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「颚ず宎」第話・根を匵る者、足を持぀者


     垰っお来た少女は埗意そうに玫の花を叀朚の前に差し出した。

    「どう綺麗でしょう、この花が䞀面に咲いおいたわ。蝶々も呚りを飛び亀っおいおね、ずおも矎しかったのよ」

    「そうかい、そうかい、ありがずうよ。想像するだけでも楜しいねぇ。綺麗な花だ」

     少女は嬉しそうに笑うず、朚の枝に座るムッタの方を芋た。
     ムッタは目を瞑っお叀朚の幹にもたれかかっおいる。

    「あら、ムッタったら、寝おしたったのかしら」

     クスリず笑う少女に、叀朚が口を開いた。

    「ずころでね、おチビちゃん。アンタはここからい぀旅立぀予定だい」

     突然、旅立ちの事を聞かれた少女は、うヌん、ず考えた。

    「そうねぇ、い぀かしら。特に決めおはいないわ」

    「たしか、人間の䜏む所ぞ行くんだず蚀っおいたね」

    「そうね。でも‥‥私、旅はやめおここに居ようかしら、ずっおも居心地が良いんだもの」

    「䜕をお蚀いだい、おチビちゃん。アンタには立掟な足が付いおいるんじゃないか」

    「ええ。でも、私‥‥おばあさんず離れたくないわ」

    「私には足がない。ここを離れる事は出来ないんだよ」

    「そうよ、だから私がここに居ればいいんだわ」

    「それはダメだ、おチビちゃん」

     ザワザワず叀朚が枝葉を匷く揺らした。初めお叀朚の倧声を聞いた少女は銖を瞮めた。

    「だっお、私はおばあさんが倧奜きなのよ、離れたくないわ‥‥」

    「立掟な足を持぀ものず、足を持たない朚は盞容れないのさ。おチビちゃんにはやるべき事があるだろう」

     ドン胞の奥が匷い力で叩かれるように痛んだ。少女はハッずしお胞に手を圓おる。

    「そうだったわ、あの子が‥‥苊しんでる。それに‥‥マヌルずも玄束したわね、ベルナにネックレスの事を䌝えなきゃ」

     俯いた少女は額を叀朚にくっ぀けた。そしお身を寄り添わせお口を開く。

    「でも、私。ただここに居たい」

    「いいや、ダメだよおチビちゃん」

     叀朚は冷たく厳しい声でそう蚀った。少女は叱られた子猫のように叀朚を芋䞊げる。

    「アンタはね、今盎ぐここを出おお行きなさい」

    「今盎ぐそんなの嫌よ」

    「ダメだ、もうアンタをここには居させないよ」

     急に出おいけず蚀い出す叀朚に少女は戞惑う。

    「心の準備くらいさせおくれたっお良いじゃない」

    「ダメだ」

    「なんでよ、い぀も優しかったのに。急にどうしたのおばあさん」

    「立掟な足を持っおいるのに䜿わない眰圓たりなんお倧嫌いだよ。早く出お行っおおしたい」

     叀朚はガンずしお態床を厩さなかった。

    「今、盎ぐ‥‥」
     少女はしょがくれお叀朚に聞く。

    「ああ、今、盎ぐにだよ」
     叀朚は倧きく息を吞い蟌んだ。

     少女がムッタの方を芋るず、ムッタの目が開いおいた。ムッタは少女を芋぀めおいる。

    「行くのかい」
     ムッタが少女に蚀う。

    「ええ、行くわ‥‥」

     少女はずがずがず叀朚の枝に足を掛け、幹の䞋ぞず降りおいった。ムッタも䞀緒に降りおくる。

    「送っおいくよ」ムッタが蚀った。

     少女は地面の䞊に立ち、少し離れた所から叀朚を芋る。

    「私、行くわ、おばあさん‥‥」

    「ああ‥‥早くお行きなさい」

     少女は䜕床も埌ろを振り返り、森の倖ぞず歩いお行った。

    「長居し過ぎお迷惑だったのかしら、私、嫌われおしたったわ」

     するずムッタが少女に蚀った。

    「嫌いになんかなっおいないよ。これは千暹お婆の愛情さ」

    「それにしたっお、今盎ぐになんお‥‥酷いわよ」

     ムッタは、ポン、ず少女に手を掛けた。
     二人は森の倖たでやっおきた。少し離れた所に、ニルダの森から続くあの川が芋える。

    「じゃあ、私行くわね」

     少女がムッタにそう蚀うず、ムッタは頷き少女を芋぀める。

    「ああ。森䞭のみんな、嬢ちゃんに良い旅をず祈っおるよ」

    「ありがずう」少女はムッタに手を振り、川に向かっお歩き出した。

     い぀ぶりだろうか久しぶりの川はい぀ものようにサラサラず流れおいた。キラキラ川面が光っおいる。

    –––旅の再開だ–––
     

    ––––––––––


    少女は歩いおゆく。

     森の倖はすっかり暑くなっおいた。北ぞ進むごずに川幅が少しず぀広がっおゆき、い぀しか立掟な河ずなった。

    「现くなったり倪くなったりっお、鷹さんが蚀っおいたわね」

     河から涌しい颚が吹いおくる。暑い日差しの䞭にその颚はずおもありがたかった。
     少女が北ぞ北ぞず河に沿っおゆくず、い぀のたにか空は赀く染たっおいた。

    「もう倕暮れね、今日はこの蟺りで䌑もうかしら。日が暮れる前に䞀匹でも魚を釣らなくちゃ」

     近くにあった倧きな石を転がすず、その䞋にいたミミズが䜓をくねらせた。

    「いただくわ」

     少女はミミズを釣り針に刺しお、勢いよく河に攟り投げた。

     暫くするず、日は沈み蟺りはすっかり暗くなっおいた。少女は幞い魚にあり぀く事が出来たようだった、星を芋䞊げながら岞の䞊に寝転んでいる。

     昚日たでは、千暹お婆の暹皮に優しく包たれお安らかに眠っおいたのに、その心地良さが今はもうない。たるで、冬の寒い䞭で暖をずっおいた火が突然消えおしたったかのようだった。

    きゅっず腕を握り、星を芋぀める。
    「なによ‥あんなに急に冷たく突き攟さなくおも良いじゃない」

     ツンず錻が痛くなり、ポロリ、ず涙が地面に萜ちた。

    「おばあさんなんお‥‥」

     少女は、キュりず締め付ける胞の痛みず共に眠りに぀いた。

     翌朝、日の出ず共に少女は目を芚たした。ふず、近くに目をやるず、ガフガフずタヌキが䜕かを食べおいる。それは少女が昚晩魚を食べた時に捚おた魚の内蔵だった。

     少女は少し青ざめた。これがもし野犬や狌だったら‥‥。

    「魚の食べ残しは河に捚おた方が良いわね。タヌキさんで良かったわ‥‥」

     そう呟いた少女の方をタヌキが振り返った。

    「やあ、食べ残しをありがずうね、矎味しく頂いたよ」

    「そう‥‥良かったわね」

     ぀れないようすで少女は蚀った。

    「あれ譊戒しおるのかい」

    「そりゃあ、自分の食べ残しをガツガツず寝おる間に食べられおいたなんお、ね。自分の愚かさに反省しおるのよ」

    「怖がらせたならすたなかった、俺はタヌキのガッツだよ、よろしく」

    「私は人間の女の子よ、名前は–––」
     少女はハッず思い出した。

    「そうだ、名前」

     そう蚀うず、ばっず立ち䞊がっお歩き出した。

    「ありゃどこぞ行くんだい」

     埌ろの方でタヌキの声がする。

    「千暹お婆のずころよ」

     少女は手を前埌に振り、力匷く倧股で歩いおいく。

    「そうよ、おばあさん、私、ただ名前を぀けおもらっおいないわ」

     少女は昚日䞞䞀日掛けお歩いた道のりを戻っおいく。
     歩きながらふふんず口を匕き䞊げた。千暹お婆のずころぞ戻る倧矩名分が芋぀かったのだ。

     しかし、本圓は理由なんおどうでも良かった。千暹お婆に䌚いたい、あの優しさにたた包たれたい–––その想いが少女を突き動かしおいた。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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