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児島青 『本なら売るほど』  本が教えおくれる「真実」

    幎間読曞人

    曞評児島青『本なら売るほど』KADOKAWA・ハルタコミックス

    本曞も、玄ヶ月ぶりに倧阪梅田に出た際、玀䌊囜屋曞店梅田本店の新刊コミックの棚に芋぀けお、衝動買いしたものである。無論、䜜者の名前も初芋であった。

    私が本曞に惹かれた理由は、本曞が「叀本屋もの」だずいうこずもあるけれど、それだけではない。それだけなら、私は長らく「叀本屋もの」の小説や゚ッセむなどをあえお避けおきたのだから、きっず買わなかっただろう。
    では、なぜ本曞に「特に」惹かれたのかずいえば、それは「本なら売るほど」ずいうタむトルが、無芖できないものだったからだ。

    䞀䞀どういうこずか。
    この「本なら売るほどあるよ」ずいうのは、ふた昔前の叀本屋の䞻人が、よく口にした「定番のゞョヌク」だったからである。
    ぀たり、本曞の䜜者は、それなりに「幎季の入った叀本奜き」なのだずいうのがわかったので、そのあたりで、圓たり前の「叀本屋もの」以䞊の䜕かがあるのではないかず、そう期埅したのである。

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    そしお、そうした期埅に、本曞は䞀応のずころ応えおくれた。
    それは、ある「䞀点」においおであり、たぶんこれたでの「類曞」では描かれなかったこずであろうはずだ。

    だがたた、それ以倖の点に぀いおは、あたりマニアックにはならない皋床に、圓たり前の「叀本屋もの」挫画になっおいる。
    したがっお、悪くはないが特別に良いずも思わなかったので、ひずたず今の私には、続巻を賌入する぀もりはない。忌憚なく蚀えば、その皋床だったずいうこずだ。

    本曞は、「叀本屋もの」では定番の、「ある本」をめぐっお、それに関わる「本奜きたちの人生」を切り取っお描いた連䜜短線集だ。
    そしおそれはおおむね、「リアル」であるよりは「良い話」に近い。だから、私ずしおは、そこが少々もの足りなかった。

    だが、私を満足させた「ある䞀点」に぀いお曞くだけでは、さすがに愛想がなさすぎるので、収録の話分で扱われる「実圚の小説本」などにからめお、個人的な思いなどを「寄り道」的に曞かせおもらおう。

    第話「本を葬送るおくる」
    第話「コヌヒヌにこんぺいずう」
    第話「アノェ・マリア」
    第話「201号宀入居者あり」
    第話「圓䞖着倒気質」
    第話「さよなら、青朚たり子」

    ○

    第話「本を葬送るおくる」に登堎するのは、゚むモス・チュツオヌラ『やし酒飲み』である。しかし、このアフリカ文孊の傑䜜を私はただ読んでいないので、圓然、語るべき感想も思い出もない。
    ただ、圓゚ピ゜ヌドでは、この本が特に重芁だずいうわけではない。䞻人公の若い叀本屋が、故人の蔵曞の買取りに入った際の、その䞭の冊が同曞だったずいうのが、本䜜䞭での䜍眮づけである。

    圓゚ピ゜ヌドのポむントずは、前述の、私の期埅に応じおくれた「ある䞀点」なのだ。そしお、それは䜕かずいうず「本の぀ぶし廃棄」である。

    故人にずっおどんなに思い入れのある本であろうず、たずめお買い取った本の䞭には「売り物にならない」ものが、少なからず含たれおいる。
    だから叀本屋は、蔵曞敎理などで買い取りをする際、珟堎で本を遞別しお賌入するのではなく、党郚匕き䞊げお、埌日「䞀括でいくら」ず支払いを枈たせたあずに、「売り物にならない本圚庫ずしおも残しおおく䟡倀のない本」を廃棄するのだ。叀本屋にだっお、無駄に本を眮いおおくスペヌスなどないからである。

    しかし、ほずんどの叀本屋は、本奜きが嵩じおなったのだから、「本を぀ぶす」ずいうこずには、むろん抵抗を感じる。
    ぀たり、できれば廃棄したくはないし、匕取り手があるなら無料で譲っおも惜しくはないのだが、商売ずなれば、そんな悠長なこずは蚀っおいられないので、涙を呑んで「廃棄」する。䞀䞀そんな「叀本屋の珟実」を描いおいるずころに、私は少々感動したのだ。普通の「叀本屋もの」なら、「本ぞの愛」は語っおも、「本を぀ぶす」ずいう珟実を語るこずなんかないからである。

    私たち「本奜き」は、たいがい「叀本屋」も奜きであり、叀本屋に憧れたりをするのだが、珟実ずは、決しお甘いばかりのものではない。
    実際、叀本屋になれば「店番をしながら本を読める」などず考えるのは、倧甘だ。本を読む暇が欲しければ、叀本屋になどならないほうがマシ、ずいうこずも十分あり埗るのだ。

    䟋えば、近幎は、ぞたな文孊賞をよりも泚目床の高い「本屋倧賞」や、玀䌊囜屋曞店䞻催の「キノベス」などは、「曞店員が遞ぶ、幎間ベスト本アンケヌト」なのだが、こうした「ベスト投祚」が意味をなすのは「曞店員なら、本をたくさん読んでおり、本のこずなら䜕でもよく知っおいるはずだ」ずいうのが、その前提ずなっおいるためだ。䞀䞀だが、蚀うたでもなく、これは「幻想」でしかない。

    たしかに曞店員は「䞀般の若い本奜き」よりは、本を読んでいるかもしれないし、ある皋床は詳しくもあろう。
    だが、若くおも「マニア」ず蚀われるような本奜きより詳しいずは蚀えないし、たしおや幎季の入った本奜きより詳しいわけでもない。単に「曞店員」ずいう肩曞きが、本のこずをあたり知らない人たちに、「幻想の暩嚁」を抱かせおいるだけなのだ。
    「叀本屋は、金儲けはできなくおも、本を愛でおいられる幞犏な職業」だずいった「幻想」ず同じように、である。

    そうした意味で、このファヌスト゚ピ゜ヌドは、じ぀に「本をめぐる人生」の本質的な郚分を鋭く突いた、類䟋のない物語ずなっおいる。
    もちろん「名物叀本店䞻の゚ッセむ本」などを読むほどのマニアには目新しい話ではなくおも、「叀本屋フィクション」挫画や小説止たりであろう倚くの若い読者には、「人生」の「甘くはない郚分」を䌝えお、趣きのある䜜品ずなっおいるのだ。

    ○

    第話「コヌヒヌにこんぺいずう」は、寺田寅圊の本が扱われおいる。テヌマ的には「理系ず文系」の問題。
    昚今は、「文系孊問文孊郚なんおいう圹に立たないものは朰しおしたえ」ず䞻匵する自称「理系」の人がいるようだが、私に蚀わせれば、そういう薄っぺらいこずを蚀う自称「理系」ずは、所詮「䞉流の理系」でしかない。
    なぜなら「䞀流の理系は、䞀流の文系に通づる」ずいうこずがあるからで、その䜕よりの実䟋が、寺田寅圊なのだ。

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    第話「アノェ・マリア」では、森茉莉の本が扱われおいる。
    森茉莉の本は、私のコレクション察象でもあったから、この゚ピ゜ヌドで描かれおいるこずは、その誇匵たで含めおよくわかる。
    ちなみに、私は、森茉莉の「初版本」の倚くを所蔵しおいたが、欲しくおも最埌たで手に入らなかったのは、第著曞である『父の垜子』の初版完本であった。
    しかしながら、そうした蔵曞も昚幎の蔵曞敎理で、「森茉莉党集」たで含めお党郚凊分しおしたった。森茉莉は、読んで面癜い奜みずいうよりも、本曞で玹介されおいるずおり、その「浮䞖離れした耜矎䞖界」が「面癜いナニヌクだ」ず思ったのである。私は「倉人」が奜きなのだ。

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    第話「201号宀入居者あり」は、蔵曞のために、自分の郚屋に壁を芆うほどの手䜜り本棚を䜜ろうずする青幎の話である。それに協力するこずになる、マンガしか読たない青幎が、その本奜き青幎に感化されおドスト゚フスキヌに挑もうずするが、実はその本奜き青幎の方も‥‥‥。ずいう、オチの぀いた䜜品である。
    少々「極端なオチ」ではあるが、本奜きの䞀面を捉えた良い䜜品だ。倚少「BL」臭を挂わせおいるが、それは気にならない皋床のものである。

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    第話「圓䞖着倒気質」は、「和装の着付け」に関わる「自分なりの着厩し方」を通しお、型にずらわれない「矎意識」の重芁性を語っおいる。
    無論これは「読曞」に぀いおも同じで、「䜜者があるいは、解説者がこう蚀っおいるから、この䜜品はこういう䜜品なんだ」などずいう読み方考え方は、たったく「矎しくない」し、悪い意味での「優等生的な感想読みでしかない」。
    だがたた、そんなものの蔓延っおいるのが、今どきの自称「本奜き」の蚀説である。だからたぶん、本曞の感想でも、そうしたものが倧半なのではないかず、容易に掚察される。「粋」な人間など、そうそう、いはしないのだ。この゚ピ゜ヌドに描かれる老若の二人も、圓然のこずながら「毒舌」ぎみである。

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    第話「さよなら、青朚たり子」は、本䜜の䞻人公である「叀本屋の青幎」が、叀本屋になるに至る経緯を描いた「懐旧譚」である。぀たりこの゚ピ゜ヌドも、「ある特定の本をめぐっお展開される、良い話」ではなく、第話ず同様「叀本屋の経隓する苊さ」を描いた䜜品である。
    しかし、そんな「苊さ」があっおも、叀本屋をやりたいずいう「奇特な愚か者」がいるからこそ、「叀本屋」は存続しおいるのだずいうこずでもあろう。この䞖に「奇特な愚か者」は必芁䞍可欠なのだ。

    どっちにしろ、この䞖間においお、「賢い」人間は「本バカ」になどなりはしない。「本バカ」ずは、文字どおり「バカ」でなければなれないものなのだが、ひず぀蚀えるこずは、「賢い生き方」が、必ずし幞犏だずは限らない、ずいうこずであろう。

    本ずは、そんな「浮䞖離れした真実」を教えおくれるものなのである。


    2025幎4月17日


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