
【中学受験】「2月5日(終わったと思った日)」 石田家の10日間 episode:12

朝
「翔ちゃん、行くわよ。」
奥さんが声をかけます。
「うん。今日でもう終わりだよね。」
翔平は気乗りしなさそうな感じで答えます。
「あなた、Y中学の結果確認、大丈夫?」
石田さんにそう言って、
翔平とK学院の試験に出かけていきました。
石田さんは、昨日の熱は大分下がったものの、まだフラフラしています。
しかし、Y中学のこの日朝の合格発表を見に行くことを引き受けました。
Y中学に行ってみると、すでに大勢の人がいて、
掲示板の前に集まっています。
石田さんは、翔平の受験番号を探し、
掲示板の前で2~3分佇んでいました。
だけど、いくら探しても、見つかりません。
(・・・)
奥さんにLINEで結果を知らせます。
「名前はなかった。残念だけど。」
奥さんからは、すぐに返信がありました。
「り。今日頑張るしかないわね。」
(もともとY中学は無理だったんだ・・・)
石田さんは、自分に言い聞かせることしかできませんでした。
昼
翔平と奥さんが、K学院の試験から帰ってきたのは、
午後2時頃でした。
今日の試験の出来については、翔平は特に話しませんし、
石田さんもあえて聞こうとしませんでした。
「雄大くんが待ってるんだ。遊んでくるよ。」
そう言って、翔平はさっさと家を出ていきました。
石田さんも奥さんも、止めることはできませんでした。
(夕方になれば結果がわかることだし・・・)
石田さんは、まだ少しフラフラする頭で独り言ちました。
夕方
「あなた、インターネット大丈夫?」
「まぁ、なんとか繋がるよ。18時発表だっけ?」
(学校に結果発表を見に行こうなんて、誰も言わなかったな。)
石田さんには今日の結果が読めていそうでした。
17時58分になって、学校のサイトにアクセスしました。
込み合っているのか、インターネット画面はぐるぐる回っているだけでした。
18時を少し過ぎて、学校のサイトに繋がりました。
『K学院、合格発表』というサイトをクリックしますが、
キーボード操作を少し間違えてしまい、汗を流しています。
お目当てのサイトに入り、合格者名を確認します。
「合格者は上記65名。なお、補欠合格者の番号は掲載していません。該当者には個別にご連絡します。以上」
最後まで見終わっても、翔平の番号や名前は見つけられませんでした。
「ダメだったな・・・」
石田さんが小さく呟きます。
「そうね。」
奥さんも短く答えます。
「・・・」
翔平は、黙って自分の部屋に入ってしまいました。
石田さんは、静かにパソコンの電源を落としました。
奥さんは、夕食の支度にとりかかりました。
(Y中学は無理だったな・・・)
(翔平ももう疲れたよな。)
(今日で終わりにするのか。)
(いや、明日、もう一度だけ受けてみるか。)
石田さんの頭の中は、合格発表前のインターネット画面のように、ぐるぐる回り続けていました。
(episode13:「2月6日(最後に自分で決めた一日)」に続きます)
◆記事一覧◆
episode:1「合格したよ、と言いたかった夜」
episode:2「あの塾でよかったのか」
episode:3「塾を間違ったのか?」
episode:4「明日が来るのが、少し怖い夜」
episode:5「できたといった初日、残る違和感」
episode:6「できてるというけど、どこか違う」
episode:7「ぬぐえぬ不安」
episode:8「いよいよ合格発表」
episode:9「帰り道で…」
episode:10「2月3日(今日こそは)」
episode:11「2月4日(休息日のはずが)」
episode:12「2月5日(終わったと思った日)」
episode:13「2月6日(最後に、自分で決めた一日)」
episode:14「2月7日(学校には行きたくない日)」
episode:15「2月8日(こんな日が来るなんて!)
episode:16「入学式ーーー次の春へ」