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隣に座れなかった理由(わけ)#35第三章⑧ハリネズミパニック

    #創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
    前後のお話は本文下のURL からどうぞ。

    第三章
    ⑧ハリネズミパニック


    気づけば、会うことも、話すことも減っていた。

    私は、もう限界だった。

    大学に馴染めず荒れていく長男の感情を、

    私は一人で受け止め続けていた。

    神経は少しずつ擦り減っていった。


    「私……もう駄目かも」


    ぽつりと呟いた時、

    浮かんだのはやっぱりあの人の顔だった。

    ――助けてほしい。

    ――最後に、一度だけでいいから……


    私は下駄箱で先生を見つけた。

    辺りを慎重に確認する。

    誰もいない。


    「先生!」


    駆け寄りながら、

    右手の手袋を、剥ぎ取るように外した。


    「先生! 私に元気下さい!」


    右手を勢いよく差し出した。

    少しうつむき加減で。

    ――顔、見れないよ。

    先生は、何も言わず、優しく微笑んだ。

    そして、

    差し出した私の手をそっと握ってくれた。

    音が消えた。

    周りも見えない。

    そこには、ただ静かな温もりだけがあった。

    先生の手は、熱くもなく冷たくもない、

    ちょうどいい温度だった。

    限界だった私の心を、

    ゆっくりほどいていく。

    ――先生の手、意外と薄いな……

    妙に冷静になった。

    その瞬間。


    私の手は、先生の両手に包まれていた。


    ――えー!左手、でてきた。

    私の手、包まれてる。

    どうするの、これ。

    一気に焦りが押し寄せる。

    先生は両手。

    私は片手?

    お偉いさんみたいじゃん、私。

    駄目だ、私も両手にしなくちゃ!

    焦って左手を見る。

    ――うわ、しまった。

    ――手袋、してた。

    えんじ色の手袋。

    真ん中には、のんきな顔のハリネズミ。

    ――こんなの見られたら恥ずかしいわ。

    ――手袋したままなんて失礼だよ……

    さっきまでの悲しみは、きれいに吹き飛んでいた。


    もうこれ以上は無理!!


    「ありがとうございます!元気出ました!」


    そう言って、私は逃げるようにその場を離れた。

    ――でも、握手の効果は絶大だった。

    ハリネズミと一緒に持ち帰ったあの体温は、

    確かに残っていた。


    プロローグはこちら↓
    始まりの話です
    https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53

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    第一章①②はこちら↓
    ペットのうさぎが活躍します
    https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7

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    第一章③④⑤はこちら↓
    始まりの合図は虫なんです
    https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533

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    第一章⑥⑦⑧はこちら↓
    父が夢で語ったのはこの言葉です
    https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e

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    第一章⑨⑩⑪はこちら↓
    母が運ばれました
    https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140

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    第一章⑫⑬はこちら↓
    保護者会の空気は最悪でした
    https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7

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    第一章⑭⑮⑯はこちら↓
    とうとうツインレイ告白
    https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71
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    第二章①②③はこちら↓
    神崎先生の身に……?
    https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4

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    第二章④⑤⑥はこちら↓
    心が通い出し始めます
    https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e

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    第二章⑦⑧⑨はこちら↓
    あなたを救いたい、それだけ
    https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203

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    第二章⑩⑪はこちら↓
    決着つけましょう
    https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2

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    第三章①②はこちら↓
    ずっと前から見られてた……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18

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    第三章③④はこちら↓
    「ぷっ」の破壊力
    https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d

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    第三章⑤はこちら↓
    そんな目で見るの……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776

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    第三章⑥⑦はこちら↓
    私だけ違う……
    https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df

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    第三章⑨⑩はこちら↓
    答え合わせしよう
    https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232

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    第三章⑪はこちら↓
    最後の最後に……
    https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500

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    第三章⑫エピローグはこちら↓
    思い出し笑い
    https://note.com/amaimomo123/n/n3e0625cbf3aa

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    #創作大賞2026 #恋愛小説部門
    #完結済 #連載小説 #先生と保護者 #年の差

     
     
    ※DM・メールは受け付けていません。1日の終わりに人の心をぽっと照らす電球のような、小さな物語やエッセイを書いています。 少し切なくて、少し愛おしくて。 なぜか笑われることもあります。 良かったら、手を止めて読んでいって下さい☺️