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【タむペり党19話】⑀空振りチョコレヌト

    ――シンゞの郚屋。
    䞡頬を真っ赀にしたサダが、だらりず脱力しお、壁にもたれかかっおいる。その目は虚ろで、焊点が定たらない。

    「おい、こい぀のスマホ挙げろ」
    シンゞが、苛立った顔でタツオに呜じる。タツオはサダの服のポケットをたさぐり、スマホを匕っ匵り出した。
    「ホラッ、呌び戻せよ」
    スマホを突き出し、サダの手に無理やり握らせる。

    「あのコの 番号 知ら ない」
    口を開いたサダの歯が、赀く血に染たっおいた。

    「おめぇ、知らねぇわけねぇだろヌがよ もういい、貞せ」
    タツオは取り䞊げるず、狂ったように電話垳を頭から繰っおいく。
    「むズル  むズル  むズル  ク゜ッ、ホントにねぇ LINEだ、LINE」
    怒りに顔を歪め、サダに迫るタツオ。

    「おい、もういい。こい぀で楜しむべ」
    シンゞが、やけに萜ち着いた声で蚀った。

    「でも俺は  」
    「お前、いい加枛りれェぞ」
    シンゞに匷い調子でそう蚀われ、タツオはシュンずする。

    「ナりダがよ、こい぀の楜しみ方、入れおくれたんだ」
    ニダニダしながら、シンゞがサダに目をやる。
    「マゞ なにそれ」
    タツオが、急に目を茝かせた。
    「ヘヘッ」
    タツオも察したらしく、ねっずりずサダを芋る。

    その二人に向かっお、サダは匱々しく、にこっず笑顔を䜜っおみせた。

    ×   ×   ×

    「ハァ、ハッ、ハァ  」
    車のヘッドラむトを次々に济びながら、ただ必死に走っおいる。どこをどう曲がったのかも、もうわからない。狭い路地に入り蟌んでも、足は止たらなかった。

    のトンネルぞ、転がるように走り蟌む。䞭ほどでようやく屈み蟌み、膝に手を぀いお肩で息をしながら、背埌を振り返った。誰も、远っおきおはいない。
    息が萜ち着くず、歩き出す。それでも胞はただ苊しく、足どりは安定しない。車道の向かい偎を、猛スピヌドの車が、ビュンビュンず続けざたに通り過ぎおいく。ヘッドラむトが眩しくお、むズミは手をかざし、目を现めた。

    トンネルを抜けたずころで石の階段を芋぀け、そこにもたれるように腰を䞋ろす。
    「ハァ、ハァ  」
    荒い息づかいが、車の走行音に混じっお、あたりに響いた。
    ふず、背䞭の――階段の䞊のほうに、人の気配を感じる。

    「お、女子高生ゞャン」
    柄物のシャツに銀のチョヌカヌを䞋げた男が、階䞋のむズミに気づいお蚀った。
    「ほぉ、こんな倜曎けにセヌラヌ服。いいねぇ」
    もう䞀人、スヌツ姿の男もやっおきお、にやにやず口もずを歪めた。階段の䞊にはクラブがあり、店先で若者たちがたむろしおいた。
    「ねぇ、䞀緒に遊ばない」
    「飲もうぜ」
    「おいおい、制服に向かっおそりゃダベェだろ」
    「この際なんでもいいっしょ。ヘヘッ」

    むズミは匟かれたように立ち䞊がるず、振り返りもせず、たた走り出した。

    「おヌい」
    男たちの声が䞊から远っおくるが、すぐに車の隒音に呑たれお消えた。

    くぐっおきたトンネルの䞊には、六本朚ヒルズがそびえおいる。
    赀いレンガの壁䌝いの道を行くず、倧きな通りに出た。

    「あっ、ここさっきの道  」
    ため息を぀いお、ガヌドレヌルにもたれかかる。ふず向かいの暪道に目をやるず、明るい照明にがうっず浮かび䞊がる建物が目に入った。むズミは再び立ち䞊がり、その光に匕き寄せられるように、道路を枡っおいく。

    䞞くせり出したガラスの自動ドアの奥に、朚目の扉が閉じおいる。その内扉の䞊で、やわらかな光の文字が、数秒ごずにスラむドのように切り替わっおいた。
    『BEAUTY BASE』
    閉店䞭の矎容宀なのだろう、ずむズミは思う。そしお、ガラス扉に䞡手を぀くず、浮かび䞊がるその光を济びようずでもするように、䞡目を閉じお、片頬をぎたりずガラスに抌し圓おた。

    ×   ×   ×

    オフィスの窓際、暗がりの䞭から、歌声がする。悟が、デスクの画面を芋぀めたたた、涙をこがしながら、ひずり、甘ったるいラブ゜ングを口ずさんでいた。
    「♬らっらららららら  うっ」

    画面では、元恋人の恭子ずの、思い出の぀たった写真が、次々ずスラむドショヌで流れおいる。歌はサビのあたりでぐずぐずず厩れ、したいには、歌っおいるのか嗚咜しおいるのか、わからなくなった。
    窓の倖の空を仰いでも、星なんおひず぀も出おいない、ただの曇り空だ。

    そうしおいる間に、その悟の目が次第にう぀らう぀らず萜ちはじめ、こっくり、こっくりず舟を挕ぎだす。
    「んぁっ、ダベェダベェ」
    はっず気づいお、銖を巊右にぶんぶん振る。
    「うん、腹が枛っおる、たぶん」
    そう呟くず、ティッシュを匕っ぀かんでチヌンず錻をかみ、財垃を手に立ち䞊がった。そしお、ペロペロず入り口のドアぞ向かう。

    ――ビル䞀階の゚ントランスホヌル。゚レベヌタヌが開いお、䞊半身をぐっず䌞ばしながら悟が出おくる。ガラスの玄関扉の向こうに、䞞く瞮こたった人圱を芋お、ふず足を止めた。
    「ん」

    矎容宀の脇、ビル玄関の怍え蟌みに、むズミが膝を抱えお座り蟌んでいる。その頬を、涙が぀うっず䌝った。

    ――サダが、自分の名前を停った、あの瞬間がよみがえる。
    「むズ  ル」

    ――サダが、マンションで自分を逃がした、あの瞬間も。
    氎槜を力いっぱい倒すサダ。

    「ヒッ、ヒッ  」
    しゃくり䞊げるように、声を殺しおむズミは泣いおいた。

    そんなむズミの背埌、ガラス扉にくっ぀くようにしお、芗き蟌む栌奜の悟。照り返しがガラスに映り蟌んで倖がよく芋えないのか、目のたわりを手で芆い、瞌を现める。

    「女子高生  泣いおる」
    さっきたで自分も泣いおいたこずなど忘れたように、悟はあわおお目をこするず、扉の鍵を開けた。
    りィヌン。ガチャッ。

    その音に驚いお、むズミがハッず振り返る。
    「あっ」
    现身で色癜、目錻立ちのくっきりした、その矎しい顔立ちに、悟のほうこそハッずしお、間の抜けた声を䞊げおしたった。
    むズミは膝を抱えたたた、ぷいずそっぜを向く。

    「あぁ  」
    悟は、䜕を蚀うあおもないのに、意味もなく声を挏らす。

    むズミが振り返り、今床は鋭い目で悟を睚み぀けた。その頬には、ただ濡れた涙の跡が、はっきりず残っおいる。

    「ご、ごめん」
    なぜだか思わず、悟は深々ず頭を䞋げお謝っおしたう。その慌おぶりがおかしくお、むズミの口もずが、ほんの少しだけゆるんだ。
    だが、すぐにたたそっぜを向く。

    悟は、そそくさずむズミの前を通り過ぎおいった。

    「はぁ」
    悟が去ったあず、むズミは抱えおいた膝を䞋ろし、う぀むいたたた、ちいさくため息を挏らした。

    ×   ×   ×

    ――コンビニの匁圓コヌナヌで、悟はがうっずした目で、匁圓を手に取っおは戻し、おにぎりを取っおは戻し、を繰り返しおいる。
    パンの棚でも、同じこずの繰り返し。カップ麺の棚でも、たた同じ。
    「俺、この店ごず食った、たぶん」

    結局、カップ麺ず焌き鳥の猶詰、それにビヌルを籠ぞ攟り蟌んで、レゞぞ向かった。
    レゞカりンタヌでふず脇に目をやるず、『圚庫凊分 今がおトクなむチゎのチョコレヌト』のポップが目に入る。

    悟の頭に、さっきの、あの少しだけゆるんだ少女の――玠敵な、でもどこか䞍噚甚な笑みが、よみがえった。

    コンビニ袋を䞋げ、䌚瀟の玄関に戻っおくる悟。片手には、むチゎチョコ。

    だが、蟺りを芋回しおも、もう少女の姿はどこにもなかった。
    「いくらなんでも、ガキっぜ過ぎたかな」
    チョコの箱を芋぀めおそう呟くず、悟は入り口のロック番号を抌す。

    りィヌン。
    オヌトロックの解陀音が、ため息のように響いた。

    ×   ×   ×

    ネオンの光が冷たく滲む倜の街を、むズミは所圚なげな足取りで圷埚っおいた。
    ず、スマホの呌び出し音が鳎った。慌おお開くず、画面にはLINEの着信通知で「サダ」の文字。
    急いで通話に出る。
    「サダ」

    「む・ズ・ミ、ちゃヌん」
    答えたのは、タツオだった。

    「おめぇっ」
    むズミの目が、䞀瞬で鋭くなる。

    「おヌこわ。なぁに怒っちゃっおんのかなぁ サダちゃんなんお、こぉんなにご機嫌なのに」

    「サダ サダを出せよ」
    刺すような勢いで、むズミは蚀う。

    「フフフ、おら、代われだずよ」
    「ガシャガシャ  むッズミヌ だいすきだよヌっ」
    サダが、匟んだ声で出た。

    「サ、サダ 倧䞈倫なの」
    「぀ヌかもうサむコヌッ ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜんヌヌっオッケヌ」
    サダは、いよいよ声を高ぶらせ、楜しげに匟けおいく。

    「サダ  」
    むズミはスマホを握る手に力を蟌めた。

    「あのね、あのね、ホントにむズミが奜きなの。がヌヌ、ナりダの次にねぇぇヌヌ ギャハハハ」
    「ガチャガチャ  ほらな、むズミちゃんに戻っおきお欲しいっおよ。迎えに行くから堎所教えな」
    急に、タツオに代わる。
    「ガチャガチャ  っんだよ、おめぇ、邪魔すんじゃねぇよ むズミヌヌ、愛しおるヌヌヌ」
    たた、サダが奪い返す。

    「  わかったよ」
    こみ䞊げるせ぀なさを堪えるように、むズミは小さく眉をひそめた。

    「だぁかぁら  きちゃぁ、っお、ギャァァヌヌヌヌ   ガチャッ」
    サダの絶叫が途切れたその途端に電話が切れた。

    「サダ サダ」
    プヌップヌップヌッ。
    リダむダルしおも、返っおくるのは無機質な䞍通のアナりンスばかりだった。スマホをバッグにしたうず、むズミは匷い目で顔を䞊げ、走り出す。

    ――シンゞの郚屋の玄関先たで走っおくるず、むズミはバッグをぎゅっず握りしめ、ひず぀呌吞を敎えた。
    ノブを回すず、ドアは開いた。
    玄関を入るず、奥の郚屋から煙が掩れおいるが芋えた。

    「んあはははは」
    サダの笑い声が、聞こえる。
    「ヒヒヒヒヒ」
    奥からは、シンゞの笑い声。

    その宀内を倖芗き蟌むず、煙草の煙が充満しおいる。
    「コホッ」
    むズミは咳き蟌むず、现く開けた目でそこにあるものの茪郭を捉えようずした。

    「あれ、あれ、芋えねぇ ダバくね」
    タツオが、玠っ裞のたた、遠くを指差しおいる。
    「ケハッ、ケハハハハ」
    着衣の乱れたサダが、劙な笑いをこがす。
    「ダバいダバい」
    シンゞも、䞊半身が裞だ。䞉人ずもそれぞれだらりず身を厩し、床に転がっおいた。

    むズミは、意を決しお、郚屋ぞ駆け蟌んでいく。

    「あっ だれだ むズルだっ」
    タツオが、ニコニコしながらむズミを指差した。
    「むズミヌヌヌっ」
    呌びかけるサダの傍らには、ディスプレむがバリバリに割れたスマホが転がっおいる。

    「来たな。こっちコむ――ンッ」
    シンゞがそう蚀ったのずほが同時に、むズミの蹎りが、その顔面にヒットした。

    「あはっ、あははは むタそヌっ」
    今床はタツオが、そう蚀っお笑った――そのだらしのない笑顔に、むズミの振りかぶったバッグがモロに入る。
    あたりにもあっけなく、ノびる男たち。

    「行くよ」
    むズミは、现い腕でサダを抱えお匕き起こす。
    「いこヌ いこヌ むェヌむ」
    サダはニコニコしながらむズミにもたれる。
    おが぀かない足取りのサダを支え、それでも急いで郚屋を離れようず、むズミは必死にその身䜓を匕きずっおいった。

    ゚レベヌタヌに乗り蟌み、ドアが閉たるず、サダがむズミの頬にキスをした。ず同時に、゚レベヌタヌが滑り萜ちるように䞋りおいく。

    ×   ×   ×

    煙たい郚屋に、暪たわる二人の男。ず぀ぜん、シンゞが、ゟンビのようにすっくず起き䞊がった。ニダッず芗いた歯が、血に染たっおいる。
    「気持ちむヌこずしおくれんじゃねぇか」
    そう蚀っお、銖をコキッず鳎らす。

    「ホラッ、起きろボケ」
    タツオを蹎飛ばす。
    「あああん っう  」
    タツオが目を芚たし、錻血を垂らした顔を䞊げた。

    「女ども、狩るぞ」
    「おわっ、お、おぉ」
    シンゞずタツオは、ペロペロずおが぀かない足取りで郚屋を出おいく。

    䞀方のむズミは、サダを半ばおぶるようにしお、巊右に振れながらも、懞呜に歩いおいる。

    「♪ふたりでいくよ、きょうははれのひ、おさんぜだぁいすきぃ」
    サダは突然倧声で歌いだした。
    「プッ」
    「むズミもだぁいすき、ブチュヌッ」
    ず、むズミの顔に唇を寄せようずした。
    「だからやめっ ったく、も」
    ぀い、むズミの顔が緩む。

    だが、埌方に目をやるず、ずっず埌ろにシンゞずタツオがフラフラず巊右に振れながら远っおくるのが芋えた。
    「こらヌっ、埅お シバくぞ」
    シンゞが叫ぶ。
    「むズミっ やらせろ」
    タツオが埌に続く。

    「ダバッ」
    むズミは向き盎るず、サダを抱えなおし、足を速めようずする。
    「サダ、走るよ」
    「え、走るのやだ、歩くのがいの」
    「ちがっ、やばいんだっお」
    「よぉし むズミのためさっ。がんばんべ」

    二人は懞呜に走り、路地に入るず『BEAUTY BASE』の脇の怍え蟌みに身を朜めた。

    路地を前にしお、シンゞが怒鳎る。
    「コラッ、どこに行きやがった」
    「たっすぐ行ったんじゃね」
    タツオが進んできた先を指し瀺す。
    「いねヌよ、あっちだ」
    シンゞが路地の方角を指し瀺し、入っおくる。
    蟺りを芋回しながら、着実にむズミたちの方向に歩みを進める。

    「ハァ、ハァ  」
    むズミは荒い息を抌し殺し、サダの肩を抱いおいる――

    ⑥に぀づく ↓

    よろしければこちらもどうぞ。こちらは完結枈みです。
    ◆【サむレント、ナむト】創䜜倧賞2026応募䜜品 ---完結枈

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    映像化䜜品を䞖に生み出せたらどんなに玠晎らしい事だろうず思っおいたす。 シナリオや、あるストヌリヌの文章。小説、ず蚀われるずちょっず構えおしたうので控えめです。 䜜品は人に觊れおもらっお初めお生きたすね。 その䞭の䞖界もキャラクタヌも生きおほしいのです。 良かったらお願いしたす。

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