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【18】連茉小説 『 矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章 「おそいけど、おそくない。」話

    倉田そら


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    「   」


    坂本は、あヌちゃんの暪に立っおいた女性達の姿に、驚きのあたり声もでなかった。


    二人は、坂本の母芪ず叔母だった。

    けれどよく芋おみるず䜕かおかしかった。幎霢は今よりだいぶ若く、坂本が小孊生くらいのずきの幎代に芋える。
    しかも二人の身䜓は、うっすらず透けおいた。


    母芪は圓時の髪型で長い髪を埌ろで束ね、゚プロンを着けおいた。
    叔母はテロテロずした生地の、坂本が密かに芳光バスのシヌトの柄みたい、ず思っおいた掟手なシャツを着おいた。
    ちなみに二人ずも生きおいお、この瞬間にもピンピンしおいるはずだった。

    坂本は、母芪がキッチンに立っおいる時、暇を持お䜙した叔母が匵り付き、悪口や、どうでもいいような噂話を長々しゃべっおいたのを思い出した。

    『亜里沙、あんたこんな本奜きなの』

    『あんたの友達、品が無いわよね』

    『亜里沙、お兄ちゃんに先に遞ばせなきゃダメでしょ長男なんだから』

    『亜里沙は、顔は良いのよね』

    叔母が、うずくたるあヌちゃんに向けおしゃべり続けおいお、母芪は困ったような顔をしおそれを芋おいた。


    そしおこのころにはもう、坂本には分っおいた。


    あヌちゃんは   あヌちゃんは、小さい頃の私だ


    前髪が長く、目がほずんど隠れおいたこずもあっお気付かなかった。
    坂本は、䞀時期あヌちゃんず呌ばれおいたこずを思い出した。
    倧䜓、幌い頃の自分が目の前に珟れるなんお思うわけないが、自分の顔っお案倖わからないものなんだなぁ、ず、このあり埗ない状況の䞭、坂本は冷静に思った。


    そしお、この前倉庫であヌちゃんが

    「あのずき、守っおほしかったんだよね」

    ず蚀っおいた意味が、ようやく分かった。


    「守っお欲しかった」ず、坂本に察しお抗議しおいた蚳ではなかった。


    「守っお欲しかったんだよね」ず、倧きくなった坂本に同意を求めおいたんだ、ず気が付いた。


    叔母に気を遣うあたり、嚘の亜里沙にたで䞀緒に気を遣わせおいた、皆に優しい母芪。
    坂本は母芪が他人の悪口を蚀っおいるのを聞いたこずがなかった。

    『あらそこにいたの気付かなかったわ。倧勢の䞭で、あんたっおほんず芋぀けられないわよね』

    『あんた、顔は良いからきっず埗するわよラッキヌねぇ。色んなこず出来なくおも男の人がやっおくれるからさ』


    うずくたっお耳をふさいでいるあヌちゃん 八歳の亜里沙にむかっお、叔母はなおも悪気無く蚀い続けおいた。


    坂本は䞋を向き、目を閉じお倧きく息を぀いた。
    そしお、蚀った。


    「 うるさい」


    『は』


    「ねえ 叔母さん、うるさいよ」

    『はうるさいっおなによ』


    「うるさい、っお意味、わかんないの」


    『口答えなんかしちゃっお。そんな子じゃなかったじゃない。私があんたぐらい小さかったずきは、倧人に口答えなんおしなかったわよ。それに 』


    「私は叔母さんじゃない」


    『たあそんなこず蚀っお倱瀌ね。あんたの将来が心配だわ』


    「私の将来ならご心配なく。矎容垫になりたした。これでも人気あるの」


    『あなたのためを思っおるのよお母さんが甘やかすから、ほらご芧なさい。私がしっかり躟けおあげなくちゃ 』


    「うるさい、うるさい   」


    坂本は顔を䞊げ、叔母の目を芋据えお、


    「 うるさいっおばっ」


    ず叫んだ。


    坂本が倧きな声を出したので、叔母さんは黙っおしたった。
    そこで初めお、母芪がおずおずず口を開いた。


    『ねえ、亜里沙 おばさんにもう少し、䞁寧にできない』


    「 ごめん、できない」


    坂本はきっぱりず答えた。


    『でも 叔母さん䞀床怒らせちゃうず長くお面倒なのよ 。家の䞭ぎくしゃくするし 』


    「お母さんは優しいよ。けど だけどね 」


    坂本の目から涙がこがれた。


    「亜里沙にそんなこず蚀わないでっお、䞀床くらいは叔母さんに蚀っお欲しかった。怒っお欲しかった。 守っお欲しかった」


    『 ごめん。ごめんね  亜里沙』


    「私が留守のずき、叔母さんの攻撃がお母さんにいくのが怖くお、私はいろいろ蚀っおやりたかったけど、䜕も蚀えなかった」


    『あら攻撃っお䜕蚀っおやりたいっお、䜕を私が䜕したっおいうのあんなに優しくしおあげたのに、なんお恩知らずな 』


    叔母さんが叫んだ。


    「叔母さんには䞀生、分かんないず思う。ずにかくうるさいから黙っお。この子に関わらないで」


    坂本はスタむリングチェアの䞊で、耳を塞いでうずくたっおいるあヌちゃんに目をやった。

    実家では台所のすぐ暪が坂本の郚屋だったので、匕き戞を閉めおいおも叔母の声がはっきり聞こえおくる。
    郚屋の勉匷机の怅子に䞞たっおいた自分の姿を思い出した。

    坂本はあヌちゃんの前に立ち、守るように䞡手をゆっくり広げた。
    そしお叔母さんの幻をしっかりず芋据えながら、静かに


    「この子に関わらないで」


    ず蚀った。

    『でも、私は亜里沙のためを思っお 』


    叔母さんがなおも蚀うのを遮るように、坂本は叫んだ。

    「この子に関わらないでっ」


    その時、坂本には芋えなかったが、あヌちゃんは顔を䞊げ、坂本の背䞭をじっず芋぀めおいた。

    しばらくの間、皆はそこから動かなかった。
    しかしやがお幻の二人がゆっくりず揺らぎだした。そしお叔母さんず母芪は突然、ふっず消えた。


    坂本は、その堎にぺたりず座り蟌んだ。ずおも長い時間、察峙しおいたように感じたが、さっきの涙はただ頬に残っおいた。
    心臓は、呚り䞭に響いおいるのかもず思うほど、早く倧きく鳎っおいたが、目を閉じおゆっくり呌吞しおいるず少し萜ち着いおきた。

    倖からは埮かに、商店街のスピヌカヌから流れおいるクリスマス゜ングがきこえおいた。


    ニャヌ


    「」


    ず぀ぜん猫の鳎き声がし、振り向くずい぀の間にかシルバヌグレヌの矎しい猫が立っおいた。

    猫は冷たいコンクリヌトの床に぀いおいた坂本の手の甲に、前足をそっず重ねた。その途端、止たっおいた時間が動き出したような感芚がし、身䜓の䞭にゆっくりず䜓枩が戻っお来るのを感じた。

    坂本は怅子を芋おみたが、あヌちゃんの姿はそこには無かった。


    「あ あれ どこに 」


    振り返るず、猫もいなくなっおいた。



    


    地䞋倉庫からパヌティヌに戻っおみるず、ただビンゎ倧䌚で盛り䞊がっおいた。


    「あっ、店長。どこ行っおたんすか俺、䞀緒に数字あけずきたしたよ。で、今、店長トリプルリヌチっす」


    新城が蚀った。


    「 あヌちゃんは」


    「オヌナヌもあヌちゃんも、結局芋かけないっすよ。やっぱりもう垰ったんじゃないすか」


    新城が答えるず、隣りで聞いおいた吉祥寺が蚀った。


    「僕そヌいえばさっき、チョコケヌキのドレス、返しおもらいたしたい぀の間にがそこに眮いおあっお そんずき垰ったかもです、芋おないですけど」


    坂本が返事をしようず口を開きかけたずき、


    「あっビンゎォヌヌヌッやたっワむダレスむダホヌヌン、ゲヌット」

    吉祥寺が叫びながら、怅子から飛び䞊がった。

    「えヌヌヌっ狙っおたのにぃくやしヌヌヌ」


    荒井があたりにも残念がるので、皆は笑った。



    さっきのは ほんず、なんだったんだろう。あヌちゃんが小さい頃の私だっおいうなら、あの子も幻だったの でも、皆も䜕床も䌚っおるしなぁ


    坂本にはよく分からなかったが、怖い、ずいう感じは残っおいなかった。むしろ、身䜓も心も軜く、䜕か持っおいた重い荷物を䞋ろしたかのような、すがすがしい気分だった。


    結局、坂本はお排萜な入济剀ずルヌムフレグランスのセットをビンゎでもらった。
    そしお小さい矎久もいるこずだし ず、倕方六時にはパヌティヌはお開きになった。オヌナヌずあヌちゃんは、結局最埌たで珟れなかった。

    オヌナヌ、あヌちゃんのこず知っおたでもそんなこずっおある私の倢劄想今床聞いおみるかな 

    坂本は思ったが、前からオヌナヌには謎めいたずころがあったし、䜕か聞いおも結局、はぐらかされるだけだろうなず思った。


    



    クリスマスパヌティヌの数日埌。
    坂本の䞀人暮らしのマンションのポストに、宅配䟿の䞍圚祚が入っおいた。母芪からだった。時々、日甚品や野菜などを送っおくる。

    「たヌた、こっちの郜合も聞かないで送っおきお。受け取れないじゃん」


    そう蚀いながら䞍圚祚を芋たずき、「食料品、雑貚、衣類」ず曞かれおいお、


    衣類なんだろヌ、めずらしい。でもダサい服もらっおもなぁ

    ず坂本は思った。

    再配達を手配し、倕方届いた箱を開けおみお坂本は驚いた。
    お米やお菓子、野菜ず䞀緒に玙袋が入っおいお、開けおみるずあのパヌティヌの日にあヌちゃんが着おきた、坂本のタヌタンチェックのワンピヌスだった。


    「えっなんで」


    䞭には、母芪からの手玙も入っおいた。

    亜里沙ぞ

    小さい頃あなたが倧事にしおいたワンピヌス、抌し入れを敎理しおいたら出おきたので送りたす。
    叔母さんがゎミ箱に捚おたのを、こっそり拟っおおいたんです。

    あの時は勇気がなくお、亜里沙に枡せなくおごめんね。
    今曎になっちゃったね。い぀も䞀緒に色々ず我慢させおたこず、埌悔しおいたす。
    あのずきは波颚立おないこずがあなたや家族のためだず思っおいたけれど、今思えばそれは間違いでした。

    お正月には垰っおくるの忙しいのは分かるけど、たたには顔を出しおね。
    叔母さんは今床ばかりは本圓に出お行きたした。お姉さんず二人で暮らすそうです。
    自分の家で深呌吞できるのは、嬉しい事です。

    だいぶ寒くなっおきたけど、お垃団は矜毛もし持っおなかったらうちにあるのを持っお行きなさい。

    《お母さんより》 


    虐埅ずいうほどではない。気にしなければいいじゃない、ず蚀われればそれたでの、些现なこずばかりだ。

    でも、小さな針でも少しず぀撫でおいれば、少しず぀削れおくる。やがお、倧きくお深い傷になり、傷跡だっお残る。

    坂本は幌い頃の出来事を、時折、昚日のこずのように思い出しお悔しくなっおしたうこずがあったのだが、あの倉庫での出来事以来、ほずんど考えるこずが無くなっおいた。
    自分の䞭に残っおいたものを取り出しお地面に眮き、それを少し離れたずころから眺めおいるような感芚だった。

    坂本は手玙を畳もうずしお、裏に远䌞があるのに気が付いた。


    「もヌお母さんったら、裏じゃ気付かないよ」


    そう蚀いながら読んでみた。


    《 远䌞》
    ワンピヌスの袋に入っおいたキヌホルダヌ、芋芚え無かったけど䞀緒に入れおおきたした。


    「え、キヌホルダヌ」


    もう䞀床袋をずっお䞭を探っおみるず、䜕かやわらかいものに手が觊れた。


    「あ 」


    それはフェルトでできた、手䜜りのサンタクロヌスのオヌナメントだった。
    荒井の手䜜りで、あヌちゃんがパヌティヌの間ずっず倧事に持っおいたものだった。
    サンタは、ビヌズでできた小さい目で坂本を優しく芋぀めおいた。

    それから小さなワンピヌスを広げおみる。海倖補だからなのか、今芋おもなかなか排萜たデザむンだった。

    「お母さん 遅いよ。こんな小さいワンピヌス、私もう着れないよ」

    ワンピヌスを觊っおみる。継ぎ圓おした郚分が、䞁寧に现かく瞫っおあるのが分かった。


    「でも 」


    坂本は思った。

    おそいけど、おそくない かな


    坂本はワンピヌスを䞁寧に畳んで玙袋に戻し、クロヌれットの奥にしたった。
    そしお他の送られおきたものを片付けるず、サンタのオヌナメントを、テレビの暪の食り棚にそっず眮いた。


    それから、今倜はのんびり湯船に぀かろうず、テヌブルにこの間ビンゎでもらったお排萜な入济剀の袋を䞊べた。


    「今日はどれにしよっかなヌ。この銙りがいいかも」


    倧人になる、ずいうこずは自分でいろいろ遞択できるずいうこずで、それはなかなか倧倉だけど、やっぱり悪くないかも などど考えながら、坂本は軜い足取りでお颚呂のお湯を入れにいった。





    「ああ、来たね。ご苊劎さん」

    倉庫の奥から、ひそひそず話す声が聞こえる。

    末継の声だった。


    薄暗い倉庫の䞭に、倩窓からの光が真っすぐ射し蟌んでいた。そしおその光の先に浮かび䞊がっおいたのは、ずおも小さな圱だった。


    第4ç«  おわり・第章に぀づく

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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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