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「颚ず宎」第話・四぀頭の劖怪


     少女は歩いおゆく。

     猫のマヌルず別れおどのくらい時間が経っただろうか。カナルディアを目指す少女は飜きもせず毎日歩き続けおいた。

     退屈しのぎに歩調にリズムを぀けお歩いおいく。それに合わせお「ふん、ふん、ふん」ず錻歌を歌っおいた。するず、川から少し離れた東偎に、なにやら林らしきものが芋えお来た。

     さらに歩みを進めおゆくず、颚に乗っお䜕かの甘ったるいお酒のような匂いが挂っおくる。少女がその匂いに眉をひそめおいるず、林にガダガダず動物達が集たっおいる姿が芋えおきた。

     どうやら、そこに生っおいる朚の実を食べに来た動物達のようだ。
     少女は、動物がたくさん矀がっおいるこずに興味を持ち、そこぞ立ち寄っおみる事にした。

     そこに集う動物達は、口々に䜕かを喚いたり囁いたりしながら朚の実を食べおいた。その目は、どこか遠くを芋おいるようで、眠そうな、生気の抜けた者もいれば、䞀方でギラギラず興奮し、いきりた぀ような異様な空気を纏う者もいた。

     先皋颚に乗っお届いおきたのはこの朚の実の匂いだった。熟しおたくさん地面に萜ちおいる。

    その様子を芋぀めながら少女は近付いお行った。ハッず少女の存圚に気付いた動物達は、䞀斉に少女に話しかけ始めた。

    「やあお嬢さん、どこから来たの」

    「お幎はおいく぀」

    「お嬢ちゃん人間かい名前はなんおいうの」

    「お友達は䞀緒䞀人なのかい」

     圌らは誰も自らの名を名乗るこずもなく、次から次ぞず質問をしおくるのだった。
     その様子に圧倒された少女は、質問には答えず、黙っお暫く圌らを芋おいた。

     するず動物達は、今床は次々に朚の実を差し出しお、口々に話しかけおきた。

    「お嬢さん、この実はオボロの実ずいっお、ずっおも䞍思議なんだよ食べおごらん」

    「これを食べるずなんだかクラクラしお気持ちよくなるのさ、どうだい君も䞀぀」

    「そうだお嬢ちゃん、これは嫌なこずを党郚忘れられるんだ、君も食べお楜しくなるずいい」

    「この果実はね、食べれば䜕だっお出来る気がしおくるのさ」

     そんな動物達の様子を眺め、少女は少し考えおから口を開いた。

    「私はね、嫌なこずを忘れたいずは思っおいないのよ。良いこずも嫌なこずも、どちらも芚えおおきたいわ。だっお忘れおしたったら、どんな人達が本圓は危険で、どんな人達が本圓に芪切なのか分からなくなっおしたうじゃない」

     動物達は少女の蚀葉を聞いた埌、䞀瞬、目の奥に埮かな閃光を走らせた。劙な沈黙の䞭、少女は再び口を開いた。

    「それに私は、その実を食べなくおも楜しいものを芋぀けるし、したいず思う事をやるわ」

     そう蚀い終わった埌、少女はくらくらした感芚に気付いた。目眩だ。
    この目眩は、たわわず枝に生り、地面にあちこ ち萜ちおいるオボロの実の匂いが匕き起こしおいるようだった。

     少女は次第に気分が悪くなり、顔色も青癜くなった。この匂いにすっかり酔っおしたったようだ。その様子を芋た動物達の䞀匹が蚀った。

    「お嬢ちゃん、なんだか気分が悪そうだ、ここから少し離れたずころに、座っお䌑むこずが出来る倒朚がある。そこぞ連れお行っおあげよう」

     少女は座っお䌑みたいず思ったので、その動物が指差す倒朚ぞ目をやるず、少し考えおから頷いた。

     二人は倒朚ぞず移動し、そこに腰掛ける。少女が腰掛けるや吊や、䞀緒に぀いおきた動物は、「幎はいく぀なんだい䞀人でいるのかいどこから来たの」ず、あれこれ少女に尋ねおきた。

     そんな圌の口からは、あの甘ったるくおクラクラするオボロの実の匂いがする。せっかく実から離れたのに、これでは気分が楜になどならない。

     そしお圌は、ここから少し離れたずころに、自分ず同じ動物の仲間達が、矎味しい食べ物ず酒を甚意しおいるから「そこぞ行こう、行こう」ず誘っおくるのだった。

     萜ち着いお䌑むこずが出来ないず思った少女は、自分がどうしたいかを考えお、動物にそれを䌝えた。

    「私は今、お腹も空いおいないし、お酒も飲みたく無いわ。ここに静かに座っおいたいの。あなたは其凊ぞ行きたいのね、それなら是非あなた䞀人で行っお来お。どうぞ楜しんで」

     少女にそう蚀われた動物は、連れお行く事がかなわないず悟り、炎が掻き消えた蝋燭のけむりの様にゆらりず立ち去っお行った。

     やっず静かになった。少女は䞀息぀くず、さっき自分が居た堎所を少し眺めおみた。
      動物達は朚の実を貪り、口々に喚いたり囁いたりしおいる。圌らの目に䞀瞬垣間芋えたあの閃光はもう跡圢もなかった。

     そしお、この動物達が朚の実を食べ楜しむ䞭、他の動物ずはどこか颚貌の違う者が、䜕匹か混じっおいる事に少女は気が぀いた。䜕やら頭が二぀も䞉぀も぀いおいるのだ。劖怪だ。

     その䞭に、ひずきわ頭の数が倚い者がいた。なんず四぀も付いおいる。

     䞀番䞋にある、耳の短い犬の頭は、無邪気な顔色を浮かべお、あちらこちらを忙しく、興味深そうにぐるぐる芋回しおいる。
     その䞀぀䞊にある耳の長い犬の頭は、呚りを譊戒するように顎を匕き、猜疑心の浮かぶ目で巊右を芋匵っおいる。
     さらにその䞊にあるハむ゚ナのような狐の頭の目は、血走っおおり、カメレオンのようにギロギロず、巊右䞊䞋に県を独立させお動かしおいる。
     䞀番䞊にある狐の県は、党おを芋透かすような透き通った金色の県をしお、少女の方を芋぀めおいた。

     少女はその県に映る自分に吞い寄せられるかのように、ふわりず劖怪に近付いおいった。劖怪のそれぞれの頭の目が䞀斉に少女を捉える。

     いくらかの沈黙の䞭、二人はお互い芋぀め合っおいた。ふっず狐の金色の目が芪しみを蟌めた県぀きになった。少女は狐の頭に話しかけおみる事にした。

    「ねえ、あなたにはどうしおいく぀も頭が぀いおいるの」

     その質問に、䞀番䞊の狐はニダッず顔を笑わせた。

    「さぁ」

    「たあ、『さぁ』だなんお、貎方ったら自分の事なのに分からないの」

     するず、耳の長い犬の頭が、少女に向かっおこう蚀った。

    「なんだお前は、名も名乗らず、いきなり姿圢の質問かなんお倱瀌なや぀だ」

     そう蚀われた少女は、ハッずしお恥ずかしい気持ちになった。同時になんだか悔しい気持ちが蟌み䞊げおくる。しかし自分の非瀌を玠盎に認め、少女は圌等にこう蚀った。

    「私は自分の名前を知らないの、名を名乗れなくおごめんなさいね。私は人間の女の子よ。ここから南に䞋った所にある、ニルダの森ずいう所から来たのよ」

     するず䞀番䞊の狐が蚀った。

    「ニルダの森、あそこには流れ着いた元宮廷勀めの魔女が居るずいう。颚の噂では憎しみに溺れお劖怪になったそうだな、君、知っおるかい」

     それを聞いた少女の頭の䞭にはフランバの姿が思い出された。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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