
数式ミステリー⑬『エッシャーの坂道』
二人はある坂道にやってきた。
「ここなんだよ、不思議な坂」
「不思議な坂?」
「そう、下に曲がり角があるだろ。下っていくと同じような曲がり角が4つあるんだけど、それを全部左回りで下っていくと元に戻ってくるんだ」
「下っていくのに、ここに戻ってくるの?」
「そう、戻ってくる。とりあえず行ってみようか」
「ほんとだ、戻ってきた。ということは、逆に上っても戻るわけ?」
「そう、上ってみようか」
「戻ってきた」
「不思議だろ」
「じゃあ、別々に行っても戻るのかな? 俺が下って、お前が上る」
「そんな発想はなかった! 行ってみるか」
「行ってみよう。じゃあ、また会おう!」
「おお、また会おう!」
二人は二度と、会うことはなかった。
表紙は、エッシャーの『上昇と下降』(1960年)より引用
(コメント)
400字短文小説の投稿サイト『ショートショートガーデン』に投稿した理数系ショートショートです。数式を書ける仕様ではなかったため、400字の制限を超えて加筆修正し、美しい数式の描けるこちらに再投稿します。
400字という制限も魅力です。タイトな原型(400字バージョン)や、一般のショートショートは、以下の『ショートショートガーデン』で読むことができます。⇩