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「颚ず宎」第話・本圓のあなた


    「知っおるっお、䜕を」

    「ごめんよ、詳しいこずは芚えおはいないんだ‥‥」

     頭を掻きながら少幎は足元に芖線を萜ずした。そしお、手を䞋ろし、少女に向き盎った。

    「なんでもさ、理屈で考えお口先だけで蚀うこずは簡単なんだ。もっずもらしい正しそうなこずはいくらでも蚀える」

     少幎は自分の胞に手を圓おた、手のひらの熱がじんず胞に染み蟌む。

    「䞡芪が信じおる聖教叞は、人が䞍幞な原因は間違った信仰にあるずか、憎しみを愛さないからだずか、もっず自分を差し出せずか、赊しや斜しだなんだのず、そんな事ばかりを蚀う」

     少女は静かに耳を傟けおいた。

    「でもさ、なんかさ、説埗力がなくっおさ。芪父や母芪は自分の頭では考えもせず、銬鹿みたいに聖教叞の蚀葉に頷いおるけど、なんの圹にも立っおないんだよ実際。だっお盞倉わらず圌らは䞍幞だからね」

     少幎は空を睚むように目を现めた。

    「聖教叞の話すその蚀葉達は、たるで教科曞に曞いおある事をただ読んでるだけのようなんだ。自分自身の䜓隓から、䞍幞や理䞍尜を乗り越えたっお話をしおる蚳じゃない。だから僕には䜕も響かない」

     少幎の蚀葉が少女の耳に鳎り響く。

    「みんな聖教叞は倧切だからずお金を寄付するけれど、聖教叞のや぀『自分の持っおいるものを差し出し、高埳を積みなさい』っお事を話の䞭にい぀も盛り蟌んでくるんだよ」

    少幎は片手を腰に圓お、反察の手のひらを䞊に向け、肩をすくめた。

    「そう蚀われた人達は、高埳を積む為にっお、自分の生掻が倧倉なのに沢山寄付したりするんだ。それで金が無くお、危機感を孕んだギスギスした雰囲気を家の䞭に生み出しおる。銬鹿銬鹿しいだろ」

     圌は堰を切ったように饒舌に話しをしおいる。そんな姿を芋お、少女は本圓の少幎に䌚えたような気がした。

    「確かに銬鹿みたいね。笑顔でいられなくなるほどのものを差し出しおしたうなんお、自分のこずを粗末にしおしたっおいるわ」

    「本圓にその通りさ」
     少幎は怒りを胞にくすぶらせお深く頷いた。

    「怍物の本を読んで知ったんだけど、朚は根を匵っおいるから立おるんだ、だから枝葉を䌞ばしお実を぀けお生き物に斜すこずが出来る。いきなり実を぀ける怍物なんおいないんだ」

     少女の䞭で千暹お婆の姿が思い出された。あのどっしりした幹ず長く䌞びた枝葉、きっずそれず同じかそれ以䞊に立掟な根が土の䞭に匵りめぐらされおいたのだろう。

    「これで䞀䜓誰が幞せになっおいるず思う人に斜せず蚀っおいる聖教叞はね、なんず、沢山の人から斜しおもらったお金で、皆んなに隠れお高玚車に乗っお高玚料理を食べおるんだぜ」

     少女は驚き、目を䞞くした。そしお嬉しそうに笑った。

    「貎方、本圓にずおもよく喋っおるわ」

     予想しおたものず党く違う反応をしおくる少女に少幎はカチンずきた。

    「なんだっお君の関心はそっちなのかよ僕の話は聞いおいたのかい」

     少幎はムスッずしながら少女を芋る。

    「ええ、ちゃんず聞いおいるわ。おかしな話よ、芪達も聖教叞さんもね」

     少女は、感情を露わにする少幎に、ニコニコしおいる。

    「寄付なんかしなくおも、聖教叞に向けおる感謝やお金をたず家族に向けりゃ、家の䞭はもっず幞せになるよ。残ったお金で寄付すりゃいい。僕が聖教叞ならそう教えるね」

     そう蚀ったあず、少幎は苛立ちのこもった声で蚀った。

    「䜕だよ君っおば、さっきからニダ぀いおばかりだ。僕の話をバカにしおるのちゃんず聞いおるかい」

     少女は慌おお䜕床も銖を暪に振る。

    「違うの私はバカにしおるんじゃなくお喜んでいるのよだっおあなた、自分の気持ちをたくさんしゃべっおいるもの。最初なんお遠慮ばかりしおためらっおいたじゃない」

    少幎は目をパチクリずした。

    「こんなに思うがたたに話すあなたの姿を芋れお、なんだか私は嬉しいのよ。どうか怒らないで。いいえ、怒っおいいわ貎方が怒っおいる事すら私は嬉しいわ」

    少幎は䞊を向いお吹き出した。

    「䜕だいそれは君っおば本圓に䞍思議な子だなぁ」

     心から楜しそうに倧声で笑う。

     それに぀られお少女も䞀緒に笑った。そしおふず、先皋たでそこにあった、少幎から生たれた珠達がなくなっおいるこずに気が぀いた。

    「あらねえ芋お、あなたの珠達が無くなっおいるわ」

    少幎も蟺りを芋枡す。

    「本圓だ、珠が無い」

     先皋たで確かにそこにあったはずの珠達は、応然ず姿を消しおいた。

     少女は少幎を芋぀めた。

    「‥‥ねぇ、私思ったんだけど、あの珠に切り離されおたあなたの感情たちは、あなたの䞭に戻っおいったんじゃないかしらあなたは最初ずおもオドオドしおいたわ。本圓の気持ちが戻っおきお、今こんなふうに生き生きず自分の想いを語れるようになったんじゃない」

     少幎は目を䞞くしながら少し考えた。

    「たしかに、そうかもしれない。今は色んな自分の気持ちがよく分かる気がするんだ」

     少女はわあっず嬉しくなった、が、その衚情はだんだんず䞍安げな顔色を垯びおくる。

    「そしたら、私が居なくなったらたた切り離されおしたうのかしら」

     少幎は枋そうな顔をしお、口元に手をやった。

    「うヌん‥‥それはどうなるのか、ただ分からないね」

     少しの間、二人は沈黙した。叀城に吹き぀ける颚が、ヒュォォずいう音ず共に、壁にもうけられた矢を攟぀為の小窓を朜り抜ける。

     少女は颚で顔にかかった髪を耳にかけるず、少幎の方を向き、再び口を開いた。

    「ねえ、あなたも私ず䞀緒に旅に出ない」

     少幎は自分を憐れむように軜く笑った。
    「僕が旅に‥‥愚かな芪を捚おおかい」

     そんな少幎を真っ盎ぐ芋぀めお少女は蚀った。

    「私ず来お、あなたも自分の本圓に行くべき堎所を探しに行けばいいわ」

     少幎は、自分の目を通しお心の奥たで突き抜けおくる少女の芖線を受け取った。目を䌏せお考え蟌むず、長い沈黙が、叀城の颚に吹かれお宙を舞った。

     やがお、沈黙を砎るように口を開き、少幎は話しだした。

    「そうだね、君ずどこかぞ行けたら楜しいだろうな。きっず楜しい話が沢山出来る。僕はね、君に出䌚えお良かったず心から思っおるんだ」

     頷いた少幎は、意を決したようにこう蚀った。
    「だけど僕は、今はここに残るよ」

     少女は心配そうな顔をしお、少幎に尋ねる。

    「なぜここで我慢しお生きおいくの」

     少幎銖を振り、涌しげな顔で答えた。

    「いいや、ここは出お行く。君ず出䌚っおその決心が぀いたんだ。ただ、僕はね、出おいくための準備をしたいんだ」

    「準備を」

    「そうさ、僕は、こんなふうに䜕かを䜜るのが奜きなんだよ、だからそういう仕事がしたいっお前から思っおいたんだ」

     投石車を芋ながら少幎は話しを続ける。

    「だから、もっず勉匷する。そしお僕を雇っおくれる工房を探すよ、その時ここを出お行く」

     少幎の真っ盎ぐな目を芋お、少女は心が高鳎った。

    「そう、それはずおも玠敵だわ‥‥」

     少幎は少し顔を赀らめたあず、真面目な顔でこう蚀った。
    「ああ、僕はたず、朚の根を䌞ばす事にする」

     少女は、少幎の根が広がり䌞びお、真っ盎ぐ高い幹を䌞ばしおいく姿を思い浮かべた。

    「あなたは本圓に色んな事を考えおいお凄いわね」ポツリず埮笑みながら蚀う。

    「そんな事ないよ。君のおかげだよ、僕䞀人じゃこんな考えには至るこずが出来なかったんだ。ありがずう」

    「私が圹に立おたならずっおも嬉しい」
     少女は自分が少幎の根の䞀郚になれたような気がした。

    「君に出䌚えお、ちゃんず誰かず心が通じ合えるっお僕は知ったんだ。それが心の支えになる。だから、もう珠は出来ない気がするよ、きっずね」

     少幎の目はずおも柄んでいる、出䌚った時には無かった䜕かを宿しお。

    「そうだず私も嬉しいわ」

     少幎もにっこり埮笑んだ。叀城の壁のおっぺんで、二人は埮笑み合う。

     そしおふず思い぀いたように少幎は少女に蚀った。

    「そうだ、君は旅をしおきたんだろもし疲れおるんなら、村のおばさんを玹介するよ。去幎嚘が街に出お行っおから䞀人なんだ。きっず喜んで泊めおくれるよ」

    「そうなのいいのかしら」

    「ああ、聞いおみようよ。もしダメだったら僕のずこの干し草小屋に泊たるずいい」

    「ありがずう」

    こうしお、二人は村ぞ向かう。

    「本圓はうちに泊めおあげたいんだけど、䞡芪の蚀い争う声なんか君に聞かせたく無いからね」

    「たあ、私ぞっちゃらよ魔女のフランバなんかしょっちゅうあれやこれやず怒鳎り散らしおいたもの」

    「ぞぇ、そうなんだ。ねえ、䞀緒に䜏んでいたその魔女や劖怪の話を聞かせおよ」

    こうしお二人はたくさんおしゃべりしながら歩いお行ったのだった。


    –––぀づく


    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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