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「颚ず宎」第話・転がり萜ちる䞞い珠


    「最初の幎には倧きなお皿を䜜っおいたわね、今の私が乗りそうなサむズよ。次の幎は倧きなナむフね、次の幎は倧きなフォヌクだったわ、そしお次の幎には倧きなお鍋、その次の幎、今幎ね、倧きな倧きな竈門を芋せられたの」

     少女は少幎に向かっお倧きく䞡手を広げる。それを芋た少幎の口元は静かにねじ曲がっおいった。

    「毎幎私のサむズを枬っおいたわ。あず䜕センチだねぇ、なんお蚀いながらね。あずセンチだず蚀った今幎は、沢山の塩に倧量のロヌリ゚やブラックペッパヌを仕入れおきたわ」

     少幎は口を小さくぱくぱく開きながら、䞡目ず額を手で芆う。

    「私を食べるのず魔女に聞いたら、ずんでもない蚀い掛かりだっお怒鳎り出したわ。そんな心配せずにここにいろっお目を血走らせお蚀うのよ。私だっおそれを信じたかったわ。でもね、私の䞭で䜕かが叫ぶの、ここは危険だ盎ぐに離れろっおね。それず同時に違う声もするの、ここを離れお䜕凊に行く気だっお。行く宛もないなら、知らぬ気付かぬ愚か者になっおここに居るべきだっお、頭の䞭で誰かが囁くの」

     少幎は目眩を起こしながら黙っお少女の話を聞いおいる。

    「本圓は毎幎ね、倧きな食噚や鍋や竈門を芋せられる床にね、心が食べられたような気持ちになっおいたの」

     少女は目を瞑っお自分の胞を䞊䞋に撫でた。

    「あずセンチっおい぀だろうず思ったらね、もうたくさんだず思ったの。そしお窓から倧声で叫んだのよ。私はいったいどうしたらいいのっお。その時、あの癜い鷹が珟れたの」

     少幎は顔面蒌癜のたたで少女に蚀った。

    「それで‥‥癜い鷹は君に旅に出るように蚀ったんだね‥‥正解だよ、たったくもっお正解だ」

     少幎は、䞊を芋䞊げお、ふうヌずため息を吐き出した。

     少女はそんな少幎を芋぀めながら、ふず思い出したように圌に尋ねた。

    「そういえば、あなたは珠が生たれる話しを『誰にも蚀えるもんか』っお蚀っおいたわよね。䞍思議な出来事や、今たで起きた事が無い事は、人に蚀っおはいけない事なの」

     魔女の恐ろしい話の䜙韻がただ残る䞭、思いがけない質問をされた少幎は䞀瞬思考が停止した。
     そしお、少女の質問をよくよく考えおみた埌、少し間を眮いお、口を開いた。

    「ええず、そうだね。なんだかさ、そんな話をしたらさ、皆んなから倉な奎だず思われそうでさ。だからなんだか、誰にも蚀っおはいけない気になっおいたね」

     少幎はもじもじず、䞋を向きながらそう蚀った。

    「そんなの倉だわ」

     そんな少女の率盎な物蚀いには驚くものの、圌は自分の䞭で䜕かがほどけるような気がした。

    「うん、そう蚀われおみるず、そんな気もしおくるね」
     少幎は苊笑いしながら答える。

    「だっお、これは実際あなたの身に起きおいるこずなんでしょう今たで起きた事がないからこそ、事が起きたずいう事実は呚りの人達に知らせた方がいいんじゃない」

     そう蚀われた少幎は、耇雑そうな衚情を浮かべた。

    「でもさ、人はさ、自分の知らない思いもよらない事や、信じられない事が起こるず、驚きが倧きければ倧きい皋、それを信じるこずから目を背けたり、跳ね぀けたり、ない事にしたがるもんだからさ。嘘぀きだっお蚀われるかもしれない」

    「なぜ」

    「うん、倚分、䞍安になるからさ。理解出来ない存圚や出来事はずっおも怖いし、いくら本圓の事でも理解したくない事もある。君も自分の思いもよらない事を知ったり出䌚ったりした時、怖くなったり䞍安にならない」

    「そうねぇ‥‥私も、確かに䞍安になったりするず思うわ。でも、たずえそれを排陀したっお、その事実はあり続けるもの。それならきちんず知っおおいた方がいいず思うの」

    「そうか、なるほど‥‥君は、なんだか偉いよ」

     少幎はなんずも蚀えない衚情を浮かべ、続けお話をした。

    「でも、君みたいに色んな出来事ず向き合える人達ばかりではないよ。怖い䞍安や䞍郜合な事実から目を背けお生きおいたい人もいるんだ」

     その蚀葉を聞いお、少女は䞍思議そうに尋ねる。

    「怖いからっお目を背けお、それで䜕か解決するの」

    「たあ、しないだろうね‥‥」

     少幎は目を瞑っお口を䞀文字に結んだ。

    「たぁ、それじゃあ、意味がないじゃない」

    「そうかもしれないね」
     少幎は目を瞑ったたた、たた苊そうに答えた。

    「知らないものを知れる事っお、ずおも玠敵なこずじゃない知識が増えれば理解出来る事も曎に広がっおいくじゃない」

    「ふぅん、そうかい。でもさ、知っお楜しい事ばかりじゃないんだぜ知っお苊しむ事や、悲しむ事もあるんだ。いっぱいあるんだぜ、だから人は䞍安になるんだ」

     少女は少幎の蚀葉の䞭から、時を経お積み䞊がっお出来た、䜕かの塊のようなものを感じた。

    「自分じゃあ、到底どうする事も出来ない事や、倉える事の出来ない事、かずいっお逃げる事も出来ない事もいっぱいあるんだ。そんな時には、絶望っおもんを嫌っおほど知るこずになる。党然楜しいもんか」

     先皋たで控えめな印象だった圌が、蚀葉に悲憀を宿らせおゆく。少女は静かに口を閉じ、それを芋぀めおいた。

    「知れば知るほど絶望しかなくなっお、頭がどうにかなっちたいそうな事だっおいっぱいある心がバラバラになっちたう」

     少幎は倧きな声で心を匷く吐き出した。

     その時だった、コロヌン、ず音を鳎らしながら、少幎から䞞い珠が床に転がり萜ちた。少女は足元たで転がっおきたその珠を、䞡手で拟い䞊げお手の䞭に玍めた。

     少女の口から蚀葉が自然にこがれ出る。

    「この珠、あなたの心の叫びなんだわ」

     少幎に目をやるず、圌は、ほう、ず呆けた顔で足元を眺めおいる。

     少女は、その珠から䌝わっおくる感情をひずしきり感じた埌、眮いおあった他の珠にも近付いお行った。

     珠はツルツルずしおいお、衚面は氎晶のように透明だった。その䞭は癜い霧が閉じ蟌められおいるように曇っおいる。

     他の珠も䞡手に取っお觊っおみた。するず先ほどず同じように、少幎のものであろう想いの数々が、少女の䞭ぞず䌝わり流れ蟌んできた。
     
     その珠達には、喜び、楜しみ、悲しみ、怒り、苊しみ、絶望、そんなものが沢山篭っおいた。




    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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