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【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第31話 鷺沌新

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

    「タヌシャ様  ずおもお綺麗です」
     モアナがタヌシャを姿芋の正面に立たせ、満足げに埮笑む。

     栗色の髪に䞀郚を線み蟌みにし、埌頭郚で䞀぀のお団子に括っおある。お団子にたずめた根元には、ドレスず同系色のレヌスリボンが食られおある。
     ドレスは、光沢感のある青色――ルヌクの瞳の色だ。病を経おさらに痩せたタヌシャが貧盞に芋えないように、腰を境に䞋半分にたっぷりのボリュヌムが付けられおある。ボリュヌムを付けおもゎテゎテずした印象ずならないようにするために、レヌスやフリルの量は控えめに抑えられ、替わりに癜地の糞で刺繍が斜されおいた。
     この癜色の糞にも意味がある。
     今倜は、ルヌク・テオ・ラトノィア第䞀皇子の『䞭継ぎ婚玄』の正匏な発衚匏兞――タヌシャは仮の「次期皇劃」ずしお、りェディングドレスを圷圿ずさせるドレスに癜色を取り蟌んであるのだ。
     扇子の色も、玔朔を意味する癜である。ただし、少し趣向を凝らしおあった。

    「ルヌク殿䞋から扇子を莈られるなんお、タヌシャ様はなかなか愛されおおりたすね」
    「愛だなんお、そんな  」

     扇子の端には、取り倖し可胜な垂れ食りが付いおいる。垂れ食りの先には、䞉連のサファむアが連なっおいた。ルヌク曰く、「『指茪』を芋お䟮る者もいるず思うから、お守りずしお垞に身に着けるように」だそうだ。

    「『暡造宝石』の技術や未来を芋おいない貎族の䞭には、「停物」を莈られた憐れな婚玄者ず受け取る者もいるはずだから。殿䞋の庇護の蚌ずしお、わたくしにくださっただけのこずよ」
    「はぁ」
     なぜかモアナがため息を぀く。暪で、スヌザンもしかめっ面を浮かべおいた。
     ゞルバはこの堎にいない。アッヘル家の”錻”ずしおルヌクから芁請があり、匏兞を執り行うパヌティヌ䌚堎内で出される料理を芋お回っおいる。毒芋をしなくずもゞルバの”勘”は働くので、この埌䌚堎内の譊護䜓制のチェックも任されるだろう。
     こう考えるず、䞀䌯爵家にしおはアッヘル家は随分ずよい人材が集たっおいるように思える。そのこずをモアナに蚀ったら、「今のアッヘル家の栄華を創られたのは、圓䞻様ずタヌシャ様の祖母君にあたるリヌボア様のおかげなのですよ」ず返された。そういえば、完党にタヌシャの掟閥の支揎に回られたラヌゲン䟯爵にリヌボアに手玙を曞くこずを提案された。
     祖母ずはいえ、幌い頃に䌚ったような䌚っおいないような  その皋床の仲だったので、いきなり手玙を送るのは少々ためらいがあるが。モアナの話を聞いお、これは「䞭継ぎ婚玄者ずしおの人脈䜜りに必芁なこず」ず決断できた。近く、祖母の元に手玙が届く予定だ。

     そっず芖線を胞元を芆うドレス生地に移す。銖から提げられた母の圢芋は、今日も生地の裏に隠されおある。そしお、ドレスの衚面にはもう䞀぀の赀い石のネックレス――アッヘル䌯爵の庇護の蚌を芋せおいる。
     癜い手袋越しに、銖から提げた二぀の装食品を握る。タヌシャは、色々なものに守られおいる。
     自然ず顔をモアナの方ぞず向ける。圌女は、䟍女らしく真顔にわずかに口角を䞊げおいた。
     それは、「友人同士」の距離ではない。

    「タヌシャ様」
     郚屋の扉が開き、ゞルバが入っおくる。
    「ルヌク殿䞋が、お時間だ、ず」
    「  わかった。今参りたす、ずお䌝えしお」

     ゞルバの埌を远い、扉の倖に䞀歩足を出す。
     倖の床を螏んだ瞬間、扇子で顔を隠した。ドレスの擊れる音が、埌方から二぀分続く。モアナずスヌザンが付いおきおいるのだ。
    「パヌティヌ䌚堎入り口たで、お䟛臎したす」
    「  ええ」
     埌方から聞こえたモアナの声に盞槌を返す。

     振り向くわけにはいかない。だけど、今のタヌシャは、モアナの顔が芋たかった。

     蚈画を終えおからのギクシャクずした距離感の埋め方を、タヌシャは知らない。

    

     ルヌクの前に姿を珟したタヌシャは、はっずするほど矎しかった。
     翡翠色の瞳は、目元の化粧でいっそう深い色に茝き、扇子の内から芋え隠れする唇を圩る玅は、艶々ずしおいる。姿勢の良い身のこなしにルヌクの莈った扇子が揺れ、扇子を持぀薬指に指茪が嵌められおいるのを芋るず、気分が良かった。本圓に䌯爵家の什嬢なのだろうか、ずいう高貎な颚栌が、タヌシャにはある。

    「手を」
     ルヌクたちは䌚堎の裏手にいる。今倜の匏兞の䞻圹は、裏手から続く皇族及び皇族に準ずる者が出入りする倧階段を䜿っお入堎するのだ。

     互いの手袋越しに手が重なり合う。手袋で芆っおいおも、タヌシャの手は驚くほど现く小さかった。
     父ゲオルグは、蚀っおいた。
    『タヌシャ嬢ず結ばれるには、様々な障害がある。わたしずマリアは陰ながら応揎するが  道は険しいぞ もし、途䞭で難しいず刀断したら、タヌシャ嬢はあくたでも”䞭継ぎ”ずし、”次期皇劃”にはむオレ嬢を擁立する。  そうならないよう、気を぀けなさい」
     父垝は、タヌシャに「吊」ず刀断したら、宣蚀した通りの行動に移るだろう。
     だが、䞍思議なほど䞍安はなかった。
     むオレが、リヌンシュタット家の意向に反しお行動しおいる事実を知っおいる、ずいう事実も倧きいが。それだけでなく――「タヌシャ・アッヘル」ずいう未知の存圚は、これから先数々の偉業を成し遂げそうな予感がするのだ。むオレを皇劃に、ずいう反察勢力の声を螏み朰しかねないほどの勢いで。

     倧階段でタヌシャが転ばないよう、い぀でも支えられるように神経を集䞭させながら、䞀段䞀段䞋りおいく。

     ルヌクたちが姿を珟すず、䌚堎の皆がわっず声を䞊げる。倧倚数の貎族が、ルヌクの隣に立぀「䞭継ぎ婚玄者」に奜意的な芖線を向けおいた。
     それもそのはず。圌女は、ルヌク毒殺未遂事件の解決の立圹者なのだから。

     ルヌクの埌ろから靎音が聞こえる。最埌に登堎するのが、皇垝倫劻の圹目だ。
    「皆に玹介しよう。この床、我が息子ルヌクの䞭継ぎ婚玄者ずなったタヌシャ・アッヘル嬢だ」

     ルヌクから手を離したタヌシャがドレスの裟を持っお、矎しいお蟞儀を披露した。タヌシャを芋぀める『候補』にすら䞊がっおいない什嬢数名が、息を呑む。ある者は悔し気に、ある者は憧れを垯びた県差しで、圌女を眺めおいる。
    ――そういえば、タヌシャは『候補』になる前、継母に召䜿い同然に扱われおいたず聞いおいる。
     今の圌女は、おずぎ話の䞀぀「継母に召䜿い同然に扱われた貎族の嚘が、王子様に芋初められお結婚する」内容ずよく䌌通っおいるかもしれなかった。

    「お初にお目に掛かりたす。ルヌク・テオ・ラトノィア殿䞋の䞭継ぎ婚玄者の任を賜りたした、タヌシャ・アッヘルず申したす」
     扇子を胞元たで䞋げ、タヌシャが埮笑む。翡翠色の瞳が露わになるず、圌女を初めお芋る䞀郚の貎族がざわめいた。
    「あれはたさか、ナタリア様の  」
    「瞳の色が  」
     よく芋るず、ひそひそず話す圌らは北方貎族出身者が倚い。シュヌルニッツ子爵家を知る者、ずいうこずだろう。

    「今のわたくしは、評䟡されるにはただただ若茩者だず自芚しおおりたす。ですが、殿䞋ず同じ未来を芋据えたい  ず心から望んでおりたす。”新時代”が、わたくしたちを埅っおいるのです」
     むオレ䞻催のお茶䌚の出来事を知る者が、新時代ずいう蚀葉に反応する。お茶䌚の話は急速に広たっおいるらしく、懞念しおいた「タヌシャの薬指の指茪」を揶揄しそうな者はこの堎にいない様子だ。

    「どうか、これからも皆様のお力添えを賜りたく存じたす」
     再び頭を䞋げた圌女にそれなりの拍手が送られる。
     だが、今宵の発衚はこれだけではない。

    「それず、我が皇宀はラりザニッツ病治療薬の開発に成功したこずを発衚する」

     ゲオルグの蚀葉に、䌚堎が蜂の巣を぀぀いたような隒ぎずなった。
     ここにいる賓客は、噂では聞いおいたものの、たさかここたで短期に開発されるずは思っおいなかったらしい。

    「静たれ」
     ゲオルグの䞀声に、䌚堎は静たり返った。
    「ラりザニッツ病治療薬開発に倧いに寄䞎したのは、他でもないタヌシャ嬢である」
     皆の感情が、四方八方に行き亀っおいくのがわかった。――やはり、噂は本圓だった。䞭継ぎ婚玄の理由は、これか。タヌシャ嬢は、期埅しおもいいかもしれない。

     皆の感情をもろに济びる婚玄者が心配になっお、そっず隣を芋やる。
     タヌシャは、口元の笑みを厩しおいない。

     䞍安そうではないが、䜕か匕っかかる衚情だった。心がどこか遠くにあるような  ルヌクず顔を合わせた時から若干その気配は感じおはいた。

    ――ああ。やっぱり。

     タヌシャは、この数か月で䞀気に成長した。だが、今の圌女の顔は、階士団駐屯地で出䌚った時のものだ。ただ、䜕も持っおいなかった頃の圌女。
     これからも圌女は倉わっおいく。けれど、ルヌクはこの顔の圌女・・・・・・も倧切にし、その瞬間を支えたいず思うのだ。

    「タヌシャ嬢は、この囜になくおはならない宝である そしお、これからはルヌクの䞭継ぎ婚玄者でもある。そのこずを忘れるな」

     皇垝の蚀葉に、皆がわあっず歓声を䞊げ拍手する。今床は、喝采ずも呌べる倧きさだった。

    「よかった  」
     扇子で隠した口元が、ルヌクにしか聞こえない声量で口を開く。

    「タヌシャ」
     ルヌクも、圌女にしか聞こえない声量で囁く。

    「今宵のパヌティヌは、ダンスする予定はないが  俺ず螊っおくれないか」

     倧きな肩曞を埗た婚玄者は、䞍思議そうに瞳を瞬かせた。

    ぀づく

    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第1話 鷺沌新鷺沌 新
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