
愛と呼ぶには、まだ遠い三人【21】|17章 卒業前夜の自室(月城)|#創作大賞2026
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第17章:卒業前夜の自室|月城編
深夜零時。
部屋の明かりは落とされたまま、机に突っ伏した湊の輪郭だけが、スマホの光にかすかに浮かんでいた。
画面には、最後に送ったメッセージが残っている。
『こっちには、いつ帰ってくるの?』
既読は、つかないままだ。
「……あれから、何も変わってない」
むしろ、変わらないまま遠ざかっていることだけが、はっきりしていた。
プラネタリウムで見た清水の横顔が、勝手に蘇る。
暗闇の中で、星より静かに輝いていた。
隣にいたのに、距離は測れなかった。
近いのか、遠いのかすら分からなかった。
ただ一つだけ確かなのは──
その時間だけ、世界の輪郭が少しだけ柔らかくなっていたこと。
でも、今は違う。
清水は湊から距離を取っている。
理由は分からない。
それでも"分からないまま終わる気配"だけは感じる。
(……優しさじゃ、届かないのか)
言葉にすると軽くなるのが嫌で、喉の奥で止める。
「なんでだよ」
声は、自分でも驚くほど小さかった。
返事なんてないと分かっているのに、出てしまう。
「俺、何か間違えた?」
間違えたとしたら、どこだ。
正しかったとすれば、何が足りなかったのか。
答えのでない想いだけが頭の中で回り続ける。
胸の奥に鋭さでも、熱さでもない、まとまらない痛みだけが、遅れて生まれた。
「……」
名前をつけようとしても、うまく見つからない。
「……泣きたい、のか?」
その言葉にすら、違和感がある。
泣くというより、どこにも出せないまま溜まっていくものに近い。
「俺は、泣かない」
いつからだろう。心に決めていた。
泣いた瞬間に、関係が終わる気がするから。
大事なものほど、崩れる気がするから。
だからずっと、呑み込んできた。
「明日は、ちゃんと会おう」
それだけは決める。
もうそれだけしか、残っていない気さえする。
笑えるかどうかは、分からない。
でも、崩れない形くらいは自分なら作れる。
それが、今できる唯一の整え方だった。
身を正し、目を瞑る。
もし彼女が泣いたら。
そこまで考えた瞬間、思考を切る。
(やめろ)
その先は、まだ勝手に見るものではない気がした。
湊は机に拳を落とす。
音は乾いていて、やけに軽いのに、胸の奥だけがずしりと重い。
「……俺は"壊さない"。それだけは、できる」
守るって、そういうことだと思っていた。
でも同時に、ふと気づく。
これは本当に守っているのか、と。
何もできずに"守ったことにしているだけ"なのかもしれないと。
◇
部屋は静かだ。
静かすぎて、自分の呼吸がうるさい。
それでも、明日は来る。
きっと清水に会えるはずなのに、不思議とそんな気がしなかった。
「このまま……終わらせたくない」
画面の中の文字は何も変わらないのに、机の上の光だけが、まだ消えない。
変わらないことが、どうしてこんなに重いのか。
まだ、言葉にならなかった。
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