
隣に座れなかった理由(わけ)#38⑪やらかした卒業式と引きつった顔
#創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
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第三章
⑪やらかした卒業式と引きつった顔
とうとう卒業式がきた。
晴れ晴れした日のはずなのに、
家の中は不穏な空気が流れていた。
「なあ、壮介って俺たちと同じ時間でよかったっけ?」
旦那が恐ろしいことを言い出した。
「えっ?壮介、何も言ってなかったよ。連絡もなかったし……」
――なんか、不安になってきたわ。
――匠の時のこと、忘れちゃったし……
「俺の記憶だと早かったような……」
ええっ?
「壮介、今日早く行かなくてもいいの?」
「俺が知る訳ないじゃん」
――嫌な予感だ。
不穏な空気のまま学校に到着した。
すると、女性担任が駆けつけてきた。
――えっと……?
「どうされたんですかー?
家に電話かけても出られないし!
みんな待ってますよー!」
――えええー!!
「す、すみません!……」
驚きながら言った。
壮介は、半ば担がれるような勢いで女性担任に連れて行かれた。
受付の所で他の先生に聞いた。
「もしかして、子どもだけ先でしたか?」
「そうなんですよー」
笑われた。
――ひぃー……
「最後の最後に、ほんと、申し訳ありません……」
「大丈夫ですよ」
――最後の日なのに……ああ……
――やらかした。
きっと、旦那と二人、
顔はひきつっていた。
*
式が終わり、
先生と子どもたちだけが教室で最後のお別れをしていた。
やがて外に子どもたちが出てきた。
カメラやビデオを構える保護者たち。
子どもたちもそれぞれ、スマホで思い出を撮っている。
私は、人気者の神崎先生をやっとつかまえることができた。
子どもと肩を組み、優しく微笑む先生。
その姿を、
旦那のカメラと、私のスマホで撮った。
その時だった。
「先生と一緒に撮ってあげるよ」
旦那が、何気なく言った。
――えっ……
一瞬、空気が止まった気がした。
「いいよ、撮らなくても」
私はそう言って振り向いた。
そして先生に、
「ありがとうございました」
と、笑顔でお礼を言った。
たしかに私は、
最初から旦那に先生のことを話していた。
先生とは、どこか特別な縁がある気がしていた。
そのことは、先生にも伝えてあった。
最初は「はあ?」と言う顔をしていた旦那だったが、
私が先生に救われていたことを、
どこかで感じ取っていたのかもしれない。
「先生との写真も撮って」
そうお願いしたこともあった。
でも「なんで?」と言われて、
私はそれ以上言えなかった。
だからあの一言は、
旦那なりの最後のお許しだったのかもしれない。
――でも。
私は、やっぱり旦那を選んでいた。
*
家に帰り、
自分で撮ったスマホの写真を見返していた。
旦那のカメラに写った写真も、あとで見せてもらった。
――あれ?
先生の表情が二枚とも微かに違っていた。
一枚は親しげに微笑む笑顔。
もう一枚は、
笑っているのに、どこか少し引きつった笑顔。
あはは。
なんだか、おかしくなってしまった。
最後の最後に。
三人で、同じ時間を共有していたんだと思うと、
少しおかしくて、少しあたたかかった。
プロローグはこちら↓
始まりの話です
https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53
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第一章①②はこちら↓
ペットのうさぎが活躍します
https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7
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第一章③④⑤はこちら↓
始まりの合図は虫なんです
https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533
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第一章⑥⑦⑧はこちら↓
父が夢で語ったのはこの言葉です
https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e
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第一章⑨⑩⑪はこちら↓
母が運ばれました
https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140
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第一章⑫⑬はこちら↓
保護者会の空気は最悪でした
https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7
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第一章⑭⑮⑯はこちら↓
とうとうツインレイ告白
https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71
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第二章①②③はこちら↓
神崎先生の身に……?
https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4
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第二章④⑤⑥はこちら↓
心が通い出し始めます
https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e
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第二章⑦⑧⑨はこちら↓
あなたを救いたい、それだけ
https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203
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第二章⑩⑪はこちら↓
決着つけましょう
https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2
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第三章①②はこちら↓
ずっと前から見られてた……?
https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18
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第三章③④はこちら↓
「ぷっ」の破壊力
https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d
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第三章⑤はこちら↓
そんな目で見るの……?
https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776
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第三章⑥⑦はこちら↓
私だけ違う……
https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df
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第三章⑧はこちら↓
だいたいハリネズミのせい
https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d
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第三章⑨⑩はこちら↓
答え合わせしよう
https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232
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第三章⑫エピローグはこちら↓
思い出し笑い
https://note.com/amaimomo123/n/n3e0625cbf3aa
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