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数式ミスミリー㊵「5次元からこんにちは」

    「2点 (2, 5) と (6, 2) を結ぶ線分の長さは、そうか!
      6−2=46-2=4、5−2=35-2=3
    より、三平方の定理をつかって
     42+32=16+9=25=52=5\sqrt{4^2+3^2}=\sqrt{16+9}=\sqrt{25}=\sqrt{5^2}=5
     だから、1辺の長さが 5 の立方体の体積は、1辺×1辺×1辺より
     5×5×5=1255\times5\times5=125
    解けた!あれ、もしかしてこれが4次元の立方体だと
     5×5×5×5=625?5\times5\times5\times5=625?
     5次元だと
     5×5×5×5×5=5\times5\times5\times5\times5=……
     どうなるんだろう……?」
    「こんにちは」
    「 今度はだれ?」
    「5次元の世界から、こんにちは」
    「ご……5次元!?」
    「私は5次元の数学者です」
    「5次元って、またよく分からないのが出てきた」
    「4次元からは、君たちの3次元の世界の隠れている場所も、別の向きからのぞき込むようにして見ることができます。君の部屋の奥も、机の下も、引き出しの中も、筆箱の小さなケースも」
    「かくし場所が、ぜんぶばれちゃう世界だよね」
    「そう。でも5次元からは、その、君たちの『隠れている場所までふくめた世界のすべて』を、もう一段外側から眺めることができます」
    「外側……?」
    「そうです。君たちの『隠れている場所までふくめた世界のすべて』は、こちらから見ると、ほんの一部にすぎません」
    「一部?」
    「『隠れている場所までふくめた世界のすべて』の、さらにその世界に隠されているものが、まだたくさんあります。5次元の私は、それらを見ることができるのです」
    「ええー?」
    「しかし、私はせいぜい5次元の存在にすぎません。人間が認識できない座標軸を、より高次元では当たり前に認識できる。6次元、7次元と、さらに次元を増やしていくことで、君には見えない世界が、まだまだ残されているのです。しかし、それが何であるかを、君に正確に説明することはできません」
    「どうして?」
    「君の世界の言葉では、まだ足りないのです。君が分かるように、君にとっての言葉に置きかえた瞬間に、それはもう君のいる世界になってしまいます」
    「じゃあ、何が見えてるのか、僕にはまったく分からないの?」
    「分からないかもしれませんし、少しだけ近づけるかもしれません。ただ一つ言えるのは、君が『これですべて』だと思っている、そのさらに外側の世界も、私にははっきりと見えている、ということです」
    「?……」
    「君にとってすべてだと思っている世界は、こちらから見ると、ほんの一部にすぎません。低次元の世界では重なって見えていたものでも、より高次元からは、はっきりと見分けることができます。
     少年よ、その感覚は忘れないでいてください。
     また、次の世界で会いましょう。
     私たちは見ています。君のいる世界の、隠されているものを。
     そして今、この世界を見ている、君のことも」



    表紙は、エッシャーの『婚姻の絆』(1956年)より引用

    (コメント)
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