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「颚ず宎」第話・ニルダの森の掋通

    "あらすじ"

    少女は魔女に蚘憶を捧げ、自分の名前さえ知らぬたた、劖怪の通で暮らしおいた。‥‥
    ある日、癜い鷹の導きによっお、人間のいる䞖界を目指す旅に出る。

    ステキな銖茪をした猫、意識を朊朧ずさせる朚の実、䞍敵な笑みを浮かべる幟぀も頭を持぀劖怪、毎朝珠を産み出す少幎——

    旅の䞭で様々な出䌚いず別れを繰り返しながら、少女はい぀か自分が䜕者なのかを知る為の心の噚を築いおゆく。

    その旅路に珟れる黒い䜿者に、少女自身もただ知らない、ある倧きな秘密が隠されおいた。
    果たしお少女は、倱われた自分を取り戻すこずができるのか。

    生き物たちずの枩かな亀流ず、時に呜を脅かすような詊緎の䞭で、少女はひたむきに前ぞず歩み続ける。
     

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    第話 ニルダの森の掋通


     劖怪達が䜏むずいう、ずある倧きな森。それはニルダの森ず呌ばれおいた。

     森の䞭には、毎朝霧に包たれお湿り気を垯びた叀めかしい掋通が建っおいる。貎族達が昔やっおきお䜏んでいたのだろう。今ではたるで森の䞀郚であるかのように、蔊が煉瓊の䞊に根を瞫い蟌たせ、あらゆるずころに緑の暡様を玡ぎ広げおいる。

     もう長い事手入れのされおいない庭は、膝ほどの長さに雑草が茂り、地面には枯れ草が、叀い刺繍糞でステッチを亀互に重ねるように暪たわっおいた。

    ––––––––––

     数幎前にフランバずいう魔女がやっおきお、この掋通に䜏み着き始めた。

     郚屋の䞭は、開けっぱなしになっおいた窓や、ヒビ割れた窓ガラスの隙間から怍物が入り蟌み、奜き勝手に䌞び育っおいた。毒々しい赀い肉厚の花びらに癜い斑点暡様を付ける奇劙な花や、小さな葉っぱをちらほらさせお壁や家具を぀たい圷埚う现い蔊、それらがあちこち生えおいるのもお構いなしで、魔女は特段手入れをするこずもなかった。

     フランバは、ひしゃげた倧きな錻の魔女で、口はしわで匕き぀れお耳たで裂けおいる。尖った䞡耳にはい぀も真珠かルビヌのむダリングを付けおいた。爪は赀い唐蟛子のように長くお、マニキュアが厚く塗られおいるのだった。

     そしおどこからか怠惰な劖怪を集めおきおは、その劖怪達に魔法を掛けお掋通に䜏たわせおいるのだ。この通では、皆、蚘憶を明け枡す代わりに衣食䜏を䞎えおもらっおいる。劖怪達は他の者達の過去にも存圚にも興味などはないのだった。

     こうしお魔女は、誰も自分の元から去らぬように、䞀人がっちの孀独にたみれぬようにず、皆を自分の呚りに囲っおいた。

     今日もこの掋通では、奜きずきに酒を飲み亀わし、鳥も寄り぀かぬ倧いびきで寝転がる者、ふざけお走り回る者、そんな蚘憶を倱った劖怪達が朝から晩たで宎をしおいる。

    ––––––––––

     突然、フランバが倧きな声を䞊げお劖怪達に蚀った。

    「さあさあお前達ふんわりナッツを食べる時間だよ」

     葡萄酒を飲んだり、穎の空いた゜ファヌでうずくたったり、怍物の根を匕っ匵ったりず、のんびり寛いでいた劖怪達が、䞀斉にわらわらず魔女の元に矀がっお来る。

    「お前達䞀列に䞊びなさあお前、もう食べただろう、あっちぞお行き次はお前だよ。お前達䞀列に䞊びなず蚀っおいるだろうに」

     真珠の぀いたベレヌ垜ずファヌで着食った猿のような劖怪が、いち早くふんわりナッツを食べ終えおこう蚀った。

    「もっず食べたい」

    それを聞いたフランバは倧きく息を吞い、倧声で怒鳎った。

    「䞀日に䞀粒だずい぀も蚀っおいるだろうそれで十分なんだ。ほらお前達、䞀列に䞊びな」

     どんなに怒鳎ろうずも、劖怪達は誰も魔女の蚀う事など理解出来やしない。ふわふわず揺蕩う綿毛の様にゆらゆら呚りをうろ぀くばかりだった。䜕故ならふんわりナッツは考える事を止めおしたう䜜甚があるナッツだからだ。食べるず気持ちよくふんわりしおきお、䜕も考える事がなくなる。

     毎日、䞊ぶこずも出来ずに矀がる劖怪達に、魔女のフランバは無駄な時間をかけお忙しなくナッツを䞎える。フランバは圌等を恍惚感に浞らせる方法をいく぀も甚意しおいた。

    ––––––––––

     今日も繰り返される隒然ずしたやり取りの䞭、人間の女の子が䞀人、通の裏にある庭の朚の陰に身を朜めおいた。

     少女の目はくるりず倧きく、錻ず口は小ぶりだ。サラサラずした腰たである長い髪を持ち、それは氎面に煌めく反射のように艶やかだった。歳は十歳ほどだろうか。少し痩せおおり、服は土埃で薄汚れおいる。

     少女は五幎皋前にこの掋通ぞやっお来た。

     お腹を空かせ、ニルダの森を圷埚っおいたずころ、子豚くらいの倧きさの、頭に花を咲かせた倧きなネズミの劖怪に連れられ、ここに蟿り着いたのだ。そしお、雚颚を凌げる寝床を確保する為、通のボスであるフランバず取匕をしたのだった。

     魔女に蚘憶を明け枡した少女は、それゆえに、自分が䜕者かも䜕凊からやっおきたのかも分からない。

     少女がここに隠れおいるのは、他の劖怪達ず違っお、自分の蚘憶を魔女に枡したこずを埌悔しおいたからだった。これ以䞊䜕かが分からなくなるのが嫌でナッツを食べたくないのだ。

     庭の朚の枝は、䜕股にも分かれお倪陜に向かっお延びおおり、折り重なる枯れ草の䞋では、虫達が息を朜めお少女の様子を䌺っおいた。

     少し離れたずころから、ガサガサず枯れ草を螏む足音が聞こえおくる。倧きな良く利く錻をした、緑のベストず赀いサテンの銖茪を纏った犬の様な劖怪が、ふんふんず錻息を立おながら魔女ず共に少女のいる朚の方に近付いお来たのだ。

     少女は慌おお息を朜めた。しかし自分の匂いを隠す事など出来はしない。ススりず犬の様な劖怪は、蟺りに挂う匂いを根こそぎ嗅ぎ取った。犬の倧きな錻に匂いを吞い蟌たれた少女は、あっずいう間に芋぀けられおしたった。

    「居るよここだよあの嚘の匂いがするよ」
     錻の効く、犬の様な劖怪が叫ぶ。

    「よヌしよし、よくやったよお前は、ほら干し肉をやろうそらお食べ」

     そう蚀っお魔女は、よく熟成された赀茶色の䞉センチ四方の干し肉の欠片を犬の様な劖怪にやった。

     そしお少女の方に向くや吊やこう叫んだ。

    「この小嚘ったらこんな所にいたのかい䜕床蚀ったら分かるんだいふんわりナッツの時間には広間に来お、䞀列に䞊んでちゃんずナッツを食べるんだよほらここでいいから口を開けな」

     りンザリした少女は、瞑ったたぶたの裏偎でくるくる癜目を剥き、頭の芯にビリビリした䞍快感を感じながら嫌々口を開いた。

     魔女にナッツを口の䞭ぞ攟り蟌たれた少女は、モグモグず口を動かしおみせ、舌の䞋にすっずナッツを隠す。

    「お前はどうもナッツを食べないようにしおいるきらいがあるからね、口を開けな」

     少女は柄たし顔でシラりず口を開けおみせた。

    「舌を䞊ぞ䞊げな」

     舌の䞋にナッツを隠した事がすっかりバレおしたった少女は、䞀床口を閉じ、ゎクリずナッツを䞞呑みした。



    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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