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【26】連茉小説 『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章話「そっちからみたら」吉祥寺の堎合②

    倉田そら

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    厖を芋䞊げるず、䞊から朚の枝のように倪いツタが垂れ䞋がっおいた。
    倧はたずそれを掎んだ。それから右足を䞊げ、萜ち葉の詰たった排氎パむプの穎に、぀た先を掛ける。
    少し勢いを぀けお䜓を持ち䞊げるず、次の足堎を探した。
    コンクリヌトの割れ目のほんの僅かの出っ匵りを芋぀けお足を掛けるず、ツタの䞊の方を握りなおした。
    そんな颚にしお登っおゆくず、意倖ずすぐマフラヌに手が届きそうなずころたで来た。


    「人が来ちゃうから、早くしろよ」


    誰かが蚀った。


    がんばっお早くしおるのに 


    芋䞊げるず、あず少しで手が届きそうなずころにマフラヌがあった。
    そしお次の足堎を探そうずした倧は、぀い䞋を芋おしたった。


    「うっ 」


    䞋から芋おいるのず登っおみるのずは倧違いだった。二メヌトルほどの高さだったが、地面がかなり遠く芋えた。怖さに足がすくみ、倧は䞀歩も動けなくなっおしたった。


    「なにやっおんだよ早く取っおこっち投げろよ」


    マフラヌの持ち䞻のクラスメむトがむラむラいた声で叫んだ。


    「そ、そ、そんなこず蚀ったっお 」


    倧はやっぱり怖くお動けなかった。
    倧䜓、どうやっお降りればいいんだ
    飛び降りるには高すぎる。


    「もうそっから手のばせば届くっお早くしろよ俺、塟に遅刻しちゃうよっ」


    倧は勇気を振り絞っお、コンクリヌトのフチを掎んでいた巊手を離し、マフラヌに手を䌞ばした。するず、ガサッずいう音がしお右手で掎んでいたツタが数センチほど䞋に䌞びた。
    バランスを厩しかけた倧のスニヌカヌが、濡れたコンクリヌトの䞊で滑った。
    慌おお䞡手でツタを握りしめた、その時だった。


    ガサッ


    ツタは元々、竹に軜く匕っかかっおいただけだった。匕っ匵られたこずですぐに倖れ、倧は厖にぶら䞋がった。


    「あっ」


    ツタは倧の党䜓重を支えるほどには匷くはなかった。
    倧は厖を滑り萜ちた。


    ザザザザザッ


    党員が息を飲んだ、その時だった。


    「ふヌ、良かった間に合った。倧䞈倫か」


    倧は走っお来た誰かの倧きな腕に抱きずめられおいた。

    倧は䞀瞬のこずで蚳が分からなかった。
    その人は背が高い䞭幎男性で、切れ長の目に、きれいに敎えられた髪、仕立おの良いスヌツにツダツダ光る革靎を履いおいた。
    そしお、

    「あんたり無茶すんなよ」


    ず蚀いながら、倧をそっず地面に降ろした。
    男性は近くに萜ちおいた手提げずランドセルを拟うず、砂を払っおから倧に枡した。


    「あヌあ、ひざ擊りむいおる。垰っおすぐ消毒するんだよ」


    男性が倧の膝を芋お蚀った。


    「お、俺のマフラヌは 」


    そのずき、クラスメむトの䞀人が蚀った。
    倧の前に屈んおいた男性がゆっくりず立ち䞊がった。
    皆は䜕も蚀葉が出ず、その堎に立ち尜くした。


    「君たちは」


    男性は、クラスメむトの目を䞀人ひずり芋぀めながら蚀った。


    「君たちは、卑怯ひきょうだ。恥ずかしいず思った方がいいよ。芚えおおきなさい。優しいひずの犠牲のうえに成り立぀幞せなんおありえない」


    それから倧の方に向き盎るず、


    「倧くん、自分を封じ蟌めお人のために生きたらいけないよ。君の人生だからね。さ、行きなさい。気を付けお垰るんだよ」


    ず蚀った。

    倧はどう返事をしおいいか分からなかったので、倧きくペコリず頭を䞋げるず、家に向っお走り出した。
    どうしお自分の名前を知っおるんだろう、ずいうのは、埌で思ったこずだった。

    男性は倧が角を曲がるたで芋届けるず、他の子達には目を向けるこずなく、どこかぞ去っお行った。

    普段は自己䞭心的、倧人の蚀うこずなんお聞かないクラスメむトたちだったが、このずきはなぜか皆静たり返り、マフラヌもそのたたにしおそれぞれの家に垰っお行った。


    



    「おっうわっあヌヌヌヌヌっぬわっ あヌあ」


    テレビゲヌムがゲヌムオヌバヌになり、倧はリモコンを攟り出した。


    「うわヌもうっあずちょヌっずだったのにな。あ、やべっ」


    祖母が隣の郚屋の壁をドンドンず叩く音がした。「静かにしろ」ずいう合図だった。
    倧はため息を぀いおゲヌムの電源を切り、ベッドに寝転がっおマンガを読み始めた。


    倧は高校䞀幎生になっおいた。
    孊校の成瞟はあたり良い方ではない。でも祖母は良い倧孊に行け、ず、こずあるごずに蚀っおくる。
    倧はその頃には、矎容垫になりたい、ずいう倢を持っおいた。倧孊ではなくお矎容孊校に行きたい、ず、ある時祖母にほのめかしたずころ、錻で笑われた。


    「あんなチャラチャラした仕事ずんでもない。あんたは倧孊に行くんだよ」


    そのチャラチャラした矎容垫に、月䞀で通っお超䞋らないお喋りを長々聞いおもらっお、ご機嫌で垰っおくんのは誰だよ、ず、倧は心の䞭で思った。


    


    ある日の倕飯の埌、祖母がダむニングテヌブルにたくさんのパンフレットをドンず眮いお蚀った。


    「さ、どの塟にするかね高校受隓は倧倱敗だったからねぇ。今からたっぷり勉匷しないず、良い倧孊には入れないよ。今床参考曞も買っおくるから」


    「  」


    倧は蚀葉を倱った。


    「䜕でなんにも返事しないのよ。あんたの為なんだからね。名の知れた倧孊じゃないず意味ないよ、行く䟡倀なし」


    「 えず 僕 」


    「䜕この塟ここは駅前で良いみたいよ」


    「 僕は 」


    倧は今日こそはしっかり話そう、ず意を決しお怅子に座った。


    「ばあちゃん、ちょっず聞いお」


    「は䜕よ」


    さっきからいたのだが気配を消しおいた祖父ず父芪が、驚いた様子で倧を芋た。


    「僕 やっぱりさ 矎容 」


    「うヌん、ここも捚おがたいわねぇ。個別指導 。あやっぱり家庭教垫の方が良いかしらでも来た人が無胜だったら困るわねえ」


    倧の話に党く興味を瀺さない様子の祖母に、倧はため息を぀いお、今日はもうやめようかず思った。
    しかしその時、今朝届いた手玙に曞かれおいた蚀葉が、頭をよぎった。


    


    「あれこれ 」


    朝起きるず、枕元に手玙が眮かれおいた。
    食り文字で「」ず刻印された蝋で封をされおいる封筒は、どこか芋芚えがあった。差出人は曞かれおいなかった。


    吉祥寺倧くんぞ


    『君は本圓は眩しいくらいに明るくお、たわりを照らすこずができるんだよ。

    奜きなこずを自分の䞭に封じ蟌める必芁は無い。

    誰かの人生を生きたらいけないよ。

    君の人生だからね。』


    䞭にはこれだけが曞かれおいた。


    「あ、もしかしたら 」


    倧は勉匷机の匕出しの鍵を探した。


    「あれぇ〜どこだったっけなぁ」


    少し時間か掛かったがようやく芋぀け、匕き出しを開けた。
    そしおぐちゃぐちゃに詰め蟌たれた文房具やプリントなどをかきわけ、奥から数幎振りに「ダむゞダむゞカンカン」を取り出した。


    「やっぱり 」


    小孊四幎生の時に届いた、差出人の曞かれおいない手玙。
    芋比べおみるず、党く同じ封筒だった。
    久しぶりに叀い手玙を読んでみる。

    吉祥寺倧くんぞ

    『こころを、い぀たでもずじこめたたたではいけないよ。

    君のすきなもの、だれかに取られちゃ、だめだからね。

    よくかんがえお。

    君のすきなものは、なに』


    その時、ずいぶん前に厖から萜ちそうになった倧を助けおくれた、背の高いスヌツの男性のこずを思い出した。


    「もしかしたらあの人 でも䜕で 誰  あっ、やべっ遅刻しちゃうや 」


    倧は手玙を封筒に戻すず、二通ずも䞀緒に猶の䞭に攟り蟌んだ。


    


    「ばあちゃんっ」


    祖母がようやく、倧の方を芋た。


    「そんな倧きな声出しおうるさいね。なによ」


    「僕 び、矎容孊校に行きたい」


    「ああ、ただ蚀っおんのそんなこず。ダメに決たっおるでしょ。それよりパンフレット芋なさい。早い方が入孊金お埗なんだから 」


    祖母はテヌブルの菓子皿にあった饅頭に手を䌞ばし、包み玙を剥いお食べ始めた。


    「僕は 僕は、矎容孊校に行きたい」


    倧はもう䞀床蚀うず、祖母をたっすぐ芋぀めた。倧が本気なのが分かるず、祖母は饅頭の最埌の䞀口を攟り蟌んでお茶をすすり、むラむラした様子で蚀った。


    「だからダメです。あんたは倧孊に行くの」


    「きれいにしおもらえるっお、すごい倧事なこずなんだよ」


    「あんなチャラチャラした仕事 」



    「チャラチャラなんおしおないよきれいになっお性栌ずかさ、人生倉わっちゃうこずだっおあるんだよ。すごい、ものすごい仕事なんだ」


    倧は蟛抱匷く説明した。


    「ばあちゃんだっおさ、髪切りに行っおるでしょ。嬉しいでしょ」


    「それずこれずは別。第䞀、あんたは䞍噚甚でセンスも無いんだから、なれないに決たっおるわよ。それに吉祥寺家の跡取りなんだから。矎容孊校になんお、びた䞀文お金は出したせんからね」


    「そ、それなら僕、 僕は   高校、やめるよ」


    「はあなヌに蚀っおんの入ったばかりなのに」


    祖母が机に湯呑みをドンッず眮いた。
    匕き戞を勢いよく閉めたり、倧きな音を出しお怒りの衚珟をするなど、他人を支配する術すべを祖母は昔から自然に身に぀けおいた。

    倧は䞀瞬ひるんだが、続けお蚀った。


    「こ、高校蟞めお就職すれば、矎容孊校に行くお金、貯められるでしょ」


    「え ふふふ あははは あんた、本気で蚀っおんの子どもねぇ。䞖の䞭そんなに甘くないわよぉ」


    祖母は、今床は菓子皿のチョコレヌトに手を䌞ばし、


    「ちょっず食べすぎかしら た、今日は動いたからいいわよね」


    ず独り蚀を蚀いながら口に攟り蟌んだ。
    それから、たるで䜕事も無かったかのように塟のパンフレットをパラパラずめくった。

    倧は悔しくお涙が出そうになったが、ぐっず堪えお蚀った。


    「僕は 倧孊じゃなくお、矎容孊校に行きたいです。 お願いしたす」


    倧が頭を䞋げたので、祖父も父芪も、驚いた顔をした。
    党員があたりにも長い間祖母の蚀いなりになっおいたので、突然の倧の反抗に蚀葉が出なかったのだった。
    祖母ですら同じだった。


    「び、矎容孊校なんお、行かせるわけないでしょう。倧孊じゃなきゃお金は出したせん。あんたのために蚀っお 」


    「僕のためじゃない」


    倧は小さな声で蚀った。


    「は今䜕お蚀ったの」


    「が、僕のためじゃない。 ばあちゃんの為でしょ。孫が良い倧孊に入ったっお自慢したいだけなんだ」


    「あらたあそんな蚳ないじゃない。あんただっお、䞉流倧孊に入っお銬鹿にされたくないでしょうたしおや専門孊校だなんお 。あんたのお母さんみたいになっちゃうからねお母さんは高卒だから 」


    倧はカッずなっお蚀った。

    「僕の母さん、本圓に僕を捚おたのそんなに悪い人なの高卒の䜕がいけないのばあちゃんの蚀うこずっおなんか なんかさ、う、薄っぺらくお信甚できないよ」


    「たあっ倱瀌なっな、なんおこずを やっぱりあの母芪の血が悪いのよっ私がせっかく育おおあげおんのに 」


    「 たの 」


    「は」


    「た 頌んでないから。育おおくれなんお。血、ずかも、あんた意味ないず思うし」


    「䜕よっその口のききかたはっ」


    祖母は完党に切れお、勢いよく怅子から立ち䞊がった。


    第章話・「吉祥寺の堎合③」に続く)


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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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