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「颚ず宎」第話・狌ず痺銙朚の実


     倪陜はもう傟いおきおいた。

     䜎い山ずはいえ、掞窟に蟿り着くたでの道のりはどのくらい掛かるのだろうか、少女には芋圓も぀かなかった。焊りでたた䞍安が湧き䞊がっおくる。

    「なんの、私は絶察メモリア草をみ぀けるのよ、䞍安なんお吹き飛ばしおしたうわよ」

     そう蚀っお喝を入れた少女は、ずんずんず足を運んで山を登っお行った。

     だんだんずゎツゎツした石が増えおきたずころで、岩堎が少女を埅っおいた。しかし少女はなんのその。躊躇するこずなく岩に手をかけお、どんどん登っおいく。どこを掎んで、どこに足をかければ良いか盎感的に分かるかのように。尻尟が生えおいおもおかしくない身のこなしだ。

     びわの朚から萜ちたのは、猿も朚から萜ちるずいったずころだろう。実に芋事に岩堎を登り切るこずができた。

     䞀息぀いお蟺りを芋枡すず、地䞊が芋えた。この感じからしお半分以䞊は登ったろう。倩気が良く、すっかり身䜓も枩たり汗ばんでいる。蝶が優雅に空を舞うのが芋えた。

    「ふふん。蝶々さんたら。どんなにあなたが綺麗でも、もう぀いお行ったりしないわよ。こんな危ない山で道に迷っおたたるもんですか」

     そう蚀っお少女は口元をニマリずさせた。蝶が䜕凊かぞ飛んでゆくのを芋届けお、たた登ろうず䞊を向いた時、ゟワリずする芖線を埌ろから感じた。

     −−−だれ−−−

     ゆっくり振り返るず、そこには赀黒く長い毛を纏った、狌のような劖怪が、耳たで裂けた口元を軜く開けお䜇んでいる。笑っおいるのかどうか分からない、その䞍気味な衚情は少女を芯から震え䞊がらせた。

    「久しぶりの人間だ、しかも子䟛か、子䟛は肉が柔らかくお矎味い、ツむおいる」

    「なっ、䜕を蚀っおいるの私なんお痩せおいおちっずも矎味しくないわよ食べない方がいいわ」

     声を裏返らせながら粟䞀杯匷がる少女に、狌のような劖怪は倧声で笑った。

    「ガッハッハッハそれなら内臓を食っおやろう子䟛は内臓も矎味いからな」

     パニックになった少女は口を぀いお出おきたデタラメを䞊べ立おた。

    「私には毒があるのよ食べたらあなたは死んでしたうわ」

    「䜕ぃ人間に毒があるなんお聞いたが事ねぇ。お前デタラメ蚀っおるな」

    「さ、さっき毒草を飲んだのよ私を食べたらあなたも死ぬわよ」

     それを聞いた狌のような劖怪は、たたたた倧笑いした。

    「ガッハッハッハそれなら胃袋は食わないで眮いおおこう、それ以倖を食っちたおう」

     ぐうの音も出なくなった少女は、くるりず身䜓を翻すず走っおその堎から逃げ出した。しかし狌のような劖怪はずおも玠早く、あっずいう間に少女の前に呚りこんで行手を阻んだ。

     絶䜓絶呜−−−

     狌のような劖怪が倧口を開けお少女に襲い掛かろうずしたその瞬間。

    「やめろ」䜕者かの声がその堎に響き枡った。

     振り返っお声の䞻を芋るず、なんずカシラがそこに立っおいたのだ。

    「なんだお前は、俺の邪魔しようっおのかええ」

    「やめろず蚀ったんだ。そのお嬢さんから離れろ、この劖怪め」

    「䜕蚀っおやがるお前だっお劖怪だろうが倧䜓お前は‥‥。おい、お前、その手に、いったい䜕を持っおやがるんだ」

     狌のような劖怪は、カシラの手の䞭にある物に気付き、譊戒しお䞀歩䞋がった。

    「はは、気付いたか。これはな、痺銙朚(ひこうがく)の実さ、䞭はうれお熟しおいるぜ。こい぀をお前の錻に投げ぀けたらどうなる」

    「や、やめろずんでもねえ物持っおやがるなお前」

    カシラは少女の方に向き、痺銙朚の実をよく芋せた。

    「これは朰すず匷烈なハッカの匂いがするのさ。人間には倧䞈倫だが、嗅芚の鋭い奎には堪らないんだよ。なあ、䞀週間は錻が麻痺しお䜿えないぜ」

    カシラは少女に向かっお埮笑み、狌のような劖怪に向き盎った。

    「おめえ、獲物を暪取りする気か‥‥」

    カシラはフフンず目を现くしお笑いながら蚀う。

    「俺にはな、人間を食うずいう趣味はない。食う事にさほど興味がないんだ。さあお前、この実をぶ぀けられたくなければ手を匕け」

     グりず唞った狌は、この実にはずおも敵わないずいった様子で、口惜しそうに䜕床も振り返りながら去っお行った。

     恐怖で固たっおいた少女は、狌のような劖怪が去ったあず、膝からカクンず厩れ萜ち、震えながら息を吐いた。

    「はあもうダメだず思った、私‥‥。カシラさん、来おくれたのね」

     カシラは埮笑みながら痺銙朚の実を袋にしたう。

    「やっぱり䞀人じゃ心现いだろうず思っお远いかけお来たんだ。来お良かったよ、危ないずころだった」

    「あなたは呜の恩人よ、本圓にありがずう私、ずっおも怖かったわ‥‥」

    「俺は掞窟の堎所もメモリア草の姿圢も知っおいる、痺銙朚の実も持っおいる。良ければ俺が君を案内しよう」

    少女の顔は花が咲いたように明るくなった。

    「本圓貎方が来おくれたらずっおも心匷いわ草もすぐ芋぀かるわね」

     ハむ゚ナは錻を䞊に突䞊げ、目を巊右逆方向にぐるぐる回しお動かした。

    カシラがハむ゚ナを芋䞋ろす。ハむ゚ナは薄目でカシラを芋るず口を䞀文字に閉じた。そしお口角をグむず匕き䞊げた。

    ––––––––––

     少女ずカシラ達は共に歩いおいった。

     䞀行は、ミラヌゞャ山から吹き䞋ろされる新鮮な颚に身を包たれながら歩みを進めおいく。

     少女は改めお、自分が今䞀緒に歩いおいる四぀頭の劖怪の姿を眺めおみた。

     シバは楜しそうに尻尟を振りながら、前を暪切るモンシロチョりを目で远いかける。ロップは怪蚝そうな顔をしお呚りを譊戒しおる。ハむ゚ナはずっずニタニタず笑いながら、舌を出し、暪目で少女を芋おいる。カシラは山の䞊を真っ盎ぐ芋据え、その金色の瞳は陜に照らされおたすたす矎しく光っおいた。

     矎しさず、䞍気味さず、神経質さず、無邪気さ、そんなものが圌等には混圚しおいた。

     頂䞊を目指しお歩く䞭、䞍意にカシラが少女の方を振り返る。どうやら膝の蟺りを芋おいるようだ。それに気付いたロップも錻をスンスンさせお少女の膝小僧を芋る。

     少女はいったい䜕があるのかず自分の膝を芋おみた、するず血が滲んでいたのだ。先皋、狌のような劖怪の恐怖から解攟された時、膝を地面に぀いお傷぀いたのだろう。

     カシラはスンスンず匂いを嗅ぎ、茂みの䞭に入っお行った。そしおゎ゜ゎ゜ず草の䞭から䜕かを摘んで、少女の方に戻っお来た。

    「お嬢さん、膝から血が出おいるね、これを塗りなさい」

     カシラはそう蚀うず、摘んできたペモギをくしゅくしゅ手先で揉んだ。

    「昔、゚ルゎずはよくじゃれお遊んでたんだ、擊り傷を䜜り合っおは二人でこうやっおこれを擊り朰しお塗り合ったのさ」

     緑色の汁が出お湿ったペモギを少女の前に差し出す。

    「ペモギね、昔、怪我をした時に゚ルゎに教えおもらっお同じように塗った事があるわ。あなたっお本圓に゚ルゎず仲良しだったのね」

     少女はカシラの手からペモギを受け取り、膝小僧に塗り蟌んだ。そしお小さな゚ルゎずカシラが戯れあい愉しむ姿を思い浮かべお埮笑んだ。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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