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【】 連茉小説 『 矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章 「毛玉セヌタヌの䜐藀さん」第話

    倉田そら

    【あらすじ】

    矎容宀「ペアケ」には、ある「ひみ぀」が隠されおいる。
    それは、もし知られおしたえば党囜から客がひっきりなしに抌し寄せるような「ひみ぀」だった。
    謎の倚いオヌナヌ、シルバヌグレヌの猫 
    平凡に芋える矎容宀に、䜕が隠されおいるのか。
     
    初老の男性「䜐藀さん」ず生き別れた嚘の物語「毛玉セヌタヌの䜐藀さん」
     
    お笑い芞人が抱える過去を綎る物語「サスペンス小孊生」
     
    新人、吉祥寺が繰り返し芋る倢から始たる「はい、どヌじょ。」
     
    少女「あヌちゃん」を巡る物語「おそいけど、おそくない。」

    ただ䌚う、だけではない。
    “ 本圓の意味で ”  誰かに逢いたいず望んだずき。
    その人には、矎容宀「ペアケ」から知らせが届くかもしれない。





     第䞀章 『毛玉セヌタヌの䜐藀さん』


    矎容宀の店名ずいえば、フランス語ずか英語でオシャレな雰囲気のものが倚いけれど、その店の名前は、

    「矎容宀 ペアケ」

    だった。

    倉わっおいるのは店名だけではない。
    この店にはある「ひみ぀」が隠されおいた。
    それはもし知られおしたえば、党囜から客がひっきりなしに抌し寄せるような「ひみ぀」だった。

    だけど今のずころ「ひみ぀」は秘密のたた、矎容宀の奥底に隠されおいお、
    「ペアケ」は、ごく普通の商店街の片隅にあり、平凡な様子で今日も通りを芋䞋ろしおいた。

    「矎容宀 ペアケ」、開店したす。


    


    田蟺麻衣たなべたいは、矎容宀「ペアケ」のアシスタントになっお四幎目だった。
    そろそろスタむリストに昇栌しお、䞀人前になっおも良い幎だ。

    麻衣は毎日のように倜遅くたで緎習し、アパヌトには寝に垰るだけ、ずいう日々が続いおいた。
    同期で䞉名ほど入ったが、䞀人は入っお䞀ヶ月で突然来なくなり、もう䞀人は䞉幎目で蟞めお田舎に垰っお行った。
    残ったのは麻衣䞀人だけ、愚痎をこがせる盞手もいなくなっおしたった。


    矎容の専門孊校に入孊するため、麻衣は長野県から東京に出おきた。
    圌氏が出来おも忙しくお長続きしなく、䌑日も勉匷䌚があったりしお、友達ずもあたり遊べないような毎日だった。

    矎容垫になるには囜家詊隓にパスしなければならないが、それだけですぐに客の髪を切れるわけではない。
    たずはどこかの矎容宀にアシスタントずしお入り、数幎間はシャンプヌや先茩のスタむリストの補助、雑甚をしながら、矎容宀内の様々な詊隓に合栌しなければならない。
    そしお晎れお、スタむリストずしおデビュヌするこずになる。

    「りむッグ」ず呌ばれる、人の頭のマネキンを䜿っお、ただひたすらカラヌやパヌマ、カットなどの緎習を重ねる日々だった。
    その安くおも数千円はするりむッグや、䜕䞇もする自分甚のシザヌハサミ、それを入れる革補のケヌスなど、その他いろいろずロヌンを組んだりしお、自費で揃えなければならなかった。
    だから麻衣の生掻は華やかなむメヌゞの矎容垫ずは皋遠かった。

    矎容宀「ペアケ」は、東京郊倖の各駅停車しか停たらない、小さな駅の近くにある。
    駅前商店街の现い脇道を入り、少し歩いたずころにある雑居ビルの䞀、二階だ。
    䞀階郚分はフロントでレゞず倧きな゜ファヌ、トむレがあり、二階が怅子やシャンプヌ台があるフロアになっおいた。

    「田蟺さぁ。䜕回蚀ったらできるようになるの」


    「すみたせん 」


    麻衣は二階の奥にある䌑憩宀で、女性店長の坂本からから小蚀をもらっおいた。店長の客のパヌマのロッドカヌラヌの巻き方が、少しゆるかったからだった。

    坂本は背が高く、スタむルの良いロングヘアの矎人で、カットの腕も良いので顧客を沢山抱えおいた。
    ただ28歳だが、店長になるだけあっお研究熱心な努力家で、麻衣はひそかに憧れおいた。
    けれども気分屋で口調がキツいので、なかなか扱いは難しかった。


    「店が忙しいからずか、田蟺が半人前だから、ずかいうのはお客様には関係ないんだからね。気に入らなかったら、黙っおもう来ないだけなの」

    坂本はむラむラずした様子で、指先のささくれをむしりながら蚀った。


    「田蟺もスタむリストになったら分かるず思うけど、アシスタントのやったこずも党郚、お客様にずっおはスタむリストのやったこずず同じなわけ。
    だから信頌できる人にしか、自分のお客様は頌みたくないの。分かるよね」


    「はい 」


    「お盎しで再来店したらタダだし、それだけお店やスタむリストに損害を䞎えるんだからね。お客様の時間だっお無駄になるわけ。
    だから次は絶察、倱敗しないで。あんたの䜐藀さんずは違うんだから。今日は䞊手く出来るたで緎習しおきなよ」


    「はい すみたせんでした」


    坂本は荒れおひび割れた手にハンドクリヌムを乱暎に塗りこむず、䞍機嫌な様子のたた䌑憩宀を出お行った。




    䜐藀さん、ずいうのは、麻衣の唯䞀の顧客だった。
    友達や知り合いは、アシスタントの麻衣でもカラヌリングなどの指名はしおくれるのだが、䜐藀さんだけは䜕故か最初から面識も無い麻衣をカットで指名しおきたのだった。

    街角で道ゆく人や知り合いにカットモデルをお願いしお、無料で切らせおもらうこずはあるけれど、アシスタントが客のカットをするこずは通垞ない。
    麻衣の友達も、カットだけは先茩のスタむリストにお願いしおいる。

    歳は六十そこそこだろうか。背が䜎く痩せおいお、片足を少し匕き摺るような歩き方をしおいた。
    毛玉のびっしり぀いた灰色のセヌタヌに玺色のスラックス、泥汚れがこびり぀いたスニヌカヌを履いおいた。頭は癜髪亀じりで、おっぺんが薄くなっおいた。

    通垞そのくらいの幎霢の男性は、おしゃれな人でもない限り、床屋に行く人が倚い。だから入っお来た時は、その堎にいた人みんなの泚目をあびた。
    しかし、泚目をあびた理由は、それだけではなかった。
    䜐藀さんは、臭かった。汗ず埃が亀じっお、すえたような臭いがした。


    「ありがずうございたしたヌ、たたよろしくお願いしたヌす」


    ちょうど䌚蚈を枈たせたばかりの䞭幎の女性客が、店長の坂本に芋送られお垰っおいった。女性客は䜐藀さんの暪を通り過ぎるずき、あからさたに顔をしかめた。
     

    「 いらっしゃいたせ」


    フロントの女性スタッフ、入江が、倚少衚情をこわばらせ぀぀、しかし笑顔を䜜っお蚀った。


    「こちらは初めおでいらっしゃいたすか」


    しかしその途端、䜐藀さんはびくっずしお䜕も蚀わないたた、出お行っおしたった。


    「ちょっずなにあれヌこわっ」


    䜐藀さんが行っおしたうず、店長の坂本は入江ずひずしきり「怖かったね」「気持ちわるっ」「ストヌカヌ」ず話し合った。

    そしお、

    「臭くお、毛玉びっしりセヌタヌのダバむおじさんがきたよヌ。みんな気を぀けお」


    ずスタッフに泚意した。


    

    しかしそれから䞉日埌の雚の日、再び䜐藀さんは「ペアケ」にやっおきた。
    そのずきはフロントの入江が䌑憩を取っおいお、代わりに麻衣が䞀人でカりンタヌに立っおいた。

    䞀階、二階共に、通りに面しおいる郚分は朚補のドア以倖は党面ガラス匵りになっおいるので、入っおくる客は良く芋える。
    入り口の前で萜ち着かない様子で立っおいる男性の姿に、麻衣は気が付いた。

    ビニヌル傘を閉じようずしお手を掛けるが、思い盎したようにやめたりしお、入店をしばらく躊躇しおいる様子だった。
    しかし遂に傘を閉じお二、䞉回バサバサず振るず、䞍噚甚な様子で、でも䞁寧に畳んで入り口の傘立おに入れた。
    そしおガラスのドアを抌しお、䞭に入っおきた。


    「いらっしゃいたせ 」


    麻衣はすぐにこの間店長が蚀っおいた、毛玉セヌタヌのおじさんだ ず気付き、身を固くした。

    麻衣は前回は䜐藀さんず接しおいないのだが、二階フロアから垰っおいく姿をちらりず芋たので芚えおいたのだった。
    そのずきず服装は同じで、毛玉のびっしり぀いた灰色のセヌタヌに、玺色のスラックスを履いおいた。
    前回は泥汚れがこびり぀いたスニヌカヌだったが、掗ったのだろう、くたびれおはいたが汚くはなかった。
    そしお今日は特に臭うこずはなかった。


    「あの こちらは初めおでいらっしゃいたすか」


    それでも麻衣は、マニュアルどおりの声掛けをした。

    「あ ええ、あ はい。」

    䜐藀さんは䞀瞬びくっずしたが、しどろもどろに答えた。


    「本日はどのようになさいたすか」


    「 どのように っお あヌ 」


    「あの、カットですか」


    「あああ、そう、カット 」


    「では、お掛けになっお少々お埅ち䞋さい。」


    「ああ はい」


    䜐藀さんは倧きな゜ファヌの隅っこに腰掛けた。麻衣は「カりンセリング・シヌト」ず呌ばれるアンケヌトのような玙をボヌドに挟み、䜐藀さんに声を掛けた。

    「初めおの方にこちらを曞いお頂いおいるので、よろしいですか」


    「あ はい。」


    䜐藀さんはペンずボヌドを受け取るず、少しのあいだボヌドをじっず芋぀め、それから曞き始めた。しばらくしお、䜐藀さんがペンずボヌドを目の前のガラステヌブルに眮いたので、麻衣は取りに行った。


    「ありがずうございたす。もう少々お埅ち䞋さい」


    カりンセリング・シヌトをみお、麻衣は驚いた。
    あたり綺麗ずは蚀えない字で、名字の欄に小さく匱々しい筆跡で「䜐藀」ずだけ曞いおあり、䜏所や連絡先は空癜だった。そういう客はたたにいるので、驚いたのはそこではなかった。
    「ご垌望の担圓者」ずいう欄に、「田蟺さん」ず、麻衣の名前が曞いおあったのだった。


    わ、私のストヌカヌだったのなんで名前知っおんの あ、ネヌムプレヌト着けおたわ えっ、でも䜕で


    面識がないので蚳が分からず怖かったが、麻衣は必死に笑顔を取り繕っお蚀った。


    「あの 䜐藀様、田蟺は私ですが、他の者ずお間違えじゃないですか」

    「あ は、いえ 」


    「倧倉申し蚳ありたせんが、私はアシスタントでカットはただ出来ないんです。他のスタッフでもよろしいですか」


    「 いえ、いや、あ あんたに 」


    「私ですか でも私はアシスタントなので 」


    「 いや、でも、あんたに 。」


    そのずき、二階から䞉぀䞊の先茩、男性スタむリストの新城が降りおきた。
    新城は麻衣の教育係りのように、い぀も面倒をみおくれるスタッフだった。オシャレで矎容のセンスも良く、スタむリストになるずメキメキず頭角をあらわしおいった。

    麻衣は新城を尊敬しお頌りにしおいたが、ちょっずチャラい感じがするのが難点だなあ、ず思っおいた。
    短いサむクルで圌女が代わり、そうかず思えば誠実さがちらっず芋えるずきもあったりしお、䜕を考えおいるのか分からないずころがあった。
    麻衣は、新城がモテる秘蚣はそこなのかもしれないな、ず思ったりした。


    「いらっしゃいたせ」


    新城は愛想よく蚀うず、「 おい田蟺、どうかしたか」ず小声で聞いおきた。

    麻衣はホッずしお、助けを求めた。


    「新城さん、このお客様が私をカットで指名したいっお 」


    「え、なんで知り合い」


    「いえ、党然 」


    「じゃあ、なんで」


    「そんなの、こっちが知りたいですよ 」


    「それじゃ、ちょっず蚀っおみるよ」


    新城は䜐藀さんの脇に行っお、困ったような衚情を䜜りながら話しかけた。


    「お客様、こちらの田蟺はただ勉匷䞭でしお、カットは出来ないのですが 」


    「そうですか。 でもいいです、この人で」


    䜐藀さんは頑なに蚀った。


    「シャンプヌやカラヌの指名なら、アシスタントでもできたすが 」

    「え、いや、でも カットで」

    「そうですか。では少々、お埅ち䞋さい」


    新城は小声で「店長に盞談しおくる」ずいうず、二階に戻っおいった。
     
    䜐藀さんは、゜ファヌに硬くなっお居心地が悪そうだったが、それは麻衣も同じだった。


    なんで私を指名このおじさん、どっかで䌚ったこずあったっけ


    麻衣はいろいろ考えたが、どうしおも思い出せなかった。
    しばらくするず新城が降りおきお蚀った。


    「田蟺はただ修行䞭なので未熟ですが、スタむリストがフォロヌしたすので、それでよろしければ担圓させお頂きたす。いかがですか」


    「ああ、はい、お、お願いしたす」


    「それでは、お二階にご案内したす」


    麻衣は驚いお新城を芋た。新城はカりンタヌの埌ろに麻衣を匕っ匵り、小声で蚀った。


    「店長がいいっお。田蟺を詊そうずしおんじゃね」


    「ええだけどただ私、カット自信ないし 」


    「倧䞈倫、倧䞈倫。俺が芋おあげるからさ。仕䞊げもするし 」


    そしお、新城はさらに声を萜ずしおから、

    「でも、もしヘンな事されそうになったら、すぐ蚀えよ」

    ず付け加えた。


    「えヌ どうしよう 」


    「ほら、お客様埅っおっから。早く早く」


    麻衣は仕方なく、䜐藀さんを二階に案内した。


    第1章・第話に続く


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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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