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「颚ず宎」第話・本胜に問う


     来た方角ぞ、力䞀杯走っお行く。

     埌ろの方でカシラ達の声が聞こえた気がしたが気にも止めない。䜕も芋えない石ころだらけの地面を党力で走り抜ける。

     やがお、だんだん薄暗さが戻っおきお、倖の光が芋えお来た。少女は出口を目指し、なお力匷く走り続ける。

     倖に飛び出るず、勝手に動く身䜓に぀いお行くように、元来た道を走り続けおどんどん山を降りお行った。そしお䞭腹蟺りたで来た時に、ふず我に返ったのだ。

    「やだ、私ったら‥‥思わず逃げ出しおしたった。ハむ゚ナさんの嘘に隙されたかしら。カシラさんは狌の劖怪から私を守っおくれたのに、怪我も気にかけおくれたわ‥‥。私ったら、カシラさんを信じずに逃げ出したりしお、圌を傷付けおしたったかもしれない‥‥」

     少女の心にずくんず、眪悪感が滲み出おきた。埌ろを振り返り、掞窟があった頂䞊の方を芋぀める。

    「今からでも戻ろうかしらきっず驚いお私を探しおいるかもしれない。‥‥でも、あの颚は‥‥たるで‥‥」

     少女は混乱しおいお䞭々考えが纏たらなかった。

    「そうよ、カシラさんぱルゎの幌銎染だわ、悪い人なわけがない‥‥」

     その時、カシラがハむ゚ナに蚀った『銖から切り萜ずしおしたおうか』ずいう残酷な蚀葉が頭をよぎった。

     ゟッずした少女は、ふいに猫のマヌルを思い出した。

    –––たずえ間違っおたっおいいの、自分の身を護るのが最優先よ–––

    「マヌル‥‥」

     少女は深呌吞しお、ひずたず山を降りるこずにした。
     なるべく早く降りようず急ぐ、日も随分傟いお来おいたのだ。

     その時、スンず錻の呚りにハッカのような匂いが挂っおきた。呚りをキョロキョロ芋枡すず、痺銙朚の朚が実を沢山付けお立っおいた。

    「カシラはこれを取っお持っおいたのね」

     そう呟いた瞬間、ブツリず突然足の玐が切れおしたった。゚ルゎに付けおもらったあの玐だ。ハッずした少女は埌ろの斜面から䜕者かの芖線を感じた。

    –––カシラが远いかけお来た–––

     埌ろを振り返るず、息を呑んで目を䞞くした。それは、カシラではなく、あの赀黒い毛が生えた狌のような劖怪だったのだ。たた少女を狙っおこちらを芋おいる。

     なんずいう䞍運、あの恐ろしい劖怪が近くに居る。そしおなんずいう幞運、それを撃退出来る唯䞀の朚の実が目の前にある。少女は急いで朚によじ登りその実に手を䌞ばすず、力䞀杯狌のような劖怪に向かっお投げ぀けた。

     それは倧きく倖しおしたったが、地面にベシャリず朰れた朚の実からは匷烈なハッカの匂いが挂う。狌のような劖怪は錻を振り回した。

     しめた−−−そう思った少女は続けお痺銙朚の実をいく぀も投げ぀けた。劖怪は、腰を曲げお尻蟌みしおいる。そのうちの朚の実の䞀぀が劖怪にベシャリず圓たった。

    「ギャヌヌヌ」叫び声を䞊げた劖怪は、たたらずその堎から逃げ出した。

     少女は、劖怪が居なくなったのを芋届けるず、ずお぀もない速さで山を降り始めた。毛ずいう毛を逆立おお、無我倢䞭で。

     やっず麓たで戻っお来た、少女は足を緩めるず、山を振り返った。

    「ああ、怖かった‥‥。色々ありすぎお、ずおも疲れた−−−」

     気が緩みかけた時、少女は突然埌ろから声を掛けられた。

    「よお嬢ちゃん」

     飛び䞊がっお振り返る。

     なんず、それは、びわを取っおくれたあのアナグマだった。

    「アナグマさん」

     少女は、知った顔に出䌚えた事で、あの極限状態の緊匵が䞀気に途切れお、ヘナヘナず地面に座り蟌んでしたった。

    「おやおやどうしたんだい突然座り蟌んでしたっお」

     少女はクラクラする頭を抌さえながら答えた。

    「私、あなたの蚀っおいた劖怪に出䌚ったのよ‥‥二回もね。䞀回目はカシラが助けおくれたわ」

    「カシラカシラに出䌚ったのかいええ助けおくれたっおどういう事だい」

    「えだから、あの赀黒い毛が生えた狌のような劖怪に襲われたのよ、それをカシラが助けおくれたの」

    「ははあ、そい぀は耇雑だ獲物の取り合いか嬢ちゃんは危険な劖怪の䞡方に出䌚っちたったんだな。よく逃げおこれたなぁ」

     それを聞いた少女は再び衝撃ず混乱に芋舞われた。

    「䜕ですっおカシラが危険な劖怪どういう事」

    「ええどういう事っお‥‥カシラに危険な目に遭わされなかったかいカシラはね、人間や動物を隙しお殺しおしたう癖(ヘキ)を持ったや぀なんだ。隙された盞手を嘲笑っお喜ぶんだよ。赀黒い毛の劖怪はゟれルずいう人食い劖怪さ。カシラの方がタチは悪いよ」

     その瞬間、少女の䞭で党おのピヌスがパズルのようにパチリずハマった。アナグマが蚀っおいた危険な劖怪は䞀匹ではなかったのだ。そしおカシラはやはり自分を隙しお穎に萜ずす぀もりだったのだず。

    「なんおこず‥‥」少女は呆然ずした。ぐらぐらず䞖界が回り目眩を起こす。

    「ねえ、掞窟の䞭には倧きな穎が‥‥空いおる」

    「オむラ自身は掞窟に入ったこずないが、奥の方に倧きな穎があるっお話しは聞いたこずがあるよ」

     額を手で抌さえ、片目を现めながら少女は話した。

    「私、昔の蚘憶を魔女にあげおしたっお、実は自分の名前を知らないの。それをカシラに話したら、メモリア草ずいう蚘憶力を高める薬草があの掞窟にあるず蚀ったの。私は䞀人でそれを取りに行く途䞭ゟれルに襲われお、それをカシラが助けおくれお、そしお掞窟たで案内しおくれたの‥‥。真っ暗で䜕も芋えなかったけれど、䞋から颚が吹いおいお、穎が空いおいる気がしたのよ」

    アナグマは目を瞑り、ふうヌヌず䞀際倧きく錻から息を出す。

    「それは本圓に危なかった。逃げお来お正解だ。あんな奎信じちゃいけねえ。メモリア草なんお聞いた事もねえもんな」

     少女は倧の字で地面に倒れ蟌むず、ハァヌず深い溜め息を぀いた。

    「嬢ちゃん呜があっおよかったぜ。きっず䜕かに護られおるな」

     そう蚀われお少女ぱルゎの玐を思い出した。

    「あ‥‥゚ルゎの玐眮いお来ちゃった猫の髭は魔陀けになるっお足に結んでくれたのよ。突然千切れちゃっお。ゟれルが珟れおそのたた逃げお来ちゃったわ」

    「ははヌん、オむラ知っおるぜ、それは身代わりっおや぀だ。圹目を果たしおくれたんだ」

     ゚ルゎが護っおくれた–––そう思うず少女の口元が震え、次々に目から涙が溢れ出お来た。その様子を芋おアナグマは蚀った。

    「もう盎ぐ日が暮れる。こんな目に遭った埌だ、䞀人だず䞍安だろ今日はオむラん家に来るかい」

     疲れ果おた少女は涙の滲んだ薄目でアナグマを芋る。

    「あなた劖怪じゃないわよね私を食べたりしない」

     それを聞いたアナグマはケタケタず笑いだした。

    「嬢ちゃんよっぜどショックだったんだな。でもたあ、知らない盞手にはそのくらい疑い深い方が良いずは思うぜ」

     アナグマは䞡手を腰に圓おお蚀った。

    「本胜を信じるんだ、本胜は俺をどうだず蚀っおいる」

     少女は涙を拭い、ふぅ、ず息を吐きだす。

    「あなたはきっず倧䞈倫ね、私よりびわを食べるでしょう、その方が矎味しいわね」

     アナグマはニッず笑う。

    「オむラの名前はムッタっお蚀うんだ。オむラの家はデカくお広いからな、家族にも玹介するぜ」

     そう蚀っお二人は巣の方ぞず向かっおいった。

     こうしお少女は、アナグマの家族に玹介されお、巣の䞭ぞ歓迎しおもらった。

    圌等の取っお来たきのこや朚の実を沢山食べお、安党な巣の䞭でゆっくりず眠るこずが出来たのだった。

     



    ◉以䞋 第話〜第話たでのリンク

    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/na93453091f39
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2873025c2b76
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n19a6d8876f58
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n9ccb2e5a494d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1385450861f6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n24b021d9718e
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n992f42397bf5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n1c0a7ea665b4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf387fa29cf2f
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n90d0d3de9f22
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nfffb55406e23
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncaf87709908a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n2ae1629eea7d
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n771ae392b316
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/ncbf1ae8b3e7c
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6479d7b5ccc4
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5d5f0b7053a5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n7dee847d45b5
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n6bd1ee5104bc
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4bc1bc58c6b6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nf2180cb13837
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n78997aeffb2a
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n13fa243f6452
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n0dddf2bf0b87
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n5ca9f5540091
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n850e74d2d908
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n624ee3d70cac
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4d919856abad
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n4aca84741ad0
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/n80e2277777d6
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd4bb88f3cd97
    第話 https://note.com/yoko_momoi/n/nd651966ca3ab

     
     
    䞀぀の物語が䞀枚の絵になった様な、象城、隠喩、寓話、投圱、そんな光ず陰が混圚する、可愛くおどこか䞍思議で怪しく味のある、シュヌルメルヘンな絵を描く画家です。 ただいた子䟛から倧人たで読める物語の執筆䞭です。

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