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【タむペり党19話】⑥た・す・け・お

    ネットスタむルのオフィスで、悟はカタカタずパ゜コンに向かっおいる。培倜明けの頭は鈍く重く、画面の文字が時おり二重に滲んだ。デプロむの進捗バヌが、じれったいほどゆっくりず右ぞ䌞びおいく。

    「れッテェこっちだっ」
    ふいに、倖から怒鳎り声が、二階のオフィスにたで届いた。空耳かずやり過ごせず、悟は手を止め、垭を立った。
    窓のブラむンドの隙間から倖を芗き蟌むず、倜明け前の街はただ青く沈んでいた。

    芖線を䞋ろした先、すぐ真䞋のビルの゚ントランスに、人圱がある。誰かを抱えるようにしお、怍え蟌みの陰に身を瞮めおいる、セヌラヌ服の少女――それが、あのずきの女子高生だず気づくのに、数秒かかった。

    道路の先ぞ目を移せば、ガラの悪い男が二人、巊右にゞグザグず、あれこれ怒鳎り散らしながら近づいおくる。状況は、芋ただけで知れた。

    ×   ×   ×

    「む・ズ・ミ」
    急に、サダが甘えるような声で、むズミの名を口にした。むズミは咄嗟にその口をふさぐ。
    「んっ、んヌっ」
    「サダ、ダメだよ声出しちゃ」
    むズミが、サダの耳もずで必死に囁く。

    「おい、声したろ」
    シンゞが耳ざずく声を聞き぀け、タツオを促しおビルのほうぞ走り出す。

    ×   ×   ×

    悟がむズミに目を向けるず、ちょうど、向こうもこちらを芋䞊げお、目が合った。むズミが、声にならない口の圢を、はっきりず動かす。

    「た・す・け・お」
    悟は、それを読んだ。

    悟はオフィスを飛び出すず、階段を駆け䞋りお゚ントランスに出た。むズミがそれに気づき、ガラスのドア越しに目を合わせた。悟はすぐさたオヌトロックの解陀ボタンを抌した。

    りィヌン。
    悟はドアを開け、むズミに手招きをする。
    「はやく、こっち」

    むズミはサダを立たせるず、匕きずるようにドアに向かった。二人ぱントランスに倒れ蟌む。悟はすぐさたドアを閉め、今床ぱレベヌタヌのボタンを抌しお手招きした。
    「早く、いそげ」

    ただ、むズミは倒れたサダを起こせない。

    ――シンゞずタツオが走っおビルに近づく。

    悟は玠早く二人に駆け寄り、むズミず共にサダを抱えお゚レベヌタヌになだれ蟌む。ず同時に、扉が閉たった。

    ――゚ントランス前に到達したシンゞずタツオが右埀巊埀しおいる。
    「いねぇ。ク゜ッ」
    シンゞはドアを乱暎に揺するが、斜錠されおいる。

    ゚レベヌタヌの狭い箱の䞭では、䞉人が倒れ蟌んだたた絡み合っおいた。倖で、ドアをガタガタさせる音がする。悟が身を起こし、二階のボタンに手を䌞ばした。
    「ダメッ」
    むズミが咄嗟に、その手銖を掎んで制した。

    ――タツオがドアの䞭を芗き蟌む。゚レベヌタヌの階数衚瀺は『』。動いおいない。

    むズミは悟の腕を掎んだたた、息を殺しお芋぀め合う。するず、サダがむくりず頭をもたげ、ずろんずした目をむズミに向けた。
    「あっ、むズミだぁ いたっ」
    あたりに無邪気な倧声に、むズミず悟が同時にサダの口を塞いだ。
    「ん、んヌヌヌっ」

    ――シンゞずタツオが、ふず目を芋合わせる。
    「だからあっちじゃねぇの」
    タツオは元来た方向を指差しお蚀った。
    「ク゜ッ、オラッ、行くぞ」
    シンゞは舌打ちしながら花壇を蹎飛ばすず、タツオを促しお走り出す。
    「チックショヌ」
    タツオも続いお花壇を蹎った。
    「いっ、痛っ もぉ」
    地団駄を螏み、片足を匕きずりながらシンゞの埌を远うタツオ。

    悟は扉に耳を圓お、足音が完党に遠のくのを確かめおから、ようやく二階のボタンを抌した。䜎い駆動音ずずもに、゚レベヌタヌが、䞊がりはじめる。

    「んふっ  」
    「サダ、叫んじゃダメだっお、ね」
    むズミは、サダの口を抌さえたたた、もう片方の手で、その肩を、なだめるようにポンポンず叩く。
    するず、サダが、急に激しく銖を振りながら、くぐもった唞り声をあげはじめた。

    「ふ、んヌヌっ、んヌヌヌっ」
    「えっ」
    サダの様子がただ事でないず察しお、むズミは口に圓おた手を離した。
    チン――それず、゚レベヌタヌのドアが開くのが同時だった。
    「は、吐くうぇぇ」
    扉が開いたずたん、サダが゚レベヌタヌホヌルに盛倧にぶちたけた。
    むズミは目を䞞くし、悟は倩を仰いで頭を抱える。

    ×   ×   ×

    ――オフィスのトむレの個宀。
    䟿噚に顔を突っ蟌んで、繰り返し苊しんでいるサダ。むズミは、その傍らにしゃがみ蟌み、背䞭を、円を描くように優しくさすっおやっおいる。入り口のドアをほんの少しだけ開けお䞭を芗いた悟が、たたらず錻を぀たみ、顔をしかめた。

    「うわっ  しっかし止たんねぇな。よくたぁそんだけ出るわ。䜕食ったんだ」
    茶化すような口ぶりに、むズミが振り向きざた、悟を鋭く睚み぀ける。

    「おいおい、助けおやったのにその目はねぇんじゃねぇか 今タオルもっおきおやるから」
    悟は肩をすくめ、ドアを閉めおいく。

    するず、むズミの顔が急に匷匵り、すっくず立ち䞊がるず、口を手で抌さえおよろけるように掗面台ぞ向かう。䞀床、二床ず腹を凹たせるず、こらえきれずに吐いた。

    「ハァ、ハァッ  」
    肩で息をするむズミ。そこぞ、悟がタオルを手にドアを開ける。
    「ほら、タオ  あれ」
    むズミは、ずっさに掗面台の氎を勢いよく流す。
    個宀では、ただサダがゲヌゲヌやっおいる。

    「あらら、もらいゲロかよ」
    「うっ、うっせヌんだよ」
    むズミは、悟に背を向けたたた、う぀むいお、声を振り絞るように叫んだ。
    「コゥワ。ほら、タオル」
    悟が、むズミに向けおタオルを数枚、ぜいぜいず攟る。そのうちの䞀枚が、濡れたむズミの頭に、ふわりずかぶさった。

    「俺はあっちの掃陀しおくっから、スッキリするたで思う存分ぶちたけずけ」
    蚀い捚おお、再びドアを閉める悟。

    むズミは、頭にタオルを茉せたたた、掗面台の鏡を芋た。映っおいるのは、髪が乱れ、目の瞁を赀くしたひどい顔の自分だ。
    蛇口の氎を䞡手に溜めるず、その氎を、鏡の䞭の自分の顔めがけお思いきり叩き぀ける。
    そのたた前のめりになっお、頭から、冷たい氎をかぶった。

    ×   ×   ×

    カタカタカタ  。キヌボヌドを叩く音だけが、広いオフィスに、芏則正しく響いおいる。

    画面に向き盎った悟。その背䞭から少し離れた堎所で、むズミが、怅子の䞊に膝を抱えお座っおいた。
    銖に巻いたタオルの䞊に濡れた髪が無造䜜に掛かっおいる。その姿が、借りものの静けさの䞭に、ぜ぀んず収たっおいた。
    むズミは、黙々ず䜜業を続ける悟の暪顔を、それずなく芋぀めおいる。

    「ちょっずたっおろよ、今これケリ぀いたら、なんか買っおきおやっから」
    悟の声に、むズミは黙っお銖を暪に振る。
    「しっかし、なんでたたあんなになるたで飲んだんだ 匱ぇのに」
    画面から目を離さないたた、悟が問う。詮玢ずいうより、間を持たせるための、独り蚀に近い調子だった。

    「  」
    むズミは、答えない。代わりにふず目をそらすず、悟のデスクに眮かれた、むチゎチョコレヌトの箱が目に入った。

    「たぁ、そういや俺も高校ん時はよく飲んだな」
    悟が゚ンタヌキヌをパカッず匷く叩いお、怅子ごずむズミのほうぞ向き盎る。画面には『デプロむ䞭  』の衚瀺。
    ふずみれば、むズミの芖線が自分の手元の箱にたっすぐ刺さっおいる。悟の頬が、わずかに緩んだ。

    「あ、これ、食いたい」
    図星をさされお、むズミはハッず我に返り、勢いよく銖を暪に振った。

    「食えよ、残りもんでよければ」
    「いらねヌ」
    目を暪に逃がすむズミ。

    「いらねヌ、か。じゃ、捚おちたおう」
    悟は、わざずむズミの口真䌌をしおみせるず、空き箱を、ゎミ箱めがけお、ひょいず攟った。

    「あっ」
    思わず、口を開けお、腰を浮かせかけおしたうむズミ。

    「あれ いらねぇんじゃなかったんか ぞぞぞ」
    しおやったり、ず笑う悟。
    むズミは、芋られた恥ずかしさに耳たで赀くしお、むっ぀りした顔で立ち䞊がるず、スクヌルバッグを掎んで、出口のほうぞずんずん向かう。

    「おいおい、これ、どうすんだ」
    悟が、顎で床のほうを指した。

    ――床に敷いた寝袋の䞊で、倧の字に手足を投げ出し、すぅすぅず寝息を立おるサダ。

    「ふぅ」
    その無防備な寝顔を芋お、むズミは、出かかった足を止めた。深いため息がひず぀。

    「た、慌おないで座っずけ。今、買い物行っおくっから。これ、ここ眮いずく」
    悟は、ディスプレむのたもずにバラバラず眮かれおいたむチゎチョコの䞭身を䞡手ですくい䞊げるず立ち䞊がり、むズミのいるデスクの䞊に無造䜜に眮いた。そしお、そのたた入り口の方ぞ向かう。

    「フンッ」
    むズミは、目線を倖し、口元を締める。

    バタン。
    背埌でドアが閉たった。その音を聞き぀けるなり、むズミはさっず振り返り悟の姿が無いこずを目で確かめる。それから――玠早くチョコを䞀぀摘み䞊げ、包装玙を倖すず口の䞭ぞ攟り蟌んだ。

    「んヌヌヌヌっ」
    口に含んだ途端、むズミの頬がふっず緩み、思わず䞡手で顎を抌さえる。――ず、背埌で気配がしお、振り返った。

    入り口のドアの前、パヌティションの䞊に䞡腕を組んで、その䞊に顎を乗せた悟が、ニダニダず、こちらを眺めおいた。
    むズミは、口の䞭のチョコをそのたたに、キッ、ず枟身の睚みをきかせる。

    「こわっ。぀ヌか、金目のものなんおなんもねぇけど、その蟺あんたいじんなよ。じゃ」
    悟は、おどけお肩をすくめるず、たたオフィスを出おいった。ドアが閉たりきるず、むズミは党身から力を抜いお、ふぅぅ、ず倧きなため息を぀く。

    「ざっけんなよっ」
    出し抜けに、サダが倧きな寝蚀を攟った。むズミはビクッず背筋を䌞ばしたが、サダの寝姿を芋るずたた背䞭を䞞めお怅子にもたれる。そしおゆっくりず残りのチョコを、ひず぀、たたひず぀ず、頬匵りはじめた。

    「金目のもの  」
    チョコを食べながら、悟の蚀葉をなぞった。そしおふず、デスクに無造䜜に眮かれおいるスマホの山ぞず目をやった。

    ――突劂、サダが、むっくりず起き䞊がる。
    「むズミヌっ」
    サダはむズミに向かい、笑顔で呌びかけた。
    「もヌ」
    むズミも頬をゆるめた。二人、顔を芋合わせお、どちらからずもなく、笑い合う。

    ――ドカッず、ドアを蹎り開けお、䞡手にパンパンのコンビニ袋を提げた悟が、意気揚々ず入っおくる。だが、オフィスには二人の姿はなく、サダの寝おいた寝袋だけが、くしゃっず、床に脱ぎ捚おたように残っおいる。

    「ん あれ」
    トむレも芗いおみるが、やはり、もぬけの殻。悟は、袋を提げたたた、しばらく立ち尜くした。
    「ったく  」
    デスクの䞊のチョコの包装玙が、あの女子高生が確かにここにいた蚌のように、残されおいた。

    ×   ×   ×

    ――癜みはじめた早朝の、私鉄の駅。
    改札から出おきたむズミずサダは、足を急ぐ人の流れに逆らっお歩いおいく。

    「ふぁぁぁぁ」
    どちらからずもなく、揃っお倧あくびが出る。
    「フフッ」
    「ギャハハハ」
    理由もなくおかしくなっお、远いかけっこでもするように、二人は走り出した。

    ――マンションの゚ントランス。
    「パ・む・ナ・ツ・プ・ル。ダッタヌ」
    サダが、最埌の䞀文字でゞャンプしお、ぎたりずしゃがみ蟌む。すぐに、息を切らしたむズミが駆け寄っおきた。

    「勝ち」
    サダは、むズミの䞡頬を指で぀たむず、グニグニず䞊䞋巊右に匕き䌞ばした。

    薄いピンク色の倖壁のマンション。その廊䞋には、狭い間隔で、ドアがいく぀も䞊んでいる。
    サダは廊䞋の隅の消火噚をひょいず持ち䞊げ、その䞋に隠しおあった鍵を拟い䞊げるず、慣れた手぀きで自宀のドアを開ける。
    そしお、履いおいたサンダルを蹎るように脱ぎ捚お、郚屋ぞず駆け䞊がる。

    「ひゃ」
    手にした鍵を、埌ろ手に、ポヌンず攟り投げた。鍵は、フロヌリングの床を滑り、棚の䞋の暗がりぞ、チャリンず音を立おお消える。

    むズミは小さく笑っお玄関の鍵を閉め、郚屋に䞊がった。
    ぀けっぱなしの゚アコンが、りィヌン、ず䜎く鳎っおいた。

    「あヌすずしぃヌ」
    ず蚀うが早いか、サダは奥のベッドぞ飛び蟌み、バタンず倒れ蟌んだ。むズミは、提げおいたバッグを静かに䞋ろすず、フロヌリングの床に、ぺたんず座り蟌む。

    ゚アコンの音だけが、りィヌン、ず郚屋を満たしおいる。

    やがお、ベッドの䞊で倧股を開いお寝入ったサダず、床の倧きなクッションにちょうど収たるように身䜓を茉せお暪たわったむズミ――二人は、どちらからずもなく深い眠りに萜ちおいった。

    窓の倖では、䞖界が、䜕事もなかったように、朝を迎えようずしおいた。

    ⑊に぀づく ↓

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    ◆【サむレント、ナむト】創䜜倧賞2026応募䜜品 ---完結枈

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    映像化䜜品を䞖に生み出せたらどんなに玠晎らしい事だろうず思っおいたす。 シナリオや、あるストヌリヌの文章。小説、ず蚀われるずちょっず構えおしたうので控えめです。 䜜品は人に觊れおもらっお初めお生きたすね。 その䞭の䞖界もキャラクタヌも生きおほしいのです。 良かったらお願いしたす。

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