
隣に座れなかった理由(わけ)#33第三章⑥女性担任への怒り#34⑦すれ違いの修学旅行
#創作大賞2026 #恋愛小説部門 応募作品
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第三章
⑥女性担任への怒り
六年生になってからは、どこか息の詰まるような空気があった。
話す時の妙な距離感。
どこで見られているか分からないような緊張感。
女性担任の前では、いつも少しだけ肩に力が入った。
そんな空気の中で、唯一ほっとできる時間があった。
朝の挨拶の時間だ。
今度は、子どもが足を骨折したため、
私は毎朝車で学校まで送って行くようになった。
大変ではあった。
けれど、その時間だけは少し安心できた。
不思議と、その時間は神崎先生の出勤時間とよく重なった。
「おはようございます」
「おはようございます。お願いします」
たったそれだけのやり取り。
それでも私の心には小さな安らぎが生まれていた。
そんなある日のことだ。
前の用事が長引き、
あらかじめ伝えてあった子どもの迎えの時間に遅れてしまった。
慌てて学校の駐車場に車を停め、
車から降りたその時だった。
女性担任がこちらに向かって走ってきた。
「遅かったので、どうされたかと思いましたよ!」
私は咄嗟に口を開いた。
「あっ、すみませ……」
その言葉の途中で、彼女は続けた。
「神崎先生がとっても心配されていましたよ!」
一瞬、息が詰まった。
――今、それ言うの?
「……すみません」
口だけが動いた。
その後も私は普通を装っていた。
けれど胸の奥では、怒りが収まらなかった。
その時だった。
運悪く、神崎先生が現れた。
女性担任への怒りと、
これ以上変な空気にしたくない気持ちで、胸の中がぐちゃぐちゃだった。
「先生ー!ご心配をおかけしてすみませんでしたー!」
自分でも驚くほど、強い声だった。
きっと顔も怒っていたと思う。
神崎先生は、えっ、という顔をして立ち止まった。
一瞬、驚いたように目を見開き、
困ったような表情になった。
私はすぐに目を逸らした。
先生は足早に行ってしまった。
女性担任は、ふっと視線を逸らした。
けれど、その時の私は――
怒りと、やるせなさと。
そして何より、
先生への申し訳なさで胸が苦しかった。
第三章
⑦すれ違いの修学旅行
あの日から、気まずいまま時間だけが過ぎていった。
気がつけば、修学旅行の日を迎えていた。
あんなに「雨男」だと、みんなにいじられていたのに、
「僕は、雨男です!」
と言い切ったのが良かったのだろうか。
今にも降り出しそうな厚い雲だったのに、
雨は一滴も落ちてこなかった。
体育館で出発の会が終わると、
見送る保護者の間を、
子どもたちが大きなリュックを背負って歩いていく。
その中に、神崎先生の姿もあった。
先生は保護者たちに、
「行ってきます!」と笑顔で挨拶していく。
だが、私のところに来た時には何も言わなかった。
最後に、こちらをチラッと横目で見て、
そのまま行ってしまった。
――あの時のこと、まだ引きずってるのかな?
――嫌われちゃったのかな……
悲しい気持ちのまま、子どもたちの乗るバスを見送った。
翌日になった。
子どもを迎えに行く車の中で、私は心に決めていた。
絶対、神崎先生と挨拶してやるんだ。
――負けるな、私!
バスが無事到着し、子どもたちが次々と校門の中へ入ってくる。
行きと同じように、保護者の間を抜けていく。
遠くの方に、先生の姿が見えた。
周りの保護者たちに、
「ただいま〜、ただいま〜」と笑顔で挨拶をしている。
保護者たちも
「おかえりなさ〜い」と笑顔で迎えている。
どんどん、私との距離が縮まる。
――笑顔で、おかえりなさい。
――笑顔で、おかえりなさい。
私は念仏を唱えるように、心の中で何度も復唱した。
いざ、先生と目が合った。
その瞬間。
妙によそよそしい顔をした先生から出た言葉は――
「あ……こんにちは……」
――あっ……えっ?
私の思考回路がショートした。
――こ、こんにちは??
想定外すぎる言葉に声が出なかった。
――負けちゃダメだ、私!
必死に笑顔を作って、何度も頷いた。
笑っているのに、胸の奥では、泣きそうになっていた。
「こんにちは」なんて、私だけに言ってた。
――私には「ただいま」と、言ってくれないんだ。
やっぱり、嫌われたんだ……私。
冬の空気の中で、鼻の奥がツーンと痛かった。
私は、ただ笑って頷くしかなかった。
プロローグはこちら↓
始まりの話です
https://note.com/amaimomo123/n/n192c6ae58a53
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第一章①②はこちら↓
ペットのうさぎが活躍します
https://note.com/amaimomo123/n/n819147f638e7
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第一章③④⑤はこちら↓
始まりの合図は虫なんです
https://note.com/amaimomo123/n/n4babb887f533
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第一章⑥⑦⑧はこちら↓
父が夢で語ったのはこの言葉です
https://note.com/amaimomo123/n/n4a18c660c50e
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第一章⑨⑩⑪はこちら↓
母が運ばれました
https://note.com/amaimomo123/n/nf72c9ebb3140
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第一章⑫⑬はこちら↓
保護者会の空気は最悪でした
https://note.com/amaimomo123/n/nfb53944439c7
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第一章⑭⑮⑯はこちら↓
とうとうツインレイ告白
https://note.com/amaimomo123/n/n83564e1fed71
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第二章①②③はこちら↓
神崎先生の身に……?
https://note.com/amaimomo123/n/na68b5fc131e4
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第二章④⑤⑥はこちら↓
心が通い出し始めます
https://note.com/amaimomo123/n/n52139df54b8e
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第二章⑦⑧⑨はこちら↓
あなたを救いたい、それだけ
https://note.com/amaimomo123/n/na2d605788203
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第二章⑩⑪はこちら↓
決着つけましょう
https://note.com/amaimomo123/n/nbf0ea09d45c2
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第三章①②はこちら↓
ずっと前から見られてた……?
https://note.com/amaimomo123/n/n741247e05a18
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第三章③④はこちら↓
「ぷっ」の破壊力
https://note.com/amaimomo123/n/n9d71dbcb9e2d
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第三章⑤はこちら↓
そんな目で見るの……?
https://note.com/amaimomo123/n/n819a75d49776
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第三章⑧はこちら↓
だいたいハリネズミのせい
https://note.com/amaimomo123/n/n90c0a1e1651d
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第三章⑨⑩はこちら↓
答え合わせしよう
https://note.com/amaimomo123/n/nf37388f77232
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第三章⑪はこちら↓
最後の最後に……
https://note.com/amaimomo123/n/n850177083500
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第三章⑫エピローグはこちら↓
思い出し笑い
https://note.com/amaimomo123/n/n3e0625cbf3aa
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