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烙印  第4話「氷結」

    関口直子

     「一方通行でお願いしまーす!ここからは戻れません!」場内のアナウンスが響く。この野外フェスは、さいたまスーパーアリーナで普段は行われているらしいのだが、その改修工事のために、初の野外開催となったのだ。
    そして最後の野外開催とも言われている。
     
     それゆえか、警備がかなり物々しい。したがって、人の動きは完全に、制御されていたのだった。自由に行き来はしにくい。会場内のゲートを抜けてしまうと、元の場所に戻るにしても必ず回り込んでいかなければならない。

     「マジか。じゃあ、近道どころじゃないな…、絶対に余計に歩くパターンだ。マサのヤツ、今度はあっちに行きやがった…。」
    勘弁して欲しい。しかし、曲がいざ始まると、楽しくてそれどころではない。俺まで、跳んだり跳ねたり忙しいことこの上ない。

     「後で確実に筋肉痛来るな。跳びすぎた。」
    気付けば喉もカラカラだ。マサに2本わけてやったせいでペットボトルの水はあっと言う間に底をついていた。俺は思わず衝動的にその辺で売っていた氷結を買う。アルコール分の確認もしなかった。

     「見つけた!ルイ、どこにいたんだ全く。マサはまだあそこで跳ねてるみたいだが、俺はもう知らんぞ。」と、怒りにまかせて、ぐいぐい氷結を飲み干す。

     「エイジ。お前…酒ダメなんじゃなかったのか?」

     やべえ。半分以上一気に飲んだ。実は俺は、下戸の癖に酒癖がひどく悪いのだ。それを自分でもわかっているはずだった。完全な失態だ。

     「…酒が回ってきやがった。ヤバすぎる。止めときゃよかったかな。気分悪い。」

     「とりあえず、休んだ方がいいぜ。あっちに座ってよう。あと、水、これな。」
    どうやらルイは、弁当の他に水も買っていたらしく、俺に手渡してくれた。

     「さっき、偶然俺らのファンに出くわして、捕まっちまったから、ちょっと話して来た。なんか、まさかそんな事起きるなんて思わなかったからよ、ちょっと面食らったが、嬉しかったな。」

     ルイはどうやっても背はデカいし髪は、相変わらず赤いし、変なメイクやめて薄い色のサングラスかけても、目立つ。
     
     梅本類。(通称ルイ)34歳。こいつは、うちのバンドのベーシストだ。普通ベーシストをやってる人間っていうのは、目立たないポジションで目立ちたいっていうキャラクターが多いんじゃないかと思うんだが、こいつの場合は、素で目立つからどうしようもない。
     
     いくらしゃべらなかろうが、おとなしくしてようが、身長はぱっと見で180超えの大男だし、外国人特有の、その青い目と映画俳優のような素顔、腰高のルックスは生きているだけで何かのバグのように目を引くというのに、奴のファッションセンスときたら、なかった。

     なにしろ、赤を基調にしたド派手なパンクスタイルに赤い髪の毛なんだから、通り過ぎる人が二度見、三度見するレベルで不審者オーラを放つ。今日は黒い長そでにしているようだが、髪が真っ赤な時点でもう、アウトだ。

     「お前、それ、全く変装になってないからな。」
    座ってルイをしげしげと見る。ダメだな。バレるよな。しかも、遠巻きに女の子達がチラチラこちらを見て何かを話している。

     「場所、変えよう!」

     マサは、まあ、後で連絡だ。俺達は、その場から離れて、埼玉スタジアム内のスタンド席に向かった。

    次回 スタンド席に行き、することと言えば一つ!
    腹が減っては戦は出来ぬ!!

    戦の前の腹ごしらえ

    なりければ、いざ、フェスの名物に舌鼓打つべし!!
    まとめ読みは上記リンクより!!

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n101d092de82e 第1話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nffe878333923 第2話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n70230ea1ca35 第3話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n8673917ba9cf 第4話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n20c6e4724ed6 第5話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n60fd4e2ba418 第6話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/na9525663d4d5 第7話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb430df89623b 第8話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nc3f782ad1e33 第9話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb6db7055e9b6 第10話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nc29e78a3f484 第11話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nf682707fe11d 第12話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/ncefa75cbe910 第13話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n2c42d27c8d20 第14話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nb3035166132a 第15話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/nf9b14b543f14 第16話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n3e7f02c6c809 第17話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n7d297e091bcb 第18話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n8ddbe81c4b03 第19話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/ne039696f85e4 第20話

    https://note.com/prime_lemur1632/n/n156481928991 第21話

     
     
     
    静けさの中に沈む物語と、心の奥で揺れる小さな灯火を描いています。 闇に触れ、魂の輪郭を確かめながら、人が再び歩き出す瞬間を記録しています。 あなたの内にある光を、そっと思い出せる場所でありたい。

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