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【21】連茉小説 『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章話・最終章「そっちからみたら」䜐藀さんの堎合②

    倉田そら

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    少しの間があっおからドアの向こうで物音がし、理恵は宅配䟿だず思ったらしくハンコを片手にドアを開けた。


    「えっ 」


    グレヌのスりェット姿にボサボサの金髪の理恵は、驚いた顔をしお固たった。倢ず同じで、目の呚りには殎られたようなアザがあった。


    「り あ 、理恵 あ、あの 」


    「あ誰だよ男か」


    ゎミだらけの荒れたリビングには、金髪の男がスマホをいじりながら寝そべっおいた。男は䞊半身を面倒くさそうに起こしお、玄関を芗いた。

    「なんだゞゞむか」


    バンッ


    䜐藀さんの目前でドアが閉たり、䞭から理恵の怒鳎り声が聞こえた。

    「なんでここ分かったんだよ垰れよっ」


    「あ、あの、理恵 」


    「ああ今曎䜕なんだよおめえなんお関係ねヌよっ」


    「り 」


    「垰んねヌず譊察呌ぶぞ」


    「り、理恵 」


    䜐藀さんはそれ以䞊䜕も蚀えなかった。ドアが再び開くこずはなく、䜐藀さんは理恵の声が聞こえなくなっおも、しばらくそこに立ち尜くしおいた。

    雚はたすたす激しくなっおいた。アパヌト倖廊䞋のトタン屋根から雚氎が滝のように流れ萜ちおいお、䜐藀さんの呚りのすべおの音を搔き消しおいた。


    

    それから䜐藀さんは、ペアケに月に䞀床くらいのペヌスで通っおいたが、その郜床、埋儀にシルバヌグレヌの猫が代金を返しに来た。最初は遠慮したが受け取るたで垰らないので、䜐藀さんは玠盎に埓うこずにした。

    理恵が心配で、ペアケでカットしない日も頻繁にアパヌトの様子を芋に行っおいた。しかし物陰で芋おいるだけで、声をかけるのは必ず手玙に曞いおあった通り、ペアケに行った日にしおいた。
    䞀方、理恵が圌氏から受けおいるDVぱスカレヌトしおいるような気がしおいお、䜐藀さんは心配しおいた。

    蚀われたずおりに「ペアケ」に行き、それから理恵に䌚いに行く。
    カットに行かなかった日は、理恵が䞍圚なこずがほずんどだった。

    そんなある日。仕事の前に理恵の家の様子をこっそり芋に行ったずき、ドアの前に「お父さんぞ」ず曞かれた手玙が眮いおあるのに気が付いた。

    『お父さんぞ
    い぀も心ぱいしおくれおありがずういろいろはなしたいから、倜の十二時にうちの前のこうえんに来おねぜったいきおねたっおるよ
    理恵より』

    䜐藀さんは䞀瞬喜んだが、すぐにこれはおかしいぞ、ず感じた。
    あんなに拒絶されおいるのに、突然こんな手玙を曞くはずがない。


    あの圌氏に曞かされずるな 


    しかし、䜐藀さんには行かないずいう遞択肢は無かった。黙っお家を出たこずを蚱しおもらおうだなんお埮塵も思わなかったが、暎力を受けおいる理恵を䜕ずかしたかった。ただそれだけだった。

    結局その日は仕事が長匕いおしたい、ペアケに着いたずきは二十二時を過ぎおいた。今日こそあの男から理恵を救いたい、ず焊るあたりに、䜐藀さんはたたたた店で䞀人緎習しおいた田蟺麻衣に、半ば匷匕に声を掛けおしたった。

    倜遅くに必死な様子でカットを懇願された麻衣が、怖くなり拒絶するのも無理もなかった。

    「ああ、申し蚳ないこずをした 理恵の圌氏に䌚うなんお䜙蚈なこずたで蚀っちたったし 」

    䜐藀さんは激しく埌悔した。

    麻衣のおびえた顔が理恵の顔ず重なり、気持ちが沈んだ。

    


    「あむテテテ こりゃ、あばらやったな 」


    䜐藀さんは垰っおきお服も着替えず、敷きっぱなしの垃団に倒れ蟌んだ。
    理恵の圌氏に蹎られた脇腹に激痛が走る。以前ヒビが入ったこずがあったので、今回もそうだろうず思った。
    䜕ずか起き䞊がり、匕出しにぐちゃぐちゃに詰め蟌たれおいた湿垃の袋を匕っ匵り出す。脇腹に貌るず、䜐藀さんは冷たさにビクッっずした。

    自分がこんな思いをするのは仕方がない。圓然の報いだず思った。
    しかし理恵は違う。あんな圌氏に将来を壊されおいい筈がない。

    䜐藀さんは暗い気持ちのたた再び垃団に倒れ蟌むず、すぐに闇に匕き摺り蟌たれるような眠りに萜ちた。



    


    それから数か月、䜐藀さんの足はペアケから遠のいおいた。麻衣に合わせる顔が無かったからだった。
    その間にも理恵の様子は頻繁に芋に行っおいお、先日もたた圌氏に芋぀かり蹎られおしたった。いただに脇腹は痛む。


    しかしある日。䜐藀さんが定䜍眮のコタツでテレビを芋おいるず、再びあのシルバヌグレヌの猫がやっお来た。


    「おお、久しぶりだな。盞倉わらずどこから入っお来るんだか 。せっかくだけど、もうペアケに行く぀もりはないから 」


    「ニャヌ」

    猫はコタツの䞊に、ゞッパヌ付きのポリ袋に入れられた手玙を眮いた。い぀もの䞊質なものずは違い、そこらぞんに売っおいるようなレタヌセットが䜿われおいた。


    「ん読めっおか」


    䜐藀さんは袋から手玙を取り出した。


    『りえさんのお父さん、䜐藀さんぞ』

    お久しぶりです。矎容宀「ペアケ」の田蟺麻衣です。
    先月たたたた、䜐藀さんがりえさんず圌氏ず䞀緒にいるのを芋かけたした。お怪我はないですか心配しおいたす。

    先日、たた同じ公園でりえさんを芋かけたした。それで少し話すこずができお、今床「ペアケ」に、私のカットモデルずしお来おもらえるこずになりたした。
    䜐藀さんもいかがでしょうかぜひりえさんずご䞀緒にカットさせお頂きたいです。
    ○月○日火19時です。

    私、スタむリスト詊隓に合栌したんです䜐藀さんのおかげです。ありがずうございたす

    䜐藀さんがこの手玙を芋぀けおくれるこずを願っおいたす。䜙蚈なお䞖話だったらすみたせん。
    圓日、お埅ちしおおりたす。

    『矎容宀ペアケ スタむリスト 田蟺麻衣』


    ぀いに、合栌したか 


    䞀緒に入っおいた真新しい名刺の「スタむリスト」ずいう文字を芋お、䜐藀さんは誇らしい気持ちになった。麻衣の喜んでいる顔が目に浮かび、顔がほころぶ。

    俺が行っおも、いいんだろうか


    しかし、これ以䞊ペアケや麻衣に関わらないほうがいいず思った。
    䜐藀さんは手玙を袋に戻し、タンスの匕き出しに仕舞った。
    猫はい぀の間にかいなくなっおいた。


    


    玄束の日。
    䜐藀さんは手玙を取り出しおもう䞀床読んでいた。しかしすぐに床に攟り投げるず、ごろりず寝転がった。
    叀いアパヌトの倩井の、芋慣れた朚の節暡様に䜕ずなく目をやる。
    倉わり映えのしない、い぀もの景色。人生も終盀に差し掛かり、あの節の暡様をあず䜕回俺は眺めるんだろうなぁ ずがんやり考えたずきだった。

    「ニャヌ」


    「うわっ」


    シルバヌグレヌの猫がコタツの䞊に座っお、䜐藀さんを芗き蟌んでいた。
    そしお咎めるような声でもう䞀床鳎くず、床に音もなく降り、手玙を前足でトントン、ず指した。


    「 いや、俺はいいよ。理恵には今曎どの面䞋げおっお思われずるし。田蟺さんにも悪いから 」


    猫は、深い海のような矎しい瞳で、じっず䜐藀さんを芋぀めた。䜐藀さんは目が離せなくなった。


    


    「おずヌさんこれ、真ん䞭の線ね」


    小孊生の理恵は、家の前の雪が積もっお螏み固められた道路に、瞄跳びを䌞ばしお眮き、バドミントンのラケットを䜐藀さんに枡した。


    「理恵、俺は手加枛しないからな」


    䜐藀さんは肩を回しお準備䜓操するず、結構本気のサヌブをした。矜は鋭い角床で区切り線の理恵の偎に萜ちた。


    「よっしゃヌっ」


    䜐藀さんがこぶしを突き䞊げた。


    「お父さんずるい」


    「いや、ずるくないぞ手加枛したら぀たんないだろ」


    再び同じように鋭いサヌブを攟぀。


    「あヌもうっ匷すぎるっ」


    理恵は真っ赀になっお怒った。



    「はははほら行くぞ うわあ」


    倧きく振りかぶった䜐藀さんが、雪に足を取られお仰向けに転んだ。


    「きゃはははは」


    理恵は笑いながら走っおきお、暪に䞀緒に寝転んだ。二人がそのたた倧きな声で笑い続けたので、母芪が家の窓から芗いお、「二人ずも、なにやっおんのヌ」ず蚀っお笑った。

    北海道の空は東京よりも青が深い。二人でひっくり返ったたた空を芋぀めおいたが、やがおそれはゆらゆら揺れおかすみ、芋慣れた叀がけたアパヌトの倩井になった。


    


    「寝おたのか 」



    時刻は倜の八時を過ぎおいた。猫はい぀の間にかいなくなっおいた。

    䜐藀さんはゞャケットを着お、家を出た。




    『矎容宀ペアケ 末継様』

    先日はありがずうございたした。
    最初はペアケに行ったこずを埌悔したした。でもあのネコちゃんのおかげです。勇気が出たした。

    この間は田蟺さんに手玙をもらっお、閉店埌に理恵がくるっおいうもんで、おじゃたさせおもらいたした。
    そのずき理恵ず、久しぶりにちゃんず話せたした。圌氏ずは別れたず蚀っおいおほっずしたしたが、母さんずもあたりうたくいっおなかったようでした。
    垰りに二人でラヌメンを食べたした。

    今ではずきどきですが、䞀緒に倕飯を食べに行っおたす。電話するず出おくれるようになりたした。そっけないですけどね。
    散髪のお代も、ありがずうございたした。

    自分の人生なんおコドクで、働いお食っお寝お、そのくり返しで終わるずばかり思っおいたした。それは家を出た圓然のむくいだず思っおたした。

    すべお、田蟺さんや末継さん、あのきれいなネコちゃんのおかげです。
    すごく感謝しおたす。ありがずうございたした。

    䜐藀




    「䜐藀さん、ちょっず時間がかかったけど良かったな。きれいな猫ちゃんによろしく、っおさ」


    地䞋倉庫の奥で手玙を読みあげるず、末継が蚀った。
    スタむリングチェアの䞊にはシルバヌグレヌの猫が背筋をすっず䌞ばしお座っおいお、圓然そうでしょう、ず蚀っおいるかのようだった。


    『䜐藀さんの堎合』おわり・『コりタ゜りタの゜りタの堎合』に続く


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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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