
隣に座れなかった理由(わけ)#14第一章⑭新年の一回転#15⑮ツインレイ告白#16⑯会いたかった
#創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
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第一章
⑭新年の一回転
四年生の担任になった頃の神崎先生は、少し怖かった。
初めての授業参観。
先生は真面目で、教室には緊張感があった。
でも――
お祓いのせい、なのだろうか。
年明けの授業参観で、先生の様子はどこか違っていた。
私が教室へ入ると、先生がこちらを見た。
その直後だった。
先生は、とちった。
一度で終わらず、とちりが波紋のように広がっていき、収拾がつかなくなった。
生徒たちは笑い、保護者もクスクス笑っている。
まるで、他の教室とは別世界のようだった。
その日、先生の人気は絶頂だった。
*
ある日、子ども同士の問題があった。
うちの子が意地悪を言われたらしい。
私は先生に相談した。
先生は丁寧に対応してくれた。
相手の子が謝ってくれた。
お迎えの時、私は先生に声をかけた。
「先生に任せて、本当に良かったです。先生、すごいです!さすがですね!」
先生は笑顔で答えた。
「ありがとうございます」
そして、運動場へ出て行った。
私も帰ろうと思った、その時。
先生が、運動場から戻ってきた。
靴を履かずにスリッパで外へ出てしまったらしい。
入り口の靴を取ると、慌ててまた運動場へ出て行く。
その背中を見ながら、私は思った。
少し浮かれていたのかな……
そして――
運動場で、下校のために集まっている生徒たちの真ん中で、先生が、クルッと自転した。
喜びの、一回転。
私は、クスッと笑った。
第一章
⑮ツインレイ告白
来月には、担任と保護者の関係が終わろうとしていた、冬。
一年で一番勇気がいるイベント。
『バレンタインデー』が迫っていた。
私は、毎年のように近所のスーパーの特設コーナーへ来ていた。
見ているだけでワクワクする。綺麗で可愛くて、色とりどり。
旦那と、子どもたち、そして私の分。
カゴに入れていく。
――あっ、どうしよう……
お世話になった神崎先生。
いや、お世話になりすぎた神崎先生へのお礼。
――本当にそれだけの理由?
自問自答しながらも、カゴの中はちゃっかり、一つ多く入っていた。
――さて、どうやって渡そう……
お世話になったお礼なら、悩むこともないか!
そうそう!
私はあまり深く考えなかった。
*
バレンタインを少し過ぎた日、子どもを迎えに行った教室の前で、私は先生にチョコレートを差し出した。
「お世話になっている感謝の気持ちです」
「ありがとうございます」
先生が笑顔で受け取る。
目と目があった。
景色がさーっと引き、雑音が消えた。
次の瞬間――
別世界にいるような感覚のまま、言葉が発射された。
「先生と私は、ツインレイです」
先生の表情が、一瞬止まった。
笑顔のまま、でも目だけが泳いでいる。
まるで、宇宙語を聞いているみたいだった。
「ツイン……レイ……?」
「何?」という困惑が、その顔いっぱいに広がる。
私は、トドメの二発目を放った。
「魂の伴侶!」
私は満足そうに笑って、その場を去った。
今思えば、衝撃の爆弾に、思いっきり当たったのは先生だけではない。
今の私も、その一人だ。
時間差爆弾。
胸が痛い。
でも、あの日の私は違った。
自信に満ち溢れていた。
私の言葉を聞いた後の先生の気持ちも、考えることすらしないほどに。
あの時の私は、何も迷いがなかった。
父の夢に二人で現れてから、私なりに探して、確かめて、辿り着いた。
それが、私の確信だった。
第一章
⑯会いたかった
四年生最後の授業参観が終わった。
穏やかな時間は、長くは続かなかった。
長男の検査入院。MRI。原因の分からない影に、私は押し潰されそうだった。
誰かに聞いてほしい……
真っ先に浮かんだのは、あの人の顔だった。
*
ある日、子どもが教科書と水筒を学校に忘れた。
それを取りに、夜の学校へ車を走らせた。
――先生に会えるかも。
そう思っていた。
でも、先生は不在だった。
他の先生が対応してくれて、用事はすぐに終わった。
真っ暗な駐車場へ向かいながら、私は沈んでいった。
――会えなかった。
――会いたかった。
その時だった。
一台の車が、勢いよく学校に入ってきた。
まぶしいヘッドライトに照らされる。
私の車の隣で止まった。
ドアが開く。
降りてきたのは――
――神崎先生だった。
「どうされたんですか?」
私は震える声で、言葉を吐き出した。
「何かあったら、私……どうしたらいいのか分からなくて」
先生は遮らず、ただ静かに耳を傾けてくれた。
「お兄さん、何もないこと、願っています」
その一言で、胸の奥が、ほんの少しだけ緩んだ。
「会えないと思っていたから、会えて良かったです」
無理やり作った笑顔で言うと、先生は穏やかに見送ってくれた。
「暗いので、お気をつけて」
喉まで出かかった言葉を、そのまま飲み込む。
車のドアを閉め、発進するまで、先生はその場に立っていた。
本当は一番言いたかったのに。
帰り道、視界が涙で滲む。
ふと、数日前の夢を思い出した。
車が止まり、ドアが開き、先生が降りてくる光景。
あの夜の出来事と、静かに重なっていた。
プロローグはこちら↓
始まりのお話
https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53
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第一章①②はこちら↓
ペットのうさぎが活躍します
https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7
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第一章③④⑤はこちら↓
始まりの合図は虫なんです
https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533
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第一章⑥⑦⑧はこちら↓
父が夢で語ったのはこの言葉です
https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e
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第一章⑨⑩⑪はこちら↓
突然、母が運ばれました
https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140
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第一章⑫⑬はこちら↓
保護者会の空気は最悪でした
https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7
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第二章①②③はこちら↓
神崎先生の身に……?
https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4
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第二章④⑤⑥はこちら↓
心が通い出すように
https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e
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第二章⑦⑧⑨はこちら↓
あなたを救いたい、それだけ
https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203
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第二章⑩⑪はこちら↓
決着つけましょう
https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2
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第三章①②はこちら↓
ずっと前から見られてた……?
https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18
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第三章③④はこちら↓
「ぷっ」の破壊力
https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d
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第三章⑤はこちら↓
そんな目で見るの……?
https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776
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第三章⑥⑦はこちら↓
私だけ違う……
https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df
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第三章⑧はこちら↓
だいたいハリネズミのせい
https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d
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第三章⑨⑩はこちら↓
答え合わせしよう
https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232
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第三章⑪はこちら↓
最後の最後に……
https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500
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