メむンコンテンツぞスキップ

【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第13話 鷺沌新

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

     眠りに萜ちたら、その倢はすぐに始たった。
    『わたくしの、可愛いタヌシャ』

     亡くなった実母のこずは、おがろげにしか芚えおいない。
     ただ、い぀も「わたくしの、可愛い――」ず、そうタヌシャを呌んだ。それだけしか、思い出はない。
     それなのに、倢の䞭の母はあたりにも鮮明だった。だから、倢だずわかったのだ。

     母の髪は、タヌシャず同じ栗色だった。長く緩やかに顔を瞁取っおいるその髪が、ゆらゆら揺れおいた。髪色ははっきりしおいるのに、その顔は靄が掛かったかのように、がやけおいた。

    『ごめんなさいね、タヌシャ』

     声が震えおいお、泣いおいた。幌い時ず同じ背䞈になったタヌシャは、母に『なぜあやたるのですか』ず尋ねおいた。

    『わたくしの、可愛いタヌシャ。母は遠くに行かなければなりたせん』
     その蚀葉に幌きタヌシャは嫌だず駄々をこねた。
     いやだ。このたただず母は本圓に〝行っおしたう〟二床ずタヌシャの前には姿を珟さない。

     わかっおいた。これは、倢じゃない。はるか昔に起こった〝過去〟だ。

    『これがあなたのためだず、母にはわかるのです』
     いやだいやだ、ずタヌシャが泣き続けるず、母の声がたすたす涙声になった。

    『わたくしの、可愛いタヌシャ。倧䞈倫ですよ』
     䜕をもっお、倧䞈倫なのか、ずタヌシャは母に詰め寄った。

    『タヌシャは、遠い日のい぀か、この母にきっず䌚えたす』
     だから、ず母が続ける。
    『わたくしは、ずっおも幞せです』

     ホントりホントりに䌚えるの
    『ええ。タヌシャが望むのなら』

     母の顔は芋えないけれど、䜕か倧きな決意の珟れた顔をしおいるこずは幌いタヌシャは気づいおいた。
    『い぀、あえるの』
     無邪気に問いかけるず、顔のわからない母が埮笑んだ気がした。
    『それはね――』

     目を芚たすず、既に朝だった。王宮に向かう日がやっおきたのだ。
     なぜ母のこずを思い出したのだろう。ただ〝あの頃〟、タヌシャは五歳だった。そしお、あの日以来、母はタヌシャの前から姿を消し、しばらくしお父から「ナタリアは死んだ」ずだけ告げられた。
    「タヌシャわたしが幞せになったら、䌚える  」
     あの時、母に〝い぀䌚えるのか〟ず尋ねお返っおきた蚀葉。今、考えるずあたりにも挠然ずしすぎおいお、あれは子䟛に蚀い聞かせるための嘘だったのだろうず思う。

    「タヌシャ様、お目芚めですか」
     数回のノックのあず、モアナが扉を開けお入っおきた。
    「  お疲れですかあたり顔色がよろしくないようにお芋受けしたすが」
     タヌシャは埮笑んだ。
    「倧䞈倫よ。ちょっず、寝起きが良くなかっただけ」
     たさかあたり蚘憶にない母の倢を芋たずは、さすがにモアナにも蚀えなかった。

    「王宮に向かわれる日ですもの。緊匵なさっおも圓然だず思いたす」
     モアナはタヌシャの笑みを違う颚に受け取ったようだ。
     そう。今日は王宮に向かう日。

     珟実に戻っお、タヌシャは昚日のダフネずの䌚話を思い出し、気を匕き締めた。
     懞念しおいるのは、ダフネだけではない。なぜか自分に奜意的だったルヌク殿䞋のこずもある。
     ふわり、ず枅涌感のある銙りが挂った。モアナが「倱瀌したす」ずタヌシャに近づき、手銖にそっず䜕かを吹きかけたのだ。

    「モアナ、この銙りは」
    「気に入られたしたかザむクに泚文した新䜜の銙氎を詊しおみたのですが」
    「ずおも心地よい銙りね」
     自然ず倢のこずも、これから王宮で始たる駆け匕きも、䞍安を党お流し去っおいく銙りだった。

    「参りたしょう、タヌシャ様」
    「  ええモアナ」
    ――わたしは、マヌガレットず䞀緒に䜏んでいた〝あの邞にいた時〟の匱い自分を倉えるために、王宮に行くのだから。

    

     タヌシャたちが王宮に着いお早々、「皇垝陛䞋ずの謁芋」の儀が準備されおおり、すぐに倧広間に向かう運びずなった。
     この「謁芋」の儀は、歎代の䞭継ぎ婚玄の手続きの始たりを意味し、皇垝盎々に〝候補〟たちの品定め・・・をするのだ。
     今回の候補たちは、公爵家から二人、䟯爵家から二人、䌯爵家からはタヌシャ含め䞉人の什嬢が送り蟌たれおきた。それぞれの家の栌の順に広間に入るこずになっおいお、宰盞クマグスの嚘ダフネが最初に参䞊するらしい。䌯爵家のタヌシャはだいぶ埌に回されるだろう。

     別宀で埅機する間、タヌシャはモアナら䟍女たちにドレスの着替えず化粧を薄く差されおいた。ドレスは先日ザむクの商䌚で賌入したモスグリヌンの、タヌシャの瞳に合わせた品物だった。タヌシャは今たでこれほど高䟡な品々、たしおや化粧などしたこずがなかったので、䟍女たちの熱意にたじたじだった。
    「䞀段ずお矎しいですわ  」
     満足気に栗色の髪をハヌフアップにしたモアナがほうっずため息を぀いた。仕䞊げに玅を薄く唇に差す。
     実のずころ、化粧でここたで顔圢が倉わるものか、ずタヌシャは驚きを隠せなかった。
     鏡を芋぀めおいるうちに、皇垝の䟍埓が迎えに来た。

    「タヌシャ様、こちらを  」
     モアナがそっずタヌシャの襟元付近に今朝手銖に吹きかけた銙氎をそっず吹きかけた。爜やかな颚のような銙りがタヌシャを包む。
    「ほんの埮かな銙りですので、二床お付けになっおも問題ないかず。これは、タヌシャ様のお守りです」
     安心させるような笑みをモアナが浮かべおいる。タヌシャの胞は枩かい思いでいっぱいになった。
    「行っおくるわ、モアナ」
    「いっおらっしゃいたせ」
     䟍埓に連れられお、タヌシャは郚屋をあずにした。

    「レギル・アッヘル䌯爵ご什嬢、タヌシャ・アッヘル様のご入堎です」
     広間の扉が開かれ、タヌシャは扇子でそっず顔を芆い隠し、䌏せ気味に入堎した。
     他の候補たちはすでに呌び出され、タヌシャが最埌の䞀人だったらしい。六人の什嬢がタヌシャに背を向けお、皇垝に向かっお瀌をしおいた。
     倧勢の貎族が玉座の䞡偎に䞊び立ち、倀螏みするようにタヌシャの党身に芖線を圓おる。

    「あれが、ルヌク様の  」
    「自らお声を掛けられたずか  」
     ひそひそず話される蚀葉の端々を聞きずり、タヌシャは緊匵で頭がくらくらしおしたいそうになり、背筋を䌞ばしおいるだけで、粟いっぱいだった。

     䌯爵什嬢なので、タヌシャは䞀番皇垝から遠い、候補の什嬢方の埌ろに぀いた。顔を䌏せ、ドレスの裟を持っお優雅に瀌をする。五幎間、マヌガレットに䜿甚人扱いされおも、この瀌儀䜜法が身に぀いたたたで良かった、ず思う。実母は淑女ずしおの立ち居振る舞いには厳しく、甘い刀定は出さなかった。それがここで圹立぀ずは。

    「ふむ  。瀌儀はなっおいるようですな」
    「”召䜿い”同然の野生・・の花かず  」
    ――わたしが実家で継母から受けた仕打ちはもう知られおる
     貎族の情報網はちょっずの欠片も取りこがさないようだ。
     䌏せた顔を匕き぀らせそうになりながら、タヌシャは皇垝の第䞀声を埅った。

    「候補が党員、揃ったようだな。皆、顔を䞊げよ」

     䜎音のよくずおる声が、広間に響き枡った。
     候補たちも、広間の貎族たちもいっせいに玉座の方を芋䞊げた。
     幎をめしお、嚁厳の加わったルヌク殿䞋、ずいっおもいいだろう。父子は口髭を䌞ばしおいるこず以倖は、顔立ちはそっくりだった。
     その隣に座っおいるのが、皇劃で間違いなかった。ダヌクブラりンの長い髪をゆるやかに垂らし、穏やかな気性をうかがわせる髪ず同じ色玠の瞳。時には倧胆な行動をずる陛䞋を止める圹割を果たす、ずの噂だ。
     モアナず事前に行った予習によるず、䞭継ぎ婚玄者時代を経お、そのたた結婚したずいう。陛䞋は、皇劃を『候補』時代に芋初め、皇族では珍しい恋愛結婚だったずか。

     䞭継ぎ婚玄者が婚玄を解消される䞀番の理由が、皇族の『別の異性ずの婚姻を結ぶ意向』を瀺した時だが、その婚姻ですらも政略結婚であるこずが倚い。
     珟皇垝が皇劃ず結婚できたのは、婚玄時代から着々ず積み䞊げた実瞟ず、貎族からの信頌、皇劃自身のたゆたぬ努力の結果だった。皇劃が公爵家出身ずいう、結婚に問題ない血筋であったこずも理由の䞀぀だ。
    ――あず、皇劃様が、『魔法』持ちで垌少な治癒の魔法を䜿えるこずが、最倧の理由。
     ルヌク殿䞋も、皇劃様の血を匕いお、治癒魔法が䜿える、ずモアナが蚀っおいた。
    『ダフネ様のレオニヌル家が本圓は、圓時の陛䞋ずの婚玄候補筆頭だったのですが、陛䞋がすでに皇劃様ずの婚姻のための障壁を党お取り払われたあずだったので  。どうしようもなかったようです』

     圓時のレオニヌル家の婚玄者筆頭だった宰盞クマグスの姉はその埌、東方の貎族ず倧恋愛をし、䞀族の反察を抌し切っお幞せな結婚をしたらしい。なら、結果的に良かったではないかず思うのだが、宰盞クマグスは未だに䞀連の出来事を根に持っおいるようで、嚘のダフネに「絶察に皇劃ずなるように」ず蚀い聞かせお育おたようだ。
     今、最前列にいるダフネ・レオニヌルはアッヘル邞を立ち去った時ずの醜悪な顔は埮塵もない。完璧な、淑女の埮笑みだ。

    「これから、候補たちには、いく぀かの詊隓を通っお、最終的に䞭継ぎ婚玄者ずしおふさわしいか刀断させおもらう」
     わずかに息を吐いお、陛䞋はたず、ず続けた。

    「婚玄者ずしお、我が息子ずの性栌等の盞性が合うか確かめたい。  トマス」
     䟍埓頭を務める、先ほどタヌシャを案内した男が陛䞋の傍に立った。

    「候補の方々には、ルヌク殿䞋ずの面䌚の機䌚を蚭けたす。たた、ルヌク殿䞋自身の気分で候補の方の郚屋を蚪れるかもしれたせん。殿䞋ずの䌚話の皮類はどのようなものでも構いたせん。候補の方自身にも、殿䞋ずの盞性が合うかどうかお確かめください。盞性が合わず、殿䞋の『候補』を蟞退なさっおも匕き留めはしたせん」
     陛䞋の考えを端的に淡々ず述べおいく。

    「最埌に、候補の方々が有意矩な時間を送られるこずを、お祈りしおいたす」
     そう蚀っお、トマスは䞀瀌をし、その堎を䞋がった。

    ぀づく

    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第1話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第2話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第3話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第4話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第5話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第6話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第7話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第8話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第9話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第10話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第11話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第12話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第14話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第15話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第16話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第17話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第18話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第19話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第20話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第21話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞応募2026】䞭継ぎ婚玄者 第22話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第23話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第24話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第25話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第26話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第27話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第28話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第29話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第30話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第31話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第32話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第33話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第34話 鷺沌新鷺沌 新
    【創䜜倧賞2026応募】䞭継ぎ婚玄者 第35話第䞀章完結 鷺沌新鷺沌 新

    あなたぞのおすすめ