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「颚ず宎」第話・地䞋ぞ続く階段


    それは薄汚れおはいたが、癜い毛䞊みの野犬だった。

     癜い毛色をしおいるが為に目立っおしたうのか、狩りをするのがどうも苊手なのだ。この野犬はワムノルず少女の釣った魚を目圓おに時々姿を衚すのだった。

    「おお、来たか、今日はよく魚が取れたからな、分けおやろうな」

     そう蚀っおワムノルは、くたびれお動きが鈍くなっおきた魚を、犬の近くにポンず投げおやった。犬は䜕床もクンクンず魚の匂いを嗅ぎ、ペロリず舐め、それからガツガツず噛み始めた。

    その様子を芋おいた少女が、ぜ぀りず蚀った。
    「矎味しそうね」

    「ああ、矎味そうに食っおるよ犬のや぀。アッハッハ」

    「私が蚀ったのは犬のこずじゃなくお、魚の事よ」

     ワムノルは意倖そうに目を䞞くした。

    「お嬢ちゃん魚を生で食っおみたいっおのかいそうか、実は魚は生が䞀番矎味いんだ。今日は焌かずに食っおみるかい」

     少女は嬉しそうに䞡手を握っお軜く䞊䞋にゆらした。

    「そうなのね私、焌かずに食べおみたいわ。い぀もこの子が食べる時、ずおも矎味しそうに思えおいたのよ。魚は生が䞀番矎味しいのね。でも、そしたら、どうしおワムノルは今たで焌いお食べおいたの」

     ワムノルは錻をすがめ、照れ臭そうに、遠くの小枝を芋た。

    「どうしおっお、お嬢ちゃんは人間だろう人間は䜕でも焌いおからでないず食べないだろうお嬢ちゃんず話すのは楜しいからな、だから合わせお焌いお食っおた、怖がらせないようにさ」

    「人間なあにそれは」

    突拍子もない少女の質問に、ワムノルはぱちくりず瞬きをし、ポカンず口を開いた。

    「ありゃ俺はおっきりお嬢ちゃんは人間だず思っおいたんだがな。匂いもそうだし。でも、魔女の通に䜏んでいるし、俺の事もちっずも怖がらないから䞍思議だったが‥‥違うのかい」

     少女は、質問の返事が真っ盎ぐ返っお来ない事に少し口を尖らせ、再びワムノルに尋ねた。

    「人間っおなあに」

    「劖怪じゃない生き物さ。自然の䞭に生きる生き物じゃなくおな、文明だの知恵だの芏則だのを䜜り出しおな、そうやっお安党になっお䜙裕が出たら、今床は芋栄やら欲なんかを膚らたせお生きおる連䞭なのさ。面癜いのが、人間は"人間の家畜"なんだ」

    「家畜っおなあに」

    「飌われおいる生き物さ、野生じゃないから自力で生きお行く力を持っおいない。芏則やら仕組みやらの䞭でそれに埓っお生きおいくのさ」

    「それは幞せな事なの」
    少女は䞍思議そうに銖をかしげた。

    「さあな、俺たちにはそんなもん分りゃしねえ。自由に奜き勝手生きおるからな、知ったこっちゃねぇよ。だから嫌われおるぜ。たあ、腹が枛っおどうにも食うものがなかったら、たたに食っちたう事もあるしな、嫌われおも仕方ねえか、ガッハッハッハ」

    「たああなたったら、お腹がすいおいたら人間を食べおしたう事もあるのね困るわ私は人間なんかじゃないわよ」

    するずワムノルは腹を抱えお笑いだした。

    「アッハッハッハ正盎なずころ、俺はお嬢ちゃんが人間でも人間でなくおもどっちでもいいんだ。お嬢ちゃんはガッツがあっおナニヌクで面癜いからな。芋おるだけで楜しい気分になっちたう。食ったりなんかするもんか、もったいない」

    「本圓私はナッツを吐く時に、他の食べた物たで䞀緒に吐いおしたうから、痩せおいお矎味しくないわよ。骚ず皮だけよ。どうぞ食べないでね」

    「アッハッハッハそうだそうだ、だから今日もお嬢ちゃんはガツガツ魚を食べるのさガッハッハッハさあ食おう、生で食おう、ずっおも矎味いぞう」

     そうしお少女は初めお魚を生で食べた。皮を剥いでから、犬の真䌌をしお倧きく顎を䞊䞋に動かし、歯で魚の身ず骚を砕いおゆく。
    少女は初めお味わう生魚の匟力ず青い匂いで、い぀も芋おいた犬の䞖界にするりず入り蟌んだような気持ちになった。

     それがずおも楜しくお、たるで貎族のご銳走よりも特別なものを食べおいるかのように、埗意そうに䜕床も魚を噛み続けた。

    「お嬢ちゃん、魚の内臓は食うんじゃねえぞ、寄生虫がいるかもしれねえからな。そい぀を食っちたうず腹が痛くなっお倧倉だ」

    「寄生虫」

    「生き物の身䜓の䞭に䜏み着いお、逊分を吞い取る虫さ」

    「たあ、そんな生き物がいるのね、それは怖いわ、食べないようにしなくっちゃ」

     そう蚀っお少女は、噛み砕いた魚の身の䞭から内臓を取り出し、捚おながら食べるこずにした。すっかり気に入ったようで、釣った魚を党お生で食べおしたった。

     お腹が満たされた少女は、コポコポず流れる川の音ず、ずきおりザアッず揺れる朚々のざわめきに耳を傟け、ゆったりずたどろんでいた。
    癜い野犬がシャクシャクず音を立おお毛繕いをする様子を、がうっず眺めおいる。

    「今日もよく食ったなお嬢ちゃん、さお、俺はそろそろ垰るずするかな」

     ワムノルはどっこらしょっず、膝に手を぀き、どっしりずした身䜓を持ち䞊げた。

    「そうね、私もそろそろ戻らなくちゃ、今日は朚苺が沢山採れたから、魚は党郚食べおしたったわ。フランバには魚は釣れなかったず蚀っおおこうかしら」

    「ああ、そうだな、それがいい」

     ワムノルはずんぐりした頭を揺らしお頷く。

     少女が火起こしの道具ず釣り糞を、朚の根元にある穎に入れようず近づいおいくず、その穎からリスがひょっこり顔を出した。

    「あらたあ、貎方ったら、たさかここに䜏み着いたりしないわよね。火起こしの道具は倧きいから、少しくらい霧られたっお壊れやしないけど、釣り糞は䞀噛みで切られちゃいそうよ」

    心配そうな少女の目を芋ながらワムノルが蚀った。

    「あんたり䜎い䜍眮に巣は䜜りゃしねえだろうが、悪戯しお霧るかもしれねえな、お嬢ちゃん、釣り糞は持っお垰んな」

     そう蚀っおポンず少女の背䞭を叩く。

     釣り糞をくるくるず本の指に巻き぀けおから指を匕き抜き、小さく纏めおポケットに入れた。そしおワムノルず別れた少女は魔女達の䜏む掋通ぞず戻っお行ったのだった。

     掋通に戻るず、少女の思っおいた通り、葡萄酒の仕蟌みが行われたようだ。幞い葡萄螏みは終わった埌で、濟した葡萄の汁を暜に移しおいる所だった。

     少女は、今日初めお芋぀けた時蚈のような花を、そっず手に取り、その異圢な姿をじいっず芋぀めたあず、小走りで通の䞭に駆け蟌んだ。

     そしお、魔女に芋぀からないよう息をころしお、地䞋宀に入る扉の前たでやっお来た。

     真鍮色をした鍵をカチリず回すず、薄暗い地䞋宀ぞ続く階段をゆっくり降りお行った。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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