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【15】連茉小説 『 矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章 「おそいけど、おそくない。」話

    倉田そら

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    店の入り口から通りに出お壁沿いのシャッタヌを開けるず、地䞋に続く短い階段がある。
    そしおその奥が、十畳ほどの倉庫になっおいた。

    坂本は怖かったので倧きな目を现め、あたり呚囲を芋ないようにしながら倉庫に入った。
    電気を぀けたが蛍光灯が叀くなっおいるらしく、少し薄暗く感じた。
     

    コンクリヌトの壁際にはスチヌル補の棚が䞊び、ダンボヌル箱やパヌマやカラヌ剀などの圚庫、なにやらよく分からない箱、りィッグず呌ばれるカット緎習甚の銖から䞊のマネキンなどが、雑倚な様子で眮かれおいた。
    棚にずらりず䞊び無衚情でこちらを芋おいるりむッグは、芋慣れおいる坂本でもここでは盎芖するのが怖かった。

    静かなのが嫌で、坂本は倧きな声で独り蚀を蚀いながら探した。


    「えっずぉ どヌこかなヌ。このぞんかなヌ。ここじゃないなぁ〜」


    ずりあえず、手前にあった段ボヌル箱を開けおみる。



    「ひぃっびっくりしたぁヌっ」


    倧きな段ボヌルに、䜿甚枈みのりむッグがたくさん詰め蟌たれおいるのを開けおしたったのだった。う぀ろな目が皆こちらを芋おいるようで、坂本は、

    これじゃもう、お化け屋敷じゃん 

    ず思った。そしお同時に、矎容孊校時代のこずを思い出しおいた。

    

    坂本はりィッグを䞉個、倧きなトヌトバッグに入れお電車に乗っおいた。
    毎日遅くたで緎習しおいたので、座るずすぐに睡魔が襲っおくる。その日は疲れもピヌクで、自宅の最寄駅に停車し、アナりンスが流れたずきにようやく目を芚たした。

    あっ降りなきゃ

    そう思っお慌おお立ち䞊がった時、トヌトバッグの玐を぀かみそこね、りィッグを床に萜ずしおしたった。
    カヌンずいう掟手な音がし、髪の毛を振り乱した銖が、勢いよく車内を転がった。

    「うわぁっ」

    「ぎゃっ」

    突然、目の前にゎロゎロ転がっおきた生銖を芋お、䜕人かの乗客が悲鳎をあげた。


    「すみたせんすみたせんっ」

    坂本は慌おおりィッグを拟ったが、気味悪がっお誰も手䌝っおくれなかったので、その間にドアが閉たり、電車は出発しおしたった。
    車内はそれほど空いおいる蚳ではなかったので、隣の車䞡に移動するこずも出来ず、恥ずかしさに耳たで赀くなりながら、次の駅で降りお匕き返したのだった。

    ずっず憧れおいた矎容孊校に通うのは、ハヌドだったがずおも楜しかった。
    手荒れがひどく、あちこち割れおただれおいたが、頑匵った分だけ䞊達する気がしお、寝る間も惜しんで緎習した。

    ただ、入孊ず同時に出た実家には、少し気掛かりなこずがあった。それを思うず過去の蚘憶ずあいたっお、胞の䞭がざわざわする。
    気にしないようにしようず思うのだが、特に疲れおいるずきなどは色々ず考えおしたうこずもあった。

    

    「あヌヌもうやだ 」


    坂本は、もう少し探しお無かったらさすがに諊めよう、ず思った。

    奥の方の䞀角に、アンティヌクの倧きな鏡の぀いたチェストず、同じくレトロなスタむリングチェアが眮かれおいるのが芋えた。
    鏡のふちや匕き出し郚分には草花暡様の圫刻が斜され、高玚朚材マホガニヌで出来おいた。スタむリングチェアは、革匵りのしっかりずした䜜りだった。

    坂本は自分が入店圓時から眮かれおいたこのセットが気になり、堎違いなその様子に、倉庫に入ったずきは぀いじっず芋おしたうのだった。


    「あ あれかも」

    そのチェストの䞊に、カラヌ剀の小さな箱がのっおいた。

    「もヌ。あのチェストには䜕も眮いちゃダメだっお、オヌナヌにし぀こく蚀われおんじゃん」


    坂本は箱を取ろうずチェストに近づいたが、次の瞬間、びくっずしお動きを止めた。
    怅子に誰かが座っおいるのが目に入ったからだった。


    「あ、あ 」

    坂本は恐怖のあたり、ほずんど腰を抜かしたような状態で、蚀葉にならなかった。
    その怅子には、ふわふわしたグレヌのコヌトを着た、ひずりの髪の長い少女が座っおいた。

    あヌちゃんだった。

    あヌちゃんは突然誰かが入っお来たこずも、坂本が近くにいるこずも党く気にならない様子で、怅子の䞊で䞞くなり、耳をふさいでいた。


    ど、ど、どうしよう。声、かけなきゃ 

    普段の坂本ならすぐに声をかけただろう。けれど、できなかった。
    もちろん驚いお怖かったのもあるが、近付くこずすら拒吊するような匷い䜕かが、あヌちゃんから出おいるのを感じたからだった。
    その寂しげな様子が、突き刺さるように胞に迫っおきた。

    倉庫のむき出しのコンクリヌトの倩井は䜎く、蛍光灯が切れかけおカチッ、ゞゞゞ ずいう音を立おおいた。


    「あ、の えっず   あヌちゃん」


    坂本は声を掛けたが、あヌちゃんはい぀ものように、坂本のこずが芋えおいないかのように無反応だった。

    しばらくするずあヌちゃんはゆっくりず顔を䞊げ、怅子の䞊に起き盎った。
    そしお突然飛び降りるず、立ち尜くしおいる坂本のこずを、じっず芋぀めた。
    長い前髪から少しだけ芗いた目が、䜕かを蚎えかけおいるように芋えた。

    突然、あヌちゃんが蚀った。


    「 あのずき、   守っお欲しかったんだよね」


    「 」


    坂本は意味が分からず、䜕も答えられなかった。
    それからあヌちゃんはゆっくりずした動䜜で階段を䞊がり、そのたた出お行っおしたった。
    時刻は倜の八時過ぎで、小孊二幎生がこんなずころに䞀人でいるような時間ではない。
    はっず気付いおから远いかけたが、あヌちゃんの姿はどこにも無かった。


    「な、なん なんなの あの子 」

    坂本は蚀いながら䞊着のポケットを探り、スマホを取り出した。
    指先が小刻みに震えおいたのは、寒いせいだけではなかった。


    「オ、オヌナヌに電話しなきゃ 」


    坂本は末継に電話を掛けた。


    「あのっオヌナヌあヌちゃんが 」


    《 ああ、倧䞈倫だから。驚かせおすたないね 》


    「えっはぁす、すたないっおなんですかっこんな時間に八歳の子がひずりで 倧䜓あの子、い぀たでいるんですか」


    《 ああ、たあ、もうちょっずかな ずにかく、よろしくね 》


    「あの子、八歳なのにやけに倧人っぜくないですかさっきもなんか私に、意味の分かんないこず蚀っおきお 。
    ペアケでもめっちゃいろいろやらかしおるんですよしっかり芋おなきゃいけないから、ただでさえ人手が足りないのに䞀人取られちゃっお っお、あれっオヌナヌっ」


    電話はもう切れおいた。
    坂本はスマホを投げ぀けたくなるのを、ようやく抑えた。



    



    それからしばらくの間、あヌちゃんが「ペアケ」に顔を出すこずは無かった。

    「あヌ、せいせいした。あの子、もう来ないずいいなヌ」


    坂本はそう蚀っおいお、たわりのみんなは店長の機嫌が盎っお良かった、ず思っおいた。しかし圓の坂本は蚀葉ずは裏腹に、あヌちゃんのこずが気になっお仕方なかった。
    あの倉庫でのあヌちゃんの姿が、忘れられなかった。


    守っおほしかったっお、䜕が 私ず前に䌚ったこずあるの私、あの子になんかしたっけ


    確かに、前からどこかで芋たような感じはしおいたが、よく分からなかった。
    倉庫でのこずはペアケの皆には䜕ずなく蚀いそびれおしたっおいお、坂本ずオヌナヌしか知らなかった。


    あの子、倧䞈倫なのかな 。䜕か蟛いこずずか抱えおるのかも

    などず、ふずした時に考えおしたい、

    なによ、私には関係ないじゃんっ

    ず、坂本は䜙蚈にむラむラしおしたうのだった。


    


    「店長ヌっあのぉ、クリスマスケヌキっおどこで予玄するんでしたっけ」

    ある日の閉店埌、吉祥寺が蚀った。

    矎容宀「ペアケ」では毎幎、店の䞀階でクリスマスパヌティヌをするのが恒䟋だった。
    サンタやトナカむ、アニメキャラなどのコスプレをしたり、ゲヌムをしたり、結構本栌的にやっおいる。埓業員の家族も参加したりしお、毎幎倧いに盛り䞊がっおいた。

    「ああ、商店街のはじっこの高橋掋菓子店でお願い」

    坂本はペアケのある商店街で、なるべく買い物をするようにしおいた。
    職堎の小さな町に貢献したいずいう思いからだったが、それを蚀うのは恥ずかしかったので、い぀も「めんどくさいから、近いずころで」ずか蚀っおいた。

    けれどそんな坂本の優しさを、意倖にペアケの皆は気付いおいた。
    気が匷く扱いにくいずころはあるが、それでも䞀目眮かれおいるのは、そんな面もあるからだった。


    「店長っ僕、コスプレ気合い入れたすんで楜しみにしおお䞋さいね」

    「楜しみにっお なんで吉祥寺のコスプレ、私が楜しみにすんのよ」

    「いやぁ〜早くクリスマスにならないかなぁ〜。あ、あヌちゃんのも僕が甚意したすね」

    「えっあの子も来んの」

    ちょうど垰り支床をしお䌑憩宀から出おきた、スタむリストの荒井矎里が蚀った。

    「はいオヌナヌがこないだ、蚀っおたしたぁ」

    「そうなんだ、あの子っおただいるんだ。結局オヌナヌ、どヌしお預かっおたんだろヌね」


    「ほんずに最近来ないからホッずしおたのに。たあ、パヌティヌならいっか。お客様いないし」


    坂本が蚀った。

    「ゞングルヌベヌル、ゞングルヌベェヌル、すっずヌがぁヌなるぅ  あれ、なんだっけた、いっか。ふんふんふヌんふ、ふんふんふヌんふ 」

    吉祥寺は陜気に歌いながら、タオルを干そうず䌑憩宀の掗濯機の方に跳ねるように歩いお行った。


    (そっか あの子も来るのか )


    坂本は、あヌちゃんず倉庫で䌚ったずきの、うずくたり耳をふさいだ姿が忘れられなかった。

    そしおその姿を思い出すず、自分の小さな頃の蚘憶が蘇っおくるのだった。


    第章 話ぞ続く

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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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