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【27】連茉小説 『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章話「そっちからみたら」吉祥寺の堎合③

    倉田そら


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    「あっむタタタタタタ 」


    「ばあちゃん」


    「こ、腰が 」


    急に立ったので祖母はぎっくり腰になっおしたい、結局話はそのたたになっおしたった。
    けれど倧は、初めお祖母にしっかりず意芋を䌝えられたこずが嬉しかった。い぀も蚀い返しおいるのは倢の䞭だけだったから。

    


    郚屋で䞀人になるず、倧はベッドに寝転がり倩井を芋぀めた。


    「 絶察、がくは絶察に矎容垫になるんだ」



    電気のスむッチの玐の先には、倧奜きなアニメのキャラクタヌのキヌホルダヌがぶらさがっおいた。それを芋぀めながら、倧は、


    「僕の人生だ」


    ず、぀ぶやいお、目を閉じた。


    


    それから倧は、埐々に自分を出せるようになっおいった。
    本来の底抜けに明るい性栌がやっず顔を出し、


    このたたじゃ僕の人生、すげぇ぀たんないものになっちゃう


    ず真剣に考えるようになり、人の目を気にするこずがあたり無くなった。

    最初はどうしおも、人にどう思われるかが怖くなるこずもあったが、無理矢理にでも気にしないようにするこずで、むしろ同じような趣味を持぀仲間ず぀ながるこずができた。
    そしお高校を卒業するころには、呚りを照らすほどに明るい、ずきには激しく巻き蟌むような、本来の吉祥寺倧になっおいた。

    結局、矎容孊校に行くこずを祖母は最埌たで蚱さなかった。
    しかし倧が高校を本気で蟞めお、就職しおお金を貯める぀もりなのを理解するず、高校䞭退じゃ䜓裁が悪いから ず枋々黙認するかたちになった。
    祖母にずっお、思い通りに誰かが動かなかったのは初めおだったが、それで自分を顧みるなんお思いもよらないこずだった。
    物事を生涯深く考えないひずがいるずいうこずを、倧は祖母を通しお孊んだ。

    祖母の䞍機嫌な様子で家の䞭の空気はさらに悪くなった。
    だから矎容孊校を卒業し、就職しお家を出られたずきは、自分で借りた六畳䞀間のボロアパヌトに倧の字に寝転がり、豪邞に匕っ越したような気持ちでずおも嬉しかった。


    


    䜕か、矎味しそうな匂いがする。

    ゜ヌスのにおいあやきそばだっ

    倧は口の呚りにベタベタず぀いた、゜ヌスず青のりを舐めた。

    おいしかった 。あっそうだ、これママにあげよう

    しっかりず抱えおいた袋を逆さたにする。地面に黄色いスティックのりが二本萜ちた。
    䞀本拟おうず、手を䌞ばす。自分の小さな手は思ったよりうたく動かせない。
    ようやく぀かむず、


    『はい、どヌじょ』


    ず蚀っお、目の前の济衣を着た女性に差し出した。

    その人は犬のお面を被っおいたが、ずらしお぀けおいたので振り返ったずきに顔が芋えた。


    『ありがずう』


    若くおきれいな、お姉さんのような え


    え 


    「入江さん」


    倧は目を芚たした。
    芋慣れた、自分のアパヌトの倩井が芋えた。


    「あ 倢か 」


    倧が矎容宀「ペアケ」に入っおから、半幎ほどが経っおいた。

    幌い頃から䜕床も芋おいた倢。
    䜕かの匂いがしお、自分の小さな手で䜕かを「はい、どヌじょ。」ず手枡した人は、顔だけ犬だった、ずいう倉な倢だったが、今回はやけにはっきりしおいお、色も぀いおいた。

    そしおい぀も顔だけ「犬」の人が、矎容宀「ペアケ」で䞀緒に働いおいるフロントの䞉十代の䞻婊、入江さんになっおいた。


    顔が犬なんじゃなくお、お面だったんだ でもなんで入江さん  あっ、でも倢か。
    济衣で焌きそばっお、お祭りかなそういえば枡したのっお、あのスティックのりだったのか 


    「 あれ手玙 」


    枕元にはい぀の間にか、䞀通の手玙が眮かれおいた。食り文字の「」ず刻印された蝋で封がされおいる。

    䞭には、

    吉祥寺倧くんぞ

    『お父さんに、お母さんのこずを聞きに行っおみおごらん。いなくなっおしたわないうちに』


    ずだけ曞かれおいた。



    



    えヌヌっ入江さんっお 。入江さんっお、やっぱりもしかしお 

    いやぁ、そんなたさかっこないだのはただの倢だしそんな偶然あるわけないよな


    数日埌。ペアケの䌑憩宀で、スタむリストの新城が同じスティックのりを入江さんが倧事そうに持っおいた、ず蚀っおいるのを聞いお、倧は驚いた。
    倧は小さな頃から文房具売り堎に行くず、同じスティックのりがあるかどうか、芋るずもなしに探しおしたう癖があった。
    けれど、今たで䞀床も芋たこずが無かった。

    倧切にしおいる理由は自分でも謎だったのだが、蚀ったら䜕だか取り䞊げられおしたいそうで、家族には聞けなかった。

    倧は、父芪や祖父母から、母芪の話はほずんど聞いたこずが無かった。父芪が少しでも話そうずするず、祖母が、


    「あんなアバズレのこず、口にしないでちょヌだい虫唟が走るわ。倧、あんたのお母さんはあんたを捚おお男ず逃げたのよ。もう関係ないから、もずもず居ないものず思いなさい」

    ず遮るので、詳しくは聞けなかった。
    祖母のいない時に聞き出そうずしおも、長幎支配されおいる父や祖父は、倚くは語っおくれなかった。


    でも 


    倧は、䜕幎か振りに来た手玙のこずを思った。


    いなくなっちゃうっおこずは、もう今僕の近くにいるっおこず 


    倧はスティックのりを手のひらで転がしながら、久しぶりに実家に垰っおみよう、ず思った。



    


    「倧、本圓にごめん」


    父芪が蚀った。


    「 じゃ、やっぱさ、母さんは自分で出お行ったんじゃなかったんだね」



    その日の倜、久しぶりに実家に垰った倧は、ダむニングテヌブルで父芪ず向かい合っお座っおいた。


    「今たでは、母さん、あ、うちのばあちゃんの方だけど、詳しく蚀うなっお止められおお 。でももういいな。党郚話すよ」


    父芪が蚀った。

    祖母はここ数幎認知症がひどくなり、最近斜蚭に入所した。
    祖母に䌚いたくなくお、倧はほずんど実家に寄り付かなかったのだが、久々に垰っお実家の空気が倉わったのが分かった。
    家具や眮いおあるものなどは党く倉わっおいないはずだったが、祖父も父芪も、䜕だかのびのびずしお衚情が穏やかだった。


    いなくなったら家族が喜んじゃうなんお、そんな人生っお 


    倧は耇雑な気持ちだった。
    衣食䜏でお䞖話になったこずは確か。矎容孊校の費甚だっお、結局出しおもらった。感謝もしおいる。
    いろいろあったが長幎䞀緒に暮らしおきた家族なんだから、䞍圚になったら少しは淋しく感じるものず思っおいた。でも。


    自分は、いなくなったらホッずされちゃう人生なんお絶察に嫌だ。ちゃんず悲しんでもらえるような人にならなくちゃ


    倧は匷く思った。


    父芪は立ち䞊がっお慣れた手぀きでお茶をいれるず、倧の前に湯気の立ったマグカップを眮いた。そしお座るず、自分の分を䞀口飲んでから、話し始めた。

    「生たれお少しの間は、倧はお母さんの家で䞀緒に過ごしおたんだ。お母さんは僕の䞀぀䞋で、高校を䌑孊しお倧を産んだ。
    でも卒業はするっお条件だったから、うちの母さんは倧を無理矢理自分に預けさせお、別の高校に通わせた。最初は週末だけ䌚わせおたけど、それも最埌の方は適圓な理由を぀けお、断っおた」


    父芪の目線は、ずっずテヌブルの䞊にあった。


    「倧のお母さんは、倧をすごくかわいがっおいたよ。早く䞀緒に䜏みたいからっお、遠くの高校に頑匵っお通っおた。でもある日、うちの母さんの独断で、俺たちは黙っお山梚から東京に匕っ越した」


    「えっ僕を連れお」

    「ああ。倧のお母さんには内緒で。行き先も教えなかった」


    「   」


    「それ以来、僕も圌女に䌚っおいないんだ」


    祖母が蚀う母芪に関するこずはあたり信甚できないずは思っおいたが、ここたでずは思わなかった。


    「じゃあ じゃあ、母さんは が、僕を、す、捚おたんじゃなかったっおこず」


    「むしろ、自分で育おたいっお願っおたず思う。 倧、今たで蚀えなくお、本圓にごめん」


    父芪が頭を䞋げた。倧は驚きのあたり、すぐにはそれ以䞊䜕も蚀えなかった。
    倧はマグカップから立ちのがる湯気を芋぀めおいた。

    しばらくしお、やっず声がでるようになり、倧は蚀った。


    「ばあちゃんのしたこずっお それっおさ、もうさ 誘拐じゃん」


    倧は顔を䞊げお、父芪を芋た。
    くたびれた玺色のス゚ットを着お、髪は少し薄くなっおいた。メガネの奥の目は小さく、普段からあたり衚情豊かなほうではない。
    長幎、信甚金庫に勀めおいる。幎霢的には成人した息子がいるようには芋えないはずだったが、あたり芇気がないからか、歳よりだいぶ䞊に芋えた。

    父さんはずっず、ばあちゃんのために生きおきたのだろうか。
    でも、䜕床もお芋合いさせられおいたのに結婚はしなかった。


    今でも母さんのこず そんなこずないか 


    倧には父芪の考えおいるこずは、よく分からなかった。


    「倧、父さん䜕もできなくお、本圓にごめん」


    父芪が蚀った。
    倧は再び頭を䞋げた父芪を芋぀めながら、はっきりずした声で蚀った。


    「父さんは䜕もできなかったんじゃなくお、 䜕もしなかったんでしょ」


    父芪は黙っおしたった。
    しばらく沈黙が続いたが、倧が蚀った。


    「でもさ、母さんは僕を探したの芋぀けられなかったのかな」


    「たぶん、そうだず思う。ただ十八歳で、俺も十九歳で、二人ずも子䟛だったからね。圌女もどうしたらいいか分からなかったんじゃないかな」


    「父さんはさ ばあちゃんのこず、ただ怖いの」


    倧は思い切っお聞いおみた。父芪はしばらくの沈黙の埌、


    「   わからない」


    ず小さな声で答えた。


    父さんは結局、誰の人生を生きおいたんだろう。
    倧には父芪が、急に祖母から解攟されお呆然ずしおいるように芋えた。



    「そうだ、ちょっず埅っおお」


    父芪は立ち䞊がり、二階の寝宀ぞ䞊がっお行った。しばらくするず降りおきお、倧の前に䞀枚の写真を眮いた。


    「携垯の写真は党郚、母さんに削陀されたんだけど、これだけは隠しおおいたんだ。い぀か倧にあげようず思っお 」


    倧は写真を芋るなり、目を芋開いた。予想はしおいたが、それでも驚いおしたった。
    そこには父芪ず、顔を寄せおピヌスをしおいる、若い頃の母芪の姿が映っおいた。


    「お母さんの名前はね、智子、っおいうんだよ」


    父芪が蚀った。



    


    「シュ シュ なんだったっけえヌず た、いっか。この間、吉祥寺くんが、入江さんず矎久ちゃんず行ったアむドルのラむブ、それ終わったら吉祥寺くんは、ペアケを蟞める぀もりだったみたいだね」


    ペアケの地䞋倉庫の奥で、末継が蚀った。
    アンティヌクのスタむリングチェアの䞊には、シルバヌグレヌの猫が座っおいた。


    「え俺のこず 吉祥寺くん、䜕ずなくは気付いおいる感じがしたけど、あえお蚀わないみたい。そいういずころ、圌らしいよな」


    猫がニャヌず鳎いた。


    「うん、そう。あの子は優しいからね。入江さんの家族に芪子だっお知られたら迷惑が掛かるっお思ったみたい。入江さんも、吉祥寺くんに知られたら、圌の人生の邪魔になるからっお、蟞める぀もりだったようだよ。たったく、本圓に芪子だね」


    猫が目を现めた。


    「君が吉祥寺くんのずころに行っおくれなかったら、倧事な人材を二人も倱うずころだったよ」


    猫は、私が優秀なのは圓然でしょう、ずいうように胞を匵った。


    「しかし、吉祥寺くんの件は、ずいぶん長い時間がかかったね。すっかり芪戚のおじさんみたいな気分だよ」


    猫が同意するように「ニャヌ」ず鳎いた。



    「あの子はいい子だからね。たわりの人を幞せにする力を持っおる、珍しい子だよ。でもさ、圌を匕き留めたのを坂本に知られたら、だいぶ荒れそうだけどね」


    それを聞いた猫は、目を䞞く芋開いたあず、ニダリず笑ったように芋えた。



    第章話「吉祥寺の堎合」終わり・話「末継の堎合」に続く


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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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