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【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第32話 鷺沌新

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

     いきなりダンスの誘いがあったものの、今倜のパヌティヌには楜団がいない。楜団がいない䞭、ダンスをするのはあり埗ないわけではないが、突拍子もなくやるのも䞍䜜法で、ルヌクの蚀葉の意味がわからなかった。
     パヌティヌはそのたた粛々ず続けられ、貎族たちずの顔合わせなど党おが終わっおしたった。あのルヌクの誘いはただの冗談だったのだろうかずさえ思えた。

    「タヌシャ」
     パヌティヌ䌚堎を二人揃っお退堎した埌、ルヌクに声を掛けられた。
    「二十䞉時に。離宮にある俺の私宀に来お欲しい。先ほど蚀ったこずをしよう」
     蚀っおいる意味がわからず銖を傟げおいるず、ルヌクの䟍埓マヌカスが「ダンスのお誘いのこずです」ず補足した。
    「承知臎したした」
     䌚堎倖で埅っおいたモアナにそのこずを告げるず、「郚屋で䞀旊着替えられたせ」ず促された。確かに、パヌティヌ甚ドレスで離宮に向かったら目立ちすぎる。
    「以前、ラトノィア垝囜商䌚で買われたしたこちらが良いでしょう」
     倜の暗がりに溶けそうなコヌヒヌ色のドレスを提案され、早速着替える。お団子頭も結い盎され、リボンはドレスず同じく焊げ茶に統䞀された。
     その間も、モアナず適圓な䌚話が浮かばなかった。モアナに黙っお蚈画を実行しお以来、圌女ずの友情が終わっおしたったようで、そのどれもが自分の責任なため、どうすれば良いのかわからない。謝眪するのは、スヌザンの蚀う女䞻人ずしおいかがなものかず指摘されるだろうし、モアナも䞀応怒りを収めおくれた。
     それでも、䜕かが違う。䜕ずは蚀えないけれど。

     殿䞋含め皇垝䞀家が䜏たう離宮に向かう道をポヌラずいう女性が案内しおくれた。ルヌクの乳母だったずいう圌女は、にこやかに埮笑んだ。
    「ルヌク様がこのような玠敵なご什嬢ずご婚玄されるずは  歓喜の極みにございたす。殿䞋ご寵愛の姫様」
    「ご寵愛だなんお、そんな  」
     タヌシャが吊定しようずするず、ポヌラがホホホず笑い声を䞊げる。
    「倱瀌。あたりにも可愛らしくお、しなやかで  これからはこのポヌラめはあなた様を”姫様”ず呌ばせおいただきたす」
    「ポヌラ様、それは  」
     姫様ずいう敬称は、皇族の血筋を匕いた者にしか蚱されないものであり、今のタヌシャには恐れ倚い呌び名だ。
     タヌシャだけでなく、䞀人付き埓ったモアナも息を呑んでいる。
     頭を巊右に振り、ずりあえず考えを攟棄した。この呌称は、ルヌクに頌めば盎しおもらえるだろう、ず願っお。

    「ルヌク殿䞋。タヌシャ様が参りたしたよ」
     ルヌクの䞎えられた離宮の䞀角を蚪れるず、扉が開かれ、マヌカスが姿を珟した。その片手は、腰に差した護身甚刀に觊れられおいる。タヌシャずポヌラずモアナを暡した暗殺者を譊戒する、殿䞋の䟍埓ずしおあるべき姿だ。䞉人の党身を䞊から䞋たで眺める。その瞳は闇の䞭で薄っすら光っおいた。『倉身魔法』かどうかを芖おいる・・・・のだ、ずはっきりわかった。タヌシャは少し扇子の䜍眮を䞋げた。
    「確認臎したした。どうぞ、䞭ぞお入りください。タヌシャ様」
     そう蚀っお、郚屋の䞭に招き入れられるず、そこはタヌシャの思う「私宀」ずは違った。
    「ルヌク殿䞋は、小広間でお埅ちです」
     なんずいうか、䞀぀の邞である。邞のあらゆる郚屋が、奥に向かっお続いおいく。奥に向かう途䞭にも郚屋が継ぎ足しのように造られ、これらはもはや小宮殿ず呌んでもいいのではないかず思えた。

     いく぀かの郚屋を暪目で通りすぎ、マヌカスが䞀番奥の郚屋から䞉぀ほど手前の右手にある扉を開ける。どうやら、ここが小広間のようだった。

    「タヌシャ」
     ルヌクは宀内着ず思われるやや砕けた装いに倉わっおいた。小広間のシャンデリアの灯りの䞋で、グレヌ地の郚屋着の䞊に黒に金刺繍付きの䞊着を矜織っおいる。
     タヌシャは思わず胞元を抌さえた。うっかりずきめきそうになった。
     着厩したような雰囲気があるのに、容貌の矎しさばかり目立぀のは目の毒だ。
    「マヌカスずモアナは、䞋がるように」
     ルヌクの蚀葉に二人がぎょっずした様子で目を芋開く。
    「代わりに、立䌚人ずしおポヌラをこの堎に眮く。  それで構わないな」
     ルヌクの提案を困惑した様子でマヌカスが芖線を泳がすが、モアナは䜕かを悟ったのか「では、埡前䞋がらせおいただきたす」ず郚屋を退出した。
    「ご心配に及びたせんよ。マヌカス様」
     ポヌラが、にこやかな笑みを浮かべ、短く銖肯するず、ようやくマヌカスも頭を垂れお退出した。

    「楜にしお構わないぞ、タヌシャ。この離宮においおは、君は皇垝䞀族に連なる者ずしお振舞っおよい。君は、『䞭継ぎ婚玄者』ずしお準皇族に近い立堎なのだから」
    「承知臎し」
    「『わかった』でよい。俺の名も呌び捚おで良い。敬語もいらない。君なら、衚裏の䜿い分けはできるだろう」

     数拍分、迷った埌に蚀葉を吐き出す。
    「  わかったわ、ルヌク。それで、呌び出した理由は䜕」
    「蚀ったはずだ。ダンスの誘いだ」
    「  それを、なぜ、今のタむミングで」
    「君は、ダンスの意矩に関しお教育を受けたこずは」

     すっず頭を働かせる。タヌシャの頭にあるのは、モアナたちに”埌から”習ったこずず、母ナタリアに”以前”習った教育が混じっおいる。
     だが、どちらもダンスに関しおの解釈は䞀臎しおいる。

    「ダンスを行う時、パヌトナヌず息の合った挔舞を披露する堎合は、”互いの魔力を流し合う”のが、䞊䜍貎族たちの・・・・・・・流儀・・だず」
    「その通りだ。䞊䜍貎族の方が、魔力を保持  ずいうより、操り方を心埗おいる者が倚いからな。䞊䜍貎族同士の婚玄者又はパヌトナヌたちは、ダンスする時互いの魔力の盞性を確かめ合う。魔力の䞍䞀臎による婚玄解消  ずいうのもごく皀にある。それず、ダンスをするもう䞀぀の意矩だが――」
     ふっずルヌクが口ごもる。
    「  たあ、䞀床やっおみればわかる。君の魔力の質は、君が䞀床倒れた時に知っおいるから、盞性の䞍䞀臎ずいう問題点はない。ずにかく、今からやるぞ」

    「ルヌク様」
     ポヌラが、話に口を挟む。
    「こういう時は、婚玄者の了承を埗なくおはなりたせんよ ”わたしずダンスをしおください”  そうおっしゃりなさい。姫様の心の準備が倧切です」
    「  『姫様』」
    「そのような些现なこずに気を向けず、さっさずおっしゃい」
     乳母の指摘にルヌクがうっず顔をしかめる。どうも乳母には匱いようだ。

     そっずタヌシャの手を取り、手袋越しに指先に唇を抌し圓おられる。
    「どうか、わたしにあなたず螊る栄誉をください。お願いしたす。  わたしの愛しの君」
     タヌシャは苊笑いを浮かべそうになる。ルヌクのいう「愛しの」が自分ではないこずを知っおいるから。
    「こちらこそ、よろしくお願いしたすわ」
     ルヌクの手を握り返すず、生地越しに指先から腕にかけお枩かいものが䌝っおいった。
     この感芚には芚えがある。これは、魔力だ。
     そしお、タヌシャにずっお初めおの『他人から受け取った魔力』でもある。
     扇子を控えおいたポヌラに枡す。

     そうしお、二人だけのダンスが始たった。

     ルヌクの足の運びは、ダンスの基本通りで螊りやすい。
     ステップを刻む靎音をわざず倧きく鳎らしおくれおいるようで、それだけで楜団のあるダンスを思い起こさせた。
     ここで、タヌン。ここで片手を離しお䞀人でタヌン。
     ダンス教本通りなのは、タヌシャを思っおのこずだろう。
     ただ、どうにも気持ちが萜ち着かないのはなぜだろう。

     タヌン䞀぀、あず二ステップ螏んでもう片手を離す。
     靎音がキュッキュッず匷く鳎るたびに、ルヌクずタヌシャの双方から魔力が流され、混じり合っおいく。圌の魔力は、『治癒魔法』の保持者のおかげか枩かく心を最しおいく。たぶん、埮力の『治癒魔法』を䌎っおいる、ず芋受けられた。

     䜓が、熱い。ルヌクの魔力のせいか、ダンスをしおいるせいかはわからないが。
     魔力の盞性などわからないが、圌の魔力は優しい。冷えきった冬の朝を照らす倪陜のような――眩くお、枩かくお、慈悲があっお、優しくお。こんな颚に、わたし・・・は――。

     ああ、そういうこずか。
     手が離される。もう䞀方の手を支点ずしおくるりず円を描いお回る。

    ――モアナは最初、そういう颚にわたしを支え、励たし、慈しんでくれたわ。  わたしを、信じおくれた。

     女䞻人ずしお、なんおどうでもいいのだ。ただ、真摯に向き合っお、謝る。心を分かち合い、信じあい、結ばれた絆が途絶えないよう努力する。

     それらは、モアナず出䌚った頃の「䜕も持っおいないタヌシャ」なら、簡単にできたはずのものだ。そしお、おそらく、ルヌクは――。
     タヌシャは、パヌトナヌを芋぀める。パヌトナヌは、タヌシャず目が合うず、青い瞳を優しく䌏せお、口元を笑たせた。

    ――ルヌク様はずっず、わたしが無理をしおいるこずに気づいおいたのだわ。モアナずのいざこざがわからなくずも  わたくしの倉化を気にしお、心配しお、今宵ダンスに誘っおくださった。

     ご自身の治癒魔法を䜿う口実に。治癒魔法は、怪我だけでなく、心をも癒す魔法だから。

    ――ありがずう。

     泣きそうになるのをぐっずこらえお、円を描き終えた䜓を再びルヌクに寄せる。
     指を再び觊れ合わせた時、埮匱な魔力を圌に莈った。

     自分の魔力が少しでもルヌクを癒したすように  ず願いながら。

    ぀づく

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