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烙印  第7話 「プライド」

    関口直子

     「俺が助けてくれてありがとうと言うとでも思ったのか。あんな事に首を突っ込むなんて、余計なこともいいところだ。」

     マサに突っかかるつもりはなかった。しかし、俺のプライドは素直に礼を奴に言うにはあまりにも高すぎた。

     「俺だけでなんとか出来たんだ。大体、この祭りは、俺ら以外のバンドのためのものだ。客は俺らの歌を聴きに来ているわけじゃない。差し出がましい真似をするな。わきまえろ。」

     ダメだ。こんなことを言いたいんじゃない。それなのに。

     「ああ、そうかよ。エイジさんはご機嫌斜めってわけかい。ふん、不機嫌で人を振り回すなんて幼稚園児のやることだぜ!大体、お祭りだってのによ、堅苦しいこと言ってんじゃねえぜ。」

     マサまでが不機嫌になっている。

     「一般常識だ。ふつうあんな真似はせんのだ。わからんのか!」

     我ながら吐き気がする。俺は、ただ八つ当たりしているだけだと、自分自身が誰より知っている。

     俺は、ルイと手をつないで歩くような大層なことを現実的に実行したいと望んでいたわけではない。

     ただ、情けなかった。好悪の感情すら、自分自身で認めることが出来ない事が。感情を置き去りにして、ただ周りに嫌われない自分でいようと媚びへつらうことが。そんな取引をするしか、こいつらと、あるいは世界と関わる方法がない事が。

     「エイジ。お前頭いいと思ってたけど案外バカなんだな。」

     「じゃあどうすればよかった。」

     どうすればよかったんだ。本当の俺でいたら、本当の俺のままなら、誰も、誰も、俺を。

     こんな風に自分自身を追い詰めて行く癖は子供のころからのものだ。今、それが、酒のせいか普段の何倍も悲しくてたまらなかったのだ。

     「めんどくせえんだよ。適当にやってりゃいいんだよ!」

     マサが声を荒げる。

     「何揉めてんだよ。」ルイが降りてきた。手には弁当の入ったビニール袋が入っている。

     「おいマサ。お前遅いから先に食っちまったぜ。量が半端だからこれも食おうとおもえばいけるな。食っていい?」

     すると、さっきまでの不機嫌が吹っ飛んだように、ニカっと笑うとマサは弁当の袋をひったくった。

     「バカ野郎、お前、それは俺のだ!ていうか。これ唐揚げ弁当じゃねーか。やったぜ!すげー腹減ってたんだよ!ルイ、ありがとう!」

     そして、椅子のシートをおろすと、ドカンと座り、合わせた手の指にお箸を挟み、いわゆる頂きますをしてから、猛然と弁当を食い始めた。

     「腹が減るとお前不機嫌になるよな。」ルイがマサをからかう。

     「ん、んー。」そうじゃねえんだけどと目でサインを送りながらも、マサは弁当を食い続ける。

     「エイジ。なんか、ひでえ顔してるぜ。お前も酔いが回ってきてんな。」

     ルイに見られた。

     一番ひどい顔をしている俺を。

     「なんでも、無い。」このまま俺は消えてしまいたくなっていた。

    次回、未だ抜けざる氷結のアルコ―ル分が、不穏なる火種となり、エイジの胸の埋め火となって、発火の時を待つのであった!!感情が爆ぜる事は必至の展開!!まとめ読みは上記リンクにて!!

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n101d092de82e 第1話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nffe878333923 第2話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n70230ea1ca35 第3話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n8673917ba9cf 第4話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n20c6e4724ed6 第5話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n60fd4e2ba418 第6話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/na9525663d4d5 第7話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb430df89623b 第8話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nc3f782ad1e33 第9話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb6db7055e9b6 第10話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nc29e78a3f484 第11話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nf682707fe11d 第12話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/ncefa75cbe910 第13話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n2c42d27c8d20 第14話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb3035166132a 第15話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nf9b14b543f14 第16話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n3e7f02c6c809 第17話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n7d297e091bcb 第18話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n8ddbe81c4b03 第19話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/ne039696f85e4 第20話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n156481928991 第21話

     
     
     
    静けさの中に沈む物語と、心の奥で揺れる小さな灯火を描いています。 闇に触れ、魂の輪郭を確かめながら、人が再び歩き出す瞬間を記録しています。 あなたの内にある光を、そっと思い出せる場所でありたい。

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