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隣に座れなかった理由(わけ)#30第三章③言葉の代わりのアイコンタクト#31④先生の「ぷっ」

    #創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
    前後のお話は本文下のURLからどうぞ。

    第三章
    ③言葉の代わりのアイコンタクト


    六年生になってから、神崎先生と話す機会はめっきり少なくなった。

    以前のように気軽に声をかけられない。

    二人の間には、見えない線のようなものが引かれていた。



    それでも――

    不思議なことに、目が合うことはよくあった。

    他の先生と話していて、ふと振り向く。

    すると、神崎先生がこちらを見ている。

    目が合うと、先生はニコッと笑う。

    口角が上がり、目が細くなる、あの笑い方。
    私も、つられて笑い返す。言葉は交わさない。

    でも、その一瞬だけ、心がふわっと温かくなる気がした。

             *

    ある日、担任の先生を呼びに職員室の入り口から声をかけた。


    「すみませーん」


    ふと中を見ると、神崎先生が手を組み、頬杖をつきながら下を向いていた。

    担任が来るのを待っている間、職員室の中を見渡す。


    すると――


    先生が同じ姿勢のまま、顔だけを上げて私を見ていた。

    目が合った。

    その瞬間、先生がニコッと笑った。

    私も思わず笑い返して、軽く会釈をする。


    私の立っている場所は、ちょうど死角になっていて、職員室の他の先生たちからは見えない位置だった。


    二人だけの、小さなやり取り。


    ほんの数秒の出来事だったけれど――

    なぜか、心に残っている。


    ④先生の「ぷっ」

    そんな出来事が続く中で、ふと思い出すことがある。


    神崎先生が担任だった、四年生の年明けのことだ。

    職員室に先生を呼びに行き、出てきた先生と顔を合わせた瞬間。

    ――今年一番の挨拶は、やっぱり新年の挨拶だよね。

    そう思った私は、身体の前で手を組み、少し改まって挨拶をした。


    「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」


    すると先生は、思わず


    「ぷっ」


    と吹き出した。

    白い歯を見せて、楽しそうに笑っていた。

    ――え?なんで笑った?変か?


    「明けましておめでとうございます。よろしくお願いします」


    先生は笑いながらも、丁寧に返してくれた。

    あまりにも真面目に言ったからだろうか。

    少し恥ずかしくなったのを覚えている。


             *


    それから一年後の、五年生の新年の朝。

    腕を骨折した子どもを、いつものように車で送って行った時、神崎先生と顔を合わせた。

    私はいつも通り


    「おはようございます」


    とだけ言って、車に乗ろうとした。

    すると、先生の方から声をかけてきた。


    「明けましておめでとうございます」



    ――しまった!今日、新年初じゃんか!


    私は慌ててしまい――


    「あっ、明けましておめでとうございます!よろしくお願いします!」


    バタバタと何度も頭を下げてしまった。

    我ながら、滑稽だと思った。

    その様子を見て、先生は笑っていた。

    車に乗り込んでから、ふと思い出した。

    ――あー!去年の新年の挨拶、先生めちゃウケてたわ。

    やられた!

    今思い出しても、胸の奥が少しだけこそばゆくなる。


    プロローグはこちら↓
    始まりの話です
    https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53

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    第一章①②はこちら↓
    ペットのうさぎが活躍します。
    https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7

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    第一章③④⑤はこちら↓
    始まりの合図は虫なんです。
    https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533

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    第一章⑥⑦⑧はこちら↓
    父が夢で語ったのはこの言葉です。
    https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e

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    第一章⑨⑩⑪はこちら↓
    突然、母が運ばれました。
    https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140

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    第一章⑫⑬はこちら↓
    保護者会の空気は最悪でした。
    https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7

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    第一章⑭⑮⑯はこちら↓
    とうとうツインレイ告白
    https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71

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    第二章①②③はこちら↓
    神崎先生の身に……?
    https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4

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    第二章④⑤⑥はこちら↓
    心が通い出し始めます
    https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e

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    第二章⑦⑧⑨はこちら↓
    あなたを救いたい、それだけ
    https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203

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    第二章⑩⑪はこちら↓
    決着つけましょう
    https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2

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    第三章①②はこちら↓
    ずっと前から見られてた……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18

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    第三章⑤はこちら↓
    そんな目で見るの……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776

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    第三章⑥⑦はこちら↓
    私だけ違う……
    https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df

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    第三章⑧はこちら↓
    だいたいハリネズミのせい
    https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d

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    第三章⑨⑩はこちら↓
    答え合わせしよう
    https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232

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    第三章⑪はこちら↓
    最後の最後に……
    https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500

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    第三章⑫エピローグはこちら↓
    思い出し笑い
    https://note.com/amaimomo123/n/n3e0625cbf3aa

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    #創作大賞2026 #恋愛小説部門
    #完結済 #連載小説 #年の差 #先生と保護者

     
     
    ※DM・メールは受け付けていません。1日の終わりに人の心をぽっと照らす電球のような、小さな物語やエッセイを書いています。 少し切なくて、少し愛おしくて。 なぜか笑われることもあります。 良かったら、手を止めて読んでいって下さい☺️