
愛と呼ぶには、まだ遠い三人【11】|8章【挿話】星降る夜に|#創作大賞2026
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第8章【挿話】星降る夜に |玲奈編
夜の冷気をまとったまま、部屋に入る。
ドアを閉める音が、やけに長く響いた。
コートを脱ぎ、耳飾りを外す。
その動きの中に、まだあの時の感覚が残っている。
わずかな光の気配と、静かな空気が。
「綺麗だったな」
玲奈はベッドの端にストンと腰を下ろす。
今日の断片が、順番もなく浮かんでくる。
ドームの暗さ。
流れる星。
隣から落ちてきた、あの声。
「……はぁ」
呼吸が、少しだけ浅くなる。
「やりにくい」
ぽつりと、思う。
月城は、まっすぐすぎる。
何も隠さないあの感じが、計算の外にある。
胸の奥に、小さな引っかかりが残る。
痛みではない。けれど、無視もできない。
「なんで……」
放った声が、わずかに焦りのような色があり自分でも驚いた。
息を細く吐き、思考を整理する。
・誘った理由
・選択の過程
・代替案
どれも、整合性は取れる。
でも──
「それだけじゃない」
結論だけが、先に残る。
見に行くだけなら、一人でもよかったはずだ。
むしろ、その方が楽だった。
それでも、私はそうしなかった。
「なんで……?」
理由を探すが、うまく見つからない。
玲奈は勢いに任せベッドに背中から倒れこんだ。
柔らかな感触に体重を預け、天井を見上げると、あの時の星がまだ残っている気がした。
「あの場所で……」
言いかけて、そこで止める。
形にした瞬間、何かがズレる気がした。
「はぁ」
小さく息を吐く。
いつ、どうして、何がきっかけでと、取り留めのない疑問だけがループする。
「なんでこんなに、分からないの?」
もう一度整理する。
まず今日の事実だけを、並べる。
・一緒に行った
・隣にいた
・触れた
指先が、一瞬だけ跳ねた。
そこに意味は足さない。
だが、思考を終わらせようとしても、その一点だけが浮かぶ。
"特別だった"
玲奈は思わず腕で目を覆った。
「……は」
乾いた笑いが、わずかに漏れる。
「単純じゃないな……」
恋、ではない。
既存の言葉では、収まらない。
これは、もっと深い位置で起きている気がする。
「なんなんだろう、これ」
ベッドに預けた体を捩る。
頬に触れた布の冷たさが、心地いい。
視界の端で、カーテン越しの街灯の光が滲んだ。
(……どうする)
問いは立つ。
でも、答えを急ぐ必要はない気がした。
「私なりに定義し直すしかないか」
自分の中で、自分の言葉で。
あの感覚を、逃さないために。
「……」
目を閉じる。
暗闇の奥に、星の残像が広がる。
まだ、身体からわずかな熱が消えない。
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