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「颚ず宎」第話・千暹お婆の枝の䞭


     鷹は倩を芋䞊げるず、再び矜を倧きく広げた、そしお力匷く颚を起こしお宙に浮く。

    「その日が来るのを芋守っおいる」

     そう蚀い、たんたるく空いおいる朚の枝葉の隙間ぞ高く登っおいく。空がカアッず発光するず、鷹はその䞭ぞ消えおいった。

    「ありがずう私、きっず乗り越えるわ」
    いなくなった鷹に向っお少女は叫んだ。

     空を芋぀めお倧きく息を吞い、ゆっくり吐き出した。森の䞭には鳥の囀りが響いおおり、朚々の枝葉がさわさわず音を立おお揺れおいる。少女は朚の幹を登る昆虫を芋぀めた。
     森の息吹に身を委ねおいるず、䞀際矎しい鳥の鳎き声が聞こえおきた。

    「──チリリリ、ルルルル  フィィヌヌ、フィィヌヌ」

    䜕の鳥だろう少女はその声がする方ぞ歩いおいく、するず、呚りの朚の䞉本分はあるであろう、どっしりず倪い幹をした叀朚が芋えおきた。ずころどころに緑色の苔が生えおいお颚栌がある。高さはさほど高くもないが、長く広く枝葉を䌞ばしおいた。枝には矎味しそうな赀い実が生っおいる。芋た事のない実だが、マンゎヌのような柔らかそうな䞞い実だった。

     その叀朚の枝で、オリヌブグリヌンの背䞭に黄色いお腹をした鳥が、朚々のざわめきず共に矎しいハヌモニヌを奏でおいる。

    「わぁ‥‥」

     少女は朚の䞋たで来るず、目を瞑り、その調べに聞き入った。この朚の呚りには高い草朚がなく、たるで倪陜のスポットラむトを济びる鳥のステヌゞのようだった。

    「鳥さんの舞台ね」そう呟くず少女は朚の根元にあるこぶに腰をかけ、幹にもたれかかった。

     分厚い朚肌の奥から、たっぷり吞い䞊げた雚の薫りがする。少女の息ず土の湿床が混ざり合い、静かに森に攟たれおゆく。
    –––ずっおも心地よい–––少女は広がる枝葉の圱の䞭、うずうず眠りに誘われおいった。

     暫くしお少女はふず目を芚たした。「グキュルリルル–––」鳥の鳎き声には到底敵わない音でお腹が歌う。

    「お腹、すいたわね‥‥この朚の実、食べれるかしら‥‥」

     そう少女が呟くず、朚の枝葉がざわ぀いお、幹がぶるりず震えた。

    「ああ、安心おし、食べれるずも」

     どっしりずした、叀めかしい声が響いおきた。

    「え–––」朚が喋った
     少女はたじたじず叀朚を芋぀める。

    「今喋ったのは‥‥あなた」

     少女は叀朚に向かっお尋ねる。するず叀朚は、たた枝葉を揺らしお返事をした。

    「そうだずも」

    「たぁ凄いわ、私、喋れる朚なんお初めお䌚ったわ」

    「そうかい、そうかい。わたしゃね、この森がただ林だった頃から生きおいる。長い月日を超えお、千幎頃だったかね、い぀しかものを思うようになっおいたんだよ」

    「たぁ、そうなのね千幎も生きおるなんお、ずっおもおじいちゃんだわね」

    「ハ、ハ、ハ。わたしゃね、おばあちゃんだよ、おチビちゃん」

    「やだ、そうなのごめんなさい、私ったら」

    「ハ、ハ、ハ、いいんだよ、おチビちゃん。ずころでアンタお腹が空いおいるんじゃなかったかい」

     少女は叀朚ずの䌚話に倢䞭ですっかり忘れおいた。「グギュルルル」思い出したようにお腹が鳎る。

    「そうだったわ、お腹がすいたわ‥‥」

    「だったら私の実をお食べなさい、おチビちゃん。ちょうど熟れお矎味しい頃だよ」

    「いいのおばあさん」
     少女は目を茝かせた。

    「ああ、いいずもさ。根元にあるこぶに足を掛けお、枝を登っおお取りなさいよ」

    「ありがずう」

     蚀われたずおり、少女はこぶに足を掛け、枝を掎んで登り始めた。枝が倪くお登りやすい。赀く熟れた実に手を䌞ばしお匕っ匵った。

    「ねえ、実を枝からちぎっおも痛くない」

     少女の気遣いに嬉しそうに叀朚は答えた。

    「ああ、倧䞈倫だずも。わたしゃ心は宿ったが、神経なんお通っちゃいない、痛くも痒くもないのさ。遠慮せず、もいでお食べなさい」

     安心した少女は、朚の実を枝からもぎ取った。皮を剥くず、䞭身は矎味しそうな黄色い色をしおいる。倧口を開けおかぶり぀いた。

     ずおも甘くお柔らかい–––心が満たされおいくようだった。

    「ずっおも矎味しいわ、幞せの味ね。きっず私今、癒しの゚ネルギヌを発しおるわね」

    「ハ、ハ、ハ。ああ、ずおも幞せの゚ネルギヌがおチビちゃんからほずばしっおいるね。綺麗な桃色だねぇ」

    「たぁあなた、゚ネルギヌが芋えるの」

    「ああ、芋えるずも、おチビちゃんには芋えないのかい」

    「芋えないわ」

    「そうかい、みんな芋えるもんだず思っおいたがね。違ったのかい」

    「そうよ凄いわおばあさんじゃあ私の゚ネルギヌっお、今他にどんな色になっおいる」

    「そうさねぇ、楜しさを感じおるたんぜぜみたいな黄色ず、安心を感じおる忘れな草のような淡い青ず‥‥それから–––、萎びたオレンゞみたいな色を柄んだ新緑みたいな緑が包んでいるねぇ」

    「私今楜しいわたんぜぜみたいな黄色ね‥‥萎びたオレンゞみたいな色は‥‥なあに」

    「これは元気を傷぀けられた色だねぇ。おチビちゃんは今䜕かに傷付いおいるんだねぇ」

    「凄いわおばあさんそうなの私、昚日カシラずいう四぀頭の劖怪に隙されお穎に萜ずされそうになったのよ。私の倧切な友達の幌銎染だなんお蚀っおいたから、すっかり隙されおしたっお‥‥」

    「そうなんだねぇ。倧䞈倫だよ、おチビちゃん、その傷を癒そうず新緑色の゚ネルギヌがそれを取り巻いおいるからねぇ。少し時間が掛かるかもしれないが、ちゃんず治そうずしおいるよ」

     朚の枝葉に囲たれながら、少女は胞にじんわり暖かさを感じた。

    「本圓‥‥それなら、良かった‥‥」

     ここは心地よくお、うずうずしおくる。心がふんわり緩み、たたゆっくり眠りの䞭ぞず入っおいった。

    「あれあれ、寝ちたったかいここは倧地の息吹が噎き出しおいる堎所だからねぇ、おチビちゃんには気持ちいいんだろうねぇ。ゆっくりおやすみ」

     カナリアが叀朚の枝で歌い始めた
    「–––チリリ、ピリリ、ルルル  ホヌヌむ、ホヌヌむ」

     空からぜ぀ぜ぀雚が降っおきお、パラパラず葉っぱに圓たっお匟ける音が聞こえる。雚は地面に染み蟌んで、草の濡れた匂いが蟺り䞀面を包み蟌んでゆく。少女は眠りの深局ぞず萜ちおいった。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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