
隣に座れなかった理由(わけ)#28第三章①えっ、湯婆婆?#29②定規で引かれた線
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第三章卒業
①えっ、湯婆婆?
四年生の頃から気になる女性教師がいた。
日焼けした肌に、おでこを出して、髪をキュッと結んだお団子ヘア。
スポーツが得意そうで、ストイックな雰囲気の人だった。
綺麗というより、どこか鋭い。
先生なのに、笑った顔が想像できなかった。
下駄箱で子どもを待っていると、その人がよく視界に入った。
――なんか、またいる。
挨拶をしても、目が合っても、その人は笑わなかった。
どこか壁を感じる人だった。
何年の担任なのかも知らない。
それなのに、やけによく視界に入る。
――不思議な人だな。
四年生の頃から、ずっとそう思っていた。
五年生の時だった。
下駄箱で神崎先生と話していると、あの女性教師が突然現れた。
無表情のまま先生のそばに来ると、私には見向きもせず、何か耳打ちした。
そして、そのまま足早に去っていった。
無表情なのに、怒っているように見える人だった。
少し、いや、かなり怖い。
神崎先生は困った顔をして、私に言った。
「話の途中なのに、すみません」
「ううん」
私は微笑みながら首を横に振った。
神崎先生はそのまま、女性教師の後を追うように去っていった。
その後だった。
神崎先生は、私と話す時、距離を取るようになった。
話し始めた途端、先生は急に後ろへ下がった。
私はえっ、と思った。
どんだけ離れるの?
向かい合って立つ距離が妙に遠い。
――私のこと、嫌なのかな……
そんなことを、ぼんやり思った。
六年生。幸い、神崎先生は同じ学年にいた。
そして、まさかの、あの女性教師が担任になった。
最初の保護者会の時だった。
年齢の話になり、女性担任が私に聞いた。
「宮田さん、おいくつなんですか?」
――くると思ったよ。
――ああ、言いたくない……
私が渋々答えると、先生は目を大きく見開いて言った。
「えー!お若く見えてたのに、そうなんですかー?
私の方が年下だったんですねー!」
とても嬉しそうだった。
「えっ?私は最初から先生の方が年下だと思ってましたよー!」
私も笑顔でそう答えた。
二人の間に、「大人の建前」が静かに置かれた。
女って、こういう時すごいと思った。
その時だった。
先生は、瞬きもせず、私の顔をじっと見ていた。
――あっ、圧がすごい……
私は思わず、背中にじわっと変な汗をかいた。
……ああ、この感じ。どこかで見たことがある。
そうだ。
湯婆婆だ!!
②定規で引かれた線
あの時からだった気がする。
神崎先生と話すたび、私はどこかぎこちなさを感じるようになった。
他の保護者と話す時とは違う、見えない壁のようなもの。
内心、傷ついた。
――私、何をしてしまったのかな。
子どもの話をしたり、
学校のことを聞いたり、
ただ他愛のない話で笑ったり。
短い会話でも、先生は穏やかに話をしてくれていた。
でも、あの日を境に、何かが変わった。
先生は私の前に立つと、決まって何歩か後ろへ下がる。
そして、必ず一定の場所で止まる。
そのたびに、
――えっ、そんなに離れるの?
と、私は戸惑った。
普通に話しているはずなのに、廊下の端と端で会話しているみたいだった。
二人の間には、目に見えない大きな定規が置かれているような気がした。
誰がそこにおいたんだろう。
今まで通り、先生は優しい。
話し方も、変わらない。
けれど、どこか遠い。
先生は、その線の向こう側にいる。
……先生自身で決めた距離?
それとも……誰かに何か言われた?
理由が何であれ、私の心にしこりが残ったことだけは、確かだった。
プロローグはこちら↓
始まりの話です
https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53
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第一章①②はこちら↓
ペットのうさぎが活躍します。
https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7
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第一章③④⑤はこちら↓
始まりの合図は虫なんです。
https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533
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第一章⑥⑦⑧はこちら↓
父が夢で語ったのはこの言葉です。
https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e
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第一章⑨⑩⑪はこちら↓
突然、母が運ばれました。
https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140
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第一章⑫⑬はこちら↓
保護者会の空気は最悪でした。
https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7
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第一章⑭⑮⑯はこちら↓
とうとうツインレイ告白
https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71
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第二章①②③はこちら↓
神崎先生の身に……?
https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4
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第二章④⑤⑥はこちら↓
心が通い出し始めます
https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e
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第二章⑦⑧⑨はこちら↓
あなたを救いたい、それだけ
https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203
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第二章⑩⑪はこちら↓
決着つけましょう
https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2
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第三章③④はこちら↓
「ぷっ」の破壊力
https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d
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第三章⑤はこちら↓
そんな目で見るの……?
https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776
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第三章⑥⑦はこちら↓
私だけ違う……
https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df
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第三章⑧はこちら↓
だいたいハリネズミのせい
https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d
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第三章⑨⑩はこちら↓
答え合わせしよう
https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232
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第三章⑪はこちら↓
最後の最後に……
https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500
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