
愛と呼ぶには、まだ遠い三人【18】|14章【挿話】動かない事実(黒瀬)|#創作大賞2026
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第14章【挿話】動かない事実|黒瀬の独白
「あれでよかったのか」
答えは出ない。
玲奈の笑い声が、耳に残っている。
少しだけ高くて、軽くて──どこか空いた音。
止まらない。
「……」
目を閉じる。
浮かぶのは、あのときの瞳。
光が、なかった。
底の見えない、沈んだ色。
「あの眼……」
自分の言葉を思い返す。
──まあな。
──だから何だよ。
事実だけ。
余計なものを削いだ、いつもの形。
それでいいはずだった。
「……はず、だろ」
小さく、漏れる。
何かが引っかかっている。
どこで間違えたのか、分からない。
そもそも、間違いだったのかも分からない。
ただ──
あの笑い方、深く沈んだ瞳。
あれを見て何もなかったことにできるほど、鈍くはない。
「くそっ」
短く吐き捨てる。
整理できない感覚に、苛立ち始める。
言葉にした瞬間、何かを決めてしまいそうで、触れたくない。
「あー、ったく……」
それでも、残る違和感。
消えない感覚だけが、胸の奥にずっと引っかかっている。
(……このままは、まずいか)
それだけが頭に浮かんだ。
理由は掴めないままだが、あのまま放っておけば、どこかで取り返しがつかなくなる事だけは分かった。
重く熱い息が、喉から抜ける。
「……話すか」
行動だけ、決めた。
何を言うかは、まだ分からない。
どうしたいのかも、分からない。
ただ──
あいつと、二人で。
それだけが、はっきりしていた。
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