
数式ミステリー㊳「3次元からこんにちは」
「2点 (2, 5) と (6, 2) を結ぶ線分の長さを一辺の長さとする立方体の体積は……」
コツコツ
「こんにちは」
「次は誰?」
「3次元から、こんにちは」
「3次元?僕たちのこの世界のことだよね?」
「そうです。我々も3次元の住人です。ただし、君の世界とは別の3次元です」
「 別の3次元?」
「はい。君の世界と私たちの世界は、どちらも3次元空間です。ただし、お互いに交わり合うことはできません」
「どういうこと?」
「たとえば、コイン投げを考えましょう。投げる前には、表になるか裏になるか、まだ決まっていませんね」
「うん。だいたい半々って習った」
「君たちは、投げたあとで『表だった』『裏だった』と、出た結果だけを見る世界に住んでいます。でも、量子力学という学問では、『表になった世界』と『裏になった世界』が、どちらも同時に存在するという考え方があります。観測のたびに、世界が結果ごとに枝分かれしていき、そのどれもが続いていくという考え方です。これを、多世界解釈と呼びます。SFなどでは、パラレルワールドといったりもします」
「じゃあ、ぼくがコインを投げるたびに、表の世界と裏の世界が、どんどん増えていくっていうこと?」
「そういうことです。0次元や1次元や2次元は、『広がり方』が異なる世界だったよね。でも多世界解釈では、広がりは同じ3次元なのに、観測のたびに『結果のちがう世界』がいくつも並んでいると考えるのです」
「ねえ」
「なんでしょう、少年」
「僕、もっと勉強してみたくなってきた。本に書いてあることを覚えるだけじゃなくて、高次元の世界や、多世界解釈みたいな考え方まで、自分で考えられるようになりたい」
「それは、とても素晴らしいことです。数学や物理を学ぶというのは、
今見えている世界だけでなく、いろいろな世界を同時に考える力を育てることでもあります」
「じゃあ、まずはこの問題を、ちゃんと解けるように勉強するよ」
「0次元も、1次元も、2次元も、そしてたくさんの3次元の世界も、きっと君を待ってるよ」
「分かった。また世界の話、聞かせてね」
「また、どこかの世界で会いましょう、少年」
(コメント)
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