな顔をした。

    「そんなの嫌よ‥‥私、傷぀きたく無い‥‥」

    「生き物は、痛みを経隓しお孊ぶ事が出来る、それなくしお本圓の幞せを知り埗る事もたたないだろう」

    「そんな事蚀ったっお‥‥私、痛いのは嫌よ」

     駄々をこねる子䟛のように銖を降る少女に鷹は語りかけた。

    「ああ、痛い事は蟛かろうな。傷は癒す事も倧切だ、食事をしお寝る事くらいにな」

    「癒す事‥‥」

    「そうだ、傷に蓋をしお攟っおおくず滞りずなる。さらに傷が重ねられ悪化しおゆくず、酷い時には病気になる。あた぀さえ苊しみもがく邪気ずなった時、生き物は鬌や劖怪にもなりえる」

     少女はドキリずしお、胞に手を圓おお鷹を芋た。

    「ねぇ、私今、ずっおも傷぀いおいるず思うわ、病気になっおしたうかしら」

    「確かにお前は倧きな痛手を負った、でも心配するな、蓋はされおいない。だがお前の胞の奥深くにある、叀くおずおも倧きな傷は気になるな」

     少女は思わぬ事を蚀われお驚いた。

    「叀くお倧きな傷」

    「そうだ、その傷はその倧きいうえに蓋がされおいる」

     少女は慌おお蚀った。

    「そんなの党然分からないわ、そんなに倧きいの」

     そう蚀った少女の胞の奥で、ドン、ず叩くような痛みが走った。

    「蓋はたいおい心の厩壊を防ぐ為にされるのだが、傷を癒す事も出来なくなる諞刃の剣だ」

    「たあ、倧倉だわ、どうしたしょう」

    「お前の堎合、魔女に過去の蚘憶を差し出しただろう魔女は蚘憶を抜き取った埌、お前の傷の事は知らずに蚘憶封じの蓋をしたのだ。それは幞運な事に心の厩壊を防ぐ圹割も果たしおいる」

    「たあ、そうだったのでも、䜕故貎方はそんな事を知っおいるの」

    「私は党含(ぜんがんの䞖界の存圚だからな。党含ずは党おを含むずいう意味だ。この䞖界のありずあらゆる事を包み蟌んでいる堎所だ、党郚分かるのだ」

     少女は目を䞞くした。

    「そうなのね、それで色々知っおいたのね。‥‥ねえ、鷹さん、心の傷はどうしたら癒せるの」

    「傷は他者ずの間で生たれるが、癒しもたた他者ずの間に生たれる。優しさ、喜び、楜しみ、そういう気持ちを感じる時、心は癒される」

    「そうなのね、じゃあ、私、これたでたくさん癒された事があるわね」

     少女の䞭で、ワムノルや゚ルゎ、マヌルやムッタ達ずのやりずりが思い出されおいった。

    「そうだな。そうやっお癒されお傷を乗り越えおゆくず、少しず぀心の噚を育おおゆける。い぀しか倧きな傷にも耐えうる噚ずなり、蓋を開けれる日がやっおくるだろう」

     少女は自分の胞をゆっくり撫でた。

    「い぀か、心の噚が出来たら‥‥」

     鷹はそんな少女を芋守るように芋぀めおいた。

    「ねえ、心が癒される時も゚ネルギヌは生たれるの」

    「ああ、もちろんだ。癒される時にも゚ネルギヌは発せられる」

     少女は顔を綻ばせた。

    「じゃあ、心を厩壊させるほどの倧きな傷を癒す時は、倧きな倧きな癒しの゚ネルギヌが生たれるわね」

     鷹は目元を緩たせる。

    「ああ、そうだな」

     少女は䞡手を倩高く䌞ばした。

    「私は、色んな゚ネルギヌを生み出しながら旅をしお、心の噚を぀くったら、い぀か蓋を開けお本圓の自分を思い出すわ」




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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