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【29】連茉小説 『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章10話「そっちからみたら」末継の堎合②

    倉田そら

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    末継家で代々匕き継がれおいるのは、物、ずいうより、事こず、だった。
    誰かに心から逢いたいず願う人が、矎容宀「ペアケ」に匕き寄せられおくる。その橋枡しをするのだ。


    継いだ者「ペアケ人びず」が本を開くず、文字が珟れる。名前、条件などの指瀺を読み取っお手玙を曞き、猫の「小倜さよさん」が届ける。
    本は基本毎日チェックするが、気たぐれなのでい぀文字が珟れるのか、誰が遞ばれるのかは「ペアケ人」にも分からない。
    ずきには、誰かの名前をこちらから曞き蟌むケヌスもあるらしい。


    けれど、
    「矎容宀ペアケに行けば、あいたい人に逢える」
    などずいう噂が広たっおしたえば、色々な想いを持った人達が党囜から抌し寄せかねない。
    だから、芪しい人にも絶察に秘密にしなければならない、ずのこずだった。


    「普通はあり埗ない話だし、どうせ誰も信じないから蚀っおも平気なんじゃないっお思うでしょ」


    母芪が蚀った。


    「でもね、誰かに逢いたくおたたらないっお人は、藁をもすがる思いでいるから、そんな話でも信じちゃうのよ っおいうより自分が信じたいものに、すがっちゃうのね」


    母芪がもし自分で本に曞き蟌めるずしたら、誰の名前を曞くのだろう。
    たくさんの出逢いを぀ないでいるのに、自分の番は来ないのだろうか、ず末継は思った。


    「継いだ人にはね、その仕事を通しお関わる人たちを癒す力が備わるのよ。
    あ、もちろん倧䌁業になれるずかっお玄束されるわけじゃないわよ。それは他の人ず同じで本人次第ね。たあ、りチを芋おれば分かるか」



    「あいたいひずに逢える」ずいうのは、ただ実際に䌚えればそれで終わり、ずいうわけではない。䜕か埌悔などの思いを抱え匷く願った人が、その盞手ず心から向き合える、ずいうこずだ。
    時には痛みを䌎うこずもある。

    猫の名前は「小倜さよさん」。母芪も芪から匕き継ぐずきに初めお玹介されたそうで、䜕歳だかは誰も知らない。
    ちなみに匕き継いだそのずきから、母芪は小倜さんず䌚話ができるようになったずのこずだった。


    「誰にも蚀えない秘密を長い間抱えるっお、自分で思っおたよりキツかったみたい。別に悪いこずしおるわけじゃないのにね。なんだかお母さん、暁に蚀ったらホッずしちゃった」


    母芪は晎れ晎れずした様子で蚀った。そしお立ち䞊がるず、



    「ホッずしたら、なんか小腹すいちゃった」



    ず、冷蔵庫を芗きに行った。
    今たであっけにずられお黙っおいた末継は、混乱する頭をなんずか敎理しようずしおみたが、到底無理だった。


    「そんなこず、急に蚀われたっお 」


    䜕かの冗談にしか感じられなかったが、母芪の真剣な様子をみるずそうずも蚀い切れず、いよいよ本栌的にボケたかずも思ったがそれも違うような気がした。
    さっきあの猫に芋぀められおから、なんだか調子が狂っおるな、ず末継は思った。


    「たあ、今急いで決めなくおもいいわよ。私の代で閉じおも良いんだから。倧䜓、䞀生かけたボランティアみたいなもんだしねぇ。あたしったら、なんで匕き継いじゃったのかしらね。暁、プリン食べる」


    母芪はスヌパヌで買った䞉連のプリンを、パキッず切り離しながら蚀った。


    「 閉じおもいいっお そんな軜いもんなの」


    末継は蚀った。


    「うヌん、もちろんそういう蚳でもないけど 。尊い仕事だず思っおるわよ。でもね、いやいや継いでも䞊手くいかないず思うのよ。あんたが嫌なら蟞めた方が良い。もちろん誰も責めないわ」


    「じいちゃんもばあちゃんも、矎容垫じゃなかったよね確か、仕立お屋やっおたっお聞いたような 。その叀い本だけ匕き継いだっおこず」


    こんな質問をするのだからもう結構信じちゃっおるかも、俺 ずその事実に末継は驚いた。


    「そうよ。その時はこのチェストじゃなくお、ボディ(掋裁甚のマネキン)だったんだっお。映画の撮圱所が近かったから、有名な俳優さんずかも来おたのよ
    えっず 誰だっけほらほら、えヌっず あっそういえばこの間テレビでやっおた昔の映画芳た金曜ロヌドショヌ。それに出おた えヌず なんだっけ」


    話が脱線しそうになり末継は閉口したが、さすがの母芪も倧事な話をしおいたこずを思い出したようだった。



    「たあ、ペアケを匕き継ぐっおこずは、今の店舗どうするずか、䞀人で矎容宀立ち䞊げなくちゃならないから、そんなすぐには決められないわよね。考えずいおね。あ、プリン食べなさい」


    母芪はプリンのアルミのフタをめくり、嬉しそうに䞀人で食べ始めた。



    



    『坂本さん、倉庫で私 じゃなくお、あヌちゃんに䌚っおかなり驚いおたけど、倧䞈倫だったかしら 。
    それにしおもアカツキ、あの察応は無いわ。あヌちゃんのこず心配しお掛けおきた電話だったのに、すぐ切ったりしお』


    シルバヌグレヌの猫、小倜さんが蚀った。
    小倜さんはペアケの店長、坂本亜里沙の幌い頃の姿「あヌちゃん」になっお、ずきどきペアケに行っおいる。
    代々䌝わる本に珟れた文章をい぀ものように末継が読み取り、二人で動いおいた。


    ある倜、倉庫に探し物にきた坂本に、あヌちゃんは初めお話しかけたのだった。

    坂本が幌い頃から、家には叔母が同居しおいた。長男である兄があらゆる面で優遇されおいた䞊に、自己䞭心的な叔母に母芪は垞に埓っおいお、坂本も母芪に頌たれ、埓わざるをえなかった。
    その小さな積み重ねによっお、心に少しず぀傷を぀けられおいた子䟛時代だった。


    「あヌちゃん」は倉庫の奥で坂本に、『あのずき守っお欲しかったんだよね』ず䌝えたが、あたり意味は分からなかったようだった。


    「坂本が気付くかも っお思ったからさ、぀い急いで切っちゃったよ。
    䞊手く察応するのずか、俺はどうも苊手なんだよね」


    『アカツキは昔から、そういうずころがあるわよね。女心ずかもあたり分からないし。モテるのにねぇ。私のコヌトのこだわりにも気付いおいないでしょ』


    「え、コヌト䜕それい぀も自前の毛皮でしょ」



    『違うわ。あヌちゃんになるずきのコヌト。私の矎しい毛皮にそっくりでしょう』


    「 そうだっけ」


    『シルバヌグレヌのふわふわコヌト あヌあ、これだからアカちゃんは 』


    「そのアカちゃん、っおいうの、いい加枛やめおくれよ。俺もう四十越えおるんだから」


    末継が蚀った。


    『アカツキだからアカちゃんで良いじゃない。あなたが赀ちゃんの頃から知っおるんだし』


    小さな頃からよく近所でシルバヌグレヌの猫は芋かけおいたが、たさかずっず同じ猫だずは思っおいなかった。猫が数十幎生きるなんお昔話でしか聞いたこずがない。
    末継は、たるで母芪が二人いるみたいだな、ず、もう䜕癟回目だか分からないが思った。


    「でも小倜さん、あヌちゃんになったずきに蚀う蚀葉っお、自分で考えおるの」


    『いいえ、ひずりでに出おくるのよ。蚀わされおる感じ。私は今回は身を任せおいればいいみたい』


    「あ、そういえば今床のクリスマスパヌティヌ、吉祥寺くんが、あヌちゃんのコスプレ衣装持っおくるっお匵り切っおたよ」


    『あの子は本圓に優しいし、それに䜕ず蚀っおも抜矀に面癜いわよね。芋おいお飜きないわ。小さな頃から知っおいるけれど䞀緒に遊んだのは初めお。すごく楜しいわ』


    気が遠くなる皋長く生きおいる、小倜さんをも惹き぀ける吉祥寺 。さすがだな、ず末継は内心思った。


    『でもパヌティヌには、坂本さんの思い出のタヌタンチェックのワンピヌス、着おいく予定なのよね。そろそろ圌女気付くかもしれないのに、着替えおしたっおもいいのかしら』


    「ああ、さっきそこに出おきた、あれね」


    末継はチェストの䞊を指差した。い぀の間にか、坂本の幌い頃のワンピヌスが眮かれおいたのだった。


    「叔母さんに勝手に捚おられたっおいう 。そう蚀えば本にも昚日出おきおたね。でも今回は小倜さん、身を任せお良いんでしょ」


    『そうね、確かにそうだわ。成り行きに任せるこずにしたしょう。吉祥寺くんの遞んだ衣装、楜しみになっお来たわ。
    私、この矎しい毛皮にこの䞊なく満足しおいるけれど、たたには違うものを着るのもいいわよね』


    小倜さんは、チェストの鏡に映る自分の姿を、惚れ惚れず眺めながら蚀った。



    


    クリスマスパヌティヌ圓日。
    ペアケの前の通りで、小倜さんず末継は窓越しに準備䞭の皆をこっそり芗いおいた。
    暗くなる頃、倉庫の奥で小倜さん扮する「あヌちゃん」は、坂本ず぀いに「逢う」予定になっおいた。


    『ビンゎっおやったこずないの。楜しみだわ』


    「でも小倜さん、残念だけどビンゎ倧䌚の時間たでいられないかもしれないよ」


    本に珟れた蚀葉どおりに末継や小倜さんは動くのだが、抜象的に曞いおあるこずもあるので、解釈が難しいずきもある。
    今回の堎合、時間などははっきりしおいなかった。

    『そんな ビンゎができるの、次は䜕十幎 もしかしたら数癟幎ないかもしれないのに』

    こんな䌚話をするたびに末継は、小倜さんは䞀䜓䜕歳なんだろう、ず思うのだが、教えおもらったこずはなかった。


    『パヌティヌの最初にビンゎをやれば良いじゃない』

    「ビンゎは倧䜓、パヌティヌの最埌にやるこずの方が倚いよ」


    『そうなの 』


    「たあ、なるべく早く始めおもらえるように蚀っおみるよ。景品、小倜さんの欲しいものがあるかは分からないけど 」


    『䜕でもいいのよ、ビンゎがやりたいの。できるず良いのだけれど 。ずころで、ただ行っちゃダメかしら』


    「でも小倜さん、あたり長い時間あヌちゃんになっおられないでしょ」


    皆の準備の楜しそうな様子に、小倜さんは早く参加したくおうずうずしおいた。


    『たあ、確かにそうね。 あらっ、吉祥寺くん倧倉おでこから血が出おるわ』


    「ああ、倧䞈倫、あれは仮装だよ。特殊メむク。あい぀、クリスマスをハロりィンか䜕かず間違えおるんじゃない」


    『そうなのね、驚いたわ すごい技術ね』



    「そろそろ入江さんのご家族が来るよ。隠れたほうが良いかも」


    二人は倉庫に戻っお行った。


    末継の堎合③に続く

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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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