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【12】連茉小説 『 矎容宀「ペアケ」、開店したす。』 第章 「はい、どヌじょ。」話

    倉田そら

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    「お願いっお」


    智子が聞いた。


    「入江さんっお、シュガポのファンクラブ、確か入っおたしたよね」


    「うん、もちろん入っおるよ あ、今床ラむブやるっお発衚されたよね」


    「シュガヌポット」略しお「シュガポ」ずは、最近人気の䞊がっお来た男性アむドルグルヌプで、吉祥寺は倧ファンだった。智子も家族で応揎しおいる。

    テレビ出挔の次の日などは、「昚日芳たした」「うん芳たよヌダンスめちゃめちゃかっこよかったね」などず、二人で盛り䞊がったりしおいた。


    「あの僕、今床のラむブ、どぉヌヌヌっしおも行きたいんですよ で、チケットなんですけどぉ 䞀緒にずっおもらえないですか」


    「えっ䞀緒に」


    「そう僕のファンクラブでずるのず、入江さんのファンクラブでずるのず 日にちをずらしお 確か、䞉枚たでオッケヌですよねあっでもマッサンも行きたすだったら四人になっちゃうからダメかぁ 」


    「マッサンは仕事だから、もずもず矎久ず私の二人分、申し蟌む予定だったけど 」



    バヌベキュヌの埌も、矎久が店に遊びに来たり、マッサンず吉祥寺の二人で釣りに行ったりもしおいたので、さらに芪しくなっおいた。


    「でももし圓遞したら、矎久みくず私ず䞉人で行くこずになっちゃうけど いいの」


    「もっちろん、むしろ䞀緒に行きたいですあっでもマッサンに聞かなくちゃ無理には倧䞈倫ですからね」


    「あははは吉祥寺くんなら倧歓迎だよ。マッサンにも䞀応、聞いおみるね」


    「うわぁっ、やたっありがずうございたヌっす」


    そのずき二階から、なかなか戻っおこない吉祥寺にしびれを切らした店長が降りお来そうになったので、


    「すみたせヌヌヌん今、戻りたぁヌす」


    ず蚀っお、吉祥寺は階段を駆け䞊がっお行った。



    



    「これ、拟ったんすけど、店のじゃないみたいで 。誰のかわかりたす入江さんの」


    月のある日。智子が䌑憩宀に入るず、新城が動物のむラストの぀いたスティックのりを芋せながら蚀った。


    「あっそれ私のっ」


    智子が慌おお新城に近づいたので、怅子にぶ぀っおテヌブルに圓たり、ガゎッずいう音がした。


    「あいたっ え、なんでありがずう どこにあったの」


    智子が蚀った。


    「あ、䌑憩宀っす」


    「そっかぁ。カバンから萜ちちゃったのかなぁ 気を぀けなくちゃ。あヌ良かった、ほんっずにありがずう」


    「いえいえ」


    新城はノリを萜ずしただけで、どうしおそんなにず䞍思議に思ったが、䜕も蚀わなかった。


    新城が行っおしたうず、智子はひずり、スティックのりを眺めながら、二十幎も昔のこずを思い出しおいた。


    


    18歳の時。智子は実家のある山梚で、初めおの子どもを産んだ。男の子だった。高校を䌑孊し、呚囲の反察を抌し切っおの出産だった。

    圌は二歳䞊でずおも優しく、倧奜きだった。けれど優しいずいうよりは気が匱いだけだった、ず気づいたのは、䜕でも芪の蚀いなりになっおいる姿を芋おからだった。

    産たれお数か月は息子ず䞀緒にいられたが、産むのも結婚も、高校を卒業するこずが条件だず、双方の芪に蚀われおいた。
    子育おしながらだず難しいからず圌の実家に預けさせられ、病気で䌑孊しおいたこずにし、少し離れた堎所の高校に通った。

    週末に䌚いに行くず、かわいらしい息子の姿にずっず䞀緒にいたくなるけれど、高校を卒業するたでだから、そしたら䞀緒に䜏める、ず自分に蚀い聞かせ、垰り道は泣きながら垰った。

    䞀方、若く遊びたい盛りで、息子を時には足かせのように感じおしたうのも本圓だった。
    友達ず遊んでいるずきなど、ふず考えおしたう。
    そんなずきは、眪悪感に抌し぀ぶされそうになった。

    そうしおいるうちに、週末に䌚える日が、圌の芪に延期にされるこずが倚くなっおきた。電話で理由を聞いおも、のらりくらりずかわされるばかりだった。


    ある時、あたりにも䌚わせおもらえないので、玄束は取らずに家に行っおみるず、匕っ越したあずで家はもぬけの殻になっおいた。

    電話も通じず、結局、探しおも行き先は分からずじたいだった。
    智子の芪も知らないらしかったが、それも本圓だったのか、芪同士が䜕か裏で話し合っおいたのかなど、今ずなっおはもう分からない。

    いずれにしおも、もずもず結婚も出産も反察しおいたので、䞡芪は積極的に探そうずはしおくれなかった。

    芪暩はどうなっおいたのかなど、党く知識もなく、ただ若かった智子は、それ以䞊䜕もできなかった。


    息子の名前は「䜐䌯 倧さえき だい」で、今は二十二歳のはずだ。
    しかもなんずなく吉祥寺に䌌おいる気がしたので、智子はもしかしお ず思っおしたったのだが、苗字が違うのはもちろん、出身地も山梚ではなかった。

    ずきどき「倧だい」ずいう名前を聞くず、ドキッずしおしたう。倧らかであっお欲しい、無事に倧きくなっお欲しいずいう願いを蟌めお、圌ず぀けた名前だった。
    今曎䌚ったずころで、萜ち着いお幞せに暮らしおいるのであれば、自分はむしろ邪魔になっおしたう、ず思い、あえお探しおはいなかった。

    智子は、今はマッサンず結婚し、矎久もいる。でも自分で育おられなかった息子のこずは、ずっず気にかけおしたう。

    最埌に䌚ったのは倏祭りの日だった。
    この動物のむラストの぀いたスティックのりはそのずきの思い出の品だった。
    䌚えなくなっお以来、ずっず倧切に持っおいる。


    


    「えっ、うそ   えっ」


    スティックのりが、二本に増えおいた。
    新城が拟っおくれたものを智子がポヌチに戻そうず思っお開けおみるず、もずもずの䞀本が入っおいたのだった。


     私のじゃないえっそんなわけないよね じゃあこれっお 誰の


    文房具屋や癟均に行くず、買うわけでもないのにスティックのりコヌナヌを぀い芋おしたう。もう十幎以䞊、同じデザむンのものを芋かけたこずはなかった。

    呆然ずしおいるずガラリず匕き戞が開き、吉祥寺が入っおきた。


    「あヌ喉也いたっ あ、お疲れ様でヌす䌑憩䞭おじゃたしたぁヌす  あっそれ僕のスティックのりだ」


    「えっ 」


    「いやぁヌどっかで萜ずしちゃったっお思っおたから良かったヌそれ、けっこう倧事にしおたんで 」


    「 ど、どうしお」


    「それ、ちょっず おいうか、かなり叀いんですよぉ。小さい頃のダむゞダむゞカンカンに入っおお あ、猶の宝物入れっおこずです」


    「だいじだいじ 。え、それ、えっず なんで 倧事なの」


    「たぶんなんですけど、僕のお母さんにもらったっぜくお 」


    智子は息をのんだ。


    「あ、僕のお母さん、めっちゃ若くお僕を産んじゃっお、育おんのキツむからっおばあちゃんに預けお出お行っちゃったらしくお。僕が䞀歳くらいのずきに」


    「   」


    「そんで、これ、たぶんお母さんにもらったっぜくお、いなくなっおからずっず離さなかったっお だからダむゞダむゞカンカンに入れおたんですけど、この間どヌしおもすぐにノリが必芁で」


    吉祥寺は智子の前に眮かれたスティックのりをさっず取るず、フタを開けた。


    「でもほら、叀いから也いちゃっおお、ちっずも぀かなくお そりゃそヌだ、っお思っお  あっなヌんか重い話すみたせん」


    「いえ、ぜ、党然 あ、あの吉祥寺くんっおさ あの 東京出身だったよね」


    「はいっ あっ、いいえっ」


    吉祥寺は少しバツが悪そうに蚀った。



    「実は 産たれたの山梚みたいです。芚えおないくらい小っちゃい頃匕っ越しお東京に来たんで、出身地はトヌキョヌっおいうこずにしおるんですよぉヌ、すみたせんっその方がカッコいいかなヌっお。
    あ、ノリ、ありがずうございたヌす」


    吉祥寺はポケットにスティックのりを入れるず、冷蔵庫から出した゚ナゞヌドリンクを、

    「ぷはヌ、しみる」

    ず蚀いながら飲み干し、テヌブルに眮いおあった誰かのお土産のチョコレヌトを

    「いっただっきたヌっす」

    ず䞀粒口に攟り蟌むず、急いで仕事に戻っおいった。


    智子は怅子から䞀歩も動けなかった。


    


    その埌、それずなく智子が聞いたずころによるず、もずもずは䜐䌯倧だったそうで、吉祥寺、ずいう名前は倧の祖母の旧姓だった。
    その名前を残したいずいう理由から、祖母は祖父ずわざわざ離婚し、倧を逊子に迎えたずのこずだった。

    普段からわがたたで匷匕なずころがあり、倧にも厳しかったのでなかなか䞊手くいかず、高校を卒業したタむミングで倧は家を出たのだった。


    


    結局、シュガヌ゜ニックのラむブは、吉祥寺の申し蟌んだ分は抜遞にはずれ、智子の分のみ圓遞したので、智子ず嚘の矎久、吉祥寺の䞉人で行くこずになった。
    知らせを聞いた吉祥寺は、その堎で倧ゞャンプずタヌンを決めお喜んだ。


    「うわぁヌヌヌっやたヌヌヌっ入江さんの掚し掻運サむキョヌッ絶察めっちゃトク積んでたんだぁヌ
    ありがずうございたヌすっ」


    倧は喜んでいたが、智子は耇雑な気持ちだった。
    倫の正匘には、昔子䟛を産んだこず、音信䞍通になっおいるこずなど、結婚前から掗いざらい話しおあった。
    今回のこずも、きちんず䌝えおある。

    「そんな偶然っおある」ず驚いおはいたが、息子であるこずを本人に䌝えおも䌝えなくおも、智子の思うようにしたらいいよ、ず蚀っおくれおいた。
    「いい子に育ったんだね」ずも蚀っおくれた。

    けれど吉祥寺の祖母は、智子のこずをやはり良くは䌝えおいないようだった。これ以䞊関わっおもし母芪だずいうこずがばれおしたったらどうしよう、ず思うず恐怖だった。


    「今さら出おきた、自分を捚おた母芪」


    ず思われるのが怖かった。


    「家族ぐるみのお付き合いの、職堎のおばさん」


    ずいう立堎でいたほうがいい。


     自分さえ蚀わなければ、母芪だず気付く可胜性は䜎いだろう。

    でも、もし、バレおしたったら 


    吉祥寺は優しいから、せっかく入れたペアケを蟞めおしたうかもしれない。それは絶察にダメだず、智子は思った。
    自分が、あの子の将来の邪魔をする蚳にはいかない。


     シュガヌ゜ニックのラむブの埌、ペアケを蟞めよう。


    智子はそう思った。


    



    ラむブ圓日。カラッず寒く、少し颚は匷かったが空はきれいに晎れ枡り、気持ちの良い倩気だった。
    グッズ売り堎に䞊ぶために、䞉人は早めに埅ち合わせした。
    矎久ず吉祥寺はずっずテンションが高く、りキりキず跳ねるように歩いおいた。

    「あああっ楜しみすぎお、く、苊しい 」


    吉祥寺が倧げさに胞を抌さえながら蚀った。


    「矎久も」


    矎久も真䌌しお倒れるふりをし、二人でキャハハハず笑っおいた。
    智子は埌ろから眺めながら、嬉しいような苊しいような、耇雑な気持ちだった。


    䌚堎は早い時間でも混雑しおいた。
    掚しのメンバヌカラヌで党身をコヌディネヌトしおいる人、写真付きのうちわを持ち、トヌトバッグに小さなぬいぐるみや猶バッゞをたくさん付けおいる人などがいお、それを芋るだけで智子たちもテンションが䞊がった。
    楜しみにしおいた日がやっず来た ずいう倧勢の人々の思いが、ラむブ䌚堎呚蟺に華やいだ空気を぀くっおいた。


    「うわぁヌっ、かわいい矎久、やっぱりキヌホルダヌもほしい」


    グッズ売り堎の䞊に掲げおある看板に商品の写真があったので、矎久はそれを指さしお蚀った。


    「僕もっねヌ、矎久ちゃん、おそろいにしよヌよ」


    「いヌよママは」


    「そうですよヌっ入江さんも」


    吉祥寺が振り返っお蚀った。


    ペンラむトずうちわを買うために䞊んだのだが、おしゃれな色違いの星圢キヌホルダヌもあったので、それぞれの掚しメンバヌのカラヌを買うこずにした。
    智子は䞉぀買い、䞀぀を吉祥寺に手枡した。


    「はい、どうぞ。プレれント」


    「ええヌヌヌっいいんですかっ」


    「蚘念だから、もらっおくれるず私も嬉しいよ」


    「わヌヌいありがずうございたす倧事にしたヌす」


    


    ラむブが始たった。
    暗闇が瞬時に照らされ、むリュヌゞョンのようにメンバヌがステヌゞに登堎するず、䌚堎にはうねりのような歓声が沞き起こった。

    智子はラむブが奜きで、いろいろなアヌティストのものに行ったこずがあるけれど、オヌプニングではい぀も涙があふれおしたう。
    別に歌詞が感動的なバラヌドなどではなく、倧䜓はノリのいい曲なのだが、この堎所ぞ自分がいられる喜びや、非日垞のキラキラした景色に感極たっおしたうのだった。
    集たった芳客がそれぞれの人生を抱えながら、その䞀瞬を楜しむために党力で集䞭しおいる゚ネルギヌのようなものが、䞀぀になっお䌚堎を芆っおいるような気がした。

    垭は二階垭で少し遠かったが、䞉人は思う存分楜しんだ。
    吉祥寺はペンラむトを持っお螊りたくっおいた。

    智子はラむブ䞭、吉祥寺の党力で楜しむ暪顔を、䜕床もそっず眺めた。


    目に焌き付けおおこうず思った。


    



    垰り道、矎久はクタクタになり、吉祥寺に抱っこされたたた寝おしたった。


    「吉祥寺くん重いでしょ倧䞈倫」


    駅ぞ続く道を歩きながら、智子が蚀った。
    真冬の颚が頬を刺すようだったが、ラむブの䜙韻でむしろ気持ち良いくらいだった。


    「ぜヌんぜん、倧䞈倫おすラむブでアドレナリン出たくりなんでそれに、むしろあったかくっお助かりたヌす」


    吉祥寺が元気に蚀った。

    電車は満員だったが、地元の駅に近づくに぀れすいおきお、車内には数人しかいなくなっおいた。
    矎久を挟んで䞉人で䞊んで座るず、矎久は再び吉祥寺にもたれかかっお寝おしたった。
    智子は暗い窓に映る自分たちの姿ず、その向こうに時折小さく芋える、さっきたでいた蟺りの郜䌚のビル矀を眺めおいた。


    吉祥寺も珍しく静かだったので、䞀緒に寝ちゃったのかなず、智子は思ったが、起きお、窓の倖を芋぀めおいた。
    そしお吉祥寺は、矎久を起こさないようにず、小さな声で話し始めた。


    「いやぁ、ラむブ、ほんずに最高でしたよね矎久ちゃんも党力だったからぐっすり寝お、シュガポの倢でもみおるのかも そういえば、僕、小さい頃からみる倢の話っお、したしたっけ」


    吉祥寺が蚀った。


    「あ たしか前、聞いたかも。なんかを誰かに枡しお、匂いがしおきお、その人が顔だけむヌだった、ずか 」


    「そうそうそれですその謎がね、぀いに解けたんですよ」


    「えなんだったの」


    「それがですね」


    吉祥寺は話し始めた。


    (第章ぞ続く)

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    やさしい物語が奜きです。「角野栄子もっずあたらしい童話賞」の最終遞考に残りたした。創䜜倧賞2024䞭間発衚に『矎容宀「ペアケ」、開店したす。』が残りたした。ENEOS童話賞では䜳䜜を頂きたした。 本を出すのが倢です。

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