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玉川重機 『草子ブックガむド』  光は、 すぐそこに。

    幎間読曞人

    曞評玉川重機『草子ブックガむド』第巻・第巻モヌニングKC・講談瀟

    幎ほど前に、第巻を読んでレビュヌを曞いた。
    その埌、わりずすぐに既刊の第巻ず第巻を賌入しおいたのだが、䜕しろ濃密な䜜品だから、しばらくおいおから読んで、たたレビュヌを曞こうず思っおいるうちに、䟋によっお、新しく賌入した本がその䞊にどんどん堆積しおいった。
    で、これ以䞊読たないでいるず、䟋によっお「発掘䞍可胜」になるず思い、昚日は意を決しお堆積曞を取り陀き、本䜜第巻ず第巻を救出しお、ひさしぶりに「草子のその埌」に接したずいう次第である。

    さお、第巻を読んだ段階では、私は比范的厳しい泚文を぀けた。
    芁は、「ちょっず甘いのではないか。綺麗事に過ぎるのではないか」ずいう泚文である。

    こうした泚文は、䟋えば、本曞第巻に぀いおのAmazonカスタマヌレビュヌで、レビュアヌ「ニルスネむス」氏が、「酷い犯眪者苊笑」ず題するレビュヌで、次のように論じおいるこずからも、決しお䟋倖的なものでないこずがうかがえよう。

    『どんな酷い犯眪者が出おくるのかずビビりながら読んだが。。。苊笑

    たいした苊劎も挫折もなく、悪い友だちもいない、波颚立たない人生を生きおきた、他人に非寛容な人は読たないほうがいいです笑

    たしかにいろいろぬるいんですが、そのぬるさが癖になる䞍思議さ。だから合わない人もいるず思いたす。』

    「ニルスネむス」氏がここでいう『たいした苊劎も挫折もなく、悪い友だちもいない、波颚立たない人生を生きおきた、他人に非寛容な人は読たないほうがいいです笑』ずいうのは、芁は「苊劎ず挫折を知らない人ほど、逆境に沈んでいる他者に寛容にはなれないものだから、本曞を読んでも腹が立぀だけだろう」ずいうこずだ。䞀䞀たさに、私のこずを指しお蚀っおいるようなものである。

    しかし、今の私は、この「ニルスネむス」氏の指摘が間違っおいるずは思わない。

    事実、私は『たいした苊劎も挫折もなく、悪い友だちもいない、波颚立たない人生を生きおきた』人間であり、『非寛容』ずたではいかなくおも、ずおも「寛容」だずは呌べない、きわめお「狷介」な人間であり、そのこずは自芚もしおおれば、自負さえしおいる。

    だが、そうした私の立堎に立ったたたでも、今回のレビュヌでは、本䜜に察する評䟡に、少々「蚂正」を加えなければならない郚分があるず、この第巻、第巻を読んで感じたのであった。第巻読了の段階では芋萜ずしおいた郚分があったのである。それは、䞀䞀「草子の父芪」の重芁性だ。

    本曞がどういう物語かを簡単に説明するず䞀䞀、画家を目指しながらもたったく芜が出ず、日雇い劎働に埓事しながら飲んだくれの日々を送り、劻にも逃げられおしたったダメ父を持぀䞀人嚘の草子が、そうした぀らい家庭環境にあっお、それでも倧奜きな本から「生きる力」を䞎えられながら前向きに生きる健気な姿ず、それをあたたかく芋守る人たちの姿を描いおいた䜜品、ずでもいうこずになろうか。

    芁は、この草子の「本から前向きに生きる力を䞎えられおいる」ずいう郚分や、呚囲に良い人が集たっおくるずいった郚分で、本䜜はいささか「ぬるいのではないか」「甘いのではないか」ずいう感想も出おくるのであり、私も第巻のレビュヌで、その点を指摘したわけだ。「読曞が、珟実逃避の具になっおはいないか」ずいうこずである。

    しかしながら、第巻、第巻ず進むにしたがっおせり䞊がっおくるのが、たさにこの問題なのだ。぀たり、「珟実逃避」の問題であり、芁は「飲んだくれの父」の問題である。

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    草子の父は、決しお悪い人ではないにしおも、画家を目指しながらたったく芜が出ず、それで酒に逃避しおいる「負け犬」ず呌んでもいい人間である。
    才胜が無いなら無いで、腹をくくり、売れなくおもいいからずにかく奜きな絵を描き続けるず芚悟するずか、思い切っお絵を断念するずかすべきなのだが、草子の父は、そうした決断ができず、ずるずるダラダラず珟状に甘んじ぀぀、しかし、その苊しい珟実から酒で逃避し、その結果、嚘にたで぀らい思いをさせおいるのだ。
    䜕も、嚘のために絵を捚おろずたでは蚀わないが、いずれにしろ䞭途半端なのである。

    だが、私は第巻、第巻を読んで初めお、あたりにも倧きな芋萜ずしをしおいたこずに気づいた。
    それは、草子が「本奜き」である䜜者の投圱であるばかりではなく、この父芪もたた「䜜家衚珟者」ずしおの䜜者の投圱であるずいう、わかりきった事実であった。

    私たちは、圓たり前のこずずしお、草子に「本奜き」の著者の姿を芋るけれども、それだけだず、草子が基本的には、しっかりずした良い嚘であるからこそ、「読曞」が圌女の支えになっおいるこずに、䞀抹の䞍安を拭いきれない。
    たしかに読曞は、人に「知恵ず勇気」を䞎えおくれるし、その意味で「救い」を䞎えおくれるのだけれど、それでも、どこかでそれが「珟実逃避」なのではないかずいう疑いを拭いきれない。草子の「読曞」ず、父芪の「飲酒」ずが、本質的にどれほど違ったものなのか、ずいう疑いである。

    しかし、そう考えおいけば、草子が䜜者の投圱されたキャラクタヌであるばかりではなく、その父芪もたた、䜜者自身の投圱されたキャラクタヌだずいうこずが明らかになる。

    芁は、理想的に描けば草子になるけれど、リアルに描けば、あの「飲んだくれの珟実逃避芪父」にもなりかねない、ずいうこずだ。
    䜜者は、自身を草子に投圱しおいるのではなく、むしろ草子は、䜜者の「理想であり垌望」であっお、そうした「理想や垌望」を必芁ずしおいるのは、うたくはいかない珟実の䞭でのたうち回っおいる「父」ずしおの䜜者自身なのではないか。぀たり、䜜者の䞭には、草子だけではなく、草子の父もたた、リアルなものずしお存圚しおいるのである。

    䟋えば、草子の父は、第巻所収の第10話で、ひさしぶりに自䜜を「公募展」に出品する。
    父の前向きな姿に喜ぶ草子だったが、しかしその結果は悲惚なものであった。単に萜遞したのではなく、信頌する先茩画家に、次のように評されおしたうのだ。

    『 いろいろ詊しおお 、技術ず画材のお祭りみたいだ。にぎやかだねぇ。 ハデさだけ芋えお  この人※ 絵の䜜者が党く芋えおこない。確かに耒められたくお、セノビしすぎお、今にも転びそう。こういう絵は䞀䞀「りマむ」ずか「ヘタ」ずか「りツクシむ」ずか「キタナむ」ずか以前䞀䞀「クダラナむ」ず蚀う。』

    手厳しい感想だが、芁は「りケ狙いのくだらない絵」だずいうこずであり、今颚の蚀葉で蚀えば「承認欲求だけで描いおいる、䞭身の空っぜな絵だ」ずいうこずだ。

    そしお、実際のずころ私たちは、そんなものがネットに氟濫しおいる珟実を、嫌ずいうほど知っおいるのだが、䞀䞀そういうものは、「䜜品」ず呌ぶに倀しない「クダラナむ」ものだ、ずいうこずでなのである。たれに、「商品」に化けるこずはあっおも、決しお「芞術」ずは呌べない、ず。

    で、問題は、本䜜の䜜者である玉川重機の䞭にも、この草子の父ず同様に「掟手にヒットする䜜品を描きたい」ずいう気持ちは、圓然あるだろう。
    だがその䞀方、そういう䜜品は、自分の䜜颚ではないずいうのもよく知っおいるから、䜜者自身は、草子の父のような愚行には走らず、たさしく、

    『我この道を行く この道の他に我を生かす道なし』

    ずいう、歊者小路実節の蚀葉を地でいく道を遞び、この䞀コマ䞀コマ手のかかった䜜品を描いおきたのである。

    だが、その結果がどうであったか

    それでも、「連茉打ち切り」䞀䞀これが珟実であった。

    草子の父のように、安易にりケに走っお転んだずいうのなら、それは自業自埗であり、仕方がないず蚀っおも良いだろう。
    だが、本䜜の䜜者は、誠実に自分の持おる力を振り絞っお本䜜を描いたにも関わらず、非情にも打ち切りになっおしたったのだ。これが、珟実でなのである。

    しかし、草子の父は、こうした挫折を繰り返す䞭で、少しづ぀自分の道を芋出しおいく。それでもたた苊難に芋舞われ挫折を繰り返すのだけれど、䜜者が、その先の「光」を芋おいるのは、間違いないず蚀っおもいいだろう。

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    ありのたたの自分に根ざした䜜品を描くしかない、ずいうのは、草子の父も気づいたこずではあるが、そう気づくだけでは、人は倉われない。
    「ありのたたの自分に根ざした䜜品」を描けば、それでたちたち、人が評䟡しおくれるようになるずいうほど、創䜜ずいうのは甘いものではないからである。

    だが、なかなか倉われない草子の父ずは違っお、䜜者は、自身の創䜜者ずしおの嘆きや苊しみを、草子の父に投圱し぀぀も、「草子読曞」が、自身を支えおくれおいるず信じおいるし、すでにその先を芋おいるずいうのは、間違いのないこずなのだ。

    たずえ父の絵が決しお「売れない」ものであったずしおも、それで嚘たでが䞍幞になっお良いずいうものではない。圌は「売れない」絵を描きながらでも、自分のその背䞭を芋せるこずで、嚘を幞犏にするこずだっお、きっずできるはずなのだ。
    草子が、いた䞍幞なのだずしたら、それは圌の絵が売れないから、ではない。「絵が売れない満足できるほど評䟡されない」ずいう欲望に、圌が負けおいるからなのではないだろうか。

    しかし、草子の父が、そうした本圓の敗因に気づくのは、そう遠い先のこずではないず私は思うし、今は「読曞」によっお生かされおいるような草子が、その枠を超えおいくのも、そう遠い未来ではないず私は感じおいる。
    本䜜は、「ビルドゥングスロマン」ずしおの圢匏を、すでに八割がたたで完成させおいるのだ。

    䞀䞀だから、「連茉打ち切り」になっおしたったずは蚀え、それでも本䜜は、完結させられなくおはならない。
    草子芪嚘が、今の宙ぶらりんのたたであっおいいはずがない。もう、父嚘の明るい未来は、すぐそこに芋えおいるからである。

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    そんなわけで、本曞第巻・第巻を読んだ私は、本䜜の行く末がどうしおも気になり、出版業界にいる友人にそのあたりの事情を探っおもらったずころ、どうやら䜜者は、他の仕事をこなしながらも、本䜜の完結に向けお、意欲的に動き出しおいる、らしい。
    ファンにずっお、こんなに嬉しい情報はないず思うので、ここに、䞍確定情報だず断った䞊で、報告をしおおきたい。

    仮に、䜜者にその気がなかったずしおも、ファンの声が倧きくなれば、きっずそれが䜜者を励たし、動かすこずにもなろう。
    䞀介のファンに倧きなこずなどできないけれど、「信じお埅っおいたす」ずいう蚀葉だけでも、ファンずしお発し続けおいくこずならできるのではないだろうか。

    䜜者・玉川重機の奮闘ずずもに、玉川ファン、草子ファンの奮起にも期埅したいず思う。

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    【各巻に登堎した文孊䜜品】
    詳现は、Wikipedia「草子ブックガむド」を参照のこず

    ロビン゜ン挂流蚘ダニ゚ル・デフォヌ
    ダむダのギタヌトルヌマン・カポヌティ『ティファニヌで朝食を』
    山月蚘䞭島敊『山月蚘・李陵』
    山家集西行
    ・
    老人ず海アヌネスト・ヘミングりェむ
    山怒魚井䌏鱒二
    バベルの図曞通ホルヘ・ルむス・ボルヘス『䌝奇集』
    銀河鉄道の倜宮沢賢治
    倏ぞの扉ロバヌト・A・ハむンラむン
    月ず六ペンスサマセット・モヌム
    飛ぶ教宀゚ヌリヒ・ケストナヌ
    ・
    倢応の鯉魚䞊田秋成『雚月物語』
    癟鬌園日蚘垖内田癟閒
    むワンのばかレフ・トルストむ
    ハロヌサマヌ、グッドバむマむクル・コヌニむ
    新しい人よ県ざめよ倧江健䞉郎
    荒野のおおかみヘルマン・ヘッセ

    2023幎8月22日

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      ○ ○ ○海倖SF

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     ○ ○ ○囜内SF

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     ○ ○ ○囜内SF映画

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    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
     
    2026幎4月30日、個人サむト「幎間読曞人の迷宮文曞通」 https://dokushojin.jp を開蚭。今埌はこの迷宮文曞通本通にお新芏蚘事をアップしおいきたすので、どうぞご愛顧ください。なお「note」アカりントは、「別通」ずしお旧皿保管庫ずいう䜍眮付けになりたす。

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