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隣に座れなかった理由(わけ)#12第一章⑫邪魔だらけの保護者会#13⑬お祓いとうたた寝

    #創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
    前後のお話は下のURLからどうぞ。


    第一章
    ⑫邪魔だらけの保護者会


    冬の空気は澄んでいて、少し冷たかった。

    でも、私の心には、どこか早い春のような感覚があった。

    大腸がんで手術した母がHCUに移り、高校中退した子どもの行く先も見えてきた。


    そんな中で迎えた保護者会だった。

    あの日の教室は、なぜか落ち着かなかった。

    電話が何度も鳴る。
    普段は静かなのに、その日に限って。


    「先生、電話です」

    「先生、〇〇先生からです」

    会話は何度も途切れた。


    「いつもこんなに電話が鳴るんですか?」

    私は、驚いた顔で聞いた。

    先生も首を傾げた。

    「いや、こんなにかかってくるのは初めてですね」


    「やっぱりそうきたか……」

    「えっ?」

    「いや、何でもありません」

    私は笑っていた。

    でも、胸の奥では、何かが引っかかっていた。

    しまいには、他の先生が様子を見に来るほどだった。


    真剣に話したくて、一番最後にしてもらった時間だった。

    ようやく二人きりになれたのに、うまくいかない。


    その違和感が、じわじわと広がっていく。

    優しい先生の周りに、何かがまとわりついているような気がした。

    そして――


    私は決めた。


    祓う。


    第一章
    ⑬お祓いとうたた寝


    数日後、子どもを迎えに行ったとき、私は決行した。


    「先生についた変なもの取ってくるから、向こうで待ってて!」


    子どもは特に驚きもせず、(ああ、先生もやられるんだな)という顔で去っていった。

    家では父親がよくお祓いされているから、慣れているのだ。



    教室の前で先生を捕まえた。
    周りに誰もいないことを確認して、言った。



    「先生!そこに立っていてください。
    今から怒りますけど、先生にじゃありませんから!」


    私は教室の中に入り、三メートルほど離れて向き合う。

    そして、先生の左肩の少し上を睨んだ。



    「いい加減にそこから離れなさいよ!!

    私がただじゃ置かないからね!!

    人に頼ってばっかりいないで、

    自分でどうにかしなさいよ!!!」


    声は教室に響いた。


    ――しまった。

    我に返って、横目で先生を見る。

    目が合った。


    先生は、笑いを堪えながら、私が怒鳴っていた辺りを、楽しそうに指でくるりとなぞった。



    「この辺ですかね?」

    ――笑ってやがる……


    でも、引かなかった。


    「そうです!先生も優しすぎると、ずっとひっつかれますからね!厳しく!」


    お祓いは終わった。たぶん。


    その余韻の中で、私は言った。


    「先生、手を見せて下さい」

    先生は、まるで占い師に見せるように、素直に手のひらを差し出した。


    「甲のほう、見せてください」

    先生は少し不思議そうにしながら、手を裏返した。


    その隣に、指が出るハリネズミの手袋を着けた自分の手を重ねた。

    ――似てる……

    思ったより、ずっと。

    私の指や爪は少し独特な形をしている。
    小さく、驚いた。


    そして、先生の爪は綺麗に短く整えられていて、その清潔さが妙に印象に残った。

             *

    それから数日後。

    十二月とは思えない、あたたかい日だった。

    私はうとうとしていた。

    夢を見た――


    職員室の前。

    あの、アゲハ蝶の話をした場所。

    先生が立っていた。

    開いた手のひらに、一匹の金色の蝶。

    光を受けて、きらめいている。


    「きれい……」


    そう言うと、先生は穏やかに言った。


    「飛ばそうか」

    「うん」

    その瞬間、目が覚めた。

    まぶしかった。

    不思議と、心は静かだった。

    お祓いが効いたのかどうかは、分からない。


    でも、あの夢は澄んでいた。

    金色の蝶は、ただ光っていた。

    それだけで、十分だった。


    第一章プロローグはこちら↓
    始まりの話です
    https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53

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    第一章①②はこちら↓
    ペットのうさぎが活躍します
    https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7

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    第一章③④⑤はこちら↓
    始まりの合図は虫なんです
    https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533

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    第一章⑥⑦⑧はこちら↓
    父が夢で語ったのはこの言葉です
    https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e

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    第一章⑨⑩⑪はこちら↓
    母が運ばれました
    https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140

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    第一章⑭⑮⑯はこちら↓
    ついに、ツインレイ告白!
    https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71

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    第二章①②③はこちら↓
    神崎先生の身に……?
    https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4

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    第二章④⑤⑥はこちら↓
    心が通い出すように
    https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e

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    第二章⑦⑧⑨はこちら↓
    あなたを救いたい、それだけ
    https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203

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    第二章⑩⑪はこちら↓
    決着つけましょう
    https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2

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    第三章①②はこちら↓
    ずっと前から見られてた……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18

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    第三章③④はこちら↓
    「ぷっ」の破壊力
    https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d

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    第三章⑤はこちら↓
    そんな目で見るの……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776

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    第三章⑥⑦はこちら↓
    私だけ違う……
    https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df

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    第三章⑧はこちら↓
    だいたいハリネズミのせい
    https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d

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    第三章⑨⑩はこちら↓
    答え合わせしよう
    https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232

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    第三章⑪はこちら↓
    最後の最後に……
    https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500

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    第三章⑫エピローグはこちら↓
    思い出し笑い
    https://note.com/amaimomo123/n/n3e0625cbf3aa

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    #創作大賞2026 #恋愛小説部門
    #完結済 #年の差 #先生と保護者 #連載小説

     
     
    ※DM・メールは受け付けていません。1日の終わりに人の心をぽっと照らす電球のような、小さな物語やエッセイを書いています。 少し切なくて、少し愛おしくて。 なぜか笑われることもあります。 良かったら、手を止めて読んでいって下さい☺️