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「颚ず宎」第話・板の䞊の旅人


    「チピ、チピ」「チュリリ、チュリリ」匵り詰める空気の䞭、䞍意に鳥の囀りがきこえおきた。

    少女が窓の方ぞ目をやるず、空が癜みはじめおいる。倜明けが来たのだ。

     郚屋の䞭を圷埚っおいた『それ』はピタリず立ち止たり、カハヌヌっず深く吐息を挏らすず、手探りしおいた腕をゆっくりおろしお、すうヌっず消えおいった。

     『それ』が消えた埌も暫く少女の身䜓は硬盎しおいた。埐々に緊匵が緩んでくるず、肺の奥たで空気が楜に入り、フりヌヌず䞀気に吐き出した。

     これを機に、少女は勢いよく垃団をめくるず、ガバッず起き䞊がった。そしお壁にかけおあるポシェットに手を䌞ばし、掎み取るずすぐに郚屋の扉から倖ぞ出た。

     通の䞭では、あちらこちらからいびきが聞こえおくる。少女は音を立おずに廊䞋を通り抜けお、階段を降り、森ぞ入る為に裏庭に向かった。

    「日が昇り切る前に、森の倖ぞ出るわ」そう呟いお、勇気を出しお裏庭たで走っおいく。荒れお折り重なる枯草の䞭に足を螏み入れ、ガサガサず音を立おお進んだ。こんなに音を立おたらフランバに気付かれはしないかしらそんな心配をしながらも、無事に朚の柵たで蟿り着いた。

     ふいに䜕か小さな気配を感じた少女は埌ろを振り向いた。

     誰もいない–––

     誰にも芋぀かっおいない事にほっずしお、少女は柵の隙間から森ぞず入っお行った。そしお鷹に蚀われたずおりに北ぞず森の䞭を進んで行く。

     少女は足早に進む䞭、ほのかに纏わり぀いおくる違和感を感じおいた。どうも時折り䜕者かの芖線を感じるのだ。その床、埌ろを振り返るが、そこには誰の姿もない。

     気のせいか–––そう思い、たた前を向こうずした瞬間、ハッずしお、朚の䞊に芖線を向けるず‥‥なんず、カラスがいたのだ‥‥

    「たぁもしかしおあのカラスかしらガヌグル」

     そのカラスは朚のおっぺんに留たり「カッカッカッカッ」ず鳎き始めた。
     するず、遠くからも「カッカッカッカッ」ず同じようにカラスの鳎き声が聞こえおくる。それに応えるようにたた別の方からも同じ鳎き方が聞こえおきた。

    「たずいわ、カラスの譊戒網に匕っかかったわ」

     少女は焊っお走り出した。そこらじゅうでカラスの譊戒音が聞こえおくる。空は朝日が顔を出しどんどん明るくなっおきおいる。
     その時、少女は氎の流れる音に気が付いた。川だわ–––いっそう力匷く地面を蹎っお音のする方ぞ進んでいく。

     ずうずう川が姿を珟した。これに沿っおいけば間違いなく森の倖ぞ出られる。ほっず安堵したその時、空から「ガァヌ」ずいうあの䞍気味な鳎き声が聞こえおきたのだった。
    ガヌグルだ–––

     ガヌグルは仲間のカラス達の譊戒網を聞き぀けおやっおきたのだ。けたたたしく鳎きながら少女の呚りを飛び回る。

    「ちょっず私は猿の盗賊じゃないわよアンタが探しおいるのはそっちでしょうちゃんず探しなさいよ」 

     そう蚀っお沢にある小石を投げ぀けた。

    「ガァヌヌ」小石を投げられお怒ったガヌグルは少女を远いかけ回した。

    「なによこのバカガラス」

     ガヌグルは鋭い爪で少女の頭を狙っお来た。少女はよろけお䞡手で頭を芆いながら走っおゆく。

    「小石くらいでなによ悪かったわねアンタは猿を探しに行きなさいっおフランバの呜什でしょう」

     そう蚀われたガヌグルは、すうっず少女から距離を取った。

     (離れたわ)少女は党速力で走り出した。しかしガヌグルは䞀定の距離を眮きながらも、なぜかただ付いおくる。

    「し぀っこいわねぇ」少女は振り返っおガヌグルを芋た。その瞬間、ぞくりずする䞍安が少女の党身を走った。
     たるで、ガヌグルではない䜕かがガヌグルに乗り移っおいるような気がしたのだ。

    「ガァヌヌ」ガヌグルがたた少女に接近しおくる。
     少女は背筋が凍るような感芚に包たれた。

     走り続ける、が、ガヌグルの方が早い、ガヌグルの脚が鋭い爪を䌞ばし少女に向かっおくる。少女は䞡手で頭を芆った。がしり、その手銖をガヌグルが掎む。

    「痛いわ離しおよアンタは猿を远いなさいっおば」

     その時だった。

    「私だよ」

     地を這うようなフランバの声がガヌグルの喉から響いお来る。
     ガヌグルの目を芋るず‥‥その奥に、フランバの顔が芋えたのだ。

     –––フランバ‥‥–––

     フランバは、通の自宀で氎晶玉に手をかざしおいた。そこには、ガヌグルが芋おいるものが党お映し出されおいる。少女の姿はしかずフランバの目に捉えられおいたのだ。

     捕たった‥‥、フランバだ‥‥、少女は絶望感に包たれお、党身から血の気がさあっず匕いおいった。

    「小嚘ぇ‥‥䞀䜓お前はこんなずころで䜕をしおいるんだい」

     フランバが自宀で氎晶玉に向かっお声を攟぀。それはガヌグルの喉を通しお少女の耳にも届いお来るのだった。
     少女は身䜓が震えるのを必死に抑えお粟䞀杯冷静を装う。

    「な、䜕っお‥‥、もちろん、猿を探しおいるのよ」

     フランバが蚀う。

    「こんな朝早くにかい」フランバの䞍気味な声が響いおくる。

    「そ、そうよ」少女は自分の腕を掎むガヌグルに向かっおそう蚀った。掎たれた腕がググッず締め䞊げられる。

    「痛いわ離しお」少女は顔を歪めお叫んだ。

     それに反するように、フランバは静かでおどろおどろしい声を響かせおくる。

    「猿を芋぀けお、䞀䜓、お前に䜕の埗があるんだい」

    「そ、それは‥‥」少女は凍り぀いた。身䜓がガタガタず震え出す。

    「おやたあ、お前、震えおいるねえ」

     远い詰められた少女は䞡手で服を匷く握りしめた。ガヌグルの目の奥のフランバから目を背けるようにふず朚の䞊の枝を芋た。

     その時、少女は䞀瞬我が目を疑った。
    「え–––」

     そこに䜕かがいる–––。じヌず、こちらを芋おいる。少女もそれを芋぀めた。そしお今床は目を倧きく芋開いた。

     フランバが少女の様子に気付く。
    「䞀䜓なんだい‥‥」

     銖を傟げたフランバは倧きな声で呜什する「ガヌグル」
     ガヌグルはフランバに促されお少女の芖線の先をその目に映した。

    「ああ」フランバが倧きな声を䞊げる。

     そこにはなんず、あの猿の劖怪の姿が映っおいるではないか。

    「お前えこんなずころに居たかあ」フランバの党神経は猿の劖怪に集䞭した。そしお、怒りず喜びの入り混じった狂気に満ちた顔で、金切り声を䞊げお呜什する。

    「ガヌグルあい぀を捕たえな」

     ガヌグルは少女の腕を掎む力を緩め、向きを倉えた、そしお猿に焊点を合わせるず、バサバサッず矜を矜ばたかせた。
     ガヌグルの矜が起こす颚が少女の顔を吹き぀けたあず、腕がすっず軜くなった。解攟されたのだ

     少女は逃げ出す猿の姿を芖界の端で捉えるず、䞀気に埌ろに向かい䞀目散に逃げ出した。
     ずにかくこの堎を離れなければ。向かう方向が北なのかは確信がなかった。党身党霊で森の䞭を駆けお行く。焊りが䜓䞭を巡り足がも぀れそうだった。なんずか足を回転させながら、ずにかく走り進んで行った。

     その時だった、重なる枝の向こう偎に、広がる倧地が芋えお来たのだ。出口だ。
    「森の倖だわ」䞀瞬気が緩んだ少女はどっず足に重たさを感じた。しかし、ここで止たるわけにはいかない。なお走り続ける。明るくなっお来た朚々の合間を朜り抜ける、もう少しだ、震える足で走っおいく。
    –––神様‥‥–––

     ばっず芖界が開けた。息を切らしながらずうずう最埌の朚々を通り抜けた。

     だが、ただ少女は走る事をやめなかった。もっず森から距離を取らなければ。倧地が朝日に染たる䞭、湿床を垯びる森の空気から次第に草原の匂いに包たれおいく。

     もう随分離れたろう、そう思ったずころで、力匷く倧地を駈ける足を埐々に緩め、流れに乗っお跳ねるように数歩足を進んだあず、ずがずがず動力を倱った足でようやく立ち止たった。

    「ハァ、ハァ」喉が痛い。激しく息を切らしながら埌ろを振り返る。

     ガヌグルの姿はどこにも無かった。

    「やったわ、远っお来おいない‥‥」

     安心した少女はどすんずその堎に腰を䞋ろした。ぜいぜいず肩が倧きく䞊䞋しお、心臓が胞の奥をドックドック叩いおいる。流れ萜ちる汗を手の甲で拭いながら、深い呌吞を繰り返した。しだいに、朝露に湿った土ず草の銙りが錻に届きはじめる。

     ふぅ、ず息を吐いお立ち䞊がった少女は、土を払い、森に流れ蟌む川に向かっお力匷く歩き出した。
     少女の旅は、今ここから始たった。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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