
隣に座れなった理由(わけ)#6第一章⑥父の夢#7⑦マイルール発動#8⑧消えていた不安
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第一章
⑥父の夢
その夜、私は夢を見た。
亡くなった父が、立っていた。
そして、その隣には――神崎先生がいた。
二人は並んで、こちらを見ていた。
ただ、にこにこと笑っている。
なぜ、神崎先生……?
私はまだ、先生のことをそこまで意識していなかった。
担任の先生。優しくて、話しやすい人。それ以上でも、それ以下でもなかった。
なのに――
父の感情が、波のように私の中へ流れ込んできた。
言葉ではない。ただ、温かい何かが胸いっぱいに広がった。
――安心していいんだよ。
――この人に、頼ればいいんだよ。
そんな想いが、心の奥に静かに残った。
目が覚めた時、頬が濡れていた。
涙が、枕を濡らしていた。
不思議な夢だった。
でも、心が軽かった。
第一章
⑦マイルール発動
時が経つごとに、先生との会話も、連絡ノートのやり取りも、気づけば他の保護者よりずっと増えていた。
それが嬉しくて、ありがたかった。
でも、その日――
私は、先生を怒らせてしまった。
他の学校の先生が来る、特別な授業参観だった。
役員の仕事があった私は、少しだけおしゃれをして、ワンピースを着ていった。
委員会の保護者だけが参加できる、どこか特別な日だった。
授業が終わって、私は教室の前の廊下で、ぼんやり立っていた。
ふと、視線を感じた。
何となく顔を上げると――
教室から出てきた先生が、私を見ていた。
目が、合ってしまった。
――ダメだ。
私が勝手に作ったマイルールが発動した。
――他の保護者がいたら、目を合わせてはいけない。
私は視線を逸らした。
その瞬間。
先生の顔が、はっきりと変わった。
そして――
私の存在などないかのように、他の保護者親子と楽しそうに並んで歩いていった。
笑い声が、廊下に響く。
私は、どうしようもなく惨めな気持ちで、その後ろ姿を見ていた。
ショックだった。
でも、仕方ない。あんな目の逸らし方をしたら、誰だって腹も立つだろう。
反省した。嫌われちゃったかな……
その時、私はやっと自覚したのかもしれない。
*
悩んでいる暇はなかった。
一週間後、親子レクリエーションが始まった。
私たち役員が企画した、親子と先生で遊ぶゲームだ。
見本を見せるとき、私は先生とじゃんけんをすることになった。
「先生、パー出してくださいね」
私が真面目に言うと、先生が笑いながら独り言のように呟いた。
「チョキ出そうかな〜」
冗談だとわかっていたのに、また同じことをしてしまった。
――他の保護者がいたら、馴れ馴れしくしてはいけない。
「ダメです!先生は絶対パー出してくださいね!」
ピシャリ。
先生は、苦笑いしていた。
私はまた、自分で距離を作ってしまった。
第一章
⑧消えていた不安
それから何日か経って、ふと気づいた。
ずっと胸の奥にあった不安が、消えていた。
父が亡くなってから、ずっと私を縛っていた不安が。
あれ……?
私は、立ち止まった。
いつから、消えていたんだろう。
そして――気づいた。
神崎先生と、話すようになってからだ。
*
その日も、いつものように子どもを迎えに教室へ行った。
先生と少し話して、さよならの挨拶を交わした。
お互い、違う方向へ歩き出す。
――でも……
私は、立ち止まった。
心の中で、何かが叫んでいた。
今、言わなきゃ。
今じゃなきゃ、もう言えない。
どうしても、これだけは伝えたい。
後悔する。絶対に。
私は、振り返った。
「先生!」
声が、廊下に響いた。
走る。
先生が、ゆっくりと振り向く。
息が、切れていた。
でも、言葉は止まらなかった。
「先生、私……」
言葉が、喉の奥からこぼれた。
「父が亡くなってから、ずっと不安があったんです」
先生の目が、私を見つめている。
「でも……」
涙が、にじんだ。
「先生と出会って、その不安が、なくなったんです」
声が、震えた。
「ありがとうございます!」
そう言って、私はくるっと背を向けて、足早にその場を離れた。
振り返ることはなかった。
でも、一瞬だけ見えた先生の顔は、驚きに包まれていた。
その顔は今でも忘れられない。
プロローグはこちら↓
始まりの話です
https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53
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第一章①②はこちら↓
ペットのうさぎが活躍します
https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7
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第一章③④⑤はこちら↓
始まりの合図は虫なんです
https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533
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第一章⑨⑩⑪はこちら↓
このあと、母が運ばれました
https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140
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第一章⑫⑬はこちら↓
保護者会の空気は、最悪でした
https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7
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第一章⑭⑮⑯はこちら↓
ついに、ツインレイ告白!
https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71
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第二章①②③はこちら↓
神崎先生の身に……?
https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4
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第二章④⑤⑥はこちら↓
心が通い出すように
https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e
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第二章⑦⑧⑨はこちら↓
あなたを救いたい、それだけ
https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203
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第二章⑩⑪はこちら↓
決着つけましょう
https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2
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第三章①②はこちら↓
ずっと前から見られてた……?
https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18
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第三章③④はこちら↓
「ぷっ」の破壊力
https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d
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第三章⑤はこちら↓
そんな目で見るの……?
https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776
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第三章⑥⑦はこちら↓
私だけ違う……
https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df
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第三章⑧はこちら↓
だいたいハリネズミのせい
https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d
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第三章⑨⑩はこちら↓
答え合わせしよう
https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232
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第三章⑪はこちら↓
最後の最後に……
https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500
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