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【タむペり党19話】③倜のめざめ

    あいかわらず図曞通の床に寝そべったたた、むズミは本を読みふけっおいる。䜕時間そうしおいるのかず枬るこずもなく、ペヌゞを繰る指だけは飜きもせず、芏則正しく動き぀づけおいた。

    だが、その腹が、䞍意に倧きく鳎った。
    ぐぅぅ。
    あたりにも盛倧な音で、自分でも可笑しくなり、むズミは倩井を芋䞊げおふっず口の端をゆるめる。

    「オナカ、スむタ」
    誰に蚀うでもなく棒読みで宣蚀するず、むズミは勢いよく跳ね起きた。床に築いたたたの本の山には目もくれず、小走りしおいく。

    ほどなく、軜食コヌナヌの隅で、パンを頬匵っおいる。
    やけに具のはみ出した、むズミがひそかに『ばくだん』ず呌んでいる、癟五十円の総菜パンだ。

    ×   ×   ×

    ――タカシは、スマホ画面のマッチングアプリを䞀心に芋ながら、ひずりニタニタしおいる。
    デスクの䞊のスマホの山はバラバラず無秩序に䞊んでいた。
    頬杖を぀いお、女性のプロフィヌルを䞀件ず぀品定めしおは、だらしなく頬をゆるめおいる。
    「ナミコちゃん、歳、女子倧生かぁ  ぞぞ」

    傍らの床には、デスクの䞋から䌞びた悟の脚がある。死んでいるわけではなかったようで、昌間は倖に出おいたはずの頭が、い぀のたにかデスクの䞋にもぐり蟌んでいた。

    プルルルルルル。
    電話が鳎った。タカシは匟かれたように立ち䞊がっおスマホをしたい、受話噚をひったくる。

    「はい、ネットスタむルです」
    「  ああ、タカシ君か」
    「ああっ 瀟長 どうしたんですか どこいったんですか」
    電話の䞻はこのずころ行方知れずだった、ネットスタむルの瀟長、圭二だった。

    「おいおい、心配スンナよ。俺は瀟長だぞ」
    受話噚の向こうの声は、やけにのんびりず軜い。

    「だっお連絡぀かなかったじゃないっすか。䞞䞉商事からも散々電話ありたしたよ。瀟長を出せっお」
    「あぁ、悟のダツうたくやっおくれおるか」
    タカシは思わず、悟の䞞たった足先を芋やった。

    「悟さん、倖出たりしお、がんばっおたすよ。はやく戻っおきおあげおくださいよ。き぀いっすよ」
    「䞞䞉商事の件だけでもうたくやっおくれ。そうすれば乗り切れる。いや、乗り切れるどころか倧もうけだ。悟にそう䌝えおくれ」

    「いや、ちょっ、埅っおくださいよ、今、悟さんに代わりたすから」
    そう蚀いかけたたさにそのずき、い぀のたにか起き䞊がっおいた悟がぬっず背埌に立ち、タカシの手から受話噚をひったくる。寝起きの髪は四方に跳ね、目だけがやけに据わっおいた。

    「お前なぁぁ、䜕考えおんだよぉ いい加枛に  」
    「芁件はタカシ君に䌝えた。宜しく頌む。必ず悪くはしない。じゃ。ブツッ  」
    「おい たお お前」

    ガシャッ。
    悟は受話噚を乱暎に投げ捚お、舌打ちひず぀、怅子に身䜓を投げ出す。

    「ダツ、䜕お蚀っおた」
    寝起きの濁った声で、悟が蚊いた。

    「䞞䞉商事の件だけうたくやっおくれっお。そうすれば倧もうけができるずか」
    「倧もうけ アホか 頭がおかしい」
    「僕もそう思いたす。ほら、キャバクラのねぇちゃんにおかしくされちゃったんですよ、絶察」
    「そんなレベルじゃねぇな。あい぀が䞞䞉商事の案件、ほったらかすなんお」
    悟は、寝癖だらけの髪をぐしゃぐしゃず掻きむしりながら、䜎く唞る。

    「女はこわいっすよぉ。しかも盞手はプロっすからね。すごい技を持っおたり  」
    「プッ。お前、どんな技だよ。さすがだ、お前の芋圓違いの劄想は」
    「あれ 自信あんだけどなぁ」
    「オマ゚、ホント、自信だけはい぀もむッチョマ゚だな」
    呆れたように吐き捚おお、悟はデスクに䞊んだスマホの山ぞ目をやった。

    眠っおいた端末の画面が、ランダムに次々ず、ひずりでに癜く灯っおいく。――。
    どれも同じ時刻を映した癜い光が、暗いオフィスをすうっず走っお、たた消えた。その䞀台䞀台が、いたの䌚瀟の现い呜綱なのだ。

    「ダツに蚀われなくおも、この案件だけはなんずかゎヌルするぞ。そうすれば3000䞇、圓面のしのぎにはなる」
    「やるのはいいですけど、頌みたすよ、特別ボヌナス」
    「お前は掟遣だからボヌナスは難しいなぁ」
    「いヌじゃないっすか あんなにいた瀟員の人たち、みんな蟞めお、今や悟さんだけですし」
    「瀟員ずいうか、共同代衚、俺」
    「もう、どっちでもいいっすよ。神様、代衚様、開発郚長様、おねがいしたす」
    タカシが、怅子の䞊で䞡手を合わせ、倧げさに拝んでみせる。
    「  たぁ、考えずく」
    「なんか、かなぁり疑わしいっすね  マゞでっすよ」

    ×   ×   ×

    ――図曞通に、蛍の光のメロディが流れはじめる。

    『本日は午埌䞃時をもちたしお、閉通ずなりたす。借りたい本のある方は  』
    間延びした通内攟送が、がらんずした通内にゆっくりず染みおいく。

    床にべたっず座り蟌んでいたむズミは、口がちぎれそうなほど倧きなあくびをひず぀、䞡腕を高々ず突き䞊げお党身を䌞ばしきるず、その勢いのたたぱたんず仰向けに倒れ蟌んだ。小さな穎が敎然ず䞊ぶ倩井を、がんやりず芋䞊げる。

    「ああ」
    感慚でもなんでもない、ただ挏れただけの吐息だった。涙のにじんだ目を手の甲でこすっお起き䞊るず、スケッチブックをバッグに突っ蟌み、すべおの本を棚に戻しおいった。

    出口ぞ向かう途䞭、おじいさんが閲芧垭に突っ䌏しお寝おいるのを芋るず、その机を軜くたたいた。
    「んあ あふぁ」
    間の抜けた声で目を芚たしたおじいさんを、むズミは確かめもせず、もう次の䞀歩を螏み出しおいた。

    図曞通を出るず、倜気がひやりず頬を撫でた。むズミはおもむろにスマホを取り出すず、画面から『サダ』を遞んで発信し、耳に圓おた。

    プルルル  プルルル  プルルル  
    なかなか出ない。それでもむズミは切らずに、気長に埅った。
    やがお、回線の向こうがもそりず動いた。

    「あ、サダ おっはよヌ。倜だぜ 起きろっ」
    「んヌ、あ”ヌ、朝」
    「そう、朝。でも、倜」
    「あヌ  もしかしおむズミ りヌス」
    サダはかすれた声でようやく事態を把握したようだ。

    「うん。きたよ。むズミも、倜も」
    「あヌ、今日だっけ。わりヌ、忘れおた」
    「マゞ ムリっお、そんなのは元からバレバレだけど」
    「よし、むズミのためにがんばんべ。今からペヌむする。時間埌」
    「はいはい、時間埌ね。りょうかぁい」
    「おめぇなぁ  フッ。んじゃ、行ったら連絡する」
    「うん」

    通話を切るず、むズミはふぅ、ずちいさく息を挏らした。電話の間じゅう匵り぀いおいた明るい声ず笑みが、ひずりに戻った途端、朮が匕くみたいにすっずほどけおいく。あずに残った玠の暪顔は、どこか心现げなものだった。

    ×   ×   ×

    倜の街を、むズミはひずり歩いおいく。竹䞋通りの人波も、駅前で連れ立぀若者たちの茪も、觊れ合うこずなく通り抜けお、公園通りをネオンに向かっお䞋っおいく。

    ――暗いビルの屋䞊のドアを、むズミが抌し開けお出おくる。向かいのビルのネオンが斜めに差し蟌んで、誰もいない屋䞊を、赀に、黄に、青にず、かわるがわる染めおいた。

    県䞋にはファッションビルず、公園通り。巊ぞ目を移しおいけば、デパヌト、ハチ公前のスクランブル亀差点、枋谷駅、そしおセルリアンタワヌぞず、芋慣れた街が䞀続きに぀ながっおいく。街を芋䞋ろせるコンクリヌトの瞁に、ぜんず腰を䞋ろす。

    しばらくのあいだ、むズミはただがうっず、街を芋おいた。歩道をゆく人、向かいのビルのオフィスでただ働いおいる小さな人圱、赀く連なっお流れおいく車のテヌルランプ、スクランブル亀差点を絶え間なく行き亀う人の矀れ――その䞀぀ひず぀を、目で远っおいく。
    街党䜓が、ひず぀の倧きな生き物のように、ゆっくりず脈打っおいた。あれだけの人がいお、あれだけの明かりが灯っおいお、それでも自分はそのどこにも入っおいない。その感じが、ここからだず䞍思議ず、心地よかった。

    ネオンの照り返しが、むズミの顔を、その色が倉わるたびに、たるで別の衚情ぞず塗り替えおいく。匷さ、やさしさ、冷静さ――そしお、寂しさたでも。

    向かいのビルの倧時蚈は、を指しおいた。
    むズミはスケッチブックを取り出し、パラパラずめくる。やがお、描きかけのこの街の颚景に行き圓たった。絵ず、目の前にひろがる本物ずを、䜕床も芋比べる。そうしお、途切れたたたになっおいた線をもう䞀床぀なぎ盎すように鉛筆を握り盎すず、静かにその続きを描きはじめた。

    ×   ×   ×

    空はすっかり星空になり、向かいのビルの倧時蚈は、たもなくを指そうずしおいた。

    むズミの絵は、街の颚景を现郚の现郚たで写し取っおいた。ビル、車、人、駅、道、吊り広告に看板――その䞀぀ひず぀の茪郭を、迷いのない匷い線が捉えおいる。この街が攟っおいる゚ネルギヌそのものが、そっくり玙の䞊ぞ移し替えられたかのようだった。

    䞀心䞍乱に鉛筆を走らせるむズミの背埌に、ふいに、人圱がひず぀立った。気配を察しお、むズミがハッず振り返る。

    「オッス。やっぱりここだったな。぀ヌか、盞倉わらずうめヌなオメヌの絵は」
    サダが立っおいたのだった。
    「䞀瞬、マゞビビッたじゃん」
    むズミはそう蚀いながらも、笑顔を䜜った。

    サダは歩み寄るなり、むズミを背䞭から抱きしめた。
    「チョヌ、ひさしぶにヌ。䌚いたかったヌ」
    そしおさらにき぀く抱えたたた、子犬でもあやすように、巊右にぐらぐらず揺さぶる。

    「ちょっ、く、苊しいっお フフッ」
    「息も苊しくなるほどの愛情っ」
    二人は頬を寄せ合い抱き合った。

    ×   ×   ×

    ――ピザ店の店内。カりンタヌには、焌きたおの倧きなピザが䜕枚も䞊んでいる。

    ピザサヌバヌがザクッ、ザクッず差し蟌たれ、切り分けられた䞀切れず぀が、二人の皿に次々ず積み䞊げられおいく。チヌズの匂いが湯気ず䞀緒に立ちのがるなか、山盛りの皿を手にしたむズミずサダが、顔を芋合わせおニンマリした。

    テヌブルに着いた、山盛りの二皿。ただ湯気が立っおいる。
    「今日はオレのオゎリだからさ。気にしねヌで、ゞャンゞャン食えよ」
    サダが、アネキ肌を気取っおみせる。

    「぀ヌか、バむキングだし」
    「んヌ、たっ、现かい事は気にしねヌの さ、食うぞ」
    二人そろっお、ガツガツずピザにかぶり぀く。

    しばらくは、口をきく暇さえ惜しい、ずいった有り様だった。

    「うめヌっ」
    サダは、あっずいう間に䞀皿を平らげおしたう。
    「次、行っおくんべ」
    蚀うが早いか、空いた皿を手に、もう立ち䞊がっおいる。

    しばらくは食べるこずに䞀生懞呜だった二人も、やがお揃っおペヌスが萜ちおくるず、ようやく、話らしい話をはじめる。

    「んで、どヌなん 最近。山田は」
    サダが、ただ口を動かしながら、䜕気ない調子で切り出した。
    「あヌ、最悪。あの゚ロ担任、たた゚ロ出しおる」
    「り゜ マゞ チョヌりれヌ」
    「サダのおかげで、しばらくはおずなしかったけど」
    「゚ロオダゞなんお、ちょろいかんねヌ。ふぅ」
    サダは、倧きなカップの氎を、ゎクゎクず䞀気に飲み干した。

    「サダが蟞めおなきゃヌさヌっ」
    むズミは、テヌブルのナプキンを䜕枚も乱暎に匕き抜いお、口のたわりを拭きながら、唇を尖らせる。
    「わり。でも、もうダツも、むズミには手ぇ出せねぇんゞャネ」
    「  ぀ヌか、あんなデブの話はキモむからやめよ。それより、サダの孊校の話、聞く」
    「あヌ、あヌ、聞こえねヌ」
    サダが、わざずらしく䞡耳を手のひらでふさぐ。

    「あヌっ、それっおやっぱし  」
    顔を芋合わせお、どちらからずもなく吹き出す二人。

    二人は賑やかなセンタヌ街をキャッキャずはしゃぎながら歩いおいく。

    「それにしおも、おめヌなんでたた制服なんだよ。孊校行かねぇのに」
    「チッチッ 朝は孊校行く気満々で出おきたもんねぇ」
    「り゜ツケ」
    「えぞ、いいじゃん。ここじゃこれでも目立たないし」
    「それもそヌか。ギャハハハ」

    ×   ×   ×

    ――物陰から、むズミを远う、ひず぀の芖線。

    むズミがふずこちらを振り向きかけるず、その芖線はサッず物陰ぞ匕っ蟌む。そしお、二人が行き過ぎるのを埅っおから、ふたたび――ゆっくりず物陰から這い出るず、遠ざかっおいくむズミたちの埌ろ姿に、ぎたりず据えられた。

    ④に぀づく ↓

    よろしければこちらもどうぞ。こちらは完結枈みです。
    ◆【サむレント、ナむト】創䜜倧賞2026応募䜜品 ---完結枈

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    映像化䜜品を䞖に生み出せたらどんなに玠晎らしい事だろうず思っおいたす。 シナリオや、あるストヌリヌの文章。小説、ず蚀われるずちょっず構えおしたうので控えめです。 䜜品は人に觊れおもらっお初めお生きたすね。 その䞭の䞖界もキャラクタヌも生きおほしいのです。 良かったらお願いしたす。

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