
【中学受験】「いよいよ合格発表」 石田家の10日間 episode:8
2月2日(木)(中学受験 2日目)

午後
午後三時過ぎ、石田さんは会議に入っていました。
携帯に奥さんからLINEメッセージが届きました。
「S中学の発表を、翔平と見に来ました。
やはり、名前はありませんでした。残念です。
18時からのK学院の発表、いっしょにお願いします。」
石田さんは、会議を続けながら、無表情で短く返信しました。
「了解。」
(やっぱりあのミスか・・・)
会議の声はほとんど耳に入りませんでした。
夕方
五時半。
仕事を早く切り上げた石田さんは、
K学院の校門付近で翔平くんと待ち合せました。
翔平くんと奥さんが少しして、現れました。
「S中学は、残念だったな。」
石田さんが声をかけると、
「うん、まぁ仕方ないよ。難関中学だから。」
翔平くんはサバサバしています。
「そうだね。今日のK学院はうまくできたかい?」
「うん、今日は大丈夫だと思うよ。割と簡単だったし。」
(昨日もそう言っていたな・・・)
石田さんは、言葉を飲み込みました。
六時の発表まで少し時間があるのが、やけに長く感じられました。
体育館の掲示板の前には、無言の人盛りができています。
「最近はインターネットの発表が多いけど、
こうやって学校まで見に来る人も結構いるんだね。」
「自分の目で名前を確かめたいのよね、翔ちゃん。」
奥さんも相槌を打ちます。
翔平は、無言のまま。
返事をしませんでした。
六時ちょうどに、掲示板を覆っていた白い紙がはがされました。
「翔ちゃん、男子は左側の掲示板よ。153番よ!」
奥さんが小走りに駆け寄りながら、話します。
掲示板の前の方は、人が集まっていて見えません。
スミマセン、とかき分けながら、最前列に進みます。
「何番だっけ?」
「153番だよ。」
石田さんも、翔平も番号を確認していきます。
「150、151,・・・154、157・・・」
「あれ、おかしい!ないよ。」
翔平の声が響きます。
「嘘っ!どうして?」
奥さんの叫び声。
「ないなぁ・・・」
石田さんの声が漏れました。
となりにいた家族連れは、ニコニコしながらハイタッチをしています。
女子の掲示板の方では、抱き合っている親子がいます。
掲示板から少し離れたところでは、
合格したよ、と電話している人がたくさんいます。
(K学院は大丈夫だと思っていたのに・・・)
(どういうことなんだ・・・)
石田家のいる場所だけが、スポットライトから外れたようでした。
(episode:9「帰り道で…」に続きます)
◆記事一覧◆
episode:1「合格したよ、と言いたかった夜」
episode:2「あの塾でよかったのか」
episode:3「塾を間違ったのか?」
episode:4「明日が来るのが、少し怖い夜」
episode:5「できたといった初日、残る違和感」
episode:6「できてるというけど、どこか違う」
episode:7「ぬぐえぬ不安」
episode:8「いよいよ合格発表」
episode:9「帰り道で…」
episode:10「2月3日(今日こそは)」
episode:11「2月4日(休息日のはずが)」
episode:12「2月5日(終わったと思った日)」
episode:13「2月6日(最後に、自分で決めた一日)」
episode:14「2月7日(学校には行きたくない日)」
episode:15「2月8日(こんな日が来るなんて!)
episode:16「入学式ーーー次の春へ」