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隣に座れなかった理由(わけ)#17第二章①引き継ぎと下馬評#18②心の叫びと予兆#19③雨男だから?

    #創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
    前後のお話は下のURLからどうぞ。



    第二章試練と絆
    ①引き継ぎと下馬評


    五年生になった。
    願いもむなしく、担任が変わった。

    神崎先生は六年生の担任になった。

    来年、担任が変わったら、壮介のことをちゃんと理解してもらえるだろうか。

    そんな不安を、以前先生にこぼしたことがあった。


    「ちゃんと引き継ぎしますから、大丈夫ですよ」


    先生はそう言って、静かに頷いた。


    「ありがとうございます」


    私はそう言って、笑って見せたけれど、

    心の奥の小さな不安までは消えていなかった。


    先生とは前より会う回数は減ったが、幸いにも同じ校舎でよく顔を合わせた。

            *

    新しい担任の先生は、話しやすくて良い先生だった。

    子どもを迎えに行ったある日、その先生がふと思い出したように言った。


    「引き継ぎの時、神崎先生から壮介君のことが書いてあるファイルを渡されたんですよ。驚きました」


    先生は指で厚みを示し、笑った。


    「えっ?そうなんですか?」


    ――そんなにも書いてくれたの?

    驚いた。

    車に乗った瞬間、涙がボロボロこぼれた。

    ――あの時の言葉は、社交辞令なんかじゃなかった。


    「ちゃんと引き継ぎます」


    その中身は、あんなにも分厚かったのだ。


    何も言わなくても、私の不安を分かってくれていた。

    言葉よりも先に、行動で示してくれていた。

    張り詰めていた気持ちが、少し和らいだ。

    学年は違っても帰りの運動場でよく見かけた。

    そして、よく目が合った。

    遠くで気づくと、笑ってお辞儀をした。

    それだけで、少し特別な気持ちになった。

    それだけで十分だった。

            *

    学校で、草むしりの日があった。

    四年生の時、隣のクラスの担任だった先生と話す機会があった。

    その先生の話によると、神崎先生は保護者の間で


    「イケメンすぎて、保護者会で緊張して全く話せなかった」  


    ということになっているらしい。


    「えっ?そうなんですか?」


    私がそう言うと、その先生が少し笑いながら言った。


    「お母さん、よく神崎先生と話されてましたよね」


    「はい。とても話しやすかったですよ」


    ――お祓いで先生の左肩に怒鳴ったなんて、口が裂けても言えない……


    「そうですよね!すごく話しやすいですよね!」


    なぜか、その先生と妙に意気投合してしまった。

    少しほっとした。


    第二章
    ②心の叫びと予兆


    母の病気と、長男の問題で揺れていた日々も、ようやく落ち着き始めていた頃だった。

    久しぶりに、心の中に穏やかな空気が戻ってきていた。


    その日、私はご機嫌で、学校の駐車場に降り立った。


    その時だった。


    「痛い……痛い……」


    声が、すっと流れ込んできた。

    周りを見渡しても、誰もいない。

    それでも、確かに聞こえた。

    胸がぎゅっと締め付けられる。

    ざわざわと、不安が広がっていく。


    帰りの車の中で、子どもに聞いた。


    「今日、神崎先生って学校にいた?」

    「いたよ」

    「元気だった?」

    「うん。いつもと同じ」


    ――あの声は、なんだったんだろう。

    頭から離れなかった。



    数日後、先生がうんていから落ちて足を怪我したと聞いた。

    あの時の声は、それだったのかもしれない。

    それでも、胸のざわつきは消えなかった。



    後日、お迎えで偶然会った先生に、怪我のことを聞いた。


    「大丈夫ですよ」


    先生は、とても元気そうだった。


    ――やっぱり、何か違う。


    そう思いながらも、私は心の中のモヤモヤを、無理やり押し込めた。

    あの頃、先生は「雨男」と呼ばれていた。

    不思議なくらい、クラブの日は雨ばかりだった。


    第二章
    三.雨男だから?


    子どものお迎えの日と、クラブ活動の日が重なるようになった。

    外で元気良くクラブ活動をする子どもたちを見ていたら、野球の顧問に神崎先生がいるではないか。


    ――あれっ、なんで?


    というのも、神崎先生はサッカーの顧問だったからだ。


    ――あっ、そうか!


    私は子どもが話していたことを思い出した。


    「先生がサッカーの顧問やるようになってから、ずーっと雨なんだよ。
    みんな、外で出来ないから体育館来るんだよ。狭くなるから困る」


    少し迷惑そうな顔をしていた、子どもの顔が浮かんだ。


    ――あー、なるほどね。


    私は確信した。



    ――雨男だ。



    そうだ。あの人が好きなことをすると雨が降る。そんな噂があった。


    数日後、下駄箱で先生に会った。


    「先生、クラブの顧問、変わられたんですね」

    私は、少し哀れみを込めて言った。


    「やっぱり、雨ばかり降るからですか?」

    先生が、えっ、という顔をした。


    そして――笑いを堪えるような顔になった。


    「いや……」
    クスッ。

    ――違うの?

    「あー、まぁ……」
    クスッ。

    「はい……」
    クスクス。


    先生は曖昧に頷きながら、ずっと笑っていた。

    結局、肯定も否定もされなかった。

    私は、すごくもやもやしたままだった。


    プロローグはこちら↓
    始まりのお話
    https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53

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    第一章①②はこちら↓
    ペットのうさぎが活躍します
    https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7

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    第一章③④⑤はこちら↓
    始まりの合図は虫なんです
    https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533

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    第一章⑥⑦⑧はこちら↓
    父が夢で語ったのはこの言葉です
    https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e

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    第一章⑨⑩⑪はこちら↓
    突然、母が運ばれました
    https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140

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    第一章⑫⑬はこちら↓
    保護者会の空気は最悪でした
    https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7

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    第一章⑭⑮⑯はこちら↓
    ついに、ツインレイ告白!
    https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71

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    第二章④⑤⑥はこちら↓
    心が通い出すように

    https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e

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    第二章⑦⑧⑨はこちら↓
    あなたを救いたい、それだけ
    https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203

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    第二章⑩⑪はこちら↓
    決着つけましょう
    https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2

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    第三章①②はこちら↓
    ずっと前から見られてた……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18

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    第三章③④はこちら↓
    「ぷっ」の破壊力
    https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d

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    第三章⑤はこちら↓
    そんな目で見るの……?
    https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776

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    第三章⑥⑦はこちら↓
    私だけ違う……
    https://note.com/amaimomo123/n/n5ced005533df

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    第三章⑧はこちら↓
    だいたいハリネズミのせい
    https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d

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    第三章⑨⑩はこちら↓
    答え合わせしよう
    https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232

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    第三章⑪はこちら↓
    最後の最後に……
    https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500

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    #完結済 #連載小説 #年の差 #先生と保護者

     
     
    ※DM・メールは受け付けていません。1日の終わりに人の心をぽっと照らす電球のような、小さな物語やエッセイを書いています。 少し切なくて、少し愛おしくて。 なぜか笑われることもあります。 良かったら、手を止めて読んでいって下さい☺️